(禁手化なしで)どうやって戦えばいいんだ!!   作:赤いUFO

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本音を言うと滅却師側10人も要らなかったな。


5話:犠牲のない戦争などない

 生まれの平等など存在しない。

 資産家の家に生まれる者

 頑強な肉体に育っていく者。

 物覚えが良かったり理解力の高い者。

 愛らしい容姿を持つ者。

 プラスでもマイナスでも人間という枠組みで生まれの違いは千差万別。

 ましてや種族が違えばそれはより顕著に顕れるだろう。

 スタートも歩む速度も同じではないのは当たり前であり、誰もが痛感することだ。

 だからこそ競争が生まれ、努力の価値は光る。

 

 今より裕福な生活がしたい。

 誰より強くなりたい。

 もっと多くのことが知りたい。

 周りに好かれたい。

 その願いを叶えるために支払った時間と努力の代償。その方向性はともかく決して馬鹿にされる類いのモノではないだろう。

 

 それでも、努力という積み上がった代償を生まれだけで踏みにじれる絶対(理不尽)がこの世界に存在するのも事実だ。

 

 

 

 

 

 

「あっ……うう……!」

 

 その苦痛の声を出したのは誰だったか。

 自分だったかもしれない。それとも近くにいる家族だったかもしれない。

 地に伏している自分たちを見下ろしていた男がニヤニヤと

 

「あ~あ~。滅却師が出張ってるっつうから出向いてみりゃ、とんだ肩透かしだな~おい!リリスちゃんの遊び相手にもならねぇじゃか」

 

 肩透かしだったと言わんばかりの態度に男は盛大に息を吐いた。

 

「まぁでも安心したぜ。あのユーちゃんみたいなのがま~た生まれたのかとも思ったが、その片鱗すら及ばねぇ。意外性は好むところだが、アレの再誕はイレギュラーが過ぎるからなぁ」

 

 男はうつ伏せになっているマヌエラの髪を掴んで無理矢理自分に視線を向けさせるとそこにはこの世の全てが自分の玩具と言わんばかりの目をした男の表情があった。

 

「お前さんらも律儀だよなぁ。ちょっとこっちの情報流してやりゃ馬鹿みたいに喰いついてくる。お前らだけでうちのリリスちゃんの遊び相手が務まると本気で思ってたのかね?」

 

 男の後ろで空を見上げている少女。禍の団のトップが現れると情報を掴んで強襲に踏み切った。

 その結果は戦闘にすらならなかった。

 こちらの攻撃が一切通じず、一撃で全てを決する攻撃を無制限に撃ってくる。

 そこに技術など存在せず、ただただ圧倒的な暴力こそがそこにあった。

 

「滅却師か……懐かしいねぇ。昔お前らの御先祖様に七十二柱の内、12、3の家が滅ぼされてなぁ。結局、当時は他の神話体系に頭下げて協力を取り付けてユーちゃんを倒したんだぜ?あの時のアイツの暴れっぷりはさすがの俺も身震いしたぜ!この世の終わりかと思ったね!その後も細々と続いた滅却師の家系も悪魔側が大層な粛正を行ったっけか?」

 

 今の滅却師には関係のない昔話をしながら次に聞き捨てならない言葉が飛び込んだ。

 

「だからよ、お前さんらの故郷を何年か前にシャルバに教えてやったらす~ぐ行動を起こしやがんだもんよ。あの時は流石に早まったと思っちまったよおじちゃんは!もっと楽しみようもあったろうになぁ!!まさか生き残りが居たとも思わなかったぜ!仕事が雑だねぇ!」

 

 声を上げて笑う中年にマヌエラは歯をガチガチと鳴らした。

 あの日、全てを失った地獄。

 未だに夢に見るあの地獄を、この男の道楽の所為で起こされたのか。

 

 マヌエラは男の腕を払うと立ち上がり、術式を練る。

 

聖象(キルヒエンリート)―――――聖域礼賛(ザンクト・ヴィンガー)ッ!!」

 

「こいつは――――っ!?」

 

