(禁手化なしで)どうやって戦えばいいんだ!!   作:赤いUFO

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6話:広がる悪意

「ギャスパーが殺されたって……どういうことだよリアス!?」

 

 負傷した黒歌を連れ帰ってきて手当てや各々の心が落ち着くのに一晩過ぎて一誠がギャスパーの死を知ったことでリアスへと詰め寄る。

 リアスはそれを一度目を閉じて淡々と説明した。

 

「言った通りよ。私たちは滅却師側に良いようにやられてギャスパーは首を落とされて殺されたわ」

 

 冷淡に聞こえる声だが掴んでいる腕が震えているのを感じ取り、一誠はクソッ!と吐き捨てて手を離した。

 

「ギャスパーの遺体は今ヴァレリーに預けてある。私たちは私たちに出来ることをしましょう」

 

「なら、先ずは情報の整理だね。イッセーどん。滅却師に操られた人たちは冥界で治療することになったんだよね?」

 

 その質問に答えたのは一誠ではなくこの場に居たソーナだった。

 現在この部屋にはリアス、朱乃、一誠、ソーナ、椿姫、デュリオ、黒歌、小猫だ。

 他の面々は今も町をパトロールしている。

 

「はい。彼らはかけられた能力の解析と解除を試みます。ゾンビ化された方々とロスヴァイセ先生も同様です」

 

「その事情説明とどうにかフェニックスの涙を譲って貰えないかレイヴェルには交渉に行ってもらったわ。アーシアが連れ去られた以上、治癒する道具はいくらあっても足りないから」

 

 リアスの言葉に一誠が悔し気に壁を叩いた。

 

「あの子。変な能力を使ってアーシアとロスヴァイセ先生を操りやがって……許せねぇ」

 

「自分に強制的に好意を持たせる能力、か……こっちは死んだ者をゾンビに変える能力と、おそらく、恐怖を肥大化させる精神干渉系の能力だったわ」

 

「それと、見た目と記憶をコピーする能力もにゃん」

 

 晒した肩に包帯を巻いた黒歌が付け足す。

 それにリアスが疑問を浮かべた。

 

「姿はともかく、記憶も?」

 

「えぇ。別の場所に居た筈の白音が現れたから不思議に思ってカマかけてみたんだけど、全然引っかからなかったにゃん。仕草とかも違和感ないし……背中を向けた瞬間にズドンだったにゃん。なんとか初撃を躱して逃げたんだけど……そこで赤龍帝ちんの匂いを辿って合流したにゃん」

 

「姉さま……」

 

 それでさっき小猫の顔を見た際に警戒していたのか納得し、また自分の姿で姉を攻撃した滅却師に小猫は怒りを覚える。

 それに一誠はさらに怒りで顔を歪めた。

 

「あいつら!汚い手ばっか使いやがって!」

 

「向こうはこちらの情報をある程度持っていてこちらはほぼ情報無し。戦いにくいですわ」

 

 朱乃も精神的疲労を隠しきれずに息を吐く。気丈に振舞っているが、彼女もギャスパーの死に堪えているのだ。

 

「せめて、むこうの根城が判れば……」

 

「あぁ。それなら大方の予想はついたにゃん」

 

 黒歌の言葉に皆が注目する。

 

「本当なの、黒歌!?」

 

「まぁね。アイツらは影の中にレーティングゲームのフィールドみたいな世界を作ってこっちに出入りしてると思うにゃん」

 

「影に……」

 

「そう。私の感覚だともう駒王町の半分くらいはあっちの領域に手が伸びてるんじゃないかしら?徐々にそれも伸びてきてるにゃん」

 

 黒歌はテーブルに広げてあった町の地図を指でなぞって滅却師側の領域を示す。

 

「なんて非常識な」

 

「ですがそれならいくら調べても彼らの所在が解らなかったのも頷けます。それに戦闘も区切られた地区内かその近辺で行われていたのも」

 

「でも相手の場所が判ればこっちから乗り込めるぜ!!ギャー助の仇を討って、アーシアを取り戻す!」

 

「無理にゃん」

 

 一誠が気合いを入れると黒歌がバッサリと否定する。

 

「な、なんで!?」

 

