(禁手化なしで)どうやって戦えばいいんだ!!   作:赤いUFO

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多分、1番の山場がようやく形になりました。

ただでさえ戦闘シーン苦手なのに曹操とデュリオの神器能力がヤバい。それで手こずってました。


14話:doll

「パウロ、ハイニ、エトウィン、ドミニク、ターニャ。それにアドルフも……」

 

 今まで感じていた繋がりが消えて、マヌエラは悔しそうに唇を噛んだ。

 それとは正反対にこの町に訪れた頃に比べて体の負担が段違いに軽くなったことで椅子から立ち、軽く腕を動かし自分の体調を確認する。

 今ならば、戦闘を行うことも可能だろう。

 

「大丈夫よ。貴方たちは、私さえいれば、何度でも甦るわ。私たちは、ずっと一緒よ……」

 

 腕からは火傷の痕が見えたがマヌエラ本人は気にしない。

 何故なら腕だけではなく、彼女の身体はここ数年でどこもかしくも傷だらけだからだ。

 火傷や切り傷。凍傷裂傷、打撲痕。一部には杭でも打ち込まれたかのような痕もある。

 それは、故郷を失ってから復讐のために自身で課した訓練で付いたものもあれば、敵と戦って付けられた傷もある。

 前髪で隠しているが、右の額から頬まで一直線に傷が出来ていた。

 マヌエラはそれらを自分で消すことも出来たが敢えて残している。

 残しながらここまで来た。

 

「今戻った」

 

「ルートヴィヒ……」

 

 戻って来た家族にマヌエラは体を寄せる。

 この影の世界では城に戻るために幾つかの転移装置が設置されている。それを使ってルートヴィヒはロスヴァイセ殺害後にここへと戻って来た。

 

「残っているのは、私と貴方。シャルロッテとカミラだけよ。D×Dの面々もここに向かってきているわ。シャルロッテにも一度撤退させたから、すぐにここに戻って来る筈よ」

 

「そうか」

 

 この世界は彼女が作った世界だ。特にこの城の内部なら手に取るように誰が何処にいるのか把握することが出来る。

 

「ここからは私も戦うわ。今なら、戦線に出られる」

 

「……」

 

 ルートヴィヒは何も言わずにマヌエラの頭を撫でた。

 

「無限の龍神。あのバケモノに何1つ大切な物なんて残さない。全てここで始末する。私たちが」

 

 そう言って嗤った彼女の眼光には隠そうともしない狂気が宿っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうして、君が……」

 

「一応とはいえ、命の恩人にいきなり質問か。まぁ、いい。俺は、君たちのところの戦乙女と一緒に駒王町に入った。理由としてはそうだな。仲間の仇討ち、とでもしておこうか」

 

 煙に巻くような話し方をする曹操。

 本当にジャンヌとヘラクレス。2人の仇討ちにここへ来たというなら、この場で祐斗を助ける意味はないだろう。

 

「それなら、ジークフリードを倒した僕も君の敵討ちの範囲に入るんじゃないかい?」

 

 膝を突いて疑問を投げかける祐斗に曹操はそうだったな、と笑みを浮かべた。

 

「そうしてもいいが、なにぶん悪魔陣営から今回の戦闘に加わる際に制約を受けていてね、君たちに危害を加えられないんだ」

 

 槍の柄で肩をポンポンと叩きながら言う。

 

「木場祐斗。君はここからどうする?」

 

「決まってるよ。僕はあの城に行く。きっと皆も向かって――――」

 

 立ち上がろうとするが祐斗は足に力が入らず、そのまま地面に両手を突いた。

 

「やめておけ。どうやらさっきの戦いで君は大分消耗したようだ。そんな様でここから先の戦闘に参加するのは自殺するようなものだよ」

 

「っ……」

 

 曹操の言葉に祐斗は悔し気に唇を噛む。

 もう用は無いとばかりに曹操は背を向けて遠くに見える城に向かって歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ匙、ヴァレリーさんを安全なところまで頼むな」

