(禁手化なしで)どうやって戦えばいいんだ!! 作:赤いUFO
「ん……」
「アーシア!? 目を覚ましたのか!!」
カミラに射抜かれて階段から転がり落ちたアーシアが目を覚ましてゼノヴィアは目尻に涙を溜めて安堵した。
「わたし、は……」
意識を覚醒させたアーシアは焦点の定まらない瞳で辺りを見渡していたが、完全に目を覚ますと苦々しい表情をした。
「カミラ、ちゃんは……?」
「あの子はアーシアさんを撃った後にどこかへ行ってしまったわ!」
憤った様子で説明するイリナにアーシアはそうですか、と答えて少し思考するように瞑目する。
しかし、アーシアにはこの後に自分がどう動けばいいのかさっぱり解らなかった。解らなかったが。
「カミラちゃんを、追わないと」
きっとあの子を放って独りで行かせれば、取り返しのつかないことになる。そんな予感があった。
そんなアーシアの様子をゼノヴィアとイリナはまだ、カミラの呪縛が解けていないのかと思ったが2人の視線に気づいたアーシア自身がそれを否定した。
「大丈夫です。最後に射抜かれたあの白い矢。あれで、私の中に在ったカミラちゃんの力は消え去りましたから」
胸を見せると射抜かれた筈のアーシアの身体は傷1つ付いていない。
しかし納得できないようにイリナが声を上げた。
「ならどうして!? あんなにひどい目に遭わされたのに!!」
「それは、さっき言っていたアーシアの迷いに関係があるのかい?」
「はい……」
「どんな理由があるかは知らないけど、あの子たちの所為で町が滅茶苦茶になったのよ! ギャスパーくんだって!!」
「はい、解ってます。でも、あの方が、壊れてしまった理由を聞いたから、あの人だけが悪いって、どうしても思えなくて……私たちは、どうすれば良かったのかも……」
そう言ってここから見える城へと視線を向けてアーシアはカミラから聞いた真実を話し始めた。
「天使……?」
マヌエラを覆った光が収まった後に見た彼女の姿にリアスはポツリと呟く。
大きな翼が左右一対になって広げられ、頭の上には輪っかが浮いていた。
その姿にこの場に居る5人に驚きを与えていると、マヌエラが口を開いた。
「
その声に全員の警戒心を強くさせる。
「私たち滅却師の究極の戦闘形態にして奥義。この形態にまで自身の力を磨き上げられた滅却師は歴代でも両手で数える程しかいなかった。私自身、あのトライヘキサとの戦いの最中でようやく物にした力」
言うと、マヌエラの手の平に光が収束し、光ではなく物質に見える矢が作られた。
「だから、気を付けなさい。まだ私も、細かな制御までは出来ないから」
「みんな、避けてっ!?」
構えた矢が放たれた瞬間、閃光となって襲い掛かってきた。
直前でその矢に込められた力の大きさに指示を出し、全員が回避に動いた。
見た目は矢にしては大きかったが、決して規格外な大きさではなかった。
しかし、矢が通り過ぎた痕をみると、床は大きく削られ、当たった壁は人が数人通れそうな穴が空けられていた。
矢から感じたオーラとその傷痕を見て身震いしたリアス。
倒れ込むように横に逃れたリアスは立ち上がろうとしたが、失敗する。
「あ、アレ?」
不思議に思って自分の脚を見てみると、そこには左脛から下。そして右膝から下が無くなっていることに気付く。
「あぁ、くぅ!?」
脚を消されたことを認識したリアスは同時に襲いかかってきた痛覚に歯を喰いしばる。
「リアスゥ!?」
恋人の一誠が声を上げるがヴァーリが一喝する。
「敵から意識を外すなっ! 殺されるぞっ!!」
「クソッ! なんだよ今の! ただの矢に見えるのに、クリムゾン・ブラスターレベルのオーラを感じたぞ!?」
「まさにさっきとは別物だね。奥義って言うだけはあるよ!」
神滅具を持つ4人はたったひとりの人間の女相手に最大の警戒心を向けていた。