「影に入る術式が解らないとどうにもならないにゃん。せめて滅却師のひとりでも捕まえないと」

 

 せっかくやる気を出したのにこれかと意気消沈しかけるがすぐに考えを変える。

 

「でも敵をひとりでも捕まえられればどうにかなるんだ。これ以上アイツらに好き勝手はさせねぇ!」

 

 掌に拳を打ち付ける一誠だが、リアスも頷いた。

 

「敵がやってくる地区が判ったのも大きいわ。使い魔も含めて警戒に当たらせましょう」

 

 そう結論を出すと、オーフィスが現れる。

 

「どうした、オーフィス?」

 

 変身能力を失ったオーフィスは今は大人の女性の肉体だがその仕草は少女の時と何ら変わりない。

 だがその表情には陰りがあった。

 

「ギャスパー、殺された。アーシア、連れ去られた。それは、我の所為?我がここに居るから、みんなが傷つく?」

 

「!?」

 

 オーフィスの問いに一誠は目を見開く。

 

「もしそうなら、我が彼らの所に―――――」

 

「ダメだっ!」

 

 その言葉を遮り、一誠が声を上げる。そしてオーフィスの肩を掴んだ。

 

「オーフィスの所為じゃない!絶対にオーフィスは何も悪くない!滅却師の奴らが勝手なこと言って因縁をつけてきてるだけなんだ。ギャスパーの仇は俺たちが討つし、アーシアも取り戻す!だからオーフィスが気に病むことなんて何にもないんだ!」

 

 一誠はそう言ってオーフィスを励ますが、曇った表情は一向に晴れず、俯いている。

 こんな表情を家族にさせる滅却師たちに一誠は怒りを募らせる。

 例えどれだけ生きていようとこのドラゴンの心は未だ幼い子供のままだ。そんな彼女を狙い、あまつさえ傷つける滅却師が一誠には許せなかった。

 

 

 そう話を区切るとソーナの携帯がなった。

 

「はい。どうしました?――――っ!?そうですか!、こちらもすぐに向かいます!」

 

「どうしたの、ソーナ」

 

「滅却師たちが現れました。やはり区切られた地区の近くです。場所は2ヶ所。内、片方はイッセーくんの禁手が確認されています」

 

 全員の顔が一気に強張った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

滅却師(テメェら)なんかが、兵藤の禁手(それ)を使うんじゃねぇよ!!」

 

 通常の神器で見慣れた赤い鎧を纏う滅却師と敵対しながら匙は吠える。

 しかしその突進はレーザー砲のような一矢に中断された。

 

「ただの神聖滅矢(ハイリッヒ・プファイル)でここまでの威力が出るかよ。ハッ!大したもんだよなぁ!!」

 

 興奮したような声で射る矢は全て必殺の威力。それにこちらも切り札(禁手)が使えないときた。

 そしてここにいるのは敵ひとりではない。

 

「っ!?遠慮無しだね!」

 

 大量に創った魔剣を盾にして祐斗は敵の矢を防ぐ。

 しかし、矢は直ぐに大爆発を起こして祐斗の身体を吹き飛ばした。

 今は祐斗の神器でギリギリ対応できているが、これ以上手数を増やされたら押しきられる。

 

 幸いなのは敵を人のいない場所に誘い込めて結界でこの場を隔離出来たことだ。お陰で今は周りを気にせず戦えている。

 

(でも、向こうはイッセーくんの禁手を纏った滅却師と強力な爆撃を使う敵。それに破壊された魔剣たちを見る限り、矢が爆発してるのとはちょっと違う?)

 

 敵の能力を考察しているとイリナがオートクレールと反対側に持った光の槍を投げつける。

 光の槍を高速で移動し、躱すとお返しとばかりに矢を射ってきた。

 それをオートクレールで斬り払おうとするイリナ。

 

「ダメだ!イリナさん!」

 

 祐斗がイリナを突き飛ばして強制的に矢を避けさせる。

 

「木場くん?」

 

 驚いたイリナが祐斗を凝視する。

 それに滅却師が手を叩いた。

 

「今のは良い判断だったねぇ!もしボクの矢を受けていたら、その剣、爆弾に変えられてお前を吹き飛ばせたのにねぇ!」

 

