(禁手化なしで)どうやって戦えばいいんだ!! 作:赤いUFO
とりあえずこの作品は10話から15話で終わらせる予定。
ディオドラ・アスタロトの反乱時、各勢力が協力して禍の団の撃退に協力した。
その時、教会に協力していた滅却師たちも当然参戦していた。
各神話の名に記されるような神々や悪魔には到底及ばないものの、その力は確かにテロリストを退ける一矢として活躍した。
だが、彼らにとってもっとも大きな功績はそれではなかった。
「も、もう……ヤメ……!?」
元は整った顔立ちだったろうそれは何度も殴打され見る影もなく潰されていた。
背中に生えていた蝙蝠の翼は引きちぎられ、手足に多くの矢が刺さっている。
悪魔の懇願を聞いたオールバックの髪と右頬から耳に傷のある青年、ルートヴィヒは小さく息を吐き、手の甲から刺され、地面へと縫い付けられている矢を強く踏みつけた。
痛みに絶叫すると煩いと顔を数度蹴りつける。
そこで長い金髪を後ろで一纏めにした眠そうな眼をした少女――――シャルロッテは両手でボールを持ち上げるように悪魔の顔を自分に向けさせる。
「わたしたちの質問に関すること以外の一切を喋るな。そうすれば少しは長生きできる」
その悪魔はかつて滅却師の隠れ里を襲った悪魔だった。
戦いの最中偶然発見し、捕獲して連れてきたのだ。
「なぜ、わたしたちの故郷を襲った。それに、あの圧倒的な力は何?5秒以内に答えなければその両目を潰す。質問の受け答えには耳と口があればいい……いーち」
「こたえる!?答えるから!?わ、我らはあの時、蛇の実験をしていたのだ!」
「蛇?」
「そ、そうだ!無限龍からもたらされる力!だが、当時はその明確な効果が解らなかった!だから――――」
「アタシらの故郷を試しに焼いたってか?効果の確認のために?」
そこで壁の背にして座っていたシャルロッテの妹男の子のように短く切られた金髪の少女であるターニャが持った筒を手で遊ばせながら確認する。すると悪魔の方も激しく首を上下させた。
「わ、私が知っているのはそれだけだ!!頼む!いのちだけっ!?」
命乞いを言い終わる前にターニャが持っていた筒から光の刃が飛び出し、その口から首の後ろまで貫通する。
「くたばれ、下種が……っ」
ペッと唾を吐くターニャにシャルロッテが僅かに顔を強張らせた。
「……ここ、わたしの部屋」
「ごめんなさい……」
姉を怒らせると怖いと知っているターニャは素直に謝り、せっせと死体を片付けに入った。
それを今まで静観していた焦げ茶の髪で左顔半分を隠した女性、マヌエラにルートヴィヒが問う。
「原因は割れた。どうする?」
「決まっているわ。そいつが禍の団に力を与えたのなら。そしてその所為で私たちの故郷が滅ぼされたのなら。必ず滅ぼす。それだけでしょう」
「相手は、無限龍。誰も手出しできない正真正銘のバケモノだぞ」
ルートヴィヒの質問にマヌエラは強く頷く。
「どれだけ時間がかかっても、必ず見つけ出すわ。あの無限を滅ぼす方法を――――!」
松田と元浜は駒王学園から帰宅する道を上機嫌で歩いていた。
その理由は元浜が手に抱えている大量のDVDだった。
「今日は中古でいい掘り出し物がたくさん見つかったな!」
「あぁ!明日はイッセーも誘って久しぶりに上映会と行こうぜっ!」
そのDVDはアダルト物でそれぞれの好みに合った品を見つけてご満悦の様子だった。
それが男子高校生として別段奇異な趣味ではないが、その隠そうともしないイヤらしい表情は同性でも近づきたくはないだろう。
しかし、そんな2人に話しかける者がいた。
「ねぇ、おにいさんたち」
まさか自分だとは思わなかったが反射的に振り向くとそこには見慣れない切り揃えられたおかっぱ頭の金髪と赤い眼の中学生に入ったかどうかくらいの外国人少女だった。
2人はキョロキョロと首を動かすが辺りには誰もおらず、じっとこちらを見つめる少女にどう対応したらいいのか困惑していた。
しかし、そんな2人に金髪の少女は屈託のない人懐っこい笑みを浮かべて松田の手を掴む。
