(禁手化なしで)どうやって戦えばいいんだ!!   作:赤いUFO

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今回の話は最初から最後まで全部決まってたこともあってノリノリで書いてたら書き上がった。全部これくらいの執筆ペースで投稿出来たらいいのに……。


8話:キミニオクルウタ

 ――――あ、これヤバッ!?

 

 背中から心臓を射ぬかれた黒歌はスローモーションで近づいてくる地面に顔を打っても感じるのは痛みよりも焦りだった。

 視線を動かすとそこには妹が絶対しないだろう歪な笑みで近づいてくる。

 それにようやくアレが妹の偽物だと気付いた。

 

(マズイマズイマズイッ!?)

 

 何の考えもなく危機から脱しようとする本能のままに這ってでもここから逃げようとするが脚に矢を射ち込まれて小さく悲鳴が漏れた。

 

「逃がさないよ。禍の団に身を置いていた者はひとり残らずこの世から消すから」

 

 敵が何を言っているのかよく聞き取れない。

 黒歌の胸の内にあったのは死にたくないという足掻きだった。

 主を殺してから各地を逃げ回り、仕向けられた刺客やらはぐれ悪魔を討伐する人間やらを何人も殺してきた。

 全ては自分が生き延びるために。

 だが今は少しだけ理由が違う。

 

(白音……)

 

 大切な妹。

 勝手に置き去りにして。勝手に連れ戻そうとした家族。

 酷いことを言った。

 意に沿わぬことを強要しようとした。

 そんな自分勝手で馬鹿な姉をあの子は許してくれた。

 あの優しい家で、やり直すチャンスをくれたのだ。

 

(帰らない、と……)

 

 その想いで地面を這うがどこかでもうダメだな、と冷静な自分が判断している。

 ――――馬鹿な姉でゴメン。

 ――――酷いこと言ってゴメン。

 ――――自分勝手な姉でゴメン。

 ――――寂しい思いをさせてゴメン。

 ――――辛い思いをさせてゴメン。

 ――――あの時一緒に連れて行ってあげられなくて、ずっと迎えに行けなくてゴメンなさい。

 思いつくのはそんな謝罪ばかりだった。

 それが何だか哀しくて、涙が零れる。

 

 手を適当に動かしていると何かふれる。それは妹の偽物の足首だった。

 それを掴むと煩わしそうに外され、手の甲を踏み付けられる。

 もう感覚が殆どない黒歌には痛みを殆ど感じなかった。

 だが、ひとつだけ理解できたことがある。

 

(これ、は――――)

 

 小猫が言っていた違和感の正体。黒歌は敵に触れたことである程度理解した。

 きっとこの情報はこの戦いを左右する重要なモノになると。

 

「う、あ……」

 

 せめて掴んだ情報だけでも誰かに伝えようとするが、それは叶わなかった。

 

「消えろ。お前たちの遺体は肉片たりとも残さない」

 

 慈悲なく放たれた光。それに飲み込まれて黒歌という転生悪魔はこの世から肉片も、骨すら残らずにこの世から消滅した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なにかあったのかっ!?」

 

 一誠が虹龍の卵が置かれた部屋に飛び込んできたのは黒歌の偽物が正体を現したのと同時だった。

 

 そこには見慣れない少年。しかしその服はここ最近見慣れた服だった。

 

「滅却師っ!?なんでここに!?」

 

「……あの人は、姉さまに化けてて……それで……」

 

 たどたどしく説明する小猫。心なしかその肩は震えていた。

 滅却師側も大きく息を吐いた。

 

「ようやく、あのバカっぽい口調から解放されたよ。行動や仕草にクセがあり過ぎる。演じるのも一苦労だった」

 

 ヤレヤレと肩を竦める。

 

 そこで気になって一誠が質問した。

 

「黒歌は、どうした……?」

 

 目の前の少年が黒歌の偽物で。本人が戻ってこないのなら。

 嫌な予感から汗が頬を伝う。

 

