「アドミラル・ウシャーコフ」艦長ミクルフ大佐は、750m先にある敵艦三隻を睨みつけ、
「Огонь! 」
と叫んだ。それと共に中間砲や主砲から幾つもの巨弾が放たれた。この程度の戦列艦ならば備砲で充分であるし、実際なるべく小口径砲を使うように言われている。だが、敢えて主砲や中間砲を使ったのは、ロウリアへの怨みが大きかったからである。先程の斉射で運悪く甲板要員が幾人か死んだのだから無理もなかろう。
報仇雪恨せんとロウリア軍船に向かった砲弾は、船員の技量のためか、敵艦に当たらず、海中に突進した。だが、運良く反跳し、戦列艦「アドミラル・ウィット」の第二層の砲列を突き破り、弾薬庫に至った。フリゲイト2隻も大量の砲弾を甲板上に受けた。
鼓膜がおかしくなりそうな程の大轟音とともに仲間の仇達は跡形もなく消え失せる。写真のように一瞬敵艦の動きが止まった。だが、それも束の間である。付近の木造船が衝角攻撃を試みてきたのだ。だが、リッサ海戦ですでに木造船の衝角攻撃が装甲艦に対して無力であることは彼らに中では常識。驚くそぶりもなく、気づいた頃には突撃して来た船は一隻も残っていなかった。
戦艦「インペラートル・ニコライ1世」はただ一路、敵旗艦を目指していた。見つかりに来ているとしか思えないぐらい旗が大きいため、追いかけることは容易であった。邪魔な敵艦は体当たりすれば雲散霧消していしまう。フリゲイトなど相手にならない。状況を鑑みるに当然のことであった。
だが、ロウリア軍が迫って来る巨艦に何も対策しないわけではない。戦列艦を向かわせたのだ。右舷に向かって、50門級戦列艦「クラハトゥ」が衝角攻撃を試みた。黄海での清朝の北洋水師のようにやたらに衝角攻撃を試みる様子は勇猛果敢にも軽慮浅謀にも見える。無為無策でないだけまだマシなのだろう。
いよいよ戦列艦が目前に迫った。だが、リッサ海戦を知らない事を哀れんでやる人間はいない。仲間を殺したロウリア軍に慈悲をかけるつもりはなかったのだ。
「蛮族め! 身の程を弁えろ!」
戦列艦の衝角攻撃をあっさり受ける敵艦をノロマだとシャークンは嘲笑する。波が消えればそこには沈みゆく鉄屑(火矢が効かなかったため鉄などの金属だと予想されていた)があるだろう。これでシオス王国などとの交易路を遮断することができる。余裕に満ち満ちた彼は部下に酒を用意させた。
「右舷に衝角攻撃を受けました!」
卒の一人が報告する。ネボガトフらは、ピクリともしない。驚く理由がないのだ、当然だろう。
しつこいようだがリッサ海戦という前例があるのだ。戦列艦の衝角攻撃など怖くはない。
「シャークン提督! 戦列艦『クラハトゥ』が沈没しました!」
「バ……バカな……」
人間の報告は嘘をつくことがあっても自分の目は嘘をつけない。敵艦がなんともなく、さっきまでの戦列艦が消え去っている。シャークンはパチパチと瞬きすると言葉を失い、顔面蒼白となった。
敵艦がすぐそこまで来ているのだ。
短くてすみませんね。
次ぐらいでアレが300くらいやって来ます。