 マヌエラを中心に展開される光で作られた五芒星の柱が多く出現する。

 滅却師の攻防一体の極大防御呪法。

 この中に入り込んだ者は即座に光によって斬り裂かれる。

 

 そして術式の中に居る男の体が斬り裂かれようとした時。

 

「ん」

 

 空を見上げていた少女が術式の中に立ち入ると聖域礼賛はその術式ごと踏み潰された。

 

「リリス、リゼヴィムまもる。おしごと」

 

 舌ったらずな子供の声で言うと男は口元を吊り上げた。

 

「今のは流石にビビったぜ!まぁあの程度の術で俺が殺せるわけねぇが、おじいちゃんちょっと驚いちゃったよ!」

 

 男が黒い少女の頭を撫でる。

 

「最後はちょっと面白かったがもう必要ねぇなぁ!リリスちゃん、このゴミを始末してくれ」

 

「わかった……」

 

 黒い少女の手の平に膨大なオーラが集まる。

 それは容易く小さな町くらい消し去るほど膨大な力の波だった。

 

 生まれの平等など存在しない。

 蟻がいくら努力しようと子供が足で踏めば潰した感触すらなく死んでしまう。

 マヌエラたちが積み上げた訓練の価値は目の前の少女(ドラゴン)にはその程度の価値しかないのだ。

 

 

 技術など何もない力を集めて放っただけの一撃が滅却師たちを飲み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 リアス・グレモリーは目に映る光景に奥歯を噛んで鳴らした。

 ここ1年で何かと命懸けのトラブルが多く、死線を潜り抜けてきた彼女は同世代に比べて実戦経験は抜きん出ていると自負している。

 その中で何とか今日まで生き延びてきた。

 しかし目の前の光景。

 それに何も感じない程彼女の心は冷めきってはいなかった。

 

 30程の動く死体(ゾンビ)。それは最近行方不明者として名を連ねている者たちだった。

 その後ろで眠たそうな眼で頭を掻いたリアスたちと同じ年頃の男が怠そうに息を吐く。

 

「さて。見ての通り、こいつらはただの死体だ。遠慮なく消し飛ばしてみるといい」

 

「この外道っ!?彼らを殺しただけでは飽き足らず、死体として操るなんて――――!」

 

 リアスの糾弾を男がは特に気にした様子もなく受け流す。

 

「別に俺が殺したわけじゃないけどな。そちらからすれば同じことか。俺の能力は”The Zombie(ゾンビ)”だ。俺の血を混ぜた死体はこうして俺の傀儡となる」

 

「……そんなことのために町の人間を殺して回っていたの!」

 

「これはただのあと始末だ。こいつらを殺したのは別の理由で、俺はただ転がってきた死体を利用させてもらってただけだからな」

 

「最低な発想ですわ……っ!」

 

「そこら辺は同意するな」

 

 朱乃の言葉を認めて息を吐く滅却師。

 

「エゲツナイとは俺も思うが、うちのトップがアンタらが無限を渡すまで追い込むのをご所望だ。悪いが、取れる手段は全部取らせてもらう」

 

 滅却師が合図をするとゾンビたちが一斉にリアスたちに襲いかかる。

 

「ギャスパー!!」

 

「はいぃいいいいっ!?」

 

 隠れていたギャスパーがリアスの合図で神器を発動させて真正面に居るゾンビたちを時間ごと停止させる。

 当然、その中には滅却師の男も含まれていた。

 

「あの男を拘束するわ!」

 

 ゾンビ化させた滅却師を殺したところで彼らのゾンビ化が解ける保証はない。既に死体である彼らを救えるかはわからないが、先ずは目の前の男を捉えて情報を聞きだす必要がある。

 術で拘束しようとする。

 

 しかし、それより先にギャスパーに向かって遠くから光の一矢が放たれた。

 光の矢がギャスパーの肩を射抜く。それによって集中が切れたことにより、目の前の滅却師やゾンビたちが再び動き出す。

 

 狙撃に驚いているリアスたちにゾンビ使いの滅却師が呆れたように発言する。

 

