バルチック艦隊召喚   作:伊168

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皇都空爆

1月20日

 

この日、ハノイではあることが話題になっていた。それは、失踪していたクォン・デ候やファン・ボイ・チャウなどの独立運動家が数ヶ月にパーパルディア皇国へ移っていたということである。どうやら取り締まりのない皇国で味方を増やそうということらしい。

 

 

1月21日

 

パーパルディア皇国政府は、いつも通りの大本営発表を終えた。だが、その後海戦に参加した海軍軍人が、

 

「もしアガルタ艦隊が積極的に突っ込んできていれば危うかった」

 

と次々に言い始めたのだ。いつもは情報を閉ざしまくる皇国だが、これだけはダダ漏れである。大きすぎる釣り針だ。恐らく離間の計を仕掛けようとしているのだろう。だが、これに引っかかるほどかの二国もバカではないだろう。ロシア=インドシナ帝国の上層部やグラ・バルカス帝国の上層部もそのように考えた。そのため、特に何もしなかった。

だが、これが悪かった。マギカライヒ共同体とアガルタ法国はまんまと釣られ、対立し始めたのだ。一応、ムー国に仲裁を任せたがどうなるかはわからない。しかし、こんな所で分裂したらそれこそ笑い者ではないか。

 

1月22日 エストシラント沖

 

グラ・バルカス帝国第3潜水戦隊はエストシラントの海中に身を潜めていた。だが、それも今までである。今から浮上し、E400型潜水艦3隻から水上攻撃機を出す。貧弱な試作水戦を搭載するより遥かに良い。

9機の水上攻撃機「カペラ」は敵の首都へ驀進する。25番を4発ぶら下げている。搭乗員の優秀さからして殆ど命中するだろう。敵に与える精神的損害は計り知れないだろう。

見よ、すでにエストシラントの上空に展開している。やはり帝国の技術は世界一である。

 

エストシラントの監視塔はすぐにこの9機を認めた。だが、宮殿に魔信を繋げる前に機銃によって皆殺しにされる。そのため、皇国人は何も知らされぬままこの9機を見上げることとなった。首都に敵の飛竜が侵入したことなどほとんどない。そのせいか何度も頰を抓っているものすらいる。

だが、これは現実なのだ。9機の攻撃機は市街地を乗り越え、工業地帯に6機が宮殿付近に3機が展開した。

工業地帯に展開したもののうち1機は市街地に近い山に25番を全て投下した。一年中放っておいた庭先の雑草のような森林の一点が蝋燭の炎のように燃え始める。

火は風に乗って森を埋め尽くす。付近の住民よさらば!

この機に搭乗しているアストルは一度、笑いながら森林付近の方に手を振って母艦の方に引き揚げた。

すでに工業地帯もいくらか燃えている。宮殿の方にもついに25番が鉄槌を下す。

無駄に大きい宮殿が仇となったか予想より宮殿から外れるものはなかった。

だが、宮殿に落ちたものでも無駄に広い庭のせいでそこに落ちたものもあった。庭にいた皇族や高官は恐らく少ない。死んだとしても手入れしている人間だけだろう。

だが、建物に落ちたものが宮殿の一部を破壊した。落ちた爆弾が破壊したのはほんの一部に過ぎない。だが無駄に大きいせいか、作りが杜撰なのか、イスタナ・ヌルル・イマン宮殿や紫禁城も霞むほど豪華かつ巨大な宮殿はもはや跡形もない。

 

「あっ! 不味い! カイオス派も一緒にやってしまった!」

 

中隊長が気