(禁手化なしで)どうやって戦えばいいんだ!! 作:赤いUFO
幸福を未来にではなく過去にしか見ない者は客観的に見て憐れなのだろう。
過去に喪ったモノを慈しみ、癒され、未来への希望を捨てた。
時間は戻らず前にしか進まないと知っていながら過去にしか目を向けられなくなった者は、どうすれば良いのか。
踏みにじられたモノを置き去りにして、新しい幸福を見つけようと生きようとすると、急き立てるように過去が問い詰めてくる。
自分たちを忘れるのか、と。
そんなことはきっと自分が自分である限り不可能だ。
例え全ての目的を達したとしても、きっと自分には未来を夢見ることはないだろう。
幸福も安寧も、過去に置いてきたのだから。
「すみません」
滅却師たちに対応するために町を見回っていた小猫に見知らぬ人が声をかけてきた。
背丈から年齢は小猫と同じくらいの外国人だった。黒い髪は短いが、顔立ちが中性的で性別が少し判りにくい。
しかし声音が低いことからおそらくは少年と思われる。
「駅に行きたいんですけど道に迷ってしまって。教えていただきたいのですが」
尋ねられて小猫はここからそう遠くない駅への道を教える。
「ありがとうございます。助かりました」
最後に握手をして別れた。
このことを特に疑問を持たずに小猫は見廻りを再開した。
一誠とアーシア。それにロスヴァイセは滅却師たちの暴走を止めるべく町の巡回をしていた。
今は人気の乏しい区域を歩き回っている。
滅却師たちが今もオーフィスたちを狙い、町の人間に危害を加えているかと思うと怒りで沸騰しそうになる。
歩いているとさっきから町の至る所をチラチラと見ているロスヴァイセに一誠が首を傾げる。
「どうしました?ロスヴァイセ先生」
「えぇ。この区画に入ってからどうにも違和感を感じて」
「どういうことですか?」
「はっきりとは言えませんが、力の流れが少しだけ不自然に感じるんです。溜まっていた水の器に小さな穴を空けられて少しずつ抜かれて行っているような感じとでも言えばいいんでしょうか?上手く説明できませんけど」
「小猫ちゃんも滅却師さんたちに違和感を覚えると仰ってましたし、それと関係があるのでしょうか?」
「なら、調査は念入りにした方が良いな!どうします、ロスヴァイセ先生?」
一誠に質問にロスヴァイセは少し考えて指示を出す。
「駒王町の力の流れがどこに流れているのか。それを探しましょう。もし戦闘になった場合、単独なら様子を見ながら捕獲。2人以上、もしくは手に負えないと判断した場合は即座に撤退。今はイッセーくんも通常の神器でしか戦えませんし、慎重に行動しましょう」
「はい!」
ロスヴァイセの指示に2人は淀みなく答える。
そうして調査を開始する。
辺りを見回り異常を探る。
しばらく歩き回るが別段おかしいところは感知できずに焦りが生まれる。
すると、一誠とアーシアに声をかける2人が居た。
「おー!イッセーとアーシアちゃんじゃん!やっと見つけたぜ」
「松田!元浜!?」
話しかけてきたのはイッセーの悪友兼親友である松田と元浜だった。
「ちょっと2人を探してたんだ!今時間あるか?」
元浜がそう言うが今2人は調査の真っ最中である。さすがに2人について行って遊ぶ暇など無い。
「悪いけど、今忙しいんだ。後にしてくれよ」
「なんだよつれねぇなぁ。せっかくカミラちゃんが会いたいって言ってるのに」
「カミラ、ちゃん?」
聞き覚えのない名前にアーシアが首を傾げると待ってましたとばかりに元浜から説明をし始める。
「あぁ!つい最近知り合った子なんだけどさ。すげーかわいい子で。この間一緒に遊んだときなんて俺たちのほっぺにちゅーとかしてくれたんだぜ!」
デレデレと頬を緩ませて語る元浜に一誠は疑いの眼差しを向けた。
自分と同じように学園で軽蔑されている2人に近づく女の子。しかもほっぺにちゅーまでくれるらしい。
