(禁手化なしで)どうやって戦えばいいんだ!!   作:赤いUFO

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以前活動報告に上げた思い付き、1話だけ書いてみました。



1話:怨恨の始まり

 滅却師(クインシー)、と呼ばれる退魔の集団がかつて存在した。

 彼らがいつの時代から存在したのか。その明確な記述は存在せず、細々と人間ならざる脅威と戦い続けた一団である。

 大気中に存在する気を収束し、自らの武器に変えて戦う彼らを人間版の仙術だと言う者も居た。

 その理念から人間界の最大宗派である教会とも連携を取り、人外の脅威から人々の生活を守護して来た。

 かと言って人外ならば無差別に攻撃することもなく、対話が可能な者には出来る限り譲渡することもある。

 裏の世界での知名度は中の下と言ったところだったがそれでも彼らは人の世を陰ながら守護していることを誇りに存在し続けていた。

 

 だが数年前。突如として彼らは裏の世界から姿を消す。

 

 禍の団(カオス・ブリゲード)

 

 無限の龍神であるオーフィスの下に集った各勢力のはぐれ者たちで構成されたテロリスト集団。

 彼らは舞台に立つと同時に瞬く間にその存在を世に知らしめ、そして消えて行った。

 だが彼らとて一月、二月で集まり、行動をしていたわけではない。

 年単位、もしくはもっと長く活動していた。

 これは、禍の団が舞台に上がった数年前に起きたありふれた悲劇の1つである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こっちは片づけた。そっちはどうだ?」

 

「こちらも終わりだ。しかしなんだこいつらは?いきなり襲撃をかけて来やがって!」

 

 殺した悪魔の死体を無造作に蹴りつけて滅却師の男は悪態吐く。

 

「今回はやけに襲撃者が多い。気を抜くな!」

 

「わぁってるよ!クソッ!今日はもう帰って一杯やるつもりだったのによ!」

 

 その日の襲撃は突然だった。

 今までにも滅却師の隠れ里であるこの地に迷い込む悪魔を含めた人外が居なかった訳ではない。その際に人を喰らう者ならば容赦なく滅却(ころ)し、危害を加えない者ならば外へと帰していた。

 しかし今回は集団。それも明らかにはぐれの類ではない悪魔の軍勢だった。

 

「長いこと悪魔と対立してきた俺たちだ。怨み辛みが爆発してってこともあるかもな。ったく!こっちはとっくの昔にそんな気はねぇってのに!」

 

 彼らの遠いご先祖の代では悪魔を含む人の世に害を与える人外憎しで行動していた時期もあったが今ではそれも廃れ、彼らは人々の営みを守るという矜持と自らの生活のために滅却師として活動している。

 

 そこで声が聞こえた。

 

「成程。やはり末端程度では手も足も出ないか。さすがは三大勢力の戦争時に教会と手を組み、我らを手こずらせただけのことはある」

 

 振り向くとそこには見慣れない悪魔が居た。しかし先程まで相手をしていた悪魔とは別格の力の持ち主だと瞬時に悟り、2人は魔力を収束させて弓を作ると、連続して生み出した神聖滅矢(ハイリッヒ・プファイル)を叩き込んだ。

 

滅却()ったか?」

 

「いや……おそらくは――――」

 

 巻き上げられた粉塵が晴れるとそこには魔力による障壁を張り、無傷で立っている悪魔が居た。

 

「素晴らしい。並の上級悪魔でも殺せそうなほどの攻撃。だからこそこれを使う価値がある」

 

 悪魔は懐から黒い蛇が入っている小瓶を取り出す。

 

「さぁ、見なさい。彼の無限。オーフィスから与えられた力を!!」

 

「!?」

 

 その小瓶を呑み干すと一拍置いて力の増大が確認される。

 

「ハハハハハッ!?素晴らしい!!欠片でこれほどの力を得られるとは!もはや私の力は魔王たちにすら匹敵する!!」

 

 自らの力の増大に酔う悪魔に構わず滅却師2人は矢を放ち続けた。

 しかし――――。

 

「遅いですよ」

 