「だが、このまま立ち止まって様子見を続けているわけにもいかないな!!」
曹操が聖槍を構え直してマヌエラに急接近した。
全力のオーラを込めた一撃は、高層ビルですら幾つも破壊する威力がある。
人間が喰らえば、体が真っ二つになるどころか骨も残らず消し去ることになるだろう。
しかし────。
曹操の聖槍は間違いなくマヌエラの首を捉えた。その刃が当たる感触は確かに有ったのだ。
「なっ!? 嘘だろ!?」
声を上げたのは一誠だった。
聖槍の一撃はマヌエラの首で止まっていた。
「弱い」
それだけ言うと、腕で槍を押し返し、払うように腕を薙ぐと、曹操の体が弾け飛び、壁に激突する。
「このっ!?」
高速で距離を詰めた一誠はマヌエラの体に触れる。
「相手が女なら、これでその形態を剝ぎ取ってやるぜ! 必殺、
「いいのかしら? あのグレモリーの娘を放って置いて? あそこにいたら、あの娘、死ぬわよ?」
その言葉に一誠は敵から視線を外して最愛の女性へと向けた。すると、そこには床や天井。柱や壁などから生えた、ガトリングガンに銃口を向けられているリアスがいた。
「バンッ」
その現実離れした光景に驚く間もなく嘲笑と共に発せられたその短い一言を合図に30を超えるガトリンガンがリアスを蜂の巣にする。
「リアスゥウウウううウウウッ!?」
鼓膜を潰すような発射音に構わず一誠はリアスの下へと駆けつけようとしたが、マヌエラが自身を弓で狙っていた。
「邪魔だっ!?」
反射的に一誠は殴り飛ばそうとしたが、右腕の籠手が分解された。
「なっ!?」
粒子となって分解された籠手はマヌエラの矢に変わり。ゼロ距離から先程と同じ一矢を射ってくる。
死に物狂いで回避した一誠は右手の籠手を確認すると再生を始めていた。
「また奪われたのかと思ったぜ。そうだ、リアスは!?」
ガトリングガンで作られた煙が晴れてリアスの安否を確認しようとすると、そこにはリアスを守るように氷の壁が作られていた。
「間に合ったね。ギリギリだったよ」
「よし! 助かったぜ、デュリオ!!」
デュリオが氷の壁を作り、リアスを守ったのだと察して安堵から息を吐いてデュリオに感謝した。
そこで今の現象についてドライグから話しかけてきた。
『どうやら、アイツは本当に神器使いの天敵らしいな』
少しばかり焦るように籠手の中のドライグが呟いた。
「どういうことだよドライグ」
『さっきのは、前に使っていた禁手そのものを奪ったのとは違う、鎧を形成している相棒のオーラを奪ったんだ!』
「オーラを?」
『そうだ。ここのところはヴァーリのようなハーフや、相棒のように転生悪魔化する者も増えたが、根本的に神器は人間が使う道具なんだ。だから、神器を扱うための燃料は生命力であり気であり所有者のオーラだ。そして、滅却師はそのオーラを収束させて自らの力にしている。あの形態がその収束を爆発的に高める物ならば────』
そこまで説明されれば察しの悪い一誠もドライグが何を言おうとしているのか理解する。
「つまり、俺たちの鎧に使ってるオーラをあっちは好きに奪えるってことかよ!?」
『そういうことになるな』
なんだそれは。そんなのとどう戦えというのか。
狼狽える一誠に横に立ったデュリオが顔を顰めて頭を押さえる。
「もうこれは、オーラの収束というより、隷属って言った方がしっくりくるね。それと、想像した物を自由に創り出す能力も相まって、厄介極まりないよ」
どうするかな、と思案しているとマヌエラの後ろからヴァーリが急接近した。
残った左腕でマヌエラの体を掴む。
「敵の力を奪うのはこちらの専売特許だ!!」
マヌエラの肩を掴んだヴァーリが半減を始めた。
だが、数回に亘った半減を使用の後、ヴァーリが吐血を始める。
(許容量の限界か!?)