 

「悪いな。結局最後まで付き合えなくて……」

 

「気にすんなって残りの滅却師は俺がぶっ飛ばしてやるからな!」

 

 先程の戦闘での傷は粗方癒えたが、受けたダメージから来る負担はそう簡単には抜けない。

 匙とヴァレリーは奥へと進むことを諦めて仲間を探し、戦っている仲間の加勢や治療に回ってもらうことにした。

 一誠はここから単身で敵の本拠地まで移動することになる。

 

「リアスの性格なら真っ直ぐに敵の頭を討ちに行ってる筈だ。俺も、急がねぇと」

 

 そう言って一誠は真・女王形態の翼を広げて一直線に敵の拠点へと急いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺は、敵の根城へ攻め込む。君たちはどうする?」

 

「私たちはゾンビ化した2人を見ています。それと、戦闘継続が難しい人たちとも合流しようと思います。亡くなった者の遺体も」

 

「それがいいだろうな」

 

 自分の手に戻った騎士の駒を握り締めて戦線離脱を宣言した。

 正直に言えばここから先へ行っても足を引っ張る結果になりかねないと判断した結果でもある。

 故にソーナは自分たちがここから裏方に回ることにした。

 一誠から禁手を奪っていたアドルフはそれを失くしたことでヴァーリと正面から戦う力を失い、死亡した。

 最終的にはソーナたちに攻撃を仕掛けようとしたが、それすらも許さなかった。

 

「……アーサーの遺体を頼む。この戦いが終わったら、故郷に戻してやりたい」

 

「はい。任せてください」

 

「ありがとう」

 

 礼を述べてヴァーリは白龍皇の鎧の翼を広げ、飛び立って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「影の中にこれだけの城を創るなんてね。敵の力は一体どれほどのモノなんだか」

 

 目標の城まで着いたデュリオは呆れたように呟く。

 しかし、いつ奇襲が来ても良い様に警戒は怠っていない。

 後ろからついて来ているリアスと朱乃は話に乗らずに前へと進んでいた。

 中へと進入すると大きな通路に左右に騎士を思わせる石像が柱の合間合間に設置されている。

 眷属を失ったことで2人は無表情を貫いているように見えるが肩に力が入り過ぎている。

 そのことに内心不安に思ったデュリオは立ち止まった。

 

「2人とも、そんな調子じゃあ、君たちも危ないよ。もうちょっと肩の力を抜こうか」

 

 ここに来るまでに数名の仲間を失ったのだ。

 もしかしたら知らないだけで他にも死者が出ているかもしれない。

 これまで良くも悪くも犠牲を出さずに戦い抜いて来た彼女たちにとって今回の事件は相当精神的に負担をかけているだろう。だが、このまま戦わせて本来のポテンシャルを出せないならここから先へは行かせるべきではない。

 言われてリアスと朱乃は一度深呼吸した。

 

「そうね。貴方の言うとおりだわ……」

 

 自分たちが気を張っていることを認める。

 ある程度元の調子を取り戻したことに安堵して先へと急ごうとする。

 そこで、左右にあった石像が動き出した。

 石の体が動く音に3人は即座に反応する。

 

「外で暴れてたのと同じ物だね。最短で片付けようか!」

 

 デュリオが氷の矢をいくつも生み出し、石像の関節部を破壊する。

 リアスや朱乃も続くが、狭い通路で密集して襲ってくる石像たちに足留めを喰らってしまう。

 それを見て朱乃が提案する。

 

「リアスとデュリオさんは先に行ってください」

 

「朱乃!?」

 

「ここで時間と体力を浪費するのは愚策です! ここは私が抑えますわ!」

 

 そう言って雷光の龍を放ち、石像を一直線に破壊させて細い路を作った。

 

「さ、早くっ!」

 

「…………」

 

 朱乃が促すが、リアスは躊躇した。

 もしここで朱乃まで失ってしまったらとこの場に残して行くことに恐怖したのだ。

 それを感じ取ってか朱乃が笑みを浮かべた。

 