 背後に現れた悪魔が滅却師の1人から心臓を抉り出す。

 仲間の男が親友の名を呼んで絶叫する。

 それが彼の最後の言葉となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえちゃん……」

 

「大丈夫よ。お父さんたちがすぐに追い払ってくれるから」

 

 聴こえる戦闘音に不安そうにしている幼い弟の手を握りながらマヌエラは避難所で自身の震えを抑え込んでいた。

 突然起こった悪魔の軍勢による襲撃。

 滅却師としての力の弱い者や子供は里の中心にある避難所に集められていた。

 マヌエラが覚えている限り、こうして避難所で過ごすのは珍しくはあるが経験のないことではなく、きっと今回もすぐに父たちは帰って来てあー恐かったなどと言いながらそれぞれ家に帰るのだ。

 

 その時は、父に守ってくれてありがとう、とお礼を言い、好きな物を作ってあげよう。ちょっと奮発してお酒もいつもより飲ませてあげよう。

 そしてまた明日、いつも通りの朝が来るのだ。

 そう信じて父から護身用に渡されているネックレス――――滅却十字(クインシー・クロス)を握り締める。

 

 外の戦闘音が治まり終わったのかと皆が近くにいる人たちを見ていると避難所の扉が開かれた。

 

 そこには戦闘に参加していた滅却師の1人が姿を現す。

 彼は焦った様子を隠しもせずにこう叫んだ。

 

「逃げろっ!!ここはもう――――」

 

 言い終わる前に滅却師の上半身が跡形もなく消え去る。

 悲鳴が起こる。殺された滅却師の家族だった少年が駆け寄ろうとするが近くにいた大人がそれを制すると小さく足音を立ててその悪魔は現れた。

 

「滅却師の皆さん。お初にお目にかかります。我らは禍の団(カオス・ブリケード)。いずれはこの世界に破壊と混沌をもたらす組織です」

 

 悪魔がそう発言すると年老いて子供たちの指導に当たっている老滅却師たちが前に出た。

 

「なぜ、我らの里を襲った?」

 

 弓を構え、問うと、悪魔は肩を竦めて答えた。

 

「そうですね。強いて言うなら都合が良かったのですよ。あらゆる意味で」

 

「なんだと……?」

 

「我らの敵となりえてそれなりの力を持った集団。それらに丁度該当したのがそちらだったのです。まぁ、我らが人間界で使っている拠点に近かったという理由もありますが。あぁそれと応援を期待しているのなら無駄ですよ。ここ以外に居た滅却師たちは既に全員この世を去りましたから」

 

 まるで世間話でもするように言う悪魔に老滅却師たちは神聖滅矢を射る。

 その矢の数は百を超え、一矢一矢が中級悪魔を滅ぼせる力を有していた。

 

 リーダー格である老滅却師が叫ぶ。

 

「奥へ行き、地下通路から里の外へ出なさい!ここは我らが抑える!」

 

「で、でも爺さん!」

 

「大丈夫だ。我らもすぐに追う!しかしもしもの時の為に教会へこのことを報せるのだ!マヌエラ。1番年上のお前が皆を引っ張ってやれ、いいな」

 

 指定されてマヌエラはただこくこくと頷く。

 それに老滅却師が頭を撫でようとすると、その首が落ちた。

 

「やれやれ。野蛮ですね。ですがだからこそここで滅ぼさなければ。さぁ!オーフィスから頂いた蛇の力を、最後に盛大な花火として滅却師の最後を飾ってあげましょう!!」

 

 手を広げて集められた膨大な魔力。

 それは、避難所に集まった20数名を消し去るには充分な魔力が込められていた。

 膨大な力に対して老滅却師たちは後ろに居る子供たちを守るように前に出て術で防壁を張る。

 

「早く逃げろ!!ここは私たちが――――」

 

「消えなさい!!」

 

 向かってくる強大な魔力。それが張った防壁と激突すると爆発を起こし、避難所そのものが消し飛んだ。

 避難所を中心に巨大なクレーターとなり、空へと避難した悪魔は満足そうに哄笑する。

 

「素晴らしい!オーフィスを味方につけた我らに最早敵う者などいない!!」

 

