バルチック艦隊召喚   作:伊168

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クワ・トイネ包囲戦1

1905年6月30日 クワ・トイネ

 

 

「ここが、クワ・トイネか……」

 

ロデニウス派遣軍司令官グリッペンベルグは首都クワ・トイネを見ながらため息をつくように呟く。それは、この城の余りの見窄らしさに対するものである。輸送船内である程度は聞いていたが、ここまで酷いとは思っていなかった。これで、優勢な敵を打ちのめし、総大将の首を取ったというのだから驚くしかない。

 

「グリッペンベルク殿、此度は我がクワ・トイネ公国にご支援頂き、ありがとうございます」

 

首相のカナタが話しかける。

 

「盟邦が侵略を受けているのです。これを見過ごす訳には行きません」

 

「して、ロウリア軍に対してはどのように当たるのですか?」

 

「はい、ニコライ・リネウィッチの第1軍6万をマイハークへ、アレクサンドル・カウリバルスの第3軍6万を城内防衛に、我が第2軍6万は城外西へ60キロの地点に陣取ります。そこで、ロウリア侵攻軍本隊を再起不能にします」

 

グリッペンベルクから戦力の振り分けを聞いて、カナタは言葉を失った。いや、周囲のクワ・トイネ人も全てが言葉を失った。

 

「お言葉ですがグリッペンベルク殿、我が国の調査では、ロウリア侵攻軍本隊は十万を超えるとされています。流石に6万で野戦は無理があります」

 

西部方面軍司令官ノウが指摘する。本当ならマイハークに6万派兵というのも無理がある。ここには民兵合わせてそこそこ兵力があるが、マイハーク守備隊はほぼ全て、エジェイへの援軍として送ってしまっている。

諸侯軍は10万を下らないというのだからやはり劣勢だ。彼の国の日刊『ル・タン』ではロシア海軍の第三太平洋艦隊は戦闘行動が取れないと言っている。また、マイハークは大半が焼け落ちており、海上支援がないなら正兵に正兵で迎え撃つことしかできないはず。ということは、数的劣勢から勝てるわけがない。となるではないか。

この男は頭がおかしい。

クワ・トイネの軍人らは彼に侮蔑するような眼差しを向けてそう結論付けた。

 

「いいえ、大丈夫です。過ぎたるは猶及ばざるがごとしと言います。過剰に兵を送って来るような愚将に負けることは絶対ありません」

 

グリッペンベルクは侮蔑的な目を向けて来る軍人らを一瞥して、語気を強めて言った。

その気迫にも軍人らは驚かされたが、何よりも「あの」パンドールを愚将呼ばわりすることにどれほどの自信家なのかと驚くと共に、所詮大口を叩いているだけで大した奴ではない。人を見る目がない。と、バカにするものもあった。

 

「それと、我が陣地とその周辺には民間人は元より我が国の軍人以外は絶対に立ち入らないようにして頂きたいのですが」

 

カナタは、

 

(兵を死地に追いやりたいのか!)

 

と怒りを覚え、顔を歪めたが、仕方なく認めた。周囲の軍人らは、失笑する者さえあった。

 

「こいつはワイバーン部隊の恐ろしさを知らん田舎者の蛮族なのだろう」

 

と。

 

 

1905年7月10日

 

「これより我が軍はクワ・トイネへと向かう!」

 

スマークと血の啜り合う儀式を終え、神に祈りを捧げた後に、パンドールが誇らしげに命令する。

諸侯軍が成し得なかった首都攻略を今、自分が成すのだ。これほど興奮の治らない日はない。包囲戦に参加する兵力は30万。マイハークは10万。ロシア陸軍というのが加わったらしいが、それでも18万。負けるわけがない。神聖なる勝利を祖国に齎すのだとパンドール軍はクワ・トイネへ駒を一歩一歩進めて行った。

 

 

 

1905年7月20日 クワ・トイネ近郊

 

 

「大将閣下! ご報告に参りました」

 

パーヴェル・ミシチェンコ将軍が報告に上がる。将軍である彼が報告するのはグリッペンベルクが彼を信頼しているからである。グリッペンベルクは、

 

「ああ」

 

とだけ言うが、目配せで彼に催促する。このような合図が成立するのも偏に両者の信頼関係が上手く築かれているからである。

 

「はい、鉄条網は……電流を通すにはもう少し日を要しますが、騎馬突撃を防ぐ程度には堡塁は出来上がっています。また、地雷に関しては指定箇所に全て配置しました」

 

「こんなにも早く……良くやってくれた。ところで、地雷の設置箇所はちゃんと記録したのかね?」

 

グリッペンベルクの質問に泣き所を蹴られたような表情をして分かりやすく焦るミシチェンコ。彼は歯切れ悪く、

 

「い、一応、大まかな位置だけは……」

 

「それではいかん。ここは元々村だったのだ。戦争が終わればまた、戻ってくる。もし、地雷が取りきれていなかったらどうする? 盟友の民に迷惑をかけちゃいかん。明日でいい、今日はよく食べて、よく寝てくれ。また明日やろう」

 

「了解しました」

 

まだ見えぬ敵、ロウリア軍。彼らは恐らく地雷など知らんだろう。一方的に死んで行くだろう。グリッペンベルク将軍は味方には優しいが敵には残酷だとミシチェンコは思った。だが、同時に地雷なら訳もわからず死ぬ。どうせ死ぬならその方がいいのではとも思っていた。大量の食料に、少ない地雷や弾薬からして皆殺しにするつもりでないこともわかっていた。

 

「あっ、それと、作業が終わったら対空訓練以外は適当にやらせてくれ」

 

「はい?」

 

指揮官としてありえない命令にミシチェンコは困惑する。

 

「だから、適当にやってればよろしい」

 

「はあ……わかりました」

 

彼は黒溝台での活躍から大将のことを英雄だと尊敬していたが、その気持ちが少し薄れた。適当にやっとけなんて乱暴で無茶苦茶すぎるではないか。何が英雄だ。と彼は内心憤っていたのである。

 

 

 

1905年7月31日

 

 

ついにロウリア軍30万はクワ・トイネ近郊の陣地から10キロの地点まで到着した。

 

「パンドール将軍!明日、夜襲を行なっても宜しいでしょうか?」

 

スマークが尋ねる。恐らく、第一次エジェイの時と同様騎兵で気勢を削ぐつもりなのだろう。敵はよもや到着したばかりの敵軍がいきなり夜襲を仕掛けるとは思わないだろう。更に、斥候によると敵軍はだらけきっているという。絶好の機会ではないか。逃す手はない。

 

「正兵は奇兵に劣勢だが、奴らは正兵ですらない烏合の衆。許可しよう。ただし、君の直轄騎士団2500では少ない。ジョーヴのホーク騎士団も付けて、出撃せよ」

 

「何故ですか? 奴らは苦手なのですが……」

 

スマークがジョーヴという名を聞いただけで戻しそうな顔になったのだから、本気で嫌がっていることがわかった。だが、パンドールの方もこれ以外は任務があって送れないし、2500では不安がある。

パンドールはなんとかスマークを宥めてホーク騎士団500騎と合わせて日没、出撃させた。

 

 

 

 

 

 

 




なんかごっちゃごちゃ
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