(禁手化なしで)どうやって戦えばいいんだ!!   作:赤いUFO

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11話:復讐には復讐を

「どこに行きましたの?小猫さんは!」

 

 滅却師側の駒王町に変化した町でレイヴェルは友人である塔城小猫を探していた。

 小猫は一誠の両親たちと一緒に冥界に避難させる手筈だったが直前に行方を眩ませてしまった。

 何処へ行ったのか。決まっている。姉を殺した滅却師の捜索を行っているのだろうことは想像に難くない。

 

 レイヴェルは親友として滅却師のフィールドとなった駒王町を警戒しながら移動していた。

 ギャスパーも殺されてしまった。もう同い年の友人が死ぬのは嫌だった。

 その想いで近くの戦闘音が響く方へとレイヴェルは足を運んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 兵藤一誠と匙元士郎。

 主は違えど共にドラゴンの神器を宿す2人の兵士は滅却師の少女2人と戦闘になっていた。

 

「ドラゴン・ショットッ!!」

 

 放たれた魔力の砲撃。

 牽制の意味合いで放たれた一撃だがあっさりと避けられた。

 お返しとばかりに矢を射られる。

 光の矢を壁などの障害物で防ぎながらなんとか倍加の時間を稼ぐ。

 禁手かそれ以上の状態に慣れてしまった今では通常の神器での倍加が苛立ちを隠せない程に遅く感じる。

 ドライグの支援もないために余計に焦ってしまう。

 匙も邪龍の黒炎(ブレイズ・ブラック・フレア)などの神器を使って応戦している。

 黒い炎を大きく回避する滅却師。

 そこで匙は違和感を覚えた。

 

「なんか、あいつら俺の黒炎を異様に警戒してないか?」

 

 最初は相手の武器が弓矢なのだから距離を取っているのだと思っていたが、それにしても過剰に反応しているように見える。

 近くの壁に隠れながら議論は続く。

 

「わからねぇ。でも俺もそろそろ倍加が良い感じに溜まってきたぜ!」

 

「ということは、今度はこっちが攻勢に出る番だな!」

 

「あぁ!女の子が俺の前に立ったことを後悔させてやるぜ!」

 

 一誠は隠れていた壁から勢いよく躍り出た。

 

「お前たちの優勢もここまでだぜ!!高まれ煩悩!行くぞ、乳翻訳(パイリンガル)!さぁ、おっぱいよ!その子たちの能力の秘密や胸の内を俺に教えてくれぇ!!」

 

 耳を澄ませるようなポーズで敵の能力を乳翻訳で探ろうとする一誠。

 しかし――――。

 

「あれ?」

 

 何も聞こえないのだ。

 一誠と匙の作戦ではここで敵の能力をおっぱいに明かしてもらい、隙を突いて洋服破壊(ドレス・ブレイク)で相手を行動不能にする作戦だった。

 しかし何も聞こえない。

 おっぱいが何も教えてくれないのだ。

 なにをやってるんだアイツは?という表情で一誠を見ている滅却師の少女2人。

 どうしてと疑問に思っているとある可能性が頭に過る。

 

「お前ら、実は男だったな!!」

 

 ビシッと指をさすと先程より3倍の数の矢が射られた。

 それを何とか避けながら先程のように壁を盾にする。

 

「クソッ!?どうなってんだ!なんでおっぱいが何も答えてくれないんだよっ!?」

 

 真面目な顔で冗談のようなことを言う一誠。

 しかし彼からしたら事態は深刻だった。

 これだけがこの場を切り抜ける策だったのだから。

 

 相手が本当に男なのか。それとも乳翻訳を防ぐ何かを持っているのか。判断できないが使える手が減ったのは事実だ。

 次はどうするかと考えていると矢が命中した匙が倒れ崩れるのが見えた。

 

「匙ぃ!?」

 

「なんだ、身体が……!」

 

 動かない、と言おうとすると髪の長い滅却師の少女。シャルロッテが近づいて来た。

 

「良かった。邪龍の力は私たちとは相性が悪いので。ここでようやく始末できます」

 

 匙の頭部に狙いを定めてシャルロッテが大きな矢を用意した。

 

「させるかよ!」

 

 一誠が駆けつけようとするが、匙との間に雨のように矢が降り注いだ。

 

「ちょっとまってろよ。ヴリドラを始末したら、今度はアンタを殺してやるから」

 

「ど、けェエエエええっ!!」

 

 なりふり構わずに一誠は匙の下へと急ぐ。しかしそんな無防備な特攻が通用するほど甘くない。

 一誠の足に滅却師の矢が刺さる。

 