 自身の攻撃が起こした戦果に酔って声を上げて笑い続けた。

 

「この爆発。既に中に居た者たちも全滅しているでしょう。シャルバさまに良い報告が出来そうだ」

 

 蝙蝠に似た翼を翻し、悪魔は深夜の空を駆けて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――おい!おい!しっかりしろ!?」

 

 ペチペチと顔を叩かれてマヌエラは目を覚ました。

 体を起こすと幼馴染であるひとり少年の顔があった。

 

「無事だったか!良かった!!」

 

 ぼんやりとした頭でマヌエラは少年に問う。

 

「みんな、は……?」

 

「……爺さんたちが最後の攻撃から俺たちを庇ってくれたから、俺を含めてガキどもだけは10人だけ、生き残った……でも、他は――――」

 

 悔しそうに身体を震わせる少年にマヌエラは右手に握られた感触を思い出す。

 

「――――、無事?」

 

 弟の名前を呼んでその姿を確認しようとする。しかし握られた右の手首より向こうが存在しなかった。

 

「なんで……?」

 

 ガタガタと体が震え、イヤイヤとゆっくりと首を振りながら目尻に涙が溜まる。

 

「――――――っ!?」

 

 マヌエラの絶叫が大気を震わせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 この日より滅却師は裏の歴史から姿を消した。

 異変を感じた教会の騎士たちが滅却師の隠れ里に訪れるとそこには誰ひとりとして生存は確認できず、魔力の反応から滅却師は悪魔との戦闘で全滅と上層部に報告された。

 

 そして数年後。禍の団が表舞台に姿を見せたと同時期に滅却師の生き残りを名乗る少年少女たち10名が教会の協力者として各地の禍の団と戦闘を繰り広げている姿が確認されることとなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヘラクレスは突然の襲撃に困惑していた。

 魔獣騒動の後に冥界に輸送され、サーゼクスの判断により、首都リリスで問題を起こせばその体を焼くという呪いをかけられて幼稚園の護衛兼用務員をさせられていた。

 

 最初は子供の相手に辟易していたヘラクレスも今では大分心境が変化しており、今の生活や自分自身を受け入れ始めていた。

 そんな中での襲撃。

 相手は14、5歳ほどに見える少年だった。

 その少年は如何にも狂ったような眼光と笑みでヘラクレスと対峙している。

 

「テメェ、いったい何者だ!どういう理由があってここを襲いやがった!」

 

 子供たちを幼稚園の奥に避難させて叫ぶヘラクレス。すると少年は可笑しそうに首を傾げた。

 

「理由ぅ?分からないかなぁ。ボクたちはテロリストである禍の団を滅ぼすためにやって来たんだよぉ。ねぇ?禍の団、英雄派のヘラクレスさん?」

 

 バカにするような口調で話す少年にイラつきながらもヘラクレスは舌打ちする。

 

「復讐って訳か!俺たちはもう禍の団とは無関係だってのに!」

 

「無関係ぇ?そんなわけないじゃん。一度テロをして暴れた奴が罰を受けてるから赦してくださいってぇ?ほんとーにふざけてるなっ!」

 

 言うと、少年は弓を作り、無数の矢を射る。

 ヘラクレスは自身の頑強な身体を盾に矢を全て防ぐ。

 後ろに居る幼稚園の子供たちを守るためだ。

 

「すごいすごーい!?全部受けきっちゃうなんてショックぅ!」

 

「こんな小技、サイラオーグ(アイツ)の拳に比べりゃ蚊に刺されたようなもんなんだよ!!」

 

「へぇ、そうなんだぁ。でもさぁ、後ろの子供たちを守りたかったら、上もみたほうがいいんじゃなーい!」

 

 上空を指さす少年にヘラクレスは顔を青褪める。

 雨のように無数の矢が幼稚園の建物を落ちてきていた。

 落ちた矢が建物の屋根に刺さると敵の少年が指を鳴らすと同時に爆発が起こる。

 

「なっ!?」

 

「アハハッ!?感謝してよ!これで後ろを気にしなくていいでしょぉ!運が良ければひとりくらい生き残ってるかもしれないしさぁ!」

 