 思い出したように滅却師は胸ポケットから2つの悪魔の駒を取り出す。

 それは、僧侶の駒だった。

 

「君は、彼女の妹のようだし、コレを返しておこう」

 

 僧侶2つの駒を小猫の足下に放り投げる。

 ゴトッと小さく音を立てて転がる駒。

 染み付いたその匂いを嗅いでその駒が誰のものか察してしまう。

 

「姉、さま……?」

 

 膝を折り、2つの僧侶の駒を拾う。

 ここに姉の駒があることの意味を覚って白音は過呼吸に陥った。

 それを信じられずに一誠が反論した。

 

「デタラメ言うんじゃねぇ!例えお前が黒歌より強かったとしても、アイツがそう簡単に殺されるなんてことがあるか!!」

 

 勝てないのなら即座に撤退。

 その見極めが上手い黒歌が簡単に殺されたとは思えない。

 

「だから、一撃で致命傷を与えさせてもらったよ。こういう手でね」

 

 再び顔を隠すように手を動かす。それから数秒後に搭城小猫の姿に変化した。

 

「教えてあげたでしょ?白音に化けてたって。この姿で近づいて、ちょっと質問に答えてあげたらあっさり信用して背中を晒してくれたよ」

 

「お前、まさか小猫ちゃんの姿で……」

 

「殺した証拠なら首でも持ってくれば良かったんだろうけど。邪魔だし、薄汚い禍の団の奴らの死体なんてこの世に残したくもなかったから。もう骨も残ってないんだ。ごめんね」

 

 まるで後悔など感じない謝罪に一誠は震えていた拳を握って感情を爆発させた。

 

「て、メェエエラァアアアアアアアッ!?」

 

 神器の左手を握った拳は、たった一度だけだが禁手化の時と同じだけの威力を発揮して滅却師の左腕を砕いた。

 壁のところまで吹き飛び、痛みで左手を抑える。

 

「静血装を抜いてきた!?禁手がなければ大したことないって思ってたけど、意外と……」

 

「家の中で姿を曝したのは失敗だったな。ぶっ殺してやるっ!?」

 

 いつもの一誠ならぶん殴ると表現するだろう。

 しかし黒歌は殺され、その方法が小猫の姿で、ということに彼の怒りは最大限に高まっていた。その爆発力が一瞬だけ神器の力を引き出すに至る。

 しかし滅却師の余裕は崩れない。

 

「なんで僕が一晩もここで大人しくしてたと思う?」

 

「知るか!でもな、この家に居て逃げられると思うなよ!?」

 

 一誠の言葉を鼻で笑う。

 

「せっかく説明してあげたのに。僕たちの拠点は影にあるんだよ?まさか、もう忘れたの?」

 

「っ!?まだこの辺りは届かないって言ってただろ!まさかそれも嘘か!」

 

「それは本当だよ。でも、例外ってあるよね。僕がここで一晩ジッとしてたのは、影を伸ばす起点だったからだよ」

 

「起点?」

 

「そう。僕のいる場所からこれまで伸ばしていた領域からここまで一直線に影は伸びてた。こんな風に!?」

 

 自分の影に触れてそれを払うように腕を動かすと滅却師の影が不自然に伸び広がる。

 その広がった影の中から一矢が向かってきた。

 咄嗟に防御の姿勢を取るが、その矢は一誠たちに当たらずに弾けるとそれが檻のように矢が光で3人を覆う。

 

「なんだよこれっ!?」

 

 驚いている一誠に影の中から声と共に現れた。

 

「それは特別な檻だ。君たちでもそう易々と破壊できるとは思わないことだ。ご苦労だったな、ハイニ」

 

 現れたのは銀髪のオールバックで顔に傷のある青年だった。

 彼はリアス、デュリオと交渉した滅却師側の副代表。

 

「”The Jail”のルートヴィヒだ。短い付き合いだろうがよろしく」

 

 冗談のような自己紹介をする男。

 しかし一誠の視線はその男にはなかった。

 

「アーシア……」

 