「驚くことじゃねぇだろ。弓矢ってのは元々遠距離から敵を射抜く武器だ。そして、アイツの矢に射抜かれた以上、その嬢ちゃんの神器はもうまともに使えねぇよ」

 

「馬鹿に、しないでください……僕だってグレモリー眷属の男です。これくらいで……っ!?」

 

 歯を喰いしばって立ち上がろうとするギャスパーだが、足が震えて尻もちをつく。

 足腰だけでなく、体全体を震わせていた。

 

「あ、アレ?なん、で……?」

 

「わるいな。お前はそっちの陣営の中で1番厄介そうなんでな。ここで消えてもらう」

 

 手にした柄から光の刀身を出して出して震えるギャスパーに襲いかかろうとする。

 奇襲をかけさせるために離れた位置に配置したのが完全に裏目に出てしまった。

 

 ゾンビがリアスたちの行く手を阻むが、リアスは一瞬の躊躇を越えてゾンビたちを滅びの魔力で消し去った。朱乃も、隙間を縫って雷光で滅却師を攻撃してギャスパーから離そうとする。

 

「ギャスパー、逃げなさい!!早くっ!」

 

 指示を出すがギャスパーの耳には届いていないのか顔を手で覆っている。

 

 ギャスパーの瞳に映っているのは彼の大切な幼馴染であるヴァレリーだった。

 彼女がこちらに振り向いた瞬間、その顔が、体が強酸でもかけられたかのように溶かされ、骨が剥き出しになる映像が映っていた。

 

「うわああああああああああっ!?あぁっ、あぁあああああっ!?」

 

 かつてない程の絶叫を上げるギャスパーにリアスと朱乃はただ事ではないと察してギャスパーを回収しようと動き、朱乃が滅却師の足止めをしてリアスが助けようと動く。

 

 襲いかかってきた学生の格好をしたゾンビの1体に滅びの魔力を放つ。

 両腕を滅すると学生のゾンビが()()でのた打ち回った。

 

「え?」

 

 ゾンビなら痛みを感じない筈だがどうみても演技には見えない。そもそもそれだけの感情が残されているのか疑問なのだが。

 その疑問は朱乃と戦いながら滅却師が今思い出したとばかりに答えた。

 

「言い忘れてたが。ゾンビの中に何割かは俺らの仲間が操ってるただの人間が混じってるぞ。傍目には区別し難いから気をつけねぇと、生きてる人間まで殺しちまうぞ」

 

「――――っ!?貴方たちはどこまでっ!?」

 

 怒りで頭が沸騰しそうになると、新手――――恐らくギャスパーを射抜いた滅却師が現れた。

 

「遅れて済まない、ドミニク」

 

「構わねぇよ、エト」

 

 エト、と呼ばれたゾンビ使いの滅却師、ドミニクと同じ年頃の少年だった。

 彼がギャスパーの傍に寄るのをリアスが牽制しようと滅びの魔力を放とうとするが、ゾンビたちが遮ってくる。

 この中の何人かは操られているだけの人間だと思うと放つのを躊躇ってしまう。

 

 歯を喰いしばってギャスパーへと呼びかけた。

 

「ギャスパー!逃げなさい!ギャスパーっ!?」

 

「あ、あ――――」

 

 動けないギャスパーに歯痒い思いをして空から助けようとするもエトの創り出した物に目を見開いた。

 彼が握っている剣。それは、祐斗の禁手である聖魔剣だった。

 

「仲間の剣で討たれるのなら、君も少しは報われるだろう?さようなら」

 

「止めなさい!やめてぇええええええええっ!?」

 

 リアスの叫びも虚しく、振るわれた聖魔剣はギャスパーの首に通されると、頭部が地面へと落ち、首から血が噴水のように噴き出した。

 

「あ、あぁ――――!?」

 

 リアスの悲鳴がその場の音を支配した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 胸を桃色の矢で射抜かれたアーシア。

 数秒の間を置いてカミラに視線を合わせるとロスヴァイセと同じ熱っぽい視線を向けた。

 

