バルチック艦隊召喚   作:伊168

35 / 49
急成長

12月12日 エストシラント カイオス邸

 

「カイオス殿、一体何があったのですか?」

 

ウエジヤ・ゴーリスキー中尉はこの日、突然カイオスにうちに来いと誘われた。その時のカイオスの慌てぶりから只事ではないと思った中尉はあくまで冷静に問うた。

 

「それが……この前第1外務局および皇族のレミールに呼び出され、今後貴国との外交は第3外務局ではなく第1外務局が執り行う事となってしまった。しかも、わざわざ皇族のレミールが対応するという」

 

「……ということは?」

 

「資金援助の件は白紙となってしまった。済まん……」

 

カイオスが深く頭を下げた。それを見た中尉は何だか申し訳のない気持ちになってしまった。何ら悪くない人が謝るのを見て気分が良いものか。

 

「白紙となった理由だが、反抗的な蛮族にはそんなもの必要ない--だそうだ。レミールという女はそういう人だ」

 

誰かに聞かれてもいいようにしているのか敢えて直接非難はしない。だが、中尉にはカイオスの言わんとしていることがはっきりと分かる。だからこそ自分たちの今までの努力が音を立てて崩れていったような気がしてしまう。もちろん、諦めるつもりはない。こちらが優位に立つまでは引き伸ばしてみなければロシアは亡国真っしぐらである。ポーランド人である彼であってもそれは避けたかった。

 

 

12月18日〜26日

 

ムー国は度重なる経済制裁や資金差し押さえにより経済が低迷。これを打開するために武力による他国への侵攻を選択した。

まず、隣国のヒノマワリ王国が科学者を弾圧し虐殺をしているため、これを解放するという名目でヒノマワリ王国へ侵攻した。

王国の数少ない戦列歩兵部隊も巧みな散兵戦術で撃破し、あっという間に全面降伏へ追いやった。ヒノマワリ王国はムー国への制裁に参加した国であったので、同じく制裁に参加した国家のうち列強以外はムー国への警戒をあげることとなった。

 

 

12月27日

マギカライヒ共同体、ロウリア帝国、クワ・トイネ公国、クイラ王国の4カ国が三国通商及び軍事同盟に加盟した。これにより科学文明陣営が数だけ大幅に増加した。だが列強などは、

 

「遅れた国が集まっても意味がない。弱小国中心の同盟などは脅威ではない」

 

といつも通りの気の強い発表をしている。またこの日、ムー国へ経済制裁を行わずむしろ支援したとしてアガルタ法国が経済制裁の対象国とするべきだという意見が魔法文明陣営の中で強まっていることが判明している。

 

 

12月31日

この日、海軍内で急遽会議が開かれた。議題が議題であったので、結論はすぐに出た。

 

「予算不足により攻撃機の開発を無期限延期とする」

 

というものである。グラ・バルカス帝国やムーこくのお陰で存在だけ知っていたので開発をしていたのだが、他への資金が回らないということで実質中止となったのだ。だが、正直言ってパーパルディアに攻撃機はオーバーキルすぎるので良かったとも言える。なんせ彼らはまだミリシアル帝国を仮想敵とはしていないのだから。

 

ロシア帝国は1906年を迎えた。中央歴だと1640年にあたる。

2月までに海軍の欠員補助のため急遽徴兵が行われた。だが徴兵を避ける方法を多く設けた(あまり多くきても困る)ので案外批判はなく、上手いこと言ったのだ。海軍の高官らはニヤケが止まらなかったという。

また来るべき戦争に際して航空隊の訓練時間の増強を行った。戦闘機は200を爆撃機は100を超えいよいよ航空隊も殆どは貰い物であるが豪勢なものになってきた。空母用の戦闘機、爆撃機は全て足りている。後は艦艇だけである。駆逐艦の主機変更、対空兵装強化は済んだが巡洋艦と戦艦がまだだった。巡洋艦は時期に終わると言われているが、戦艦に関しては全く目処が立っていない。

 

 

1906年3月5日

 

度重なる漁船遭難事件を受け政府は、

 

「今後漁業の際には軍に言って、軍の保護のもと行う」

 

という法案を制定した。一部からは軍の増長を生むと言われたが、これ以外に有効な対案が出なかったためこれが覆ることはなかった。これに駆り出されたのは大連艦隊などの弱小艦隊であり、そこの司令官たちは救援の際の疲れを思い出して、発狂するものまで出てきたので大きな混乱を産むことになる。彼らにとって自分たちがこき使われるのは全く迷惑なことである。軍人だからこそ危ないヤツとは出来るだけ出会わない所で訓練しているのが一番いいのだ。第1、現れた敵艦がパーパルディアのものだったら救援艦隊の二の舞ではないか。

 

 

1906年6月12日

 

最新鋭戦艦が一隻就役した。乗組も決めてある。艦長には大佐に昇進しているニコライ・オットヴィチ・フォン・エッセンが任じられた。艦名は「アドミラル・パーヴェル・ジョーネス」が予定されていたが、

 

「パーヴェル・ジョーネスはエカテリーナが与えた名前であって本名はジョン・ポール・ジョーンズだろう」

 

という指摘もあったのだが、「アドミラル・ジョン・ポール」というのにすれば、ロシアっぽさがなく、大陸海軍の提督を使っているようにしか聞こえないので、

「アドミラル・ジョーネス」が正式に採用された。

また購入した空母6隻の艦名も定まった。

それは「ガングート」「スィノプ」「ナヴァリノ」「ミハイル・クトゥーゾフ」「ミハイル・バルクライ」「ピョートル・バグラチオン」

である。主にナポレオン戦争や大北方戦争などから取られている。フランスに喧嘩を売っているとしか思えないが、あまり気にされずあとはこれから就役する2隻の改造空母の艦名を考えるのみである。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。