 ルートヴィヒの後ろに居るよく見知った少女。

 アーシアは制服でも彼女の私服でもなく、胸元の開いた白いワンピースドレスを着て、彼女を連れ去った少女であるカミラをお姫様抱っこする形でこの場を現れた。

 

「やっほー。また会ったね。赤龍帝のお兄さん」

 

 アーシアに抱えられながら気軽に手を振るカミラに一誠は歯を鳴らす。

 そしてルートヴィヒが静かに宣言した。

 

「さぁ、有限に堕ちた龍神。今度はお前が奪われる側に回る番だ。お前の無知を、俺たちが断罪する」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やらせないよっ!?」

 

 さっきまでのふざけた口調が成りを潜め、パウロはアドルフの救援に走った。

 飛簾脚で相手にしていた美猴たちを置き去りにし、ヴァーリへと突進する。

 

「逃げろっ!!」

 

「パウロ、バカ止せっ!?」

 

 ヴァーリの腕にしがみ付くとアドルフに何かを投げつける。

 すると黒い影が広がり強制的に影へと沈んでいった。

 

 ここからヴァーリはパウロと呼ばれた滅却師が自分に攻撃することを予想していたが、その予想は大きく外れた。

 彼は自身の体に矢を打ち込んでいた。

 

(こいつ、自爆する気かっ!?)

 

 ヴァーリなら、この状態からでもパウロの矢を避ける可能性が在る。

 そして第二矢を打ち込む間に疲弊した自分では取り押さえられてしまうだろう。

 だからパウロは自分を犠牲にして家族を逃がす選択をした。この至近距離からの爆発なら殺せないまでも無傷ではいられない筈だと踏んで。

 

「これなら、完全回避とはいかないよねぇ!!」

 

「っ!?」

 

 自爆などという馬鹿げた攻撃を本気で行おうとする覚悟を感じてヴァーリは出来る限り威力を抑えようと動く。

 最後に見た敵の歪な笑い。

 それと同時にパウロの体は弾けるように爆炎へと変えた。

 

 彼の力全てを爆発に注ぎ込んだのだろう。爆発は天まで昇り、結界を破壊するのではないかと思うほどだった。

 

「ヴァーリッ!?」

 

 美猴が叫ぶと。爆発の中からヴァーリが出て来て地面に転がる。

 普段の彼からすれば信じられない程の醜態だが、気にすることなく美猴はヴァーリのところへ急いだ。

 

「おい、生きてるかぃ!?」

 

「とう、ぜんだ……あれくらい、で死ぬもの……か……」

 

 息も絶え絶えという感じだが、ヴァーリはしっかりと生きていた。

 そこでヴァーリの身体を見渡して美猴が息を呑む。

 

「おまえ、それ……!」

 

「奴らの執念を……甘く見たな。右腕を持って、いかれた」

 

 ヴァーリの右腕は敵の自爆で消し飛んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいアーシア!なにやってんだよ……!?」

 

「?治療ですよ」

 

「そんな奴らの怪我なんか治すな!」

 

「だって、カミラちゃんにお願いされたんですよなら聞いてあげないと」

 

 まるで噛み合ってない会話に一誠は苛つきながら話しかける。

 

「そいつらは、ギャスパーを殺したんだぞ!そんな奴らの言うことを聞くのかよ!!」

 

 一誠の叫びにアーシアは今思い出したとばかりにあぁ、声が漏れる。

 

「それは、カミラちゃんから聞きました。でも今の私には()()()()()よりカミラちゃんと一緒に居ることの方が大事なんです」

 

「なっ!?」

 

 アーシアの言葉に一誠は言葉を失った。

 ギャスパーが滅却師に殺されたことを知れば、必ず目を覚ますという予想があった。あの優しいアーシアがまるでギャスパーの死など意に介していないという姿には違和感しか覚えない。

 

 彼女も偽者だと言われれば、誰が言っても信じてしまいそうなほど。

 そんな一誠の驚きにクスクスとカミラが笑う。

 

