結局ゴブスレ君視点でどのように変化しているかを書くという結論になり書き記した次第です。
ですが、予想外に長くなってしまったので前後編に分けました。
また、今までの倍近い文字数となったので読みにくかったらすいません
「子鬼を殺す者」。そう呼ばれるようになったのいつだったか・・・。自分では思い出すことも出来ない。とにかくゴブリンを殺して殺して殺し続けてきた。とにかくゴブリンが憎かった。己の中に残っている故郷の記憶は曖昧で、共に過ごしていた村人の顔ももう思いだせない。皆で遊んだ場所も朧気で、過去を思い出すために村のあった場所に赴いてもそこは雑草が生え辛うじて昔人が住んでいたと分かる痕跡が残る程度。正しく俺の故郷は無くなってしまった。故に、その原因となったゴブリンを許すことなどできない。奴らは一匹残らず皆殺しにする。
10年前、俺の故郷はゴブリンの襲撃を受けた。村の力自慢が幾度かゴブリンを追い返すことはできても、集団で奪いにくる奴らに対して力自慢がいるだけの村は無力だ。最初に奴らに向かっていった大人は、数の暴力の前に殺された。村を守る者がいなくなれば、残るのは奴らによる略奪のみ。そして、奴らの略奪するものの中には、村にいる女が含まれる。奴らは女を自分たちの数を増やすための「孕み袋」にし、それで飽き足らず欲求を満たすための慰み物にする。村には自分と同年代の女子や大人の女性もいる。その人たちは一人の例外もなく奴らに蹂躙された。その場で犯されるもの。気に入らないのか殺されるもの。俺はそんな光景を隠れながら見続けることしか出来なかった。
俺には、たった一人の家族であり優秀な姉がいる。村で一番勉強も出来たし、まだ成人していないのにも関わらず俺の面倒を見てくれた。村の子ども達全ての姉のような人だ。その姉は、あの日も村の女の子を守るために立ち向かった。それに対し俺は隠れることしか出来なかった。悔しかった。何もできない己自身が。許せなかった。俺たちの日常を壊したゴブリン共が。しかし、俺には立ち向かうどころか立ち上がる勇気すらなかった。姉が隠れている場所を見つけられ逃げてきた女の子を庇ってゴブリン共と対峙していた時も、その光景を震えながら見ていることしか出来なった。ゴブリンは弱い。それこそ武器を持った姉が何匹か殺すことが出来る位に。しかし、数の暴力に勝つことなどできようはずもない。1匹2匹なら同時に相手できても3,4匹が相手では牽制位しか出来ず、5匹以上なら手が回らなくなる。奴らを殺す術を持つ者ならいざ知らず。武器を持った女が相手を出来る数には限りがあり、その数を超えられたのであれば結果は言うまでもない。姉の牽制を躱して姉が庇っていた女の子をゴブリンの一匹が捕まえた。その様子に気が取られた姉が余所見をした瞬間に、他のゴブリンが姉を押さえつけた。当然もう1人の女の子も同様の結末を迎えた。奴らは、自分たちの邪魔をした姉の歪む顔が見たかったのだろう。姉を押さえつけながらも手を出すことがなく、目の前で最初に捕まえた子を凌辱した。辺りに響く悲鳴。それを愉快そうに聞きながらもう一人の子に手を出し始める。まだ幼い女の子が耐えることなどできる訳もなく、外では村人の悲鳴。小屋の中には女の子の悲鳴。地獄そのものだった・・・。
それでも、この苦痛から逃れたかったのだろう。女の子が手足を暴れさせ抵抗していた。それが奴らには鬱陶しかったのか、手に持っていたナイフで暴れていた子の腹をなんども刺した。それを見た姉が悲鳴を上げたので、それを楽しむかのようにもう一人の子の腹にもナイフを突き立てた。即死ではないが、もはや死を待つだけの肉塊となった女の子に興味を失ったのか、それともお楽しみに手を出そうとしたのか遂に姉の服を破ろうとその場にいたゴブリンが群がろうとした時に、その声は聞こえた。
「薄汚い畜生共が・・・」