ヴァーリの半減で奪った際に限界を超える余剰エネルギーは翼によって排出されるが、一度に大きな力を取り込むと排出が間に合わず、ダメージとなってしまう。
少なくとも禁手化状態のヴァーリでは排出が間に合わない程の力が有るということだ。
そして近づいたということは、それだけマヌエラは敵からのオーラが奪いやすくなるということでもある。
「チッ!?」
マヌエラに触れていたヴァーリの左手から剥がされるように鎧が分解され、一瞬の驚きの間にゼーレ・シュナイダーで切りつける。
鎧の一部を切り落とされたがすぐに元に戻す。
「そちらの攻撃は終わりかしら? なら、今度はこちらから行きましょう」
マヌエラは構えた弓矢を今度は連射してくる。
先程一誠が言ったように、クリムゾン・ブラスターレベルの矢が尽きることなくばら撒かれる。
一誠たちはそれを避けつつ反撃の機を伺った。
「なら、こっちもあの矢ごと吹き飛ばしてやるぜ!! クリムゾン・ブラスターッ!!」
背中に隠れた砲台を展開し、真紅色の砲撃がマヌエラに襲いかかるも、彼女は冷静に矢を放ってクリムゾン・ブラスターを迎撃する。
衝突する砲撃と矢。マヌエラ自身を覆うほどに巨大な砲撃は、一矢が砲撃を貫通して一誠の元まで突き進む。
「なっ!?」
2矢3矢と続くと削るようにクリムゾン・ブラスターの砲撃を無力化して行き、一誠へと向かった。
「イッセーどんっ!?」
デュリオが一誠を突き飛ばしてギリギリ攻撃範囲から外させた。
「同じくらいの力なら、連射が利いて尚且つ矢の形にまで収束している向こうのほうが分があるってことだね。流石に、連射回数には限界があると思いたいけど……」
デュリオの言葉を聞いて、マヌエラがあぁ、と呟く。
「参考までに教えておくけど、この状態の私が矢を連射できる回数は────1200発」
それを聞いてデュリオと一誠は顔を引きつらせた。
再び攻撃を開始しようとするマヌエラに一誠とは反対側に居たヴァーリから莫大なオーラが放出された。
そのオーラでなにをしようとしたのか察した一誠も覚悟を決めて自身の最強を解き放つ。
二天龍を宿す赤と白は同時に祝詞を唱えた。
『────我に宿りし無垢なる白龍よ、覇の理をも降せ』
『────我に宿りし紅蓮の赤龍よ、覇から醒めよ』
『────我に宿りし白銀の明星よ、黎明の王位に至れ』
『────我が宿りし真紅の天龍よ、王と成り啼け』
『────濡羽色の無限の神よ』
『────濡羽色の無限の神よ』
『────玄玄たる悪魔の父よ』
『────赫赫たる夢幻の神よ』
『────究極を超克する我らが誡を受け入れよ』
『────際涯を超越する我らが偽りの禁を見届けよ』
『────汝、玲瓏のごとく我らが燿にて跪拝せよ!!』
『────汝、燦爛のごとく我らが燚にて紊れ舞え!!』
2人が唱えたその呪文と共に、LとDの叫びが神器から鳴り響く。
『
『
魔王化と疑似龍神化。
オーフィスの力を借りて辿り着いた究極の形態。
その有り余る力を2人は目の前の
「こちらに就いたアーシアから聞いているわ。無限の龍神によって導かれた力。だからこそ、それを叩き潰すことに意味がある」
たかだかその程度の力を超えられずしてどうしてあの
「いくぞ」
最初に動いたのヴァーリだった。
12の翼を広げ、通常ならば動いたと認識することさえ困難な速度でマヌエラの元まで移動し、その拳を振るう。
その一撃は確かにマヌエラの体に直撃した
「っ……!?」
兜の中で顔を歪めるヴァーリ。
「なるほど。大した力ね。完聖体でなければ跡形もなく消されるところだったわ。でも――――この程度なのね……」
言うと、逆に魔王化したヴァーリを殴り飛ばした。
壁へと激突すると入れ替わるように一誠が向かってくる。
「だりゃあああああっ!!」
渾身の拳は宙を切り飛簾脚で距離を取ったマヌエラに間を与えずに追撃をかける。