「無駄だよ、お兄さん。アーシアの心はもうわたしのものなんだから」

 

 カミラはここに来る少し前にアーシアから名前で呼んで欲しいと頼まれて快く承諾していた。

 そんなカミラが治療を終えたアーシアに近づき、いきなりキスを始めた。

 

「!?」

 

 此方に見せつけるように舌を絡ませて行う濃厚なキス。口を離すと一誠たちを馬鹿にするような眼でクスクスと笑ってくる。

 

「言ったでしょう?アーシアの心はわたしのモノだって。昨日だってわたしの足を舐めてってお願いしたら喜んで舐めてくれたのよ。ふふ。頭を足で踏んであげてもすごくうれしそうで。ねー」

 

「カ、カミラちゃん!?」

 

 カミラの暴露にアーシアは頬を染めて恥ずかしそうに顔に触れる。

 まるで恋人が自分たちの情事を自慢していたのを聞いて恥じらう乙女のような反応。それがこの場で異様な光景として映り、一誠は吐き気を覚えた。

 

「ふざけんな!これ以上、アーシアを好き勝手にはさせねぇ!?」

 

 話している間に溜めた倍加。それで今の彼に出来る最大の攻撃の準備をする。

 

「こんな檻、すぐにぶっ壊してやる!!ドラゴン・ショットォオオオオッ!!」

 

 アーシアに当たらないように横へと叩きつけるように放たれたドラゴン・ショット。

 しかしその攻撃で檻は傷1つ付かずに逆に一誠の体を弾き飛ばした。

 それが、黒歌の死にショックを受けて僧侶の駒を抱えて蹲っていた小猫にぶつかる。

 

「ご、ごめん小猫ちゃんっ!?」

 

「……」

 

 謝る一誠に小猫は反応せずに生気を失った表情で2つの僧侶の駒を握り込んだ手だけに視線を向けていた。

 その姿があまりにも痛々しくて。

 一誠は一層怒りを燃やして立ち上がった。

 

「クソッ!?ドラゴン・ショットでもダメなのかよ!!」

 

 忌々し気に叫ぶ一誠。

 そこでルートヴィヒが呆れと称賛の混じった息を吐く。

 

「割と檻にダメージが入ったな。今回は全力じゃなかったとはいえ、侮れん。さすがに能力落ちしたとはいえ、龍神の一撃なら破壊されるかもしれんがな。だから、動くなよ?動けばお前以外の者が傷つくと知れ。例えばそこで蹲ってる転生悪魔とか」

 

 本来、ルートヴィヒの檻の中に捕まった者は外の光も音も通さない。今回は敢えて、それらを閉ざさないようにした。その反面当然檻の強度も下がってしまうが。

 だから、オーフィスが動けば小猫を攻撃すると脅す。

 

「本当にこれ以上暴れないほうがいいよ。アーシアを傷付けたくなかったら」

 

 カミラが懐から取り出したナイフをアーシアの喉元に突き付けた。

 

「なにやってんだっ!?」

 

 一誠の声を無視してカミラは先程から黙っているオーフィスへと話しかけた。

 

「ねぇ、貴女。どっちがいい?」

 

「え?」

 

「だーかーらー!この卵とアーシア。どっちの方が大事かって聞いてるの。今回は貴女が選んだ片方だけ壊して帰ってあげる!」

 

 その言葉に一誠とオーフィスは驚愕した。

 

「ふざけんな!?なんだそれ!そんな馬鹿な話!アーシア!今の聞いてただろ!?そいつ、今アーシアを殺すって言ったんだぞ」

 

 一誠が訴えるとアーシアは相変わらず動じずにカミラに身を任せている。

 

「はい。でも、カミラちゃんがそうしたいならいいかなって思うんです」

 

「なっ!?」

 

 あまりの答えに一誠は言葉を失った。

 今のアーシアは事実カミラに殺されるなら本心から満足なのだ。

 それを聞いた一誠はヤケクソになって檻を殴り続ける。

 