「つっ!?」

 

「馬鹿か。死期を早めたな。まぁいいけど。これから、アンタを人型だったか判らないくらいグチャグチャの死体に変えてやるよ」

 

 そう言って膝を折った一誠にターニャの手がゆっくりと近づいて来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 塔城小猫と滅却師ハイニとの戦闘はまさに狩人と獲物だった。

 遠距離から一方的に狙撃され続け、体を小さくしながらなんとか障害物を利用して躱し続ける小猫。

 着ていた服はところどころ矢でズタズタに破かれ何とか反撃を繰り出した火車も然したる意味もなく無力化される。

 相手は飛簾脚という高速移動術もあるため、小猫との相性は悪かった。

 受けた傷は仙術を駆使して何とか治癒しているが、それも時間の問題だろう。

 機関銃のように連射してくる矢に闘気で強化した戦車の防御力でも長くは持たない。

 

「……それでも、やらないと」

 

 危機的状況にあるにも拘らず小猫の表情は消えていた。いつもの無表情に似ているが、その瞳には暗い炎が宿っている。

 胸ポケット越しに姉の駒に触れる。

 駒に触れる度に、自身の中にある怒りの炎に薪をくべているような気がした。

 そんな僅かな休息の隙に、自分を影が覆っていることに気付く。

 気が付くとハイニが自分の上空を陣取っていた。

 

光の雨(リヒト・レーゲン)!」

 

「くっ!?」

 

 降り注ぐ数えきれない光。

 その攻撃を何発も受けながらどうにか転がるようにして射線から外れる。

 体をじわじわとボロボロにされながら心は折れない。

 

「……討つんだ。私が姉さまの仇を――――!」

 

 巻き上がった土煙に落ちた敵を見据える

 ここから一気に攻めようと拳を握り込む。

 土煙がある程度晴れたのを見て、中にある気を探り、全力で突進する。

 相手に殴りかかろうと跳躍した。

 その先にいたのは――――。

 

「にゃん」

 

 黒い髪に自分とは色違いの猫の耳と尻尾。

 金の瞳に羨ましい女性として豊満な肢体を着崩した黒い着物で際どく重要な部分を隠している。

 それは、小猫の姉である黒歌の姿だった。

 偽者だと分かっている。

 しかし咄嗟のことで思わず体に力が抜けてしまった。

 その隙を突いて小猫の胸に光の刀身が突き刺さった。

 

「あ――――」

 

「こんな重要なところでヘタレるなんて、ほんっとダメな妹にゃん」

 

 自分を嘲笑する姉の声が鼓膜を震わせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 リアスと朱乃は一緒に行動をしながら敵の根城と思しき城を目指していた。

 きっと他の皆も目立って見えるアレを目指す筈だと考えて。

 しかしその進路は無数の石で出来たゴーレムによって阻まれている。

 形や大きさは様々で。10mを越える物もあれば、人型、獣型など様々な姿のゴーレムが襲いかかってきた。

 

「ハァ!!」

 

 滅びの魔力や雷光で破壊したゴーレムは既に20を越える。しかし、その数は一向に減るようには感じられない。

 もしかしたらどこかからか作られて送り込まれているのではと思うほどゴーレムの猛攻は止まらない。

 

「う、とうしいですわねっ!?」

 

 龍の形をした雷光がゴーレムをまた1体破壊するが焼け石に水だった。

 

「成程。自分たちの領域に引きずり込んだ以上、準備万端という訳ね!」

 

 飛んでその場を離れるという選択もゴーレム自身が自分の体を砕いて投げ飛ばすなどの攻撃を行い、不用意に後ろを見せられない。

 現に今も10mを越えるゴーレムが自分の左腕を引きちぎってそれを振り回している。

 捌けない敵ではないし、時間をかければ全滅させる事も出来るだろう。

 しかし、その時自分たちは戦えるだけの余力を残しているかは―――――。

 

 そこまで考えると突如ゴーレムたちにリアスと朱乃を避けて雷が落ちる。

 

「ゴメン、大丈夫かい?」

 

「デュリオ!?」

 

 現れたデュリオはホッと息を吐いた。

 ゴーレムたちも大半は排除されている。

 

「間に合って良かった。他の皆は?」

 

「いえ。まだ合流できてないわ。そっちは?」

 

「ゴメン、ここに来る途中で木場きゅんに滅却師のひとりを任せてきた」

 

「祐斗に?」

 

「うん。早く頭を叩けってね」

 

 不安からリアスの顔が曇る。

 頭の中にはギャスパーが殺された時の記憶が甦ったのだ。

 