凄く怪しい。
きっとこいつらはATMにでもされているのではないだろうかと思う。
自分もここ1年で女の子と接近できたがそれだって命懸けの苦難があったからだ。
無条件で自分たちに近づく女の子などいるはずないのだ。
イッセーは諭すように2人の肩を掴む。
「……お前ら絶対騙されてるぞ。お前らに近づく奇特な女の子なんて早々いるはずないだろ?」
「イッセーテメェ!俺らだけじゃなくカミラちゃんまで馬鹿にするとか許さねぇぞ!」
「まったくだぜ!あのカミラちゃんが俺たちを騙すなんてある訳ねぇだろ!」
どうやら2人はかなりその子にお熱らしい。
今は何を言っても無駄だな、と思いイッセーは距離を取ることにした。
「わかったわかった。でも俺たちいまホントに忙しいんだ。その子に会うのはまた今度にしてくれ。向こうでロスヴァイセ先生も待たせてんだ」
「なんだよ、付き合いわりぃなぁ」
不満そうにする松田にアーシアがすまなさそうに頭を下げた。
「本当にごめんなさい」
「そっか。まぁでも、仕方ねぇか」
「あぁ、悪いな」
そう言って踵を返すとアーシアの小さな悲鳴が上がった。
「おいっ!?なにやってんだお前ら!?」
見ると、松田がアーシアの肩を掴んでその顔にナイフを突き付けていた。
「イッセー。俺たちもこんなことしたくないけどカミラちゃんのお願いなんだ」
どうにも様子がおかしい。いくらなんでもこいつらが誰かに。ましてやアーシアに刃物を突き付けるなんてありえない。
「そうだ。カミラちゃんがもし本当に来てくれなさそうだったらこういえば多分来てくれるって言ってたな。えーと、私はクインシィーです、だそうだ。何のことかわからねぇけど」
「!?」
イッセーとアーシアはその言葉に驚愕する。
「なぁ、イッセー。アーシアちゃん。大人しく来てくれよ。俺たちだってこんなことはしたくないんだ」
「やっぱり、この町が少しずつ侵されてるにゃん」
駒王町の力の流れを感じながら黒歌は1人、考察していた。
命の流れである生命力を扱う仙術を深く理解する彼女は町になにが起こっているのかある程度正確に理解できた。
「影を利用して別種の世界を構築しているって感じかにゃ?今は駒王半分近くがあっちの領域になりつつあるにゃん。しばらく家に引き籠ってたから気付かなかったにゃん」
真面目な顔で打開策を考えていると覚えのある気配が近づいて来た。
「姉さま」
「白音、何でこっちにいるにゃん?パトロールは向こう側のはずでしょ?」
黒歌が反対方向を指差すと小猫が頷いて答えた
「……はい。実は先日戦った滅却師を見つけまして。情報を得ようと尾行してたんです。この区域に入ってから撒かれてしまいましたが」
「危ないことするにゃん……」
小猫の単独行動に呆れながらも息を吐いて提案する。
「とにかく、敵を見失ったならここを離れるにゃん。下手に不意討ちされたら不味いし」
「……ですが姉さま」
不満そうな顔をする小猫に黒歌が首を振る。
「ここら辺を調べてちょっと解ったこともあったし、その情報を持ち帰ることが先決にゃん」
「……分かりました。そういうことなら」
渋々と言った感じだが納得した小猫に黒歌は頷き、話題を変えた。
「それにしても今日の夜は何かにゃ~。昨日食べた唐揚げは美味しかったし~。でも今日はお魚が食べたい気分にゃん」
「……姉さま。昨日食べたのはハンバーグです。呆けたんですか?」
「酷い言われようにゃん。それより帰ってゲームの専用装備をゲットするにゃ」
「それ、今朝手に入れたって言ってませんでしたか?」
「あれ?そうだったかにゃ?」
何気ない会話をしながらも黒歌はこの小猫が妹か確認していた。わざわざ離れたここに現れたことに違和感を感じたからだ。
(こんなどうでも良いことを淀みなく答えてるし、仕草とかも違和感を感じないし、考えすぎかにゃ?)