「わたし、この町に来たばかりでどこをどう行けばいいのか分からないの。だから一緒に遊んでほしいなぁ」
上目づかいでされたお願い。それは女慣れしていない2人を射止めるには充分な破壊力を持っていた。それでも僅かな理性がそれを押しとどめる。
「だ、ダメだぞ!知らない男の人と遊びたいなんて言っちゃ!俺たちが、わ、わるいお兄さんだったらどうするんだ!」
鼻息を荒くして警告する姿はまさに不審人物でその姿だけで警察に連絡されても文句は言えないかもしれない。しかし少女の答えは意外なものだった。
「いいよぉ。それがお兄さんたちが楽しいって思うことなら。それにお兄さんたちは善い人たちでしょう?」
覗き込むように、その整った鼻が触れそうな程に近づいて預けられる信頼。それを堪え切ることは彼らには出来なかった。
「よ、よーし!!今日は俺たちがこの町に来て最高の思い出をプレゼントしてやるぜ!な、元浜!!」
「あぁ!!二度と忘れらないくらいに!!ところで、お嬢さんの名前は?」
名前を訊かれて少女は笑みを深めた。
「わたしはね、カミラって言うのよ!」
グレモリー邸に集まった面々は重たい空気が支配していた。
それでもずっとそうしているわけにも行かずにリアスが口を開く。
「禁手化を奪う。リゼヴィムの無効化も厄介だったけど、今回はそれ以上だわ」
「禁手奪われてから、ドライグの存在も感じられないんだ。多分、向こうに……」
一誠の言葉に周りが更に沈んでいく。そんな中でデュリオがパンパンと手を叩いた。
「落ち込むのヤメヤメ。奪われちゃったモンはしょうがないでしょ。奪い返すなり何なりと、これからのことを考えよ」
その言葉に少しだけ活力が戻り、一誠が質問する。
「そういや、デュリオはアイツらのこと知ってたみたいだけど」
「うんまぁ。つい先日までうちの協力者だったからね滅却師は」
「!?」
デュリオの発言に皆が驚く。
「滅却師。聞いたことないわね」
「まぁ、教会の影に隠れて近年じゃあまり有名な一団じゃないし。一度は接触しないと知らないんじゃないかな?それに彼らは数年前に壊滅してるし」
「どういうことですか?」
イリナが訊くとうん、とデュリオは頷いて説明する。
「先ずは基礎知識。滅却師っていうのは少数民族で昔から人外を相手に人々を守ってきた退魔の一族なんだ。力無き人々の生活を脅かす悪魔や魔獣、堕天使。その他にも。それらから守ることを理念に行動していた退魔師たち。その理念から教会とも共同歩調を取って強力な異形との戦闘になる際には協力してもらってたんだよ。もっとも数年前に壊滅したけど」
「壊滅?」
「そう。当時調査に向かった騎士団は魔力の痕跡から大規模な悪魔との戦闘で滅んだという見識だったけど、つい最近、禍の団の旧魔王派たちによって壊滅させられていたのが判明したんだ。生き残りの滅却師たちが禍の団の活動が活発になったのを機に教会に接触してきたからね」
出された茶菓子を口に入れてお茶で流し込むとデュリオは哀しそうに続ける。
「ディオドラ・アスタロトの件や英雄派が各地に神器使いを送ってきたときも彼らは教会の協力者として力を振るってくれた。滅却師のおかげで一般人への被害が抑えられた事も幾つかある」
滅却師たちを庇うような発言をするデュリオにゼノヴィアが眉を動かした。
「だが彼らはこの町で無関係な人を手に掛けている。その滅却師というのが人々を守る一団だとは……」
「そ、そうだ!俺とアーシアは滅却師の奴が女の人を殺そうとしているのを確かに見た!その人は助けられたけど!」
興奮した一誠にデュリオは腕を組んで真剣な表情をする。
「少なくとも教会に協力しているときはそんな事はなかった。でも彼らはトライヘキサとの戦いの後にまた姿を消したんだよね。それで次に現れた時は各地の禍の団の生き残りを襲い始めたってわけ」
「……トライヘキサとの戦いで箍が外される何かがあったというの?」
「現状はそう推理するしかないね」
一拍置いて一誠が拳を手の平に打ち付ける。