「わたし、カミラよ。よろしくね、おねぇさん!」

 

 握手をするとアーシアは熱っぽい表情をして息を吐く。

 カミラは近くに落ちていた包丁を拾ってアーシアに差し出した。

 

「ねぇ、お姉さん。わたしのお願い。この包丁で赤龍帝を殺してくれないかなぁ?今なら、お姉さんでも簡単に首が刺せるでしょう?」

 

 仕草だけ見れば愛らしく、とんでもない”お願い”をする少女に一誠はギリッと歯を鳴らした。

 

「テメェッ!?」

 

 アーシアはカミラから包丁を受け取る。

 そして逆手に持った包丁を倒れている一誠の上に持ってくる。

 

「ごめんなさい、イッセーさん。悲しいですけど、これもカミラちゃんの為、なんで……」

 

「アーシア……?」

 

 アーシアは手にしていた表徴がブルブルと震えて動きが停まっていた。

 

「わた、しが……イッセー、さんを……」

 

 呼吸を荒くし、涙を流しながら踏み止まっている。

 それを見たカミラが意外そうに目を丸くした。

 

「ヘェ……意外に心が強いのね。ふふ……本当に気に入っちゃいそう」

 

 カミラはアーシアに近づいて包丁を取り上げた。

 

「カ、ミラ、ちゃん、私……」

 

「いいよ。どうせここで殺してもあまり意味が無かったし。ごめんね、辛いことさせて」

 

 取り上げた包丁を投げ捨てて震えるアーシアを抱き寄せると、何かの術を行使したのかアーシアはその場で意識を失ってしまった。

 

「アーシア、から……離れろ……!」

 

「ごめんね、お兄さん。このお姉さん本当に気に入っちゃったから。私が貰っていくわ」

 

 言うと、黒い影がカミラとアーシアを覆う。

 

「待てよっ!?」

 

 何とか動こうとするがすぐにロスヴァイセに取り押さえられた。

 

「またね、お兄さん!」

 

 包んでいた黒い影が消えると2人も同時に消えた。

 

「ロスヴァイセ先生、放してくれっ!?」

 

「え?あ、はい!?」

 

 言うとロスヴァイセは慌てて一誠から体を離す。

 一誠は壁を支えに立ち上がった。

 

「あの、操られてたんじゃ……あの子の命令は……?」

 

「え?その、今はカミラちゃんが居ませんから。あああああっ!?私、置いていかれてしまったんですね!?」

 

 ショックを受けているロスヴァイセをどうしたものかと思っていると聞き覚えのある声が聞こえた。

 

「赤龍帝ちん?」

 

「黒歌!?無事だった……っ!?」

 

「ハハ……ごめん、下手打ったにゃん」

 

 現れた黒歌は左肩を血を流しており、他にも体の幾つかに傷があり、結わえてあった髪も解けていた。

 

「あいつら、白音に化けて……やられ……」

 

 言うと、黒歌は一誠に倒れ込んで意識を失った。

 

「黒歌……黒歌ッ!?」

 

 一誠が呼んでも黒歌の瞼が上がることはなく、荒い呼吸だけが続いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ドミニク。
18歳で常に顔色が悪い長身細身の男。猫背。
結構めんどくさがり屋の性格で同い年のエトウィンとは仲が良いが彼に淡々と仕事の催促をされることには辟易している。
今回は出番が無かったが実はジャンヌを殺した犯人。禁手も奪っている。
能力は”The Zombie”
死体に自分の血を混ぜることで自分の傀儡にする。
悪魔や堕天使なら生きたまま血を浴びせればゾンビ化できるが、上級悪魔クラスだと結構血を使うため一度に多くはゾンビ化できない。


エトウィン。
愛称エト。18歳で中肉中背で黒い短髪で目つきが鋭い。
祐斗の禁手を奪った滅却師で仲間内では1・2を争う真面目。
能力は”the Fear”
矢に当たると強制的に恐怖を呼び起こす幻覚を見せる。



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