そう結論付けて早く帰ろうにゃん、と言いながら小猫に背を向けた。
「……はい、姉さま」
黒歌が背を向けた瞬間、小猫は光の弓矢を構え、黒歌に狙いを定めていた。
アーシアにナイフを突き付ける友人を殴って無理矢理奪い返した。
「大丈夫か、アーシア!!」
「は、はい!?でもお2人は!」
「分かってる!操られてんだ!」
親友を殴った後味の悪さに顔を顰めながら一誠はとにかくこいつらを気絶させて連れ帰ろうと決めた。
「悪く思うなよ、お前ら!」
指を鳴らして2人を気絶させようとする一誠だがそこで人が集まってきた。
だがおかしいのは彼らがその手に包丁やバットなどの何らかの武器を持っていることだ。
「あ~あ。やっぱり大人しく連れて来られるわけないか~」
1番後ろからに居た少女が前に出る。
金髪のおかっぱ頭で中学生くらいの少女だ。
「カミラちゃん……」
元浜が陶酔するような声で呼ぶとカミラと呼ばれた少女は小さく手を振る。
「初めまして、赤龍帝さん。わたしはカミラ。滅却師のひとりでーす」
クスクスと笑い自己紹介をする少女に一誠はアーシアを背に隠して警戒する。
見た目は小柄な少女だが油断は出来ない。
一誠は感情のままに問い質す。
「お前等、何が目的なんだよ!町の人たちを殺したり操ったり!狙いはオーフィスじゃねぇのかよ!」
「この町に来た最終目的はそうなるかな。でもただ捕まえて滅ぼすだけじゃ割に合わないと思わない、おにーさん」
「なんだと!?」
「だから先ずは無限龍の大切な人たちを奪っちゃおうって話になって。どうせそっちもわたしたちの邪魔、するんでしょう?なら戦力を削るついでに無限龍の精神にもダメージを与えようと思ったのよ。以前は何にでも無関心だったらしいけどお兄さんたちのおかげでそういうのも理解できるようになったんでしょ?なら先に心を追いつめようと思って」
「可愛い顔してゲスイこと考えるぜ!だから町の人たちを操ってんのか!!」
一誠の問いにカミラは肩を竦める。
「操るなんて言い方はひどいなぁ。わたしはただこの人たちと”お友達”になっただけだよ?」
そこでカミラは小さな弓を作る。
「わたしの滅却師としての固有能力は”
「なにが協力だ……!」
吐き捨てるように呟く一誠。
ようするにここの人たちは目の前の少女に操られているのだ。
「こんな悪いことをするなら女の子だからって容赦しないぜ!」
通常の神器を纏い、構えを取る一誠。しかし、それにカミラは嫌そうな顔をした。
「やめてよ。わたし、滅却師の中で1番弱いんだから。だからみんなに協力してもらわないと。ね?みんな!」
『おぉおおおおおおおっ!!』
熱狂的な叫び声と共に手にした武器を掲げるこの町の一般人たち。
合図するようにカミラが挙げた手を下ろした。
「それじゃあ、お願いね!」
先ず向かってきたツナギを着た男がチェーンソーを持って襲いかかってくる。
「クソ!ライザーの眷属みてぇに!」
ブンブン振り回すチェーンソーを躱しながら蹴りを叩き込んで気絶させる。
一般人相手に倍加を使う必要はなく赤龍帝の籠手を盾代わりに使いながら次々と相手を気絶させていく。
力加減がやや難しいがなんとか殺さずに済ませていた。
背後からの気配を感じて一誠は回し蹴りを繰り出す。
すると――――。
「なっ!?」
そこには小学校低学年ほどの男の子が金属バットを持って襲いかかってきたのだ。
既で止めようとしたが間に合わず、男の子の肩に蹴りが当たり、骨が砕ける感触と共に飛ばされた。
「あー!ひっどいなーお兄さん。そんな小さな子をけるなんてー」
ヘラヘラと笑いながら棒読みでそんなことを言う敵に怒りが増したが。今は子供を蹴り飛ばしてしまった感触によるショックが大きかった。
「アーシア、逃げるぞ!先ずは先生と合流だ!!」