同時にマヌエラの手の平から血のような物が線として飛び出し、それが地面に陣を引いた。
すると円を描くようにマヌエラの周りを周りに防御壁が展開される。
その壁に阻まれて一誠は突進の勢いを止めた。
「
「な、めんなぁ!!」
渾身の拳が防御壁を破壊し、マヌエラに接近する。
勢いをつけた左拳がマヌエラへと突き出すが、それは右手で防がれる。
「私に触れたわね」
受け止めた拳にグッと握力を込める。
すると、赤い線が一誠の身体を侵食する。
籠手の中に浸食を始めた赤い線が一誠の左腕の血管を好き勝手に暴れまわっていた。
「外殻静血装は私に触れる全てを侵食する。パウロは白龍皇の右腕を奪った。なら私は先ず、赤龍帝の左腕を貰うとしましょう」
侵食した敵の力が一誠の左腕の血管を破裂させた。
「ぐ、アアアアアアアアアアッ!?」
左腕の血管を内側から破壊される激痛に絶叫を上げるとマヌエラが矢を射って一誠の体を飛ばした。
そして、マヌエラは辺りの熱の変化に気付く。
上を見ると、巨大な炎の玉を作り出したデュリオがそれをマヌエラに落とす。
しかし、マヌエラは巨大な弓矢を作り出し、放つ事で炎の玉を破壊し、玉の後ろに居たデュリオを天井の壁を破壊して上の階まで押し上げた。
一息吐いて髪を掻き上げるマヌエラ。
それを、ガトリングガンで破壊された氷の穴から見ていたリアスが唖然としている。
「うそ……」
図らずともこの場には上位神滅具使いが揃っていた。
彼らの実力はもはや最上級悪魔。そして魔王たちにも届き得るほどに強くなっていた。
それが、たった1人の人間に圧倒されるという悪夢。
起き上がった一誠が破壊された左手を押さえて立ち上がった。
「こんなのアリかよ……どうなってんだ!」
『相棒!もうあの娘を人間だと思うな!!気を抜けば全滅だぞ!』
「分かってる!」
もう痛み以外の感覚のない左腕を押さえながら一誠はマヌエラを睨みつけた。
「……本来、完聖体は無限龍に対する切り札。この力でアレの龍のオーラを奪い尽くして私の作ったサマエルの毒で殺す。アレは必ずこの町で滅ぼす。そうしてようやく私の復讐は一段落と言ったところかしら」
マヌエラの話を聞いて一誠は歯をギリッと鳴らした。
「……オーフィスは誰よりも純粋な奴で、ずっと独りぼっちだったんだ。ようやくあいつにも家族が出来たんだよ。リリスだってリゼヴィムの奴に利用されてただけなんだ。それを――――アンタの八つ当たりでイジメんじゃねぇよ!!」
一誠は鎧に隠された砲台を展開し、砲撃を放つ。
マヌエラの姿を覆っても余りあるほどの砲撃。
しかし、それは外殻静血装に阻まれ敵に届く事はなかった。
「クソッ!硬ぇ!」
おそらく、さっき一誠が破った障壁は手加減していたのだろう。わざと自分に触れさせるために。
「八つ当たり?」
一誠の攻撃を防いだマヌエラは目を細めた。
「少し言葉に気を付けなさい。ここの戦場は私の力で覆われている。つまり、この町は私のお腹の中も同然なのよ」
「だからなんだってんだよ!」
「力は有っても頭の回転が鈍いわね。つまりこういうことよ」
マヌエラが手を掲げると、そこにはいくつかの映像が映し出されていた。
「みんなっ!?」
映し出されているのはこの城の外に居る仲間たちだった。
「ここに来るまでに思ったより生き残ってしまったわね。もっと減らしておきましょう。禍の団の頭目を容認するような愚者ならば――――」
言うと、マヌエラの前で僅かに空間の歪みが確認でき、それに向けて弓矢を構えている。
なにをするのか察したリアスが一誠に指示を出す。
「イッセー!彼女を止めなさい!!外の皆を攻撃するつもりよっ!!」
しかし遅かった。
「
マヌエラの射った矢が空間へと吸い込まれた。
戦線を離脱していたソーナはゾンビにされた自身の眷属を拘束し、殺された仲間の遺体を傍に置きながら辺りを警戒していた。
そんなソーナに憐耶は不安から質問する。
「……他の場所で戦っているみんなは無事でしょうか?」
