今さらながら今週の週間4位という多大な評価を頂いている事に心から感謝を申し上げます。
皆さまの愛する熊本弁を表現できるように精進していきます。
後、誤字修正報告頂ける皆さまもありがとうございます。
某所。
神崎蘭子によって、計画の中断を余儀なくされたフィーネは、次なる計画の準備の為、奔走していた。
「やはり戦力が足りないか…」
目下最大の問題は、風鳴弦十郎、神崎蘭子の両名と対峙した場合に、突破できる戦力が無い事だ。
百歩譲って風鳴弦十郎に関しては、唯一の手持ちであるソロモンの杖を使えば、打倒は不可能でも撤退に追い込むくらいは出来る。
しかし、神崎蘭子だけはどうにもならなかった。
やはり、ネフシュタンの鎧を失ったのは痛い。
そもそも、ネフシュタンを纏った雪音クリスが全く歯が立たなかった相手なので、たとえネフシュタンが手持ちにあったとしても、雪音クリスより純粋な戦闘能力で劣るフィーネにとって、必ずぶち当たる問題でもあった。
任意対象識別可能な広域殲滅能力とネフシュタンをも融解させる一点特化の超火力も持ち合わせている為、数は意味を成さず、質においても巨大ノイズですら相手にならない。
更に言うとあの少女はまだ力の底を見せた訳ではない。
自らの正体すら曝かれたフィーネにとっては悪夢のような存在だ。
「忌々しい!この小娘のおかげで全ての計画が狂っている!」
元を辿れば、天羽奏、風鳴翼のどちらかは、2年前の時点で死亡する予定だったのだ。
それもまた、神崎蘭子という規格外の特異点によって阻止されている。
今に至るまで誰一人絶唱すら口にしていないのが、彼女の能力の異常性を示している。
「クソッ!!後少し!後少しなんだッ!!カ・ディンギルだ!カ・ディンギルさえ我が手中に収めれば…!」
終焉の巫女の慟哭と睡眠不足の日々は続く…
***
よし、今日の日課も終了だ。
あれから、クリスちゃん、響ちゃん、未来ちゃん、弓美ちゃん、創世ちゃん、詩織ちゃんには監視を付けて何があっても即対応できるようにした。
まぁ、監視というか…
『やみにのまれよ!』
『われはまりょくをもてあましておる!』
『きんだんのかじつ、しんくのひやくがまりょくをたかめるわ!』
ちっちゃい俺だ。
相変わらず残念言語は健在なので、報告を受けた俺がいまいち理解できないのが難点だが、意識すれば視覚を共有できるので、意外と便利だったりする。
これを駆使すれば禁断の花園、女子更衣室や女湯も見放題…といっても普通に俺も入れる場所なので、ワクワク感が激減してるんだよなぁ…
とはいえ、明日は翼さんのライブだし、厄介事が起きるなら起きる前に叩き潰さないと楽しめないからね!
だからね?皆の着替えとかが見えちゃったりするのはあくまで不可抗力であって、仕方のない事なんだよ!
断じて俺の趣味ではないよ?ホントダヨ?
そうそう、ライブと言えば、やっぱりクリスちゃんには最初はライブに行くのに難色を示された。
無理のある話題転換?何の事かね?よくわからないな。
「だからアタシは歌が嫌いだって言ってんだろ!」
「左様か…ならば輝き持つ者と陽光受けし者と…」
「ッ!?そ、そういや、丁度ちょっとばかし歌を聴いてやってもいいかと思ってた所だ!仕方ねぇから付き合ってやるよ!」
しかし、ちょっと落ち込む素振りを見せて、じゃあ響ちゃんと未来ちゃんと一緒に行くと言おうとしたらコロっと手のひらを返した。
ホント、チョロ可愛い。
ちょっとこの娘の将来が心配になるレベルだけど。
***
さて、昨日も結局何も無かったし、今日は待ちに待ったライブの日だ。
楽屋へのフリーパスも貰ったし、クリスちゃんを紹介がてら挨拶しとくか。
翼さんの楽屋にお邪魔する。
「神崎!来てくれたか」
「闇に飲まれよ!蒼の歌姫よ!今宵は我が魔力が昂っておる!魔王たる我にその天上の奏を供する栄誉を誇るが良い」
はぁ…相変わらずだな、この残念フィルター…
妙に上から目線なのが腹立たしい。
「あぁ!今日は是非、防人ではない歌女としての私の歌を聴いてくれ!」
ん?サキモリとかウタメとか何かあまり日常会話で聞き慣れない単語が…
完全にお前が言うなだけどね!
おっと、そうだそうだ、翼さんにクリスちゃんを紹介しないと。
クリスちゃんは…なんか借りてきた猫みたいに背中にピッタリくっついて俺の服の端をちんまり摘まんでいる。
大変可愛くてもうずっとこのままいて欲しい気分だが、紹介しないと話が進まんしね。
「我が眷属、豊穣の女神よ!」
「オイ!?お前毎回それでいくのかよ!?…雪音クリスだ」
「風鳴翼だ。神崎には世話になっている。今日は私のステージを楽しんでいってくれ」
「お、おぅ…まぁ…聴いていってやるよ」
「では蒼の歌姫よ!我は劇場にて福音の時を待とう!闇に飲まれよ!」
「あぁ!そ…その…や…やみのま?」
かわいい(かわいい)。
さて、挨拶も済んだ事だし自分達の席に戻るか…
ん?あの人は…
「!!貴女達は!」
ヤベー、あの強面お兄さんだ…
***
「アイドルの話、ご検討頂けたでしょうか?」
開口一番そんな事をどストレートに聞いてくる。
もうちょい駆け引きとか考えた方がいいと思うよ?