「は、はい!!」
次にあんなことをしてしまったらそれだけで戦意喪失してしまうと思い、頭の良いロスヴァイセに打開案を考えてもらおうと思ったのだ。
少し走るとこちらに向かってくるロスヴァイセが居た。
「お2人とも!何かありましたか!?」
「町の人たちがたくさん滅却師に操られてて!松田や元浜も、敵に……!」
「!?そうですか。なら、早く対策を講じないと。それでイッセーくん。お願いしたいことがあるんですが」
「なんでも言ってください!とりあえず町の人たちを正気に戻さないと」
焦る一誠にロスヴァイセから信じられない言葉が出て来た。
「ここで死んでください」
「え?」
振り向く間もなく魔術で作った光の剣が一誠の背中から突き刺さり、体を斬る。
アーシアの悲鳴が響き渡った。
「な、なんで……」
膝をついて首だけロスヴァイセに向けながら問うと彼女はすまなさそうに答える。
「ごめんなさい、イッセーくん。カミラちゃんにお願いされたんです。だからこうしないと……」
「残念でしたー。そのお姉さんはもうこっち側だよ?」
現れたカミラがクスクスと笑いながらロスヴァイセに近づく。その間に一誠に駆け寄ろうとしたアーシアを松田と元浜がアーシアを力づくで押さえ込んだ。
「わざわざ別行動を取ってくれて助かっちゃった!お兄さんがお友達と話してる間にその人はわたしと友達になってくれたわ」
少しだけ屈んだロスヴァイセの頭をカミラが撫でてやると彼女は恋する乙女のように顔を赤くし、悦んでいる。
それが終わるとカミラは松田と元浜に拘束されたアーシアへと近づいた。
「実はわたしの目的はお姉さんだったんだよねー」
カミラに頬を触れられて掠れた悲鳴を上げるアーシア。
そんなアーシアに一誠が叫ぶ。
「アーシア!そいつはアーシアの禁手を奪う気だ!絶対に禁手化するなっ!」
一誠の叫びにカミラはなおも笑みを崩さない。
「違うよ、お兄さん。わたしの目的はお姉さん自身だよ。禁手って奪ったはいいけど相性的に使い辛かったり、発動条件が複雑だとそもそも奪っても使えないこともあってさ。ほら、例えばシトリーの女王さんとか。禁手を奪ったのに使えなくてガッカリしてたよ?その点わたしなら使い手の心を奪っちゃえば禁手に至るほど使いこなした使用者がまるまるこっちに引き込めるでしょう?」
カミラが何を言っているのか理解すると一誠は傷を無視して起き上がろうとするがその前にロスヴァイセの魔術で足を貫かれた。
脅えた表情でカミラを見るアーシア。
そんなアーシアにカミラは優しく語りかける。
「だいじょうぶだよ。お姉さん、とってもわたし好みだから。すごく大切にしてあげるね!」
作られた桃色の弓矢。
それがアーシアの胸へと向けられる。
「やめろ……!やめろぉおおおおおおおおっ!?」
一誠の叫びは虚しく、矢は放たれた。
今回から後書きで滅却師側のキャラ紹介を。
カミラ。
年齢は13歳。金髪のおかっぱで赤い目をしている。
滅却師側で最年少で戦闘能力は1番低いが能力で諜報活動とか主にやってる。
原作キャラたちの情報が漏れてるのは8割はこいつの所為。
一番年齢が上であるマヌエラには同性ということもあり、べったり甘えるがマヌエラがいないところではとある理由から仲間に対して素っ気ない態度を取っている。
固有能力”The Love”
対象に桃色の矢を打ち込むと強制的に自分に強い好意を抱かせる。
この能力で敵同士を同士討ちさせたり、情報を聞き出したりしている。
ただし、意志が強い者やオーラ量に差がある相手には効きづらい。
本人はこの能力を相手に自分の言うことをなんでも聞かせられて便利だが逆に強制的に相手がイエスマンになるのでつまらない能力とも思っている。
この能力を初めて見た時作者はコレ、エロゲーで使う能力じゃね?と思った。