「このヤロォオオオオオオオオッ!?」

 

 禁手化(バランス・ブレイク)してこの敵を圧殺しようとするヘラクレス。

 

 その瞬間、この戦いの勝敗は決まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「パウロとドミニクから連絡が来たぞ。英雄派のヘラクレスとジャンヌの処刑に成功したようだ。帰ってきたら褒めてやるといい」

 

「そう。無事で何よりだわ」

 

 椅子に座ったマヌエラは事の成功に安堵の息を吐く。

 そして副官の役目を負ったルートヴィヒの報告が続く。

 

「それと英雄派2人の禁手の星章化(メダライズ)に成功したようだぞ」

 

「……これで神器使いに対するアドバンテージが立証されたわね。英雄派が各地で暴れまわっていた時にこれが使えれば随分と戦闘が楽になったでしょうに」

 

「仕方ないだろ。これが完成したのはつい先日だ。今回はテストも含めての使用だった。ま、俺から言わせれば魔獣騒動を起こしたレオナルドの禁手を奪いたかったところだが神の子を見張る者(グリゴリ)の施設を襲撃するのは時期尚早だしな。曹操やゲオルグの居場所は未だ掴めていない。ついでに白龍皇の居場所もな」

 

「それで、首魁である無限龍の居場所は分かったの?」

 

「ヘラクレスとジャンヌを殺す前に問い質したみたいだが答えなかったらしい。もしくは本当に知らなかったのかもな。それとも本当に――――」

 

 推論を重ねるルートヴィヒにマヌエラは首を振る。

 

「無限の龍神がそう簡単に死ぬとは思えないわ。死体を見つけるまでは、安心できない」

 

 邪龍戦役で無限龍死亡が冥界側から発表されたがそれを鵜呑みにするほど純粋ではなかった。もしくは彼女の執念。無限龍を自らの手で討ちたいという願望が信じさせないだけかもしれないが。

 そこで部屋に来訪してくる。

 

「お姉さま!カミラはただ今戻りました!」

 

 カミラと名乗った少女は部屋に入るなりマヌエラに飛びつく。

 マヌエラとカミラに血縁関係はないが、滅却師の里が滅んで共に行動していく中で本当の姉妹のように思うようになっていた。

 いや、カミラだけでなく残った滅却師全員がマヌエラにとって同士であり、兄弟姉妹だった。

 そして1番歳が下のカミラは特に年長のマヌエラに甘えたがる。

 そんなカミラにルートヴィヒは額を押えて息を吐く。

 

「お前はどうしてこう落ち着きがないのか」

 

「ルー兄文句ばっか~」

 

 頬を膨らませるカミラに苦笑してマヌエラは質問する。

 

「それで、何か報告することはある?」

 

「そうでした!!遂に見つけたんですよお姉さま!?」

 

「なにをだ?」

 

「はい!禍の団の1番偉い(ひと)!無限龍をです!!」

 

 両手に握り拳を作って断言するカミラにマヌエラは息を呑んだ。

 

「それは、本当に?」

 

「はいです!!場所は日本という国の――――」

 

 

 

 

 悲劇が、始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それは本当なの!?」

 

『はい、お嬢さま。リリスに居たヘラクレスが襲われ、死亡しました。彼が勤めていた幼稚園の園児たちも諸共。それで調べたところ、各地に存在する元、禍の団の構成員だった者たちは次々と襲われていることが判明しました。教会にいたジャンヌも、です。現在襲われた者たちの名はリストアップして送っておきました』

 

 グレイフィアからの報告にリアスは驚きを隠せずにいる。

 

『お嬢さま。そちらには禍の団の首魁だったオーフィスさまが居ります。万が一居場所を知られないようにこれまで以上に警戒を。それと既に知られている時は――――』

 

「分かったわ。報告ありがとう」

 

 幾つかの言葉を交わして通信を切り、リアスは深刻な表情で誰もいない部屋で問う。

 

「いったい……なにが起きているの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 集められた部屋で皆が真剣な様子でリアスの言葉に耳を傾ける。

 

「実は、数日前から元禍の団の構成員だった者たちが次々と襲撃されていることが分かったわ」

 