残念言語しか喋れない俺が言うのもなんだけど。
「我に輝ける星を目指す志は無い」
「アタシはこいつの世話で忙しいんだよ!」
「そうですか…残念です」
お兄さんが右手を首に当てながら肩を落とす。
なんとなく罪悪感を感じるけど、さすがにアイドルはちょっと無理だ。
「して、瞳持つ者は如何にして、この場に?」
まぁ、芸能関係者だから居てもおかしくはないんだろうけど、翼さん達の事務所とは少しばかり毛色が違う感じがするし、素直な疑問を口にする。
まぁ、翼さんの事務所って中身二課だから毛色が違って当たり前なんだけどね。
「私ですか?私はその…これは内密にお願いしたいのですが、今回風鳴翼さんに我が社のアイドルと一緒に世界進出を考えて頂けないかと思い、ご提案に参りました」
おぉ!世界進出!翼さんスゲー…
てか、何故かこのお兄さんには残念言語が齟齬無く伝わってるな…
地味に初見で対応されたのは、フィーネさん以来だ。
いや、このお兄さんの方が先だったか?
「その第1段として、我が社が誇る世界レベルのアイドルとの共演を考えて頂けないかと」
おぉ…プロデューサーがスカウトしてるからてっきり人手不足で火の車の事務所かと思ってたけど、世界レベルのアイドルがいるのか…
「おっと、そろそろ時間ですね。私はこれで。心変わりが御座いましたら是非ご連絡下さい」
ほぇー…あのお兄さん、口下手だからあんま仕事出来なさそうなイメージがあったんだけど、仕事はきっちり出来るタイプなんだな。
***
いよいよライブが始まる。
♪FLIGHT FEATHERS
…圧巻だ。それ以外に言葉が出てこない。
いや、勝手に翻訳されて意味不明な言葉は出てくるけどね?
そういうんじゃないんだよ。
なんっていうか、本当に心に響いてくるというか…あんまり上手い表現が見当たらん。
まぁ、一つ言える事はやっぱり翼さんは凄い。
「この魂の波動…我が魂をも魅了する!」
お?なんだろう…残念フィルター掛かった方が上手い事言えてない?
おいおい…さすがにこの残念フィルターに負ける事なんて絶対に無いと思ってたから、地味にショックが大きいんだけど…
「ま、まぁ…悪くはねぇんじゃねぇか?」
俺の言葉に対して、クリスちゃんがそう返す。
素直じゃないなぁ…
でも、さっきから控えめながらもリズムに乗っているのを見逃す俺じゃない。
どうやらクリスちゃんも気に入ってくれたみたいだ。
「なんだよ!?その目は!?」
「豊穣の女神よ!今こそ秘められし魔力を解き放ち、魂を共鳴する時よ!」
「!?」
そうやって無理やりクリスちゃんの首に腕を回し、サイリウム二刀流ではしゃぎ回る。
こういう時こそ楽しまなきゃ損だしね!
「ちょっ!?ちょっと待てって!当たってる!当たってるからッ!!」
ん?なんだろう?
急に顔真っ赤にして、一体どうしたんだろうね?
***
『ありがとう!みんな!』
歌い終えた翼さんが歓声に応える。
『もう知っているかも知れないけど、海の向こうで歌ってみないかって、オファーが来ている』
『自分がなんのために歌うのかって…ずっと迷っていたんだけど…』
『今の私は、もっと沢山の人に歌を聴いてもらいたいと思っている』
『言葉は通じなくても、歌で伝えられる事があるならば、世界中の人達に私の歌を聴いて貰いたい』
今まで以上に盛大な歓声が巻き起こる。
そうか…それが翼さんの夢なんだな…
やっぱり夢に向かってがんばる女の子は誰だって輝いている。
それに、今日は一つ翼さんに教えて貰った。
そうだ…言葉は通じなくても、歌で伝えられる事だってあるんだ!
想いを伝える術は何も言葉だけじゃないんだな…
俺の場合、身近な人以外ほとんど言葉が通じないから、マジで切実な悩みなんだよ…
しかし、翼さん海外進出って事は今後もあのお兄さんとは、微妙に関わりがありそうだな…
一応、監視付けとくか。
翼さんの夢は、誰にも邪魔なんてさせない。
今日のステージを見て、より一層強くそう思ったのだった。
そういえば…
「キュゥゥゥ…」
会場の熱気に当てられたのか、クリスちゃんは赤面して倒れてしまった。
さすがに、いきなりこんな人がいっぱいいる場所はキツかったかな?
仕方ない、おぶって帰るか…
ハッ、これは合法的にクリスちゃんのおっぱいを堪能するチャンスなのではッ!?
今回は
解き放たれし蒼き翼の独奏歌=夢に向かって進み始めた翼さんの歌
つまり1期9話サブタイ、防人の歌です。
蒼いけど3代目は関係ありません(笑)
ちょっと奏さんによって抑止されていた翼さんの中のSAKIMORIがランランとの絡みが増えた事で抑えきれなくなってきてますネ!
完全に解放される日も近いでしょう(笑)
途中に出てきたミニランランはぷちデレラのランランをイメージして頂ければ。