「壊れろ!壊れろ!!壊れろってんだっ!?」

 

 籠手に傷が付き、素手の拳から血が流れる。

 表情に動揺が走っているオーフィスにカミラが更に精神的圧迫をかけた。

 

「さ、早く選んで。今から10数える間に!それとも、どっちも失った方が良いのかなぁ?」

 

 首を可愛らしく傾げているが目にある狂気が本気だと語っている。

 

「じゅーう!きゅーう!」

 

 カミラのわざとらしいカウントが始まる。

 一誠はそれを止めようと必死に檻を殴り続けていた。

 

 虹龍の卵はタンニーンから預かった大切な命で。オーフィスがその孵化をどれだけ楽しみにしていたか知ってる。

 アーシアもオーフィスと何度も遊んであげて。とても感謝しているのだ。

 オーフィスに選べる筈がないことを一誠は理解している。

 だから手遅れになる前にこの檻を壊して卵を守り、アーシアを取り返さないと!

 

「ろーく。ごーお」

 

「や、めて……!」

 

 オーフィスが呟くように声を出し、手を伸ばす。

 それにルートヴィヒが無慈悲に告げた。

 

「俺たちに言葉を届けたいなら。手にした帰る場所も、愛する者も全て失うといい。そうなって初めてお前は、俺たちと言葉を交わす資格を得るのだ」

 

「ぜろっ!?」

 

 そこでカウントが終了し、ルートヴィヒとハイニが同時に卵へと神聖滅矢を打ち込む。

 卵は幾つかの破片を残して完全に破壊(ころ)された。

 

「あ……あぁ……っ!?」

 

 破壊された卵を見てオーフィスは自分の顔を押さえて呻き声を上げた。

 アーシアの方は。

 

「ごめんね、アーシア……」

 

 首の薄皮一枚に刃物が通されただけでアーシアは無事だった。どうやらこっちは脅しだったらしい。

 カミラがアーシアの傷を舐める。

 それに頬を染めながらアーシアはいえ、と答える。

 

「カミラちゃんが満足したのなら、私は別に」

 

「ふふ。良い子ね、アーシアは。じゃあ、やることはやったし帰ろうか」

 

「はい!」

 

 すると、影が4人を包み込む。

 

「待てよっ!?」

 

「忘れるな。俺たちはお前の無知と無関心によって傷つけられた者たちの代弁者だ。自分が見て見ぬフリをしてきた者たちの嘆きを、お前はもっとその生まれたばかりの心に刻みつけるといい」

 

 冷たい声でそれだけ告げると影の中へと再び消える。

 アーシアは、一度も一誠たちを振り返らなかった。

 

 敵が消えると同時に檻が消え、オーフィスがよろよろと虹龍の卵だった物に近づく。

 

「…………」

 

 壊れたプラモデルを直すように、無意味な行動と知りながら卵の破片を拾って1つ1つ組み合わせている。

 その目には、ぽたぽたと涙が落ちているのが見えた。

 小猫も黒歌の死を知ってただ蹲っている。

 

 そんな2人を見て、一誠は壁に力の限り拳を叩き込む。

 ――――なにも、守れなかった。アーシアも取り返せなかった。

 その無力感に唇を噛んで、自分の無力さを噛み締めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 起き上がったマヌエラは少しだけ体が楽になったのを感じた。

 

「パウロが、死んだのね」

 

 それを理解してマヌエラは胸に手を置いて目を閉じた。

 

「大丈夫よ。私がいる限り、貴方たちは何度でも甦る。何度でも、会える。だから、今は私の中に還り、休みなさい。無限龍を滅ぼしたら、また、きっと……」

 

 閉じた目から涙を流し、マヌエラは少しだけ良くなった体調で寝台から降りた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回から話が大きく動きます。完結まで何人生き残れるかなぁ。

というか今回書いて自分がいじめっ子になった気分。


今後の展開として。
小猫「命はとうに、置いてきた!!」
とかちょっとやろうと思いましたけどどう考えてもキャラじゃないなって思った。
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