『第2次レッドダイヤモンド戦争』   作:長命寺桜

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第9話 アズラの預言

 ごく一部の未占領地域を除き、タムリエルをほぼ征服しかけたポテマだが、彼女には一つ大きな問題があった。吸血鬼である。彼らは捕虜や戦死者からいくらでも血と肉を奪うことが出来ていたが、もしも戦争が終結したら、一般市民が標的になるのではないかとの噂が、どこからともなく流れ始めていた。ポテマの元に、吸血鬼と手を切るように直訴する者まで現れ始めていた。ポテマ不在のソリチュードでは、過激派アーケイ信者により上級王シビル・ステントールが襲撃される事件が起こるなど、ポテマの統治は未だ盤石ではなかったのだ。

 その日、ポテマの書棚からあるものが消失していた。彼女は戦争が始まって以来蔵書の確認などしていないから、気づくのが遅れてしまう。それは、ジ・エルダー・スクロール、ポテマの所有する星霜の書であった。

 寒いスカイリムの中でも極寒のウィンターホールド。そのさらに北方にある巨大なアズラ像の下で、一人のダンマーが歓喜に震えていた。彼女の名はアラネア=イエニス。ドヴァーキンの友人の一人で、敬虔なアズラの信徒である。彼女は今、アズラから再びの預言と共に、消失した星霜の書を手にしていた。しかしその言葉を届けるためには、敵中を突破しなければならないだろう。長く危険な道のりだ。けれどもアラネアの深い瞳に迷いはない。彼女は行かねばならぬのだ。星の守護者を破滅の運命から救い、アズラの預言を成就させるために。

「ネレヴァルよ、導きたまえ」

 静かに祈りの言葉を唱えると、アラネアは星霜の書を抱えてリフテンへ向け出発した。

 彼女はアズラが忌み嫌う死霊術師に成りすましてまで、ドーンガード砦包囲網に侵入していた。吸血鬼達はもう何度目かも分からない攻勢を開始していた。クロスボウの矢がそこら中に降り注ぐ。アラネアは召喚した氷の精霊で矢を防ぎつつ、草むらに隠れて気を伺う。突如、目もくらむような眩い光が迸り、アンデッド達が大爆発を起こして逃げ惑う。アズラと同じく不死を忌み嫌うデイドラ・ロード、メリディアの与えしアーティファクト、聖剣ドーンブレイカーの光だ。聖剣を掲げたリディアを筆頭に、ジョディス、イオナ、防波堤のアルギス、ラッヤといった歴戦の私兵に率いられたドーンガード部隊が突撃を開始する。彼らはそれぞれドヴァーキンからデイドラの秘宝やその他強力なアーティファクトを授かっており、最強クラスの吸血鬼の将軍達でも手を焼く戦力である。ドラゴンを差し向けたこともあったが、クロスボウの一斉射撃によって撃ち落とされ、虐殺者エリクの持つアカヴィリ刀、ドラゴンベインで止めを刺されて以来ポテマも及び腰だ。

「焼け! 吸血鬼を燃やせ!」

 勇ましいセリフと共にリディアが吸血鬼の将軍を切り伏せると、再び爆発が巻き起こり部隊はパニックに陥った。

「バラバラにしてやる」

 ドヴァーキンの元傭兵、ステンヴァールが赤く輝く巨大な両手剣で切りかかってくる。ブラッドスカルの剣だ。

 その横からはイオナが凄まじい速度でキーニングを振り下ろした。アラネアはとっさに星霜の書で剣を受け止める。それを目にしたイオナは驚愕と共に腕を引いた。スカイリムでは普通、星霜の書を持ち歩いている者などいない。そんなものを持っているということは、最重要人物の一人であることは疑いようがない。

「何者? なぜ星霜の書を持っているの?」

「私はアズラに導かれてここへやってきたのよ。吸血鬼の姫に、預言の言葉を伝えるためにね」

 そしてアラネアは発狂して自分に切りかかってきた吸血鬼に向かって、チェイン・ライトニングの魔法を放ち、灰へと変えた。

「デイドラの崇拝者が、同じデイドラ崇拝者に何の用なの?」

「アズラはあなたではなく、吸血鬼の姫に伝えるよう言っているわ。私を通すのか、そのカグレナックの祭器で殺すのか、早く決めなさい」

 イオナは盛大な溜息をついてキーニングを納める。何といっても星霜の書だ。今のところ全勝中とはいえ一度の敗北は破滅を意味している。彼らには何らかの打開策が必要だったのだ。

「ついて来なさいエルフ。まずイスラン指揮官の所へ連れて行くわ」

 

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