「爆弾に、変える……?」

 

「そうだよぉ。ボクの能力は”The Explode(爆撃)”。ボクの矢に触れた物は即座に爆弾に変えられるんだぁ!!」

 

 つまり、防御不可の攻撃。

 武器で受けようものならそれ自体が爆弾に変えられる。

 

「幸い、一度に射る矢の数はそう多くない。なんとか避けながら接近して……」

 

「なら、これならどうだなっ?」

 

 懐から取り出した円盤。それを見て祐斗たちは驚きの顔をする。

 円盤の黒い紋様が解放されるとそれが滅却師の姿が変化する。その姿には見覚えがあった。

 

「ヘラクレスの禁手!?」

 

「……そういえば、名乗ってなかったねぇ!ボクはパウロ。”the Explode”のパウロだぁ!!」

 

 構えた弓と全身から突き出たミサイルに似た突起物が一斉に射出された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こ、のぉ!!いい加減斬れろっ!!」

 

「軽いってんだよ!」

 

 別の場所でシトリー眷属の騎士であるベンニーアと木場祐斗程の髪の長さの金髪の少女が戦っていた。

 ベンニーアが繰り出す鎌の攻撃を腕で受け止める滅却師。

 受け止めた鎌を無造作に払ってベンニーアの体を弾き飛ばす。

 

 短髪少女の滅却師の後ろには姉妹なのか似た顔立ちをしているが髪の長い少女がシトリー眷属との戦いを観戦している。

 

(さっきからあっしの鎌が全然通らねぇ!それに腕に模様みたいな物が浮かんでるけどそれがこいつの能力か、それとも滅却師全員の能力か)

 

 速度で翻弄しながら敵を考察するも答えが出ず、少しずつ情報を集める。

 そんなベンニーアの攻撃の隙間を縫って戦車である由良翼紗が攻撃を仕掛けた。

 

「ハァッ!!」

 

 繰り出される渾身の一撃。

 それが滅却師の腹に突き刺さる。

 

「どうだ、少しは……」

 

「ってぇな!クソッ!!だけど、お前……アタシに触れたな?」

 

 腹に突き刺さった拳に触れる。

 すると、翼紗の腕があらぬ方向に曲がり始めた。

 

「あ、ガァアアアアアアッ!?」

 

 不自然に折り畳まり破壊される腕の痛みに絶叫する翼紗。その声を聴いてベンニーアがとっさに翼紗の腕を斬り落として背を引っ張って後退させる。

 

「……っ!?すま、ないっ!」

 

「なんだ今のは!なにされたのか全然わかりやせんぜ!?」

 

「解らん。アイツに触れた瞬間腕を畳まれ、た」

 

 汗をびっしょりと流しながら斬った腕から流れる血を魔力で焼いて無理矢理止める翼紗。

 

 接近することを躊躇っている2人に後ろに居た長髪の滅却師がぼそりと呟く。

 

「相変わらずエグイね。それにターニャもう少し範囲を伸ばしたら?」

 

「仕方ねぇだろ!下手に伸ばすとアタシも痛ぇんだから!敵が触れた個所から繋がるのが手頃なんだよ!つうか、そろそろそっちも動けよシャルロッテ!」

 

 吐き捨てるように言い返すターニャと呼ばれた滅却師。

 それにそうね、と後ろに控えていたシャルロッテが動く。

 

 それにシトリー側も控えていた僧侶の草下憐耶が動く。

 幾つもの人工神器の仮面を出現させて滅却師2名を取り囲む。

 

「翼紗ちゃん!ベンニーアちゃん!一度引いて!すぐに巴柄ちゃんたちが来て……っ!?」

 

 くれる、と言おうとしたが、後方に居たシャルロッテの矢が打ち込まれて地面に倒れた。

 同時に出ていた仮面も消える。

 

「憐耶っ!?」

 

 倒れた憐耶を呼ぶが彼女は小刻みに身体を動かすだけで身動きが取れないでいた。

 

「申し訳ありませんが、貴女たち全員は観察済みです。ここからは一方的に処理させてもらいます。ターニャ」

 

「わぁってるよ!」

 

 高速移動し、憐耶の下まで移動する。

 

「先ずはアンタからだ。悪く思うなよ」

 