明らかにその場に似合わない軽装の青年が立っていたのである。村周辺に住んでいる人が凡そ身に纏うことも叶わないような上質は、何かの返り血で汚れており、その眼には明確な侮蔑の感情が宿っていた。だが、それよりも目を引いたのはその眼で、火の海になっているがために赤くなっている周りの風景よりもなお紅い。血のように真っ赤な眼に不思議な文様が浮かんでいた。その男は、お楽しみを邪魔されて苛立ったのか武器を振りかぶりながら向かってくるゴブリンまるでゴミを払うように手で両断した。その光景に一瞬動きが止まった残りのゴブリンも数秒も立たない内に始末し、姉の様子を伺っていた。姉は気を失ってしまったが怪我などは無かったのだろう。男は安堵の息を吐いていたが、表情は険しく何事かを考えているようだった。その男が俺の隠れている場所を向き言い放った。
「そこに隠れている少年。すまない・・・。来るのが遅すぎた。君もこの娘も安全な所まで運んであげたいが、生憎時間がない。俺の使い魔を置いていくから安全な場所まで運んでもらってくれ。
・・・友達や村人を助けられなくて悪かった・・・」
その言葉には申し訳なさと何より後悔が滲んでいた。男が自分の手首を咬みきり、流れ出た血を掌に押し付け地面に叩きつけると、白い煙と共に黒いフードを被った女が顕れた。男の言葉通りなら使い魔だと今なら考えられるが、当時の俺には理解できず、姉と俺を抱きかかえると何事かを呟き俺たちを眩い光で包み込んだ・・・。
自分の安全が確保されたからか、恐怖に支配しれていた感情が段々とゴブリンへの怒りを出し始めた。俺は、光で前が見えなくなるまで死んだゴブリン共を睨み続けていた・・・。
光が消えるとそこは村から一番近い町の中にある神殿の目の前で、辺りには人はいなかった。俺は急いで神殿の中に入り人を呼んだ。対応してくれたのは立場の高い者が着るであろう神官服を纏った初老の女性で、俺たちの身に起きたことを説明すると何人かの人を呼んで神殿の前に倒れたままの姉を運び込んでくれた。
今にして思えば、気が動転して上手く話せていなかったであろう俺の話をちゃんと聞いてくれて、子どもの法螺話など決めつけずに対応してくれた女性には頭がさがる。
姉が運び込まれるのを見届けたあと、俺は村の様子が気になった。俺たちのほかにもあの男に助けられた存在がいるのではないか?と思ったからだ。だが、当時の俺に金などなく、村へ安全に還る方法などなかったため、村の近くまで行く馬車の荷台に潜り込んで村へ向かった。拙い字で姉をお願いしますと地面に刻み込んで・・・。
俺の故郷はもう無かった。住んでいた家も遊んでいた場所もどこもかしこも焼けてしまいその残骸を残すばかり。町からここにくるまで雨は降っていないからあの男が火を消してくれたのであろう。そうぼんやりと考えながら俺は佇んでいた。故郷が無くなっている様をただ見続けていた俺を拾ってくれたのはレーアの老人で、俺はその老人の下でゴブリンを殺す術を、生き残るための知識を習った。
ある時俺がどうやって助かったのかを先生に伝えたところ、普段からしかめっ面を絶やさない先生がよりその渋面を険しくしてこう呟いた。
「お前を助けた奴は、生きる伝説の呼び名で呼ばれている白金等級の冒険者だ」
助けられた時も顔は良く見えなかったが、その男のことを教えてくれた。なんでも、この世に生まれた最初の白金等級の冒険者で、とっくに死んでいてもおかしくない年齢だが見た目は青年のままで体の衰えもないらしい。その特異な性質から生きる伝説と呼ばれていること、先生が死にかけた時に一度共闘したことを教えてくれた。ただ、先生はその男のことを毛嫌いしているのかその日の修練はいつもの何割増しか厳しかった・・・。
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拾われてから5年。先生は「教えることは全て教えた。後は自分次第だ」といきなり告げた後、旅に出ると言って姿をけした。俺は先生の教えを反芻しながら冒険者登録を終え、ゴブリン退治に赴いた。一番最初のゴブリン退治を成功させることが出来たが、手酷い失敗をしふらつきながらギルドへ戻っているといきなり話しかけられた。その相手は5年前のあの日、けんか別れをしてしまった幼馴染で今は叔父の経営している牧場に住んでいるという。彼女は、俺の事を住まわせてくれないかと叔父に頼んでいたが、あまり良い反応は貰えなかった。当然だ。冒険者など管理された荒くれ者という認識がある。仮に幼馴染だとしても、娘同然に育ててきた姪の近くに荒くれ者など置きたくはないだろう。結局、我儘を通した彼女に根負けしたのか離れにある蔵を使わせてくれるという形に落ち着いた。
