バルチック艦隊召喚   作:伊168

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圧倒的格差

1905年9月5日 ハノイ飛行場

 

 

「ここが首都か……」

 

マイラスは機内でふと呟く。目を引く建物は無いわけではないが、数十年前の我が国ほど栄えている様には思えない。こんな国であのような戦艦が作れるとは思えない。舗装されてない滑走路一本だけというのが飛行場だなんてふざけるのも程があるというものだ。

 

 

「お待ちしておりました。マイラス殿」

 

一台の自動車から髭を生やした男が出てくる。一目で分かる、偉いさんだ。

 

「此度は我が国の我儘をお聞き頂いて、誠に有り難く思います」

 

名刺を交換して、颯爽と車に乗り込む。馬車ではないとは、かなり期待ができそうだ。

 

 

 

同 ハノイ

 

元総督府、現国会議事堂をマイラスは訪れる。正直政治云々は専門でないので、比較的自由主義的であるが反社会主義的であることは分かった。まあ、ましな国なのだろう。

次に、電話を見せられた。我が国にあるものと大差ない。新聞やらカフェやら文化的にはわが国と同水準にあることがわかる。ただ、映像技術の類はまだまだのようだ。どうしようもないので、上司に言って無理矢理詰め込んだテレビを一台だけ友好の印として「最新の」世界地図と共にプレゼントした。

 

同 カムラン湾

 

いよいよマイラスの一番見たかったものがお披露目となる。ここのカムラン湾軍港で幾らかの艦船を建造中である。彼の期待は高まる。結構ましな軍港であったからだ。

今度は別の髭の男--海軍大臣兼バルト艦隊司令長官のジノヴィー・ロジェントヴェンスキー中将という男が付いて来ている。聞きたいことは何でも聞いて良いというので、早速、

 

「ロジェントヴェンスキー殿、この船はいつ、建造されたのですか?」

 

とマイラスが例の新聞記事の魔写を見せる。するとロジェントヴェンスキー提督は微笑んで、

 

「これは、我が国の旧式戦艦ですから……10数年前になりますね。いいところもあるのですが、主砲火力の低さや計画からかなりオーバーした排水量が気になる艦です」

 

「そ、そうでしたか……ありがとうございます」

 

マイラスの心は欣喜雀躍する。思った以上に進んでいるではないか。ひょっとしたら我が国と同レベルかも知れない。

 

「こちらが、現在改造中の戦艦『クニャージ・スヴォーロフ』です。第二太平洋艦隊の旗艦ですが、今建造中の最新鋭艦によって利用価値が下がる可能性が出て参りました。新大陸発見で予算が余っていたため、改造することになりました。新造した方がいいという程の魔改造ですが」

 

マイラスの期待は高まる。なるほどこの艦は見た感じ我が国のラ・カサミとも対等に撃ち合えそうだ。それを旧式化させる程の艦船とは一体どれほどのものか。

 

「その新鋭戦艦がこちらです」

 

「おお! ……え?」

 

愈々と思い身構えていたが、全く完工のかの字もないではないか。ちょいと焦りすぎではないか。とマイラスは思った。パッと見でわからないなら設計図が欲しい。マイラスは駄目元で、

 

「その設計図を頂けますか?」

 

「それはダメです」

 

ああやっぱり。マイラスは、また今度来れたら見てやろうと思って、軍港を離れた。

次は航空機。マイラスはポケットに入った最新鋭戦闘機「マリン」を写した魔写を握りしめて車に乗り込んだ。

 

 

「こちらです」

 

造船技師のコステンコという男がエスコートしてくれる。航空機の専門家がいないことで彼の期待は大分削がれた。それはどのような最新鋭機があるのだろうという期待ではなく、今後の発展に関する期待である。専門家がいなければ遅々として進まないだろう。

 

見せられた航空機はまさしく黎明期のものだった。機銃を乗せるなんて夢のまた夢だ。試しに彼が「マリン」の魔写を見せて見ると、目をパチクリさせて、

 

「これは、絵……?」

 

と聞いて来た。丁寧語すら使えないレベルに動揺しているのだ。マイラスはこれを見せても何ら意味がないのだと思い、航空力学の本や「マリン」より一世代、二世代前の「スーパーハリケーン」や「ファイア」、もっと前の「キャメル」などの設計図や解説書を渡した。又、爆撃機についてのかなり古い専門書も渡した。無論、マリンを超える戦闘機を作らせるつもりはない。自分よりは強くならないレベルに育ててやるのが基本方針だからだ。

 

だが、マイラスにとって一番わけがわからなかったのは潜水艦とか言うやつだった。海に潜って偵察に使うつもりか? それとも敵船にドリルで穴を開けるのか、だが、教えられた潜航時間からして、偵察に関してそこまで優秀とは言えない。別に必要性を感じない兵器だった。攻撃方法については教えられないと言うではないか。どうやって想像しろと言うのだろうか。

 

「よくわからん国だなぁ」

 

マイラスはロシア帝国に再び興味を持った。残りの時間を有意義に過ごさねば、出来るだけ記憶に焼き付けねばと思い、彼はホテルで深い眠りについた。

 

ロシア側の驚きも大きかった。活動写真は研究中で、そこそこ上手くいっていたが、まさかテレビなんてものが作れるとは思いもしなかった。

航空機技術なんて月とスッポンほどの隔たりがある。

戦争が終わったら、この国とは積極的に関わりたい。石炭を使うというから、貿易で結構儲けさせてくれるだろう。ロシア帝国の政府、軍部高官達はムー国を最優先国家、友好国として接していくこととした。

 

 

 

 




次、視点がロデニウスに移ります。

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