バルチック艦隊召喚   作:伊168

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国交樹立

1905年6月14日 エジェイ

 

「伝令!伝令!」

 

全身から血を流しながら数人の騎兵が口々に報告を始める。

 

「マイハーク」「アデム将軍」「逃亡」「パーパルディア」「艦隊」「魔導砲」「壊滅」

 

不吉な単語ばかりが繰り返される。パンドール将軍はまずいと思い、唇を噛みながら、

 

「シャークンに華を持たせることになるか……」

 

と呟いて、シャークンにマイハーク沖への艦隊派遣を要請した。

 

 

1905年6月16日 クワ・トイネ

 

 

この日、ロシア=インドシナ帝国全権大使兼首相のポール・ボーは

 

「ワシを殺す気か!」

 

と苛立ちながらクワ・トイネ公国首都クワ・トイネに足を踏み入れた。

彼らは日本語みたいな言葉を話すと言うので、日本語を話せるヴイクトル、アレクサンドロウィツチ、オブノルスキー少佐を連れている。もし、本当に日本語を話すならばかなり面倒くさいことになるだろう。

一行は会談が予定されていた首相官邸に入った。

 

「お待ちしておりました」

 

妙な形の耳が生えている若い男が声をかけて来る。相手が首相ならば寧ろ良いのだが、こんな若造にその言い方をされるとはとポール・ボーは内心ムッとしたが、それとは裏腹に顔を綻ばさせて友好的に接した。

 

「私が首相のカナタです」

 

目の前の若い男が言った。これほど若い男が首相なのかとポール・ボーは驚くとともに、不遜な態度を取らなくて良かったと安堵した。

なるほど奴らはたしかに日本語を使っている。だが、少佐のおかげでなんとかうまく行きそうだ。

我が国の軍事力を知った途端に真剣な表情になった。何があったのかと思い、

 

「どうされました?」

 

と聞くと、カナタは深刻そうな顔をして、

 

「実は、我が国は西の隣国ロウリア王国による侵略を受けています。前線都市ギムが陥落すると、城塞都市エジェイに敵は殺到、2度追い返しますが3度目で陥落。その後も敗北続きで、この首都以外に守れる都市はもうありません。彼らは我が国の民族の大部分を占める亜人の根絶を訴えております!もし、我が国が滅びれば、何百万もの民衆は殺されてしまいます……ですから、貴国には我が国を、クワ・トイネの民を救って頂きたいのです!」

 

と床に伏して懇願した。ここまで言われれば、ジェントルマンではないし、心証を上げ、クイラの資源を頂くためにも、

 

「その心配はありません。我が国にとってもロウリアは不倶戴天の敵です。必ず、貴国を救いましょう」

 

と彼の願いを快諾した。

クイラ王国とは、クワ・トイネが上手く仲介してくれたので、上手く石炭の輸出をしてもらえるに至った。

翌日、ロシア=インドシナ帝国はロウリア王国にクワ・トイネでの残虐行為を批判するとともに宣戦布告をした。

 

 

1905年6月17日 第三外務局

 

「カイオス局長殿!我が国から南に位置する新興国ロシア=インドシナ帝国がロウリア王国に宣戦布告しました!」

 

第三外務局南部担当主任から報告が入る。第三外務局は、国家戦略局がロウリア王国に下手に肩入れしたため、ロウリア王国軍が(皇国からの賜与だが)戦列艦や火砲を持ち、文明国とも対等に渡り合える能力を有したり、クワ・トイネ軍の拠点を電撃的に落としていったことから、ロウリア王国脅威論が蔓延した所為で、対策を迫られていた。

そのため、カイオスにとってロウリア王国軍の力を削いでくれるであろうロシア帝国の参戦は嬉しかったのである。

 

ポクトアール提督の報告により、南部に新国家ありと聞いてワイバーンを6騎、工作員数人を派遣させていたため、ロシア軍の勢力はなんとなくわかっていた。

工作員によると陸軍はほぼいない。だが、艦船はロデニウス大陸西部の海戦やポクトアール提督の報告から鑑みるに、バリスタ主武装の帆船には勝てるが戦列艦には勝てない。要するにフリゲートやコルベットレベルの魔導船を持つと考えられており、ワイバーンに関しては不明であるが偵察に向かったワイバーンのうち5騎が未帰還であることからそこそこであると言える。

 

国土は大まかに言うと、一つの大陸と二つの大きな島、そして一つの中ぐらいの島で構成される。生粋の海軍国かも知れない。だが、陸軍がいないというのが大きい。

そこを含めると国力はロウリアと同等。つまり共倒れする筈だ。国家戦略局には悪いが第三外務局はそれで助かる。

 

「では、ロデニウスの諜報員には戦況を逐一報告するように伝えてくれ」

 

「了解!」

 

カイオスは満足げに椅子に腰かけた。運がいい。彼はそう頭の中で復唱した。

 

「局長殿!皇国監査軍西洋艦隊13隻が、南方を航行中に発見した大陸においてロシア陸軍と思わしき者と戦闘状態に突入した模様!」

 

「馬鹿な……」

 

余計な被害を出したらどうするのだという怒りと陸軍が存在し、ロデニウスを併呑するのではという不安がカイオスから意識を奪い去った。

 

「局長殿!?」

 

驚いた部下の手によってカイオスは宮廷の病室に連れていかれた。この後、数十日カイオスは軟弱軟弱と周囲から罵られることとなった。

他の行政機関も民衆からの不安や怒りの矛先を受けたくないがため、必死にカイオスや国家戦略局に責任をおっ被せようとしていたのである。

 

 

 




一体どこの外務局なんだ!(棒)

安定のガバガバ調査。ガバガバ統制。
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