依頼達成の報告を終え、次のゴブリン退治に向かおうとしたが、ふと姉はどうしているのかあの日以来会っていない故に気になったので神殿に赴いた。
様子を確認したら帰るつもりだったが、全身皮鎧を纏った奴が神殿に来たらそれは怪しまれる。神官に囲まれなんの目的で足を踏み入れたのか尋問されたので姉の様子を見に来たと伝えたら、神官長と思わしき存在が近くの神官に何事か言伝を行い少し待てと言ってきたた。慌ただしい足音と共に姿を現したのは、神官服に身を包んだ姉だった・・・。
「今までどこに居たの!?」
そう泣きながら詰め寄ってくる姉になんと言い返せばいいのか分からない。なんとか掻い摘んでどう過ごしてきたのかを伝え、ゴブリンを殺すために冒険者になったと伝えれば、
「それがどんなに危ないことか分かっているの!?いつ死んだっておかしくないんだよ!?貴方しか私の家族はもういないんだよ?もう独りにしないでよ・・・」
いつも毅然として皆の憧れだった姉はそこにはいなく、ただ寂しさに耐えている娘がいるだけだった。言っていることは俺の心配なのか、溜めこんだ胸の内なのかすら分からないくらい動揺しており、服が汚れるのも気にせずに抱き着いてきた。あんなに大きく見えた姉は、今はその姿が幻だったかのように小さくなり震えていた。姉を安心させることが正しいはずだが、俺は故郷を襲ったゴブリンを、皆の命を奪ったあの薄汚い畜生を許すことはできない。なんとか俺の現在を話し終え、それを黙って聞いていた姉が苦渋の表情をしながら俺に告げた。
「貴方の気持ちは分かった。姉として、弟が覚悟を決めてやろうとしたことを止めるのは良くないと思う。だから、貴方が冒険者を続けて、ゴブリンを退治することに関してはもう何も言わないわ」
「・・・そうか」
「ただし、これだけは守りなさい!
1つ 大きな怪我をしたら完治するまでゴブリン退治を休むこと
2つ 依頼を達成したら私の下まできて報告すること
3つ 冒険者としてやっていけなくなるような大けがをしたのなら、ゴブリン退治をすっぱり諦めて、冒険者も辞めること
これが条件。いいわね?」
「・・・分かった」
ゴブリン退治に全てを掛けたい俺としては、面倒な条件だがまた姉の悲しそうな表情を見たくは無かったので受け入れた。
それからはギルドへ行き、ゴブリン退治の依頼を受け、達成し、神殿に赴いて姉へ報告を済ませ、牧場に戻る。それが俺の日常となっていた。
そんな日常が何年も続いたが、変化は突然やってくる。その日もギルドへゴブリン退治の依頼を受けに訪れた際に、冒険者になってから5年間世話になっている受付嬢に、新人がゴブリン退治に向かったので応援に行って貰えないかと相談された。俺としてはゴブリンを殺すことができるのならそれでいいが、10年前に俺と姉が助けられた時のように一人でも助けることが出来ればいいと考えその依頼を受けた。最も、その日に限っていつもと違うのではなく、姉と一度大喧嘩をした時から多少なり俺の考えに変化が出た程度であったが・・・。
案の定、新人のパーティは壊滅していた。逃げてきたであろう神官娘と魔術師の2人はゴブリンに襲われており、魔術師に至っては毒が全身に回っていたため楽にしてやることしかできなかった・・・。パーティの内2人は死亡。一人は田舎に引きこもるという結末になったが、助けることができた新人の神官娘の面倒を見ることになり、せめて彼女がゴブリンに殺されることがないよう、色々と教えることとなった。昔俺を拾った先生もこんな心境だったのだろうか・・・。