 リアスの発した言葉に集められた全員が驚きの表情をする。

 

「それってどういうことだよ!?」

 

「言葉通りよ。首都リリスに居たヘラクレスも襲撃されて殺されたそうよ。勤めていた幼稚園ごと吹き飛ばされてね。生存者は確認できなかったそうよ」

 

「そんな……!?」

 

 リアスの言葉に一誠は虚脱して尻もちをついた。

 

「相手の目的は、その手段からおそらくは禍の団への復讐というのが冥界側の見解よ。グレイフィアもこちらには特に警戒するように言われたわ」

 

 リアスはそこでアーシアの使い魔であるラッセーと遊ぶオーフィスとリリスに目を向けた。

 それに一誠がさらに声を張り上げる。

 

「まさか、オーフィスたちが狙われる可能性が有るってことか!?」

 

「無い、とは言い切れないわね。2人の情報は出来る限り隠しているけど、万が一も有り得るわ。そして向こうのやり口からこの駒王町自体が戦場に変わる可能性もある」

 

 リアスの話を聞いて一誠は顔を憤怒に歪めて握り拳で反対の手の平を打った。

 

「そんな勝手なことはさせねぇ!オーフィスはずっと独りぼっちで、禍の団に利用されてただけなんだ!リリスだってリゼヴィムの奴と一緒に行動してただけで何も悪いことなんてしてねぇんだ!2人を襲うってんなら、俺がぶん殴ってやる!!」

 

「イッセーさん……」

 

 一誠の決意に皆が同意の意を示す。

 それにリアスが頷いた。

 

「そうね。目的が何であれ、向こうのやってることは常軌を逸している。魔王さま方やアザゼルたちがトライヘキサを引き付けて繋がった平和を理不尽に潰えるなんて許されないわ!みんな!もし何かあった際は全力で叩き潰してあげましょう!!」

 

「はい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 円を囲うようにして9人の少年少女、或いはようやく成人を迎えたばかりの者たちが座っていた。

 最後にやって来たマヌエラがゆっくりと椅子を引いて座る。

 

「カミラが集めてくれた情報通り、無限龍は日本の駒王町という地に居ることが判明したわ」

 

 それを聞いた金髪の少女であるターニャは忌々し気にテーブルを叩く。

 

「禍の団との戦いに各勢力の協力を求めておいて首魁を手元に置いていた。つまり、これまでの戦いは冥界側とのマッチポンプだったってことだなっ!!」

 

「それは分からないけど、私たちに理由は関係ない。私たちの目的は禍の団の完全に滅ぼすこと。そして首魁だった無限龍は必ず滅ぼす。その為なら手段は問わない。奴らに滅ぼされた皆の仇を討つ。そうでしょう?」

 

 ターニャに横に座っていた彼女の実姉であるシャルロッテが宥めた。

 マヌエラもそれに頷く。

 

「そう。その為だけに私たちはこの数年間、奴らを駆逐することだけを夢見て、力を磨いてきた。だからこそ、もう退くことは出来ない」

 

 マヌエラの宣言に家族とも言うべき皆は頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ、ゼノヴィア会長、例の噂聞いたか?」

 

「ん?禍の団の元構成員が襲撃を受けている話か?」

 

「あ、いや、そっちもだけど、ここ最近、駒王町で行方不明者が続出してるんだよ」

 

 匙の言葉にゼノヴィアは書いていた書類の手を止めた。

 

「もう既に50人近い人が行方不明になってるんだ。その件で捜索していた警察官も含めて。関係あるかは不明だけど、野良の動物の死体とかも結構出てるらしい。なんか、嫌な予感がするぜ」

 

「……そうだな。悪いが、生徒会からも町の警邏に回ろう。これが、こちら側の案件だったとしたら敵は無差別殺人をしていることになるからな」

 

「だな。じゃちょっと俺、みんなに伝えてくるわ」

 

「あぁ、頼む」

 

 生徒会室を出て行く匙を見送ってゼノヴィアは息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オカルト研究部と生徒会の面々で町を見回っていると一誠とアーシアは奇妙な音、いや声を聞いた。

 

「イッセーさん!今の!?」

 