「安心してリアス。私、こんなところで死ぬ気はないの。だってイッセーくんに初めてをあげてませんもの」

 

「朱乃……」

 

「リアス。自分のやるべきことを間違わないで」

 

「……すぐに追って来なさい」

 

「えぇ、もちろん」

 

 リアスは悪魔の翼を広げて朱乃に背を向けて飛翔した。

 2人が見えなくなったのを確認して朱乃は手の平からバチバチと雷光が鳴り、背中には堕天使の翼を背負っている。

 

「さぁ。邪魔なお人形にはすぐに退いてもらうとしますわ……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか、ここに1番最初に辿り着いたのが貴様とはな……」

 

「あぁ。俺も、自分が1番乗りとは思わなかったよ」

 

 ルートヴィヒの問いに曹操は肩を竦めて答える。

 

「D×Dの面々が外の敵を粗方片付けてくれたおかげで俺は苦労せずにここまで来ることが出来た。まぁ、この城には複数のルートがあって、俺が通ったルートに偶々敵がいなかったこともあるがな」

 

 音もなく槍を構える。それにルートヴィヒをマヌエラを守るように間に立った。

 

「それで? 何故このタイミングにここへと現れた? まさか君も龍神(オーフィス)を守ろうなどという訳でもないだろう?」

 

「当たり前だ。今更あのドラゴンのことはどうでもいい。1つは滅却師(おまえたち)が殺したヘラクレスとジャンヌの仇討ち。もう1つは、俺なりのケジメだよ」

 

「ケジメ?」

 

「そうだ。今回の戦いが禍の団を殲滅することが目的なら、おそらく君たちの暴走は俺たちにも原因がある、と俺は思っている。訊くが、この町で暴れた滅却師たち。何人が()()だ?」

 

 その質問に返されたのは滅却師の一矢だった。

 それを聖槍で受け止める曹操。見るとルートヴィヒの後ろに居るマヌエラの表情が険しいモノになる。

 

「口を閉じなさい。私の家族を侮辱するなら、その体を肉片も残らない程に消されたくないのなら」

 

 その脅しと取れる言葉に曹操は口元を吊り上げた。

 

「こわいこわい。その様子から、どうやら報告ミスではなかったらしいな」

 

 曹操の笑みにマヌエラはギリッと歯を鳴らした。

 

「いいわ。遅かれ早かれ始末するつもりだったのだもの。出向いてくれたのなら、探す手間も省けたというモノよ!」

 

「やってみるといいさ! だが、そう簡単に行くと思うな!」

 

 曹操は禁手を発動させ、戦闘へと投入した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 朱乃は広い廊下を空中で高速移動しながら石像たちの攻撃。そして放たれる矢を躱し続けていた。

 石像との戦闘で途中から加わった長い金髪を持つ双子の少女。シャルロッテの矢を躱し、時には魔力による防壁で防ぐ。

 

「今度はこちらの番ですわ!!」

 

 抜き打ちで放たれた雷光。

 しかしシャルロッテはその一撃を薙ぐように腕を動かし、無力化する。

 それを見た朱乃は悔し気に唇を噛んだ

 

(やはり、威力のない攻撃ではダメージになりませんわ!)

 

 まったくダメージがないわけではない。

 現に雷光を防いだ腕は僅かに焼け焦げている。

 だが、決定打には程遠いのだ。

 

(もっと、溜めを作らないと。でも簡単には――――)

 

 一瞬、敵の攻撃を受ける覚悟で溜めを作ろうと思ったが却下。

 ギャスパーを殺した滅却師のように矢を喰らって行動に制限がかかるタイプ。もしくは、即死するような能力だった場合を考えて、相手の攻撃を受けるのは自殺行為だと判断したからだ。