「聞こえる戦闘音は段々と収まってきています。この戦いも段々と終わりに近づいて来た証拠です。それに今までもなんだかんだで乗り切ってきたのですから、今回もきっと」
それは憐那に、というよりそう思い込むことで自分を安心させているようだった。
だからソーナたちは警戒を緩めてしまった。
どこかでここがまだ戦闘区域だということから気持ちを逸らしてしまったのだ。
「?」
キラリと空が光るのを見て、ソーナは上へと視線を向ける。
すると、空から雨のように降り注ぐ大量の矢が降り注いで来た。
祐斗は、突如降ってきた矢から懸命に逃げていた。
受けていた精神攻撃から大分回復し、これから敵の本拠地に行こうとした矢先だった。
言葉を発する暇もなく落ちてくる攻撃。
先読みしたように自分の前方に落ちてくる矢。
「しまっ!?」
祐斗は地面に突き刺さった矢の爆発に巻き込まれた。
アーシアは禁手である”
一撃一撃が重く、一度破られればアーシアの治療でも追い付かない。
それにゼノヴィアがエクス・デュランダルで慣れない支配の力を使い、少しでも矢を逸らし。イリナが光力で作った槍で迎撃し少しでも数を減らす。
いつ止むともしれない矢に3人はひたすらに耐えていた。
レイヴェルは小猫の遺体を抱えてその場から必死に空から降ってくる矢から逃げている。
「なんで!なんで!なんで!」
泣きながら、必死に親友の遺体だけは守り抜こうと動いていた。
頭の中に在るのはどうしてこうなったのかという現実逃避の思考と親友の遺体を守らなければという使命感。そして死にたくないという本能だった。
ごちゃ混ぜになった思考の中でレイヴェルは必死にフェニックスの炎の翼で動き回っていた。
匙は邪龍の黒炎を盾のように使い、必死で光の雨を防いでいた。
しかし、多すぎる攻撃にやや広範囲に盾を展開したことで薄くなった部分に幾つかの矢が突破される。
その矢がヴァレリーの背中に突き刺さる。
「しまっ!?」
次の瞬間、声を発する間もなく、ヴァレリーに刺さった矢が爆発し、彼女の体が吹き飛ぶ。
「クソッ!?」
嘆く暇もなく、集中が乱れたことで矢が次々と黒炎の盾を突破し、大きな爆発となった。
檻からリリスと共に解放されたオーフィスはこの場以外に次々と降っている光の雨を唖然として見ていた。
傍に有る鏡から見せられる攻撃される家族。
それを見てオーフィスは他人には分からない程に僅かに険しい表情を作り、拳を強く握った。
驚く間もなく次々と降ってくる大量の矢。
それが、地面に突き刺さると同時に爆発し、さらに混乱に拍車がかかる。
一発一発に込められた膨大なオーラはソーナたちを殺すに余りある。
降り注いだ矢が落ち終え攻撃が止むと、ソーナは頭から血を流し、かけていた眼鏡も爆発で吹き飛び、腕も折れていた。
「いったい、なにが……」
突然のことに状況に頭が追い付かずに体を起こすと、そこには地獄が広がっていた。
ゾンビにされた仲間は原型が分からない程に破壊されていた。
そして、まだ生きていた筈の仲間は―――――。
「あ、あああああっ!?」
憐那は瓦礫に胸から下が潰されていた。
椿姫は、自分を守ろうとしたのだろう。
神器の追憶の鏡を展開していたが、あの数の攻撃を受け止めきれず、下半身が完全に吹き飛んでいた。
倒れていて、伸ばされたままの椿姫の手を握る前にその腕が無慈悲に落ちた、
喉を自ら裂くような悲鳴がその場に鳴り響いた。
「全員殺すつもりだったけど、意外に生き残ったわね。腐ってもⅮ×Ⅾ。しぶとさだけも一級ということかしら?それに遠く離れた場所に攻撃を転移させるのは思ったより難しいのね」
攻撃を終えたマヌエラがつまらなそうに言う。
纏まっていたソーナの眷属は主を残して全滅。
アーシアたちは負傷こそしているが、攻撃された中では比較的軽傷だった。
祐斗はまだ死んでいないが爆発を受けて重症。