それからは、怒涛のように日常が過ぎていく。ゴブリン退治を終えてギルドに戻れば、呼ばれたこともない呼び方で俺にゴブリン退治を依頼する銀等級のエルフ、ドワーフ、リザードマン。神官娘と共にゴブリンの巣に向かえば、よく分からんモンスターと戦った。不意の一撃を受けたため一時戦闘不能に落ちかけたが、何とか生き残ることが出来た。が、姉との約束を果たすためにも数日休み羽目になってしまった。体が思い通りに動くようになったので幼馴染の牛飼い娘と町に行き、姉への報告をすればいきなり拳骨を落とされ、本気で怒った時の表情のままに何があったのか全て喋れときた。病み上がりで拳骨を落とされ、途切れ途切れに方向をすれば、何故そんな無茶をしたのかと怒られた。切り札は準備していたと告げれば、直ぐに使えと怒られた。最後は抱きしめてきたが、周りは様子を伺っていた姉の同僚が多くいる。そんな中で皮鎧の冒険者に抱き着いたとあればあらぬ誤解を招いてしまうのは至極当然。結局火消に中々の時間を有してしまい、余計疲れることとなった。
ギルドに向かえば、まだ荷卸しが終わっていないとのことで手伝っていると、ゴブリン退治を依頼してきて共に巣に向かった一同が俺に声を掛けてきた。チーズが欲しいとリザードマンが言えば、今度はエルフがまた俺に声を掛けるかもしれないと言ってきた。それに対し、俺は考えておくと返した。失敗もあったが、あの時のゴブリン退治は一人で黙々とやるいつもの依頼よりかはなんというか心持が違ったからだ。
手短に会話を終えれば今度は神官娘が俺に昇給の報告にきた。自分が昇給できたのは俺のおかげだという。仲間を助けられなかったことを謝罪したが、それでも自分は助けられたのだからと逆に感謝された。
外に出てみれば、受付嬢が新人の冒険者に先達が色々と教えていると伝えてきた。
ずっと一人でゴブリン退治をしていた俺の周りが急に賑やかになったことに戸惑いはあるが嫌ではない。前は、いつもゴブリン退治しかやらない俺に向けられるのは嘲笑や侮蔑だったが、何か確実に変化があるということは俺でも分かった。
それから穏やかな日々を送り、幼馴染にゆっくり考えようと提案され、寝ようとした時に声を掛けられた。10年前、俺と姉を助けてくれた生きる伝説に・・・。
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話した事と言えば他愛のないことだ。自分の事を怨んでいないか?と問われれば、仕方のないことだったと今は割り切っていると伝えた。男は安堵したような表情だったが、次にされた質問は俺の精神を揺するものだった。
―あの幼馴染のことをどう思っているんだ?
大切な存在だと即答すれば、微妙そうな顔をされ、異性としてどう思っているのかと再度問われ、他にも俺の周りにいる女性のことをどう思っているのか聞かれた。
大切な存在であることに変わりはない。ただそれだけだったはずだが・・・
―もし今挙げた娘たちがゴブリンに犯されそうになったらどうする?
質問の意味を理解し想像してみる。言いようのない怒りを抱く。その怒りのまま答えをぶつければ、その分だけ俺は彼女たちの事を気にかけていると指摘される。そうなのかと確認を取れば、人生の先輩が言うんだ間違いないと言い切られた。
だが、同時に人は誰か一人しかちゃんと愛せないと言われた。愛・・・。そんなものがゴブリンへの憎悪に染まった俺の中にまだ残っているのか疑問だが、その疑問を晴らす前に会話は終了した。別れ際、言われた一言が頭に残った・・・。
―もし困ったことがあるのなら自分の心境を残さず吐き出して、助けを求めるといい。案外救いの手というのはどこにあるか分からないものだからな。
俺が他人に助けを求めることなどないと思うが、覚えておこうと返答する。満足したかのようにその場を去る生きる伝説だった・・・
以上前編でした。
近況を一つ。この作品を書くにあたり、原作を知らないとだめだと思い原作小説全巻購入しました。それを読んでいたので投稿が遅くなった次第です。
また、私の小説で始めて評価バーに色がつきました。ありがとうございます
ただ、評価を見るに評価0で投票された方がおりまして、何故評価0になったのかを知りたいと思ってしまうのは、欲しがりなんでしょうか?
私の技量不足で評価が下がるのは受け止めるつもりですが、面白くないや気に入らない等の理由で評価0を付けるのであれば、最初から読まなければいいのではないかと思ってしまう初心者作者でした。
愚痴になってしまいましたね。
完結までもう少し。読んで頂ける方が、面白いと思うような作品にしたいと思いますので、見放さずにいて貰えればありがたいです