 そしてその予想は概ね正しかった。

 石像たちを躱し、時にはその巨体を盾として矢の盾へと利用しながら戦うが、向こうの速力もほぼ同等。しかし攻撃の連射性能が違い過ぎるのだ。

 それも、一矢でも喰らえばどうなるか分からないこともあり、集中力を大きく削っていた。

 今までの針のような矢と違い、大きな矢が放たれた。

 それをギリギリのところで躱すも、近くに居た石像が石製の剣を振るってくる。剣が朱乃の肩を掠めた。

 僅かな隙。しかし、その一瞬はあまりにも致命的だった。

 空中で姿勢が崩れた僅かな魔に朱乃の体に針のような3矢が撃ち抜かれた。

 たったそれだけ。それだけで朱乃の身体は動かなくなり、床へと墜落する。

 

「あ……なん……っ!?」

 

「戦いながら、貴方のことは観察し尽くした。私の矢を受けた以上。もう動けない……」

 

 手から弓を消し、墜ちた朱乃の傍に着地する。

 反対側には3mある石像が立っていた。

 

「このまま潰されてしまえばいい……」

 

 石像が脚を上げ、朱乃の細い身体を踏み付けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2対1の攻防。

 滅却師2人と禁手化した曹操の戦いは拮抗していた。

 曹操は輪後光にある七宝を扱い、互角の戦いを演じていた。

 

「悪いが、貴女の能力を封じさせてもらおう!」

 

 曹操は七宝の1つをマヌエラに投げつける。

 女宝(イッティラタナ)

 球体から発せられた光に包まれた女性の異能は一定時間完全に封じ込められる。曹操は先ず、マヌエラの戦闘力を封じることから始めようとした。

 しかし、曹操とマヌエラの中間地点にまで移動した女宝はまるで重しでも乗せられたように速度を落とし、見えない壁に阻まれ――――いや、包まれ、そこで停止してしまう。

 

「なっ!?」

 

 僅かな驚きから動きが鈍り、背後からゼーレ・シュナイダーを持ったルートヴィヒが斬りかかってくる。

 それを聖槍で受け止め。蹴りを入れようとした頃には既に距離を取り、弓矢を放っている。

 放たれた無数の矢を別の七宝である珠宝(マニラタナ)という攻撃を受け流す能力を持った球で渦を作り受け流し、別の渦から攻撃を返す。

 だがルートヴィヒは返された自分の矢を敢えて受けた。

 予め威力の乏しい矢を静血装で自ら受け止め、相手が動揺した僅かな隙にゼーレ・シュナイダーを矢として射る。

 曹操も自分への攻撃を認識して当たるのを待つ筈もなく、今度は輪宝(チャッカラタナ)という武器破壊の球でゼーレ・シュナイダーを破壊し、ルートヴィヒの腹を槍状に変化させた輪宝で貫こうとする。

 だが、それが直撃するより早く、ひとりでに床がルートヴィヒを守るように壁を作られる。

 作られた壁は貫通したものの威力は軽減され、目標を貫くには足りなかった。

 

(どういうことだ?)

 

 その僅かな戦闘から曹操は不可思議な現象を考察する。

 

(この部屋には予め術式かなにかで仕掛けが施されているのか。それともどちらかの能力か。判断するにはまだ材料が足りないな……)

 

 しかし、思考を情報不足と切って捨てる。

 とにかく今はそういうことが起こるとだけ頭に入れておけばいい。

 

「まったく、惜しいな。やはり君たちとは轡を合わせてみたかったよ」

 

 個別では禁手化した曹操に分があるが、2人の連携に翻弄される形で押され始めていた。

 コンビネーションとは足し算ではなく掛け算でなければ意味がない。しかし、それを実現するのは簡単なことではない。もし過去に滅却師が自分たちの陣営に居たら、もっと強固な組織となっていただろう。

 

「くだらん戯言だ……」

 

 ルートヴィヒがそう呟くと同時に曹操の身体が急激に重くなった。

 膝を突いた曹操に柱の1つが石製の腕へと変化し、襲いかかる。

 

「チッ!?」

 