レイヴェルはフェニックスの特性もあって無事だが、結わえていた髪が半分落ち、小猫の遺体に縋りつくように泣き崩れている。
匙は禁手化のおかげで負傷はしているが生きているものの、ヴァレリーは文字通り跡形もなく消し飛ばされていた。
あまりの光景に呆然としていた一誠が起こったことを理解すると、右腕の籠手を自分で壊さんばかりに握り締める。
「ほんっとうに、いい加減にしろよテンメェエエエエッ!!」
怒りを爆発させ、その怒りに呼応するように爆発的な加速を見せる。
それと同時にヴァーリの翼から分離した12の飛龍がマヌエラに襲いかかった。
「いけっ!!」
襲いかかる一誠と12の飛龍にマヌエラは拳を放った一誠の攻撃を避ける。その勢いのままに床に拳を叩きつける一誠。
追撃にヴァーリの飛龍が口を開き、砲撃を放とうとしていた。
「甘いわよ」
しかし、その前に飛龍たちは全て分解され、マヌエラへと吸収される。
吸収された飛龍たちのオーラを使い、作った矢でヴァーリの後ろに回り込み襲いかかる。
振り向き、残った左腕で防御すると、ヴァーリが一誠の側まで飛ばされた。
「もう二度と、二天龍を生み出さないように、貴方たちの存在は封印した方が良さそうね」
弓を消し、合わせた両手の中心に黒い空間が生まれた。
それを一誠とヴァーリに向けると彼らは黒い空間に飲み込まれた。
2人が黒い空間に飲み込まれると、結界を作ってその空間ごと閉じ込める。
「終わりにしましょう、二天龍。無限に媚び諂ったことを、その中で後悔しながら死になさい」
「なにを、したの……?」
先程から動けないリアスは圧倒的に押していた状況で閉じ込めるような行動を取ったマヌエラに思わず問う。
「宇宙空間よ」
「!!」
「宇宙空間では、眼球と口腔粘膜から体液が強制的に蒸発し、傷口から宇宙空間に曝された血液が沸騰し始める。呼吸をしようとすれば、肺が破壊され、体組織が破壊されて緩慢な死を迎える」
「……貴女の能力はそんな物まで創り出せるというの!?」
「ついでに言えば、外から見える空間と中の空間の広さも別よ。中の宇宙空間は常に膨張し続ける。脱出も不可能だわ。主が死んでも、この空間なら閉じ込めた以上、神器が次の主に転生することも不可能なはずよ。今代の二天龍が宇宙空間にも対応できるといいわねぇ」
説明するマヌエラを上の階まで飛ばされたデュリオが空いた天井から見下ろしていた。
「そう……なら、俺もここから全力で君を止めに行かないとね。
禁手を発動させたデュリオが上から突っ込んできた。
禁手化を終えたデュリオは、頭の輪っかが四重になり、翼が12の6対となる。
デュリオは自身の禁手をどうしようもない悪人か、聞き分けのない相手にしか使わないと決めていた。
今回の場合は後者であり、また使わなければ自分が死ぬことになる相手である。
また、彼女を倒して二天龍2人を助けなければならない。
彼女を止める為の言葉を持てなかったことに一瞬だけ哀しそうに表情を歪めた後に、デュリオは接近し創り出したシャボン玉でマヌエラを包んだ。
このシャボン玉に包まれた相手はあらゆる自然現象による天罰を与えられる。
しかし────。
「この程度で!」
その前にシャボン玉のオーラを奪われて、無意味になる。
この展開は予想していたので慌てることなく次の行動に移った。
「なら、これで!!」
今度は直に業火を生み出し、マヌエラに襲いかからせる。
それを突破してきたら冷気、突風、雷。自分が行えるあらゆる攻撃を行った。
最後の雷を防ぐと同時に面に等しい矢を連射してくる。
デュリオもどうにかそれを防ぎ、決着の付かない攻防を繰り返す。
先程リアスにやったように重火器を生み出して攻撃する。
マヌエラの真上から雷を落とす。
シャボン玉で彼女を閉じ込められれば良いのだが、オーラを奪い取られる敵の能力の厄介さで決定打が出せない状態となった。
(早く、2人を助けないといけないのに……!!)