「あぁ、確かに聞こえた!こっちだ!?」

 

 最近ここいらが物騒なこともあり、はぐれ悪魔か、もしくは例の一団かと警戒して足を進める。

 すると路地裏の向こうでOLの女性が一誠たちと同じ年くらいの少年に押し倒されていた。

 

「な、なにやってんだお前!!」

 

 慌てて一誠が少年を押し退けようと動く、しかしその前に少年は只人とは思えない動きで後ろに下がる。

 

「なっ!?」

 

「いきなりなにすんだよ。せっかくその人で百人目だったのに」

 

 首を撫でながら面倒そうに一誠たちを見ていたがすぐに表情を変化させた。

 

「ヘェ……もしかしてアンタ、噂の赤龍帝だったりすんの?」

 

「だったら何だってんだよ!?」

 

「あー今日は運がいいな。なんせ、無限龍を誘き出す餌が手に入るんだから」

 

 無限龍という単語に一誠とアーシアは表情を変える。

 

「お前もしかして!?」

 

「あ?情報くらい来てんだろ?そうだよ俺たちが禍の団を粛正してるんだよ。さぁ、無限龍を出すかここで私刑にされて人質にされるか選べよ」

 

「誰が!!」

 

 一誠が赤龍帝の籠手を出現させると同時に少年が躍り出る。

 人間とは思えない加速をつけた拳は籠手越しでガードした一誠の体を易々と吹き飛ばした。

 

「イッセーさん!?」

 

「大丈夫だ、アーシア!?それにしても、すげぇパワーだぜ!?そこらの戦車よりずっと強い!?」

 

 これは通常の状態だと敗けると判断した一誠は禁手を使うことを決めた。

 

「一気に決着(ケリ)を着けてやるぜ!!」

 

 一誠が禁手の鎧を纏うと同時に少年は懐からある物を取り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 木場祐斗と搭城小猫、そして紫藤イリナは突然の襲撃に対応していた。

 上空から襲って来た無数の矢。

 それをやり過ごして現れたのは祐斗たちと同じくらいの年頃の男だった。

 曰く、無限龍を出せの一点張りでこちらの話を聞こうともせず、関係のない言葉を言えば即座に弓を射ってくる。

 

「まったく。少しは話を聞いてほしいね!」

 

 禁手である聖魔剣を創造する。

 しかしその瞬間に不可思議なことが起こった。

 木場の聖魔剣が掻き消えたのだ。

 

「え?」

 

 見ると敵の男が持つ円盤状の物体に黒い紋様が刻まれている。

 再び、聖魔剣を創ろうとしたが出来ない。通常の魔剣、聖剣の創造はこれまで通り可能なのに、だ。

 

「まさか――――!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんなことが……!?」

 

 違う場所で襲撃を受けたソーナ・シトリーと真羅椿姫。

 そこで禁手を発動させた椿姫の禁手が突如消えたことに驚愕している。

 戦闘を見ていたソーナは動揺を隠せずに今起きたことを口に出した。

 

 

禁手化(バランス・ブレイク)を、奪われた!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 兵藤一誠・木場祐斗・真羅椿姫の禁手がほぼ同時に奪われた瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 現場に急行していたゼノヴィアと匙、そして他のグレモリー眷属とシトリー眷属へと伝えられた。

 その情報に1番動揺したのが同じく禁手を会得している匙だった。

 

「禁手が奪われるって、そんなのアリかよ!?」

 

「理由は分からないが、匙!!お前は現場に着いても禁手を使うな!!奪われたら厄介になる!!」

 

「で、でもよ!!そいつらが本当に禍の団を襲ってた連中なら、最低でも英雄派の奴ら並の力が有るってことだろ!?そんな奴ら相手に禁手化もなしで―――――」

 

 匙は自分の神器を見ながらゼノヴィアに叫んだ。

 

「どうやって戦えばいいんだ!!」

 

 

 

 

 

 ――――――駒王町に、絶望の数日間が始まる。

 

 

 

 

 

 

 




題名はアレですが本気の復讐モノです。

しかし、最後の台詞を言うためだけに八千文字以上使うってどういうことだろう……。
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