 腕を聖槍で破壊し、足下に置いた象宝(ハッティラタナ)で空中を移動する。

 肉体が軽くなったのを確認して安堵しているとマヌエラが待ち構えていた。

 今までと違い膨大なオーラで作られた巨大な弓矢。

 

「死になさい。大聖(ザンクト・ボー)――――」

 

 その無慈悲な言葉と共に射られようとしている。

 だが、その矢が曹操に放たれる事はなかった。

 直前にマヌエラの背後から炎の球が飛んできたために。

 

「まさか、君がここに居るとは思わなかったかな……」

 

「……D×Dの中では君たちが最初にここへ辿り着いたか」

 

 おどけた感じで話しかけるデュリオに曹操は息を吐いて苦笑する。

 その様子にデュリオの後ろに居たリアスが驚いた様子で訊いた。

 

「どうして貴方がここに……」

 

「今回の件は俺たち元禍の団の者からしたら耳の痛い事件だからな。静観を決め込むわけにもいかないだろう? それに滅却師(かれら)には仲間を殺られた借りもある」

 

 そんな風に話しているとルートヴィヒが曹操に斬りかかる。

 

「戦闘中にお喋りとは余裕だな!」

 

「あぁ、これで君たちの勝ち目は無くなったさ!」

 

 ルートヴィヒの体を弾き飛ばし、デュリオとリアスの側まで移動する。

 

「上位神滅具のトップ2つが足並みを揃える日が来るとはね。君が教会に所属していると情報を得た時は思いもよらなかったよ」

 

「君は禍の団(テロリスト)。俺は教会の転生天使だしね。でもちょっと待ってくれ。俺は彼女たちと話がしたい」

 

「デュリオ!?」

 

 

 リアスの驚きにゴメンと笑い、一歩前に出た。

 

「どうも。貴女と話をするのは初めてですね、マヌエラさん」

 

 デュリオは滅却師のトップであるマヌエラに話しかけた。

 

「俺はこれ以上の犠牲が出る前に君たちに戦闘を停止してほしいと思ってる」

 

「何を言っているのかしら? 今更、私たちが止まるとでも?」

 

 睨みつけて拒絶の意を示すマヌエラにデュリオは話を続ける。

 

「……君たちの目的は、オーフィスちゃんを殺すことでしょ? 今回の騒ぎでどうあっても彼女の存在は周りに知られることとなる。その処分がどうなるかは俺には分からないけど、今まで通りなんて行かない筈だ。匿った三大勢力(うち)も含めてね」

 

 そうでなければ同盟を結んでいる各勢力が納得しない。そんなことは政治方面に疎いデュリオにも分かる。

 追従する形で元禍の団の者たちもより厳正な処分を与えるように動くだろう。

 

「でも君たちがこれ以上暴れるなら、各勢力も君たちに重い処罰を与えざるを得なくなる。今ならまだ、ある程度丸く収めることが出来ると思う」

 

 元禍の団の所属者でない者。特に駒王町の一般人を手にかけた件は痛いが、死刑判決やそれに等しい刑罰はまだ避けられる。

 後ろでリアスが納得できない様子で腕を組んで唇を噛んでいた。

 内心では黒い感情が渦巻いているだろうが、説得できるのならばそれに越したことはないと黙っている。

 

「それで、戯言はそれだけかしら?」

 

 答えは予想通りの拒否。

 マヌエラは口元を歪めた狂気的な表情をする。

 

「いずれ無限が罰を受ける? だからなに? 私は、私の手でアレを絶望に堕として消し去りたくてたまらないのよ。他がアレをどうしようと、それは私が死んだ後のはなしだわ」

 

 その眼に宿る狂気にリアスは一歩下がった。

 デュリオは嘆くように手で顔を覆う。

 そんな彼に曹操が言った。

 

「彼女はもう引き返せない程に壊れている。覚悟を決めろ。ここで止めなければ、滅却師の憎しみがどこまでも広がるぞ」

 

「……分かってる。でも、出来ればここで止まって欲しかったんだけど……ホント、哀しいね」

 