焦りが生み出した隙にマヌエラの矢がデュリオの右肩を掠める。
腕の肉が抉られるような痛みを無視して再度、攻撃を繰り出そうとした。
そこで、マヌエラが作り出した空間から赤いオーラの砲撃が飛び出し、宇宙空間が消し去られた。
中から一誠とヴァーリが床に倒れるようにして落ち、龍神化と魔王化が解除される。
宇宙空間に閉じ込められた際にヴァーリが宇宙の膨張を超える勢いで空間を圧縮し続け、一誠が最大攻撃で破壊した。
だが、ある程度の生命維持機能はあれど、突如宇宙空間に放り出されて対応できるようには作られていなかったらしく、2人は床に這いつくばる形となった。
立ち上がろうとする2人だが、ズタズタになった身体を起こすだけで精一杯だった。
「クソッ……! なんだよあれ……何でも有りじゃねぇか。反則だろ、いくら何でも……」
「愚痴を言う暇があるなら動け……! ここで止まっていたら、殺されるぞ……」
床に這いつくばる2人にマヌエラは口元を吊り上げる。
「まさか宇宙空間から帰還するとは思わなかったわ。二天龍なんて有害にしかならない存在は永久に閉じ込めておきたかったのに」
そう言って弓矢を一誠とヴァーリに向けて構えた。
「出来ればこのまま封印されていてほしかったけど、仕方がない。とりあえず、弱っている今、ここで死んでもらいましょう」
「やめろぉ!?」
デュリオが動くより先に、ヴァーリの手に膨大なオーラが収束される。
「これならば、どうだっ!!」
魔王化の解けたヴァーリが扱える最大の攻撃力を誇る一撃。
自身の負担を無視した攻撃だったが、マヌエラは腕を盾にしてヴァーリの砲撃を防ぎ切った。
「さっきの形態が解けた以上……そんな攻撃が、効くわけないでしょう……」
しかし、若干荒くなったマヌエラの呼吸を見てヴァーリは僅かに口を吊り上げる。
「その力……まだ慣れてないと言ったな。相当無理をしてるんじゃないか?」
「……」
「当然だな。あの滅却師たちを生み出し、今の今まで維持してきた。駒王町を覆った影もそうだ。この世界の維持に加え、その力だ。その消耗は並大抵のモノではないだろう」
むしろ、今もその力を維持している方が異常なのだ。
それに答えずにマヌエラは攻撃に入った。
「だとしても、ここで消える貴方には関係のない話だわ」
そう言って限界まで力を加えたマヌエラが弓を構える。
しかしそこで、今まで隙を伺っていた曹操が、マヌエラの頭上に転移して槍を振り落とす。
だが、反射的に避けたマヌエラはそのまま手にしたゼーレ・シュナイダーをカウンター気味に曹操の胸に突き刺した。
「残念だったわね。あともう一歩だったのに……」
マヌエラの一言に曹操は口元を吊り上げた。
「いや、思惑通りだ……やれ、リアス・グレモリー!!」
曹操はマヌエラの両腕を掴んで拘束すると、この場にリアスを転移させた。
足を失ったリアスはフェニックスの涙で傷を塞いでおり、曹操の馬宝でマヌエラのところまで転移させられた。
これは、一誠とヴァーリが戦っている間に決めていた作戦だった。
「消えなさい!」
狙うはマヌエラ────ではなく、彼女の頭にある輪っか。
曹操は戦いを観察しながら、マヌエラがオーラを奪い取る際に、頭の輪へとオーラが集まっているのが見えた。
だから、もしかしたらそれを破壊すればオーラの隷属も出来なくなるのではと考えたのだ。
この時点で完全にノーマークだったリアスが現れたことでマヌエラの動きが止まる。
リアスが放った滅びの魔力。それは確かにマヌエラの輪っかを捉えていた。
しかし、ギリギリのところで外殻静血装を小さく展開し、リアスの滅びの魔力を弾いた。
「ううっ!」
自分の攻撃を放った反動で吹き飛び、立つための足を失ったリアスは床に転がり落ちる。
「残念……この程度の奇襲で……!」
(こんなものか、俺の最期は……)
曹操たちの連携を防いだことに安堵するマヌエラ。
それでも笑みを崩さない曹操の姿が癇に障ったらしく、曹操の身体を踏み付けた。
今回曹操が駒王町に現れたのは、滅却師たちを止める為だ。
オーフィスの存在がバレて各勢力にどういう影響を及ぼすかは心底どうでもいい。
ただ、自分たちが関わった案件で狂ってしまった滅却師を止めて、何かを為したかっただけだった。
何か、とはずいぶん曖昧な目的だと曹操は自嘲する。
だがこれまでの自分の人生はそんなものだったように思える。
聖槍を手にしてから家出し、世界を周り、同じ境遇の仲間を集め、1つの勢力を作った。
結局自分たちは人間のままで特別な何かに成りたかったのだ。
自分たちは特別で。何かに成れるのだと信じたかったのだ。
その何かに英雄という名を付けて周りを引っ掻き回した。
そしてその方法を知るために随分と回り道をしたように思う。
滅却師のような復讐者まで生み出して。
それでも、その時間が、曹操にとって特別だったのも事実だった。
独りだった自分に仲間が出来た。
同じような境遇の者たちが集まり、歩いて行くことで満たされたモノもあったのだ。
(ハハ……こんな最期で彼らはなんて言うかな……)
先に散った彼らは自分の最期をどう思うだろう。
分からないが、最後だけはどんな状況でも笑って死のうと決めていた。
(さぁ、先に逝った彼らに胸を張って会いに行くとしよう……だがその前に!)