「何があったか知らねぇけどな!無関係な人たちを襲うなんて許されねぇ!俺たちの禁手も絶対に奪い返してやるぜ!!」
「そうね。どんな理由があろうと無関係な町の人たちを襲うなら彼らはただの外道だわ。ましてや私の治める駒王でこうどうするなら、容赦なく吹き飛ばしてあげるわ!」
一誠とリアスの言葉に力を取り戻していく中、小猫がでも、と口を挟む。
「小猫ちゃん、何か気になることでも?」
「……はっきりと口にできるわけじゃないんですけど。あの滅却師の人を見た時になにか、違和感を感じたんです」
「違和感?」
「……はい。それがなんなのかは解らないんですけど」
はっきりとしないそれに苛立ちながら解答を出そうとする小猫に姉の黒歌が口を挟んだ。
「白音だけが感じたってことは仙術使いが感じる違和感ってことかもしれないにゃん。なら、私も一肌脱いだ方が良いかもね。多分、向こうの標的に私も入ってる筈だしにゃー」
元禍の団である黒歌も標的だろうことは想像が容易だ。
それに小猫が僅かに表情を歪ませる。
「とにかく。この町で活動しているのなら拠点がある筈。先ずはそれを割り出しましょう」
そうして奮起するリアスたちをオーフィスは少し離れた位置でジッと見ていた。
眠りから覚めたマヌエラはここ最近服用するようになった薬を飲んだ。
傍に控えていたルートヴィヒが問う。
「大丈夫か?」
「いつもの熱だから。それよりも手紙は?」
「届けた。明日話し合いに行ってくる。お前は、ここから動かないほうが良いだろう」
「そうね。ありがとう」
そこでマヌエラはルートヴィヒに寄り掛かった。
「私、間違ってないよね?仇を討つために、禍の団を滅ぼすと決めたこと。それにみんなに付き合ってもらったことの全て」
震える身体で問うマヌエラにルートヴィヒは頭を撫でながらあやすように言った。
「大丈夫だ。お前はなにも間違ってない。俺たちも自分の意志でここに居る。お前が気に病むようなことはなにもないだろう」
「うん……うん……」
何度も頭を撫でられて震えを止めるマヌエラ。
そんな2人を、隅に居たカミラは憐れむような視線でジッと見ていた。
一誠の母から渡された手紙を読んでリアスは顔を強張らせた。
そして昨日と同じように集まった面々で会議をする。
「それでリアス。内容はなんでしたの?」
「私と話がしたいからひとり随伴者を付けて指定された時間に店に来てくれって。もしこちらの指示を無視した場合、店に居る者たちの命は保証しないと書いてあるわ。住民を全て人質に取られた気分だわ」
「罠、でしょうか?」
「どうかなー。随伴者に指定がないなら案外本当に話し合いを望んでいるのかも」
木場の考えにデュリオが別の意見を被せる。
そこで一誠が立ち上がった。
「なんにせよ俺が行く!リアスには指一本触れさせ――――」
「デュリオ。お願いできるかしら?」
「だねー。ここは俺が行くべきだろうね」
「なんで!?」
抗議する一誠にリアスが息を吐く。
「正直、禁手化ができない一誠じゃ戦力的に不安なのよ。その点、デュリオは通常の神器でも充分強いし」
「グフッ!」
「もう1つの理由としては、曲がりにも協力関係にあった教会の者の言葉なら、少しは話を聞き出しやすいかもしれないでしょう?」
「俺も1回だけだけど滅却師の人たちと会ったことがあるし。それに訊きたいこともあるしさ。イッセーどんここは譲ってね?」
「イッセーはオーフィスたちの傍に居なさい」
戦力外通知を出されて落ち込む一誠。
それを無視してリアスは外に出る準備を始めた。
指定されたのは駒王学園からさほど離れていない客の少ない喫茶店だった。
店員に予約を取ってあると話すと、すぐに1番奥の席に案内された。
そこには銀の髪をオールバックで纏め、右頬に傷のある長身の男が座っていた。
それにデュリオが首を傾げる。
「確か、
「彼女は今拠点から外に出られる状態ではなくてね。代わりに俺がここに居る。ルートヴィヒだ。俺たちの中でまぁ副代表のような立場に居る滅却師だ」