 哀し気な表情が一変して戦う者の顔に変わる。

 

 

 先ず動いたのは曹操だった。

 彼は象宝に乗ったまま一気にマヌエラに接近する。

 彼女は放ち損ねた大聖弓を曹操に射るが、躱された。

 デュリオが炎の球や氷の槍を作ってルートヴィヒに投げつけている。

 滅却師2人は自分たちの基本に立ち返り、距離を取って矢を放ち続ける。

 しかし、曹操ひとりでも互角の戦いを演じていた2人は、デュリオという援軍により徐々に追い詰められて行った。

 後ろへと下がらされながら、ルートヴィヒが自身の能力でデュリオを檻へと閉じ込める。

 

「悪いが、先に片付けさせてもらう!!」

 

 見ると、地面には五芒星の陣が描かれていた。

 ゼーレ・シュナイダーの柄の先端を外し、陣の中へと中の液体を垂らす。

 この場に居る者が知りようのないことだが、それはこの戦いでシャルロッテとターニャが匙に使ったのと同じ術だった。

 オーラを凝縮した液体が垂らされると、中で大きな爆発が起きる。

 

「即急で作った檻だ。破芒陣諸共吹き飛べばいい」

 

 そう言ったルートヴィヒだが、払われない爆煙から広範囲の冷気が襲いかかってきた。

 冷気は、マヌエラとルートヴィヒを避けるように。そして囲うように氷を展開していく。

 

「馬鹿にしないで! こんな氷、上から逃げれば……!」

 

 言いながら空中へと逃げようとすると、マヌエラの上空に紅い髪が見えた。

 曹操の七宝の1つである馬宝(アッサラタナ)により丁度マヌエラの上に転移させられたリアスは溜めた滅びの魔力を落とした。

 

「消えなさい!!」

 

 ここに到着する前、デュリオは言っていた。

 

『おそらくこの戦い、まだ姿を見せていないトップを押さえれば全て終わる。だから戦闘になったら彼女をどうにかするんだ』

 

 そう忠告されていたため、曹操に隙を作ってもらい、マヌエラの虚を突かせてもらった。

 放たれた滅びの魔力はその特性上、静血装でも防ぎきれない。

 この場面でマヌエラも回避も防御も不可能だった。

 ――――そう、誰が見てもこの時は。

 

 

 迫り来る黒い魔力。

 それは間違いなく自分の命を脅かす一撃だと感じた。

 このままでは間違いなく死ぬ。

 

「っ!?」

 

 それは、意識してでの行動ではなかった。

 しかし自分の命が危ないという危機的状況において、マヌエラには他に選択肢がなかった。

 故に彼女は、ずっと切らないでおいた、()()との接続(いしき)を断った。

 同時に、マヌエラの上から周囲の氷を砕くほどの黒い魔力が降り注いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「朱乃さんに、なにすんだぁああああああっ!?」

 

 敵の拠点まで辿り着いた一誠が見たのは、石像に踏み潰されている朱乃の姿だった。

 その状況に頭の血が上り、問答無用で石像を自らの拳で破壊し、朱乃の身体を抱き上げた。

 

「大丈夫ですか、朱乃さんっ!?」

 

「イッセー……くん……?」

 

 朱乃がまだ死んでいないことに安堵し、殺しかけた少女への殺意を堪え切れないでいた。

 とりあえず、朱乃を壁を背にして座らせ、シャルロッテに怒りを向ける。

 

「これ以上、俺の仲間に手出しはさせねぇっ!」

 

 吠える一誠。

 しかし、肝心のシャルロッテは茫洋とした表情で明後日の方角に視線を向けていた。

 

「なに無視してんだ!!」

 

 それを無視していると感じた一誠が怒鳴る。だが、ここで不思議なことが起こった。

 

「なっ!?」

 

 シャルロッテが体が光り出すと、粒子となって少しずつ消えて行く。

 数秒かけてそこに居た筈の敵は影も形も残らずに消えてしまった。

 

