暑い夏が過ぎた。肌を焼くような強い日差しとうだるような熱気。えてして、過ごし辛い季節と言える夏が過ぎた後に何が待っているか。忌々しい暑さからの解放。むわっとする不快感を増す湿気からの解放。吹き抜ける風は暑さのことなど忘れてしまったかのように涼しく、ともすれば肌寒さすら感じさせる。そう秋の到来で合った。
一般に秋と聞いて先ず最初に思い浮かべるのは、農作持の収穫の時期というのがこの世界の常識である。寒い冬を乗り越え、過ごしやすい春に新しいタネを蒔き、暑さに耐えながら夏に農作物を育てる。そして1年かかりで苦労を積んだ結果を秋に収穫する。普段は貧しい村でもこの季節位は少しの贅沢を甘受するであろう。そして、人にとって最も喜ばしい季節に行われる行事と言えば一つしかない。そう、豊穣を祝っての祭りである。
通常ならば冒険者と行商人が大半を占めている町でも、祭りがあるとあっては普段村や集落に引きこもりがちな人々も意気揚々と町に出てくる。年に数回あるかないか、更に言えばゴブリンやモンスターの襲撃に怯える日々を送っているのだ。こんな時くらい楽しんでも罰は当たらないだろう。
事実、ギルドも開いてはいるが、常と比べれば訪れる冒険者の数は圧倒的に少ない。誰だって冒険よりも祭りを優先して楽しむのは当たり前だ。せっかくの祝いの日に冒険に出掛けるのは、遊ぶ金どころか明日が危ない者か、よほどの偏屈だろう。それだけ祭りというものを楽しみにしている人が多いということだ。毎日ギルドに顔を出して「ゴブリンだ」と言うギルドの名物?珍品?と言われている「辺境最優」の冒険者でさえ午前と午後にそれぞれ別の女性と町を歩いている。それが意味することを分からない奴はいないだろう。最も、連れ歩いている女性が容姿が整いスタイルがいいとあれば多少のやっかみは仕方ないと言えよう。片や近くにある牧場の娘。意外と彼女のファンだという冒険者も少なくはないうえに、もう片方はギルドの顔といっても差し支えない笑顔を絶やさない受付嬢。彼女に心ときめかせている野郎も多いことだろう。・・・一緒に歩いている男がともすれば「生ける鎧(リビングメイル)」に見えなくはないという事が珍妙ではあるが・・・。
しかし、こういった祝い事の中に悪意とは潜むものである。例えば、原因は己にあるというのにそれを認めずその事実を突きつけてきた存在に逆恨みを持つ者がいたとする。そいつの身分は冒険者であるが、信用はなく転属させられていたとしてもそれを一発で見抜くことが出来る者の方が少ないというものだ。そして、そんな存在こそ簡単に悪に墜ちると相場は決まっている・・・
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突然の襲撃に対し冷静に対処をすることが出来たのは、彼が常日頃不意打ちや悪知恵を働かせてこちらに襲い掛かってくる世界で一番弱い。だが、舐めて掛かれば容易く命をおとしてしまうゴブリンと戦い続けてきたからであった。そも、襲撃の予兆は有ったのだ。彼が対策を怠るはずなどない。何故なら、対策を考え用意することは己の存命に繋がる、そして彼の目的はゴブリンを殺すことなのだから死ぬ訳にはいかない。故に突然の襲撃に対して敵の攻撃は通らずとも確実に息の根を止めるために彼が選択したのは不意打ち。敵を殺すということに対しては効果的だが、仮に連れが居たとすれば、その連れが勘違いしてしまう可能性があることは明白だった。そして、今回は見事に起こしてしまった。
「ヒック、グス・・・。死んじゃったのかと、思ったんですよ・・・!?」
「む・・・・。すまん」
「謝る、くらいなら、グス、しないでください・・・!」
「・・・・善処しよう」
突然の襲撃と一連の終息。未だ泣き止まない彼女に対し彼が出来ることはない。ただ真摯に謝罪をするだけだった。そして、そんな状況のままいる訳にはいかない。祭りの夜に襲撃された。それがただの逆恨みで殴り掛かるなどであれば酒に酔ったのかと思うこともできる。が、襲撃者は明確にこちらを殺すために武器に毒を塗り、変装をまでしている。彼への復讐だけが目的じゃないことは一目瞭然である。そして、この場にいる2人は片や冒険者。片やギルドの受付である。故に双方己の成すべきことを見誤ることなどしない。
腰が抜けているため上手く立ち上がれない彼女が近くにある卓に捕まりながらも、ふらふらと立ち上がるのを見届け、後始末を依頼し彼は駈ける。この町を襲うであろう脅威を退けるために
しかし、その様子を心配そうに見送る彼女は気が気でないだろう。その眼には確かに不安が宿っている。だが、同時に彼に対する信頼も見て取れる。相反する感情だが、それを持つということは相手を大切に思っている証拠。
この一件から彼の周りの女性が彼を狙う狩人となるのは時間の問題であった・・・。