 祐斗のところに行くべきか迷った末に前に進むことを選択する。

 この騒乱を一刻も早く収めるために。

 その決断を感じ取ってデュリオも城を見上げる。

 

「あそこまでエスコートするよ。木場きゅんの代わりに君たちを守らないとさ」

 

「ありがとう。でも大丈夫よ。自分の身くらい。自分で守るわ」

 

「私たちは貴方に守られるためにここに居る訳ではありませんわ」

 

「そう?じゃあ男の子の面子ってことで。とにかく急ごう。きっとこの騒動の中心はあの城に居るはずだよ」

 

「えぇ!」

 

 そう言って3人は聳え立つ城へと急いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゼノヴィアとイリナは対峙するアーシアとカミラに少しずつ優勢へと徹していた。

 滅却師のカミラは戦闘能力自体は高くなく、アーシアに至っては慣れない弓矢を扱うだけで精一杯。

 アーシアをゼノヴィアの攻撃の盾にされることこそあったがパターンさえ分かればそう恐い相手ではない。

 少なくとも今まで相手にしてきた滅却師たちに比べれば格下と言わざるを得ない。

 故にイリナは距離を詰めてオートクレールのオーラでアーシアを斬った。

 

「やった!」

 

 これでアーシアが元に戻ると思っていたイリナだったが、アーシアは変わらずに矢を向けてきた。

 

「わっ!?」

 

 矢が脇腹を掠めた後にアーシアはイリナから距離を取る。

 オートクレールが効果のないことに疑問に思っているとカミラがクスクスと笑った。

 

「オートクレール。確かにそれなら普通に操られた人の正気なら戻せたかもしれないけど。わたしのアーシアには効かないわ。だって私がアーシアに与えているのは”愛”だもの。憎悪や怨念のような負の感情じゃないなら、その剣も意味ないんじゃないかなぁ。だってわたしたちはこんなにも愛し合ってるんですもの」

 

 後ろからアーシアに抱きついてディープキスを始める。

 それに2人が驚いている間に唇を離した。

 

「ね?もっと自分の武器の性能を把握してないとダメよ、天使のお姐さん」

 

 嘲るカミラにイリナが堪らずアーシアに向かって叫ぶ。

 

「アーシアさん!そんな偽者の愛になんか負けちゃダメよ!」

 

「偽物なんてひどいわ。いま感じていることが大事な真実じゃないかなぁ」

 

「黙って!」

 

 アーシアに訴えかけるイリナ。しかし彼女から発せられた言葉は全くの予想外のモノだった。

 

「イリナさん。ゼノヴィアさん。私には、もう分からないんです。どちらが正しいのか」

 

「アーシア?」

 

「カミラちゃんたちにはカミラちゃんたちの理由がありました。それを知って、自分たちが絶対に正しいなんて私には……」

 

 揺れていた。迷っていた。

 確かに滅却師側に就いたのはカミラの”The Love”によるものだがその迷いだけは彼女自身のモノだった。

 カミラから聞かされた真実。それを知ってなおオーフィスを守る自分たちの行為が正しいのかアーシアには判断できない。

 揺れている彼女に話しかけたのはゼノヴィアだった。

 

「確かに、滅却師たちには彼らなりの理由があったのだろう。もしかしたら私たちのほうが大きな目で見れば間違っているのかもしれない」

 

「ゼノヴィア!?」

 

「でもね、アーシア。この町で、力で自分の言い分を通そうとしたのは彼らなんだよ。そしてギャスパーと黒歌も殺したのも」

 

 ギャスパーと黒歌を殺した。その言葉にアーシアの肩が僅かに跳ねた。

 

「私はどちらが誰かが正しいのかなんて、そんなことはこの戦いが終わってから考えることにした。今も仲間とこの町の脅威になっている滅却師たちを止めてな!そしてアーシア。君をこれ以上その子の好きにもさせない。必ず取り戻す!」

 

 シャルバ・ベルゼブブによって一度死んだと思っていたアーシア。結局は無事だったがあの時の絶望と悔しさは今も忘れていない。

 この町の脅威を排除する。仲間を守る。友達を助ける。ゼノヴィアが剣を握る理由はそれだけで良かった。

 先ずは友を取り戻すべく、ゼノヴィアは地面を蹴った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……捕まえ、ました――――!」

 

 自分の貫いている剣の柄のような物を握っている左手を掴んで小猫は笑みを浮かべた。

 口からは血が流れているが気にならない。

 そのまま手を離さずに全力で殴りつけて壁に叩きつける。

 