店員に適当な注文を済ませると話し合いが始まった。
「先ずは無断でこの町に立ち入り、被害を出していたことを謝罪したい」
いきなりの謝罪にリアスは驚いたが表情には出さず、責めるような口調で言う。
「貴方たちは人々を人ならざる者から守る一団だと聞いたわ。それが、どういうつもりかしら?」
皮肉を伴ったその質問にルートヴィヒは特に動じることなく答える。
「そちらの戦力に対応するのにこちらも手段を選べなくてね。先ずはこちらが目的を果たす為ならなんでもやるぞ、と理解させるために動いた。もし其方がこちらの要求を呑めば奪った禁手はそちらに返そう。この町も即座に立ち去る。互いにこれ以上の犠牲が出ない良い提案だと思うがね」
「勝手なことを……!」
吐き捨てるリアスにルートヴィヒは目を細めた。
「勝手はお互い様だろう。禍の団殲滅に各勢力の助力を願いながら、その首魁をまんまと懐に収めているのだからな。これが裏切りでなくて何だというのか。話を進めよう。そちらで保護している2匹の無限龍と猫妖怪の女を即時こちらに引き渡すことを要求する」
予想はついていたがいざ言われるとリアスは好き勝手な要求をする相手に怒りが湧きおこるのを感じた。
「そちらとしても悪い話ではあるまい。その猫妖怪は元々はぐれ悪魔の指名手配犯だという話だし。無限龍に関してはテロリストの首魁だ。これ以上犠牲を重ねて守る価値があるとも思えんが?」
「たとえオーフィスちゃんたちを引き渡して、君たちにどうこうできるのかな?」
デュリオの言葉にもっともだな、と言い。懐から丸薬の入った小瓶を取り出した。
それを見た時、どこかで感じた禍々しい物を感じて身体が強張る。
「これは、サマエルの毒を参考に作り出した模造品だ。先ずはこれを試す。他にも幾つか手段を用意している」
「サマエルの……!?」
かつて一誠やヴァーリにも大きなダメージを負わせた毒。そのレプリカ。人間が作れるとは思えないがこの禍々しい感覚は間違いなく。
「よく考えて返答してほしい。無限龍を匿っていたことを知られれば
「本気なの?そうなればどれだけの騒ぎになるか……」
「当然だ。もしこれが各勢力に知れ渡れば、無限龍を確保、もしくは滅ぼすために動かざるを得んだろう。なにせ、現在冥界は二天龍と無限龍の2匹を手元に置いているのだからな。これを危惧しない者はいまい。そのためにこの町で騒ぎを起こしていたしな」
駒王町は現在、各勢力に注目されている。そこで禍の団に怨みを持つ滅却師たちが動けば他の勢力も何かあるのではないかと注目するだろう。
その果てにオーフィスへと必ず辿り着く。
もし自分たちが敗れ、死ぬこととなっても次へと繋ぐことが出来るのだ。
選択を迫られたリアスは少しの間目を瞑り、強い意志で要求を拒否する。
「それがそちらの答えか?」
「えぇ。黒歌は私の愛しい眷属の家族。オーフィスとリリスも禍の団に利用されていただけでもうそんなことはしない。彼女たちは無害なドラゴンに過ぎないわ。なにより、この町で好き勝手したテロリストである貴方たちの要求を聞く必要もない。もしこの町を立ち去らないなら容赦なく滅し去ってあげる」
滅却師の言い分も理解できないではない。
だが、既に弓引いた以上、一方的に要求を呑むなどあり得ない。
ルートヴィヒはそうか、と席を立った。
「そちらの意志は分かった。ならばこちらも目的のために動くだけだ」
「……君たち滅却師は力無い人々を守るためにその力を振るってきた。どうだい。ここで怨みを胸にしまって原点回帰するのは。まだ間に合うよ、きっと」
滅却師の力は力無き人々を守るために。
彼らの先達はその想いで弓を引いて来た。
それを自分たちの怨恨で穢してはいけないデュリオは諭す。
しかしその首は横へと振られた。
「もしそれが出来るのなら、俺たちは禍の団と戦うために教会に連絡を取るなんてしなかったさ。一族皆殺しの怨恨が消えなかったからこそ、戻る道を捨てたんだ」
店の外へ出ると同時にルートヴィヒは姿を消していた。
次回から本格的に両者を対立させます。