バルチック艦隊召喚   作:伊168

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クワ・トイネ包囲戦2

「閣下! 敵、騎兵隊3000が接近中!」

 

真夜中、狸寝入りをしているグリッペンベルク大将に敵襲襲来の報せが入る。

 

「各機関銃隊に準備をさせよ。又、ミシチェンコの旅団に攻撃命令を下せ!」

 

ミシチェンコの旅団は敵陣を掻き乱し、ワイバーンを出来るだけ地上撃破することを目標とし、敵陣から左側800メートルに広がる森林地帯へと駒を進めていた。ここから火砲や突撃でワイバーンを撃破しようと言うのだが、未だワイバーンがどこにいるのか分かっていなかった。

では、なぜグリッペンベルクが攻撃命令を出させたのかと言うと、通信手段が限られているため、後方の主力には報告が行かなかったからである。既に発見したものと判断していた。

 

 

「ホーク騎士団を先行させる。我が隊はその後に向かう」

 

敵陣がうっすらと見えてきた頃、将軍スマークは敵の戦力や底力を知りたく、ホーク騎士団を先行させるように命令した。彼らは野蛮であるので、敵を見つけたら攻撃せずにはいられない。それで、敵の防衛線を突破すれば本隊も合流してこの場で一気に決めればいいし、壊滅すれば遠巻きに弓矢を撃つことに徹すればいい。

どちらにしても本隊に損はない。後者なんて鬱陶しいホーク騎士団が消えてくれるのだから正に得しかない。

 

「了解しましたぜ!」

 

ジョーヴらは吶喊しながら鞭を打ってさっさと前方へ消えてしまった。自分たちがスマークにこのような扱いをされていることなど全く知らない。

 

 

「敵騎兵隊400! 地雷原まであと800!」

 

「よし、機銃隊、まだ撃たなくていいぞ!」

 

ホーク騎士団は愚かにも自ら死地に突入する。団長ながら一番槍を取ったジョーヴの鍛え上げられた巨体が爆音と粉塵に包まれる。彼と魁を競っていた者たちの爆音とともに姿が見えなくなる。

 

「避けろ! 魔導師の射線だぞ!」

 

強力な魔導師の爆裂魔法だと思った一人の隊長が叫び声をあげる。すぐに脇にそれる。

しかし、それたものから次々に吹き飛ぶ。右に逸れようとも、左に逸れようとも皆平等に爆殺される。

中には、運が良かったのか足だけ吹き飛び、臥せっているものもいる。

だが、勇猛果敢なホーク騎士団はそれでも尚、怯まずに狂瀾怒涛の如き突撃を敢行する。まさに騎虎の勢である。

 

「機関銃隊撃て!」

 

運良く地雷の合間を縫って防衛線に肉薄した騎兵を機関銃が無情にも引き裂く。仲間の遺骸の上を通って突撃せんとする者たちも撃ち砕く。

 

 

「スマーク将軍! ホーク騎士団、潰滅しました!」

 

「そうかそうか。よし、全騎我に続け!」

 

スマークはニヤリと下衆な笑みを浮かべた後、矢を番えながら敵陣に向かって急行した。

2500の騎兵はすぐ陣地に接近する。地雷はホーク騎士団の犠牲によってかかる者は少なかった。

だが、機関銃の射線から逃れた者は居なかった。

 

騎兵の一隊が運悪く地雷にかかり、消え去ると、探照灯が彼らを一挙に照らした。弓矢の射程に入る前に機関銃が火を噴く。射程に入ろうと突撃する騎兵を機関銃が撃ち滅ぼす。

白襷隊ほどの勇猛果敢さもない彼らを皆殺しにするなど造作もないことだった。スマークは人のものとは思えないほどの断末魔を上げて斃れ、逃げ帰った者は俄かに10余人であった。

 

 

同 ロウリア軍陣地後方

 

ミシチェンコの旅団は攻撃命令を聞いて、早速準備を始めていた。敵ワイバーンの小屋もいくらか発見していた。流石に、貴重なワイバーンを一点に留め置くことはしなかったようだが、今砲撃すれば20騎は斃せるだろう。

近くの営舎には歩兵らが眠っているらしい。今砲撃すれば永遠に眠ってもらえることだろう。

つまり、今こそが好機なのだ。

 

「砲撃開始!」

 

ミシチェンコの号令とともにコサック竜騎兵達が夜襲の火蓋を切った。忽ちに前方に見えていた小屋は数騎の

ワイバーンと共に粉砕される。轟音を聞いて慌てて出てきた歩兵達も大地を裂かん程の砲撃と連弩など比較にもならない火箭を撃ち出す機関銃に手も足も出ず斃れ伏す。

砲撃が止むとミシチェンコ共々コサック騎兵隊が雪崩れ込み、敗残の兵を次々に討ち取る。

後方の陣地は悉く踏む荒らせれ、死傷は数多を数える。ロウリア兵にとって死神のような夜戦が幕を開けたのだ。

 

 

1905年8月1日

 

「パンドール将軍にご注進! 敵陣に向かったスマーク将軍らは全滅、指揮官のスマーク将軍、ジョーヴ団長は戦死! また、後方陣地が敵軍の夜襲を受け、損耗率は4割に昇ろうとしております!」

 

「そんなバカな……」

 

パンドールの頭が真っ白になる。2日か3日で片付けるつもりだったのだった。兵力も敵は明らかに寡兵。しかも劣勢のクワ・トイネ軍と新興国、蛮夷のロシア軍。負ける理由が見つからなかった。

最後まで勝勢であると思っていた。だが、現実は圧倒的敗勢ではないか。敵の何十、何百倍も死傷しているのだろう。不甲斐ない後方の指揮官やスマークだけでなく、自分にも腹がたつ。

この陣容も作戦も敵にとっては杜撰なものなのかと思ってのことである。

だが、いつまでも悔やんでいてはならない。兵士は消耗品だ。

 

「予定通り昼、敵陣に総攻撃をかける。準備せよ」

 

「了解!」

 

数で優勢なのだから、数を押し出せば勝てる。パンドールはそう考えていた。

 




こっちの竜騎兵は火砲などをを装備しているだけ。
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