最後の抵抗として
近距離から最後の抵抗。
マヌエラは敵の攻撃のオーラを分解して防ごうとするが、これまでの疲労により僅かに速度が遅れ、球体がマヌエラの輪を破壊した。
「はしゃぎ過ぎたな、君は……」
最後にそう言い残し、曹操の肉体に無数の矢が落とされ、その肉体は跡形もなく消滅した。
曹操を葬り去ったマヌエラ。
呼吸はさらに荒くなり、オーラの隷属も出来なくなったことで精神的余裕を一気に失った。
故に、近づいてくる敵に気付くのが遅れる。
近づいて来たデュリオが光力を作った剣を振るってくるがマヌエラはそれを腕で受け止めた。即座にゼーレ・シュナイダーを振るうが後ろに下がり、躱された。
「隷属は出来なくなっても、私の力自体が落ちた訳じゃないわ!」
要は力の充電が大幅に落ちただけ。この状況ならまだマヌエラに分があった。
後ろに下がったデュリオにマヌエラが最大級の力を込めた矢を放とうとする。
しかし、デュリオの後ろに一誠が回り込み、押し出すように彼を突き飛ばしてきた。
「いっけ、デュリオッ!!」
それはただ、デュリオを押しただけではなかった。彼の籠手から音声が鳴る。
『Transfer!!』
赤龍帝の贈り物。
最大まで倍加した力を一誠はデュリオに託したのだ。
放たれた矢をデュリオが光力で作った槍を投げて相殺する。
爆発の煙を無視して一気にマヌエラへと接近した。
「このっ!?」
闇雲に突き出したゼーレ・シュナイダーの刃がデュリオの右頬を掠め、耳を2つに切り裂いた。
「もう、終わりにしよう」
近付いたデュリオが拳に全力の光力を込めて、マヌエラの胸を穿った。
マヌエラ 23歳
能力は”The Visionary”
想像した物を現実にする能力。この能力でこれまで死亡した滅却師たちを想像し、行動させていた。
彼女によって創られた滅却師はあくまでもマヌエラから見た家族たちであり、同じく生き残りであるカミラからすればズレた印象を受ける。
滅却師たちが駒王町での一般人を巻き込むような戦いをしていたのもマヌエラ自身が自分の考えを否定されることを怖れていたから。
滅却師としての才能は歴代でも抜きん出ていたが、本人は滅却師として外で退魔の活動する意思はなく、故郷に留まって下の子に技術を教え、守ることを望んでいた。
それが故郷の崩壊とともに戦う道を選んだことで才能を開花させる。
本来の性格はやや思い込みが激しいが、温和な家族思いの女性。しかし故郷の壊滅に始まり、度重なる生き残りの家族たちの死亡により精神の均衡が崩れてしまった。
今回の事件が大規模になったのはマヌエラがここまで生き残ってしまった所為とも言える。
続話はこの修正版の続きとして執筆します。
今回かなり無理矢理加筆修正したので矛盾点などのおかしい部分をお気付きでしたら知らせてくれると出来得る限り修正します。