 静血装への切り替えが遅れたハイニは肋骨が折れた。

 

「がっ!?」

 

「……逃がしません!」

 

 腕を掴んだまま何度も殴りつける。しかし静血装に切り替えて防御力を上げたハイニには大きなダメージは与えられない。

 

「いい加減にっ!?」

 

 普通の弓矢ではなく、ボーガンの形をした武器から矢が放たれて、小猫の拳から肘までを貫通した。

 しかし捉えている右手は離さない。

 

「……逃がさない、絶対に!!」

 

「しつこいんだよっ!?」

 

 ボーガンが今度は腹を貫通する。

 

「つ、あっ!?」

 

 体がくの字に折れた。

 鼻血が垂れ、視界が霞み、意識も朦朧としてくる。

 

「悪いが、こっちもいつまでもお前に付き合ってられないんだ」

 

 ボーガンの矢を頭に向けるハイニ。

 しかしそこで小猫が吠えた。

 

「あ、アァアアアアアアアアアアッ!?」

 

 白音モード。

 姉である黒歌との仙術の修業で編み出した一時的に肉体を成長させる術。

 そのまま小猫はハイニに体当たりをして地面へと押し倒す。

 そして大きく開いた口で敵の喉笛に噛みついた。

 

「っの!?」

 

 もう一度腹に矢を受けるが、構わずに小猫は顎に力を込める。

 歯が通ったその喉を小猫は噛み千切った。

 

 千切った喉から大量の血が噴き出し、小猫の口を中心に顔を鮮血で染める。同時に、死亡したからか、黒歌の姿から元に戻った。

 

「ヒ、ヒヒ……あはは……!」

 

 小猫は歪に笑ったまま涙を流していた。

 もしかしたら本人は自分がどんな顔をしているのか分かっていないのかもしれない。

 感じたのは達成感と虚脱感。

 力が抜けて倒れると同時に白音モードも解ける。

 

「……やった、よ……ね、えさま……かたき、討ったよ……」

 

 姉は褒めてくれるだろうか?でも何となく呆れて怒られるような気がした。

 でも、それでもいいから――――。

 

「あい、たいなぁ……」

 

 もう瞼を開けているのが億劫で。ゆっくりと落ちていく。

 

 ――――馬鹿ね、白音は。私なんかのために。本当に仕方のない妹にゃん。

 

 怒るように。呆れるように。そんな言葉を口にして。愛おしい誰かが自分の頭を優しく撫でてくれたような気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「小猫、さん……?」

 

 レイヴェルがその場に辿り着いた時。既に戦闘は終わっていた。

 首から血を吹き出し倒れている滅却師(てき)。それと全身ズタズタで倒れている小猫(ともだち)

 

「小猫さん!?」

 

 レイヴェルは急いで駆け寄り、持っていたフェニックスの涙を小猫にかけた。

 

「なんで!なんでぇ!?」

 

 流れている血は止まらず。フェニックスの涙は何の効果も発揮しない。

 あらゆる傷を癒すフェニックスの涙も、すでにこと切れている者の傷を癒し、蘇生する力はなかった。

 それを理性で理解してしまったレイヴェルは悔しさから空になった涙の小瓶を地面に叩きつけ、小猫の体に縋りつく。

 

「どう、して……どうして、こんなことにぃ……!?」

 

 友達だった。

 憎まれ口を叩き合い。どうすれば好きな人の気を引けるのか一緒に考え。上も下もない、本当に大切な親友だった。

 ギャスパーも殺されてしまった。

 同い年の友達が次々と居なくなる現実に耐え切れず、レイヴェルは泣き続ける。

 そこで、滅却師の死体の変化に気付いて驚きから体を起こす。

 

「これは――――っ!?」

 

 その変化を見て、レイヴェルは愕然とした表情で体を震わせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 小猫が死亡する少し前。

 

「では、お嬢さまたちをお願いします。ロスヴァイセさま」

 

「はい。必ず、この薬をイッセーくんたちに届けます!」

 

 グレイフィアに言われて瓶に入った錠剤のような薬を握り、ロスヴァイセは影に消えた駒王町を見つめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ハイニ 17歳
”The Yourself”
能力は触れた相手の記憶と姿を写し取る能力。
本来の姿は中性的な少年。
必要だから黒歌の姿を取って兵藤邸に近づいたが内心ではあの口調と格好はないな、と思っていた。


好きなキャラでも死なせるとは言いましたが優遇しないとは言っていない。死んだけど好きだから猫姉妹は優遇したつもりです。



次回から原作陣営の反撃開始回、になるかなぁ?




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