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闇人の脅威から町を守った彼が後始末を終えて寝泊まりしている牧場に着いたのは祭りが終わった翌日のことだった。幼馴染にした約束の時間を過ぎてしまったことをチクチクと責められたが、反論することもできず、遅めの朝食を取った後眠りについた。目が覚めれば夜の帳は下りきっていて辺りは月の明るさあるものの静寂が一面を支配していた。そんな中で幼馴染に膝枕してもらいながら耳掃除を受けていた彼がことも終わり、家に戻る彼女を見届けた後、またも声が掛けられた。
「闇人の計画を潰したんだって?君の活躍は下手な武勇伝よりもよほど勇者している」
―気配もなく牧場の柵に腰かけ話しかけてくる男。以前とちがうのは驚いたりせず反応したことか
「力もある。手札も多かった。しかしゴブリン共のほうが面倒だった」
「そうかい。君も変わっているね。
そうそう。聞いたよ?祭りに日に襲撃されたんだって?大丈夫だったか?」
「不意の襲撃はゴブリンで慣れている。明確に俺を敵視していた。それで対処できないということはない」
「なら良かった。君が同業者?の襲撃で命を落としたとあっては君の姉にどう報告すればいいか分からないからね」
―何がおかしいのか笑みを浮かべながら言う男
「今回は何の用だ?」
―秋の夜は冷える。そろそろ体を休めるために寝たいゴブリンスレイヤーとしては、会話を早く終わらせるために目的を尋ねた
「少しばかり忠告をね」
―男の雰囲気が変わる
「君は自分の命にどれだけの価値があると思う?」
「・・・・・?」
―質問の意図を理解しかねるゴブリンスレイヤー
「少なくとも君が死んでしまったかもしれないと泣きながら告げた女がいる。君のゴブリン退治で命を救われた少女がいる。君の活躍で心が救われた淑女・・・?淑女かあれ?まぁいい便宜上淑女としておこう。君に興味を持っているエルフがいる。君の事を常に心配している姉がいる。そして、君の帰る場所になろうと背伸びを続けている女の子がいる。これだけで君の命は自分だけでなく5人の女に対して意味を持つ。
それだけじゃない。君がいなくなれば助からない人がたくさんいる」
「何がいいたい?」
―多少の苛立ちを含んだ声で問う
「もう少し周りを見ろと言いたいんだ。いつまでも君の周りにいる人が生きているとは限らない。結婚や冒険で命を落とすこともあるだろう。そんな時君はどうする?いつものようにゴブリンを退治するのか?それを・・・独りではなく仲間と冒険をすることを経験した君は耐えられるか?」
「それは・・・」
「無理だ。断言するよ。君はもう一時1人で冒険をすることはあっても、独りに戻ることなどできない。何故なら、確かな温かさというものを君は知ってしまったからね。
人は孤独には耐えられない・・・」
「なら・・・!どうすればいい・・・!」
―言葉にできない苦しみを込めてぶつけてくる
「簡単だ。もっと周りの存在に対して関心を持て。感情を解放しろ。内に眠る思いを言葉にしてぶつけろ!
・・・君が10年前の一件から感情が外に出にくくなっているのは分かっているつもりだ。だが、君の感情は死んでなどいない」
「・・・・・・どうして言い切れる?」
「感情が死んでいたら、もうとっくの昔に君は死んでるよ。君が死にかけた時に息を吹きかえしたのは彼女たちのことを思い出したからだろ?ゴブリンにここが襲われそうになったとき、同僚に助けを求めたのは幼馴染を守りたかったからだろ?」
「・・・」
―もはや言葉を返せないゴブリンスレイヤー
「しっかり考えなよ?君のこれからを。そして、彼女たちとのこれからを。時間はあるようでないものだ。知らない内に結婚話が持ち込まれて、冒険から帰ってきたらどこかに嫁いでいたっていうのもあり得ない話じゃない。そんな時に後悔しても遅いんだ。君のこれからにちゃんと君自身が答えを出しなさい」
―最後の言葉だけは父親が息子に掛けるもののように暖かかった
ゴブリンスレイヤーは何も言葉を返さなかったがしっかりと頷いた。
それを返事だと考えたのか男もまた夜の闇に消えるように姿をくらました
賽は投げられた。傍観者として彼にちょっかいを掛けることはもうない。やるべきことは全て果たした。憂はなく、されど彼のこれからに対しての興味は沢山だ。しかし、彼がどんな答えを出しても口を出すことはない。何故なら、未来のことに関して答えを出せるのはいつだって己自身なのだから。
今までで一番文字数が多かった・・・
これにてオリ主のこの小説での役目は終わりました。
いよいよ、結婚エンドと行きたいのですが、少し悩んでいることがあります。
それは、この話の次にゴブスレ君の内心を纏めるかについてです。
主な理由としては、原作とどのくらい違いが出ているか分かりやすくした方がいいかと考えたからです。
故に少し充電タイムに突入するので数日更新が止まると思いますが、お待ち頂けたら幸いです。
なお、個別ルートに関しては、牛飼い娘、受付嬢、剣の乙女に関しては大体案が纏まっています。
だが、エルフに神官娘!君たちの扱いに困っているんだよ!特に神官娘さん?君のルートまさかに鬱展開入りそうで内心戦々恐々としている!
あと、個別ルートの書き始めと書き終わりは誰にしようか決めていますが、他に4人は未だ順番を決めていないので、更新が長期間停まったしまう場合、展開に躓いたと思ってくださいw