「どうなってんだよ……」

 

 何が起こったのか理解できず、一誠は呆然とシャルロッテが消えた跡を見続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どういう、こと……」

 

 リアスが放った全力の滅びの魔力。それはマヌエラに結果的に防がれてしまった。

 それはいい。悔しくはあるが、予想していた結果でもある。

 だが、驚いたのは、攻撃が防ぎ終わると同時に、滅却師の副代表を名乗っていた青年が初めから存在しなかったかのように光の粒子になって消えてしまったのだ。

 

「あ、あ、あ、ああ、あああああああああああっ!? ルートヴィヒッ!! ルートヴィヒッ!?」

 

 錯乱したように背年の名を呼び、光になって消えた彼のところに駆け寄り、姿を留めるように手を動かす。

 その動作は奇しくも虹龍の卵を壊されたオーフィスの動作と似ていた。

 

「やはり、そういうことだったか……」

 

「予想はしてたけど、ね……」

 

 まるでこの展開が予想通りと言わんばかりのデュリオと曹操。リアスはついて行けず、2人に質問した。

 

「あ、あの男はどこに消えたの説明して!?」

 

 ヒステリックに叫ぶリアスにデュリオは頷いて答えた。

 その瞳に憐れみの色を隠そうともせずに。

 

「いいかい、リアスちゃん。おそらく今まで俺たちが戦っていた滅却師たちは全て。彼女が作った人形(ドール)たちだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アーシアとともにゼノヴィア、イリナと戦闘を続けていたカミラは拠点内部の状況を大まかに感じ取っていた。

 すると少女は、大きく息を吐いた。

 この事態を望んでいたのか。それとも、名残惜しいのか。

 自分の心の内を整理しきれぬまま、ただ、影に覆われた暗い空に視線を向けた。

 

「そう……終わってしまったのね、マヌエラ姉さま。貴女の、お人形遊びは……」

 

「カミラちゃん?」

 

 動きを止めたカミラにアーシアが怪訝な表情をすると、彼女はにっこりと笑みを向けた。

 そして、白い光の弓矢が、アーシアへと向けられる。

 

「バイバイ、()()()()……」

 

「え?」

 

 放たれた矢は、吸い込まれるようにアーシアの胸を穿つ。

 突然のその行動に戦っていたゼノヴィアとイリナが理解出来ずに動きが止まる。

 射抜かれた衝撃で段の上に立っていたアーシアは足を踏み外し、そこから転落した。

 

「アーシアァアアアアアアッ!?」

 

 地面へと落ちたアーシアに、ゼノヴィアの悲鳴が木霊した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カミラが自分の唇に指を当てて真実を告げた。

 

『この町での戦いは、最初っから――――マヌエラお姉さま独りの復讐なのよ』

 

 ただ静かに、少女は”真実”を語ったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ルートヴィヒ 22歳。
銀髪のオールバック。顔に傷有り。
能力は"The Jail"
滅却師側の副代表。
冷静沈着で滅却師の中で唯一マヌエラに意見できていた青年。
能力は敵を自ら作った檻に閉じ込めて拘束する能力。全力で展開した場合、外の光景や音も遮断される。


シャルロッテ 15歳
ターニャの双子の姉。容姿の違いは髪の長さ程度。
能力は”The Underbelly”
相手のオーラの流れを観察して弱点を突くことで行動不能にする能力。
基本、あまり喋らず、感情も表情に出にくい少女。
戦闘はターニャが敵を引き付けている間に観察し、自分の能力で動きを封じさせてターニャの能力で殺すのが基本戦術。
以外にも大食いで3人前とか普通に食べる。











はい。多分予想された方も多いと思いますが、カミラを除いて8人の滅却師は全てマヌエラが作った人形です。
マヌエラが具合悪そうだったのも8人分の家族を維持していたからです。
駒王町への暴挙が滅却師側でまかり通っていたのもマヌエラの独裁状態だったからです。

次はもう少し早く投稿できると、いいなぁ。
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