 ターニャが首を掴もうとした瞬間、翼紗がいち早く動いた。

 斬り落とした右手の代わりに左手で突きを繰り出す。

 しかしその攻撃はあっさりと躱されて翼紗の首を鷲掴みにした。

 

「お前から死にたいってんなら望み通りしてやるよ。心配すんな。どうせすぐに全員同じように殺してやる」

 

「ぐ、がぁっ!?」

 

 腕を放させようと動く前に翼紗の体に変化が起きた。

 まるで水に濡れた雑巾が絞られるように翼紗の体が捻じ曲がっていく。

 僅かな呻き声を最後に万力で捻じられたように翼紗の身体は元の原型が分からない程に異様な死体へと変えられた。

 

「先ずはひとりだ」

 

 翼紗だったモノを投げ捨てる。

 それを見たベンニーアはひっ、と小さく声を上げて腰を抜かしてその場に座り込んだ。

 ベンニーアは死神と人間のハーフだ。

 こと死体に関してはある程度見慣れてるし、戦う以上、死ぬ可能性は常に考えている。

 しかし、これは違う。

 こんな死に方は彼女の想像の範囲を明らかに逸脱していた。

 

「あ、あ、ああ、――――っ!?」

 

 その場で失禁し、自分が翼紗と同じ死体に変えられる恐怖で動けなくなる。

 

「悪いな。この町に居るD×Dの連中は皆殺し決定なんだわ」

 

 次に地面に伏している憐耶にその手が伸びる。

 

 やめろと叫ぼうとするが声が上手く出ない。その手が伸びていくのをベンニーアは見ていることしか出来ずにいるとターニャが後方へと飛び退いた。

 

「あぁ、良い反射神経です。それに未知の能力が2つ。これは、久々に楽しめそうですね」

 

 その場に似合わない涼やかな声が場に響いた。

 現れたのは眼鏡をかけた紳士風の男。

 手には最強の聖剣を携えながら、その表情には隠し切れない喜びの表情が浮かんでいた。

 

「ルフェイから連絡を受けて来てみましたが、どうやらハズレではなかったようだ」

 

 最強の聖剣使い。アーサーペンドラゴンは静かに手にした聖剣を構えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 状況は明らかに押されている。

 赤龍帝の鎧を身に付けた滅却師は匙とゼノヴィアが何とか抑えているが、イリナと祐斗が相手にしていた滅却師はヘラクレスの禁手とその矢が合わさり、避け続けることしか出来ない。

 爆音に次ぐ爆音。

 音が休まる気配はなく、町が蹂躙されていく。

 

「もう!いくら人が居ないからってっ!?」

 

「さすがにこのままじゃ……!」

 

 いつかはやられる、と思いながらも決定打が浮かばないでいた。

 そこで、聞き覚えのある声がした。

 

『Divide!』

 

 その声と共に滅却師の矢の威力、速力共に大幅に軽減した。

 

「これは……」

 

 驚いていると祐斗たちが相手にしていた滅却師に棍が伸びる。

 不意打ちで伸びた棍をパウロはギリギリのところで躱した。

 

「お、避けるかい!今のは不意を突いたつもりだったんだがねぃ」

 

「兵藤一誠の禁手を敵が使っている。ということは、黒歌から来た情報は本当だったな。これは、一筋縄ではいかないか」

 

「君たちは……!?」

 

 現れた2名に祐斗たちは目を見開いた。

 ひとりは孫悟空の子孫である美猴。

 もうひとりは通常の神器を展開しているヴァーリ・ルシファー。

 

 ここ、駒王町にヴァーリ・チームが集結した。

 

 

 

 

 

 

 




パウロ
能力”the Explode” 16歳
やや間延びしたふざけた感じの喋りをする少年。
ヘラクレスの禁手を奪った滅却師。
射出した矢を爆弾に変える能力を持つ。


ターニャ
能力”The Compulsory” 15歳
双子姉妹の妹ボーイッシュな髪形と粗い口調の少女。
自分の神経を伸ばして接続した相手の肉体を制御する能力を持つ。
本人曰く、神経を不用意に伸ばすと周りに当たって痛いため、自分が触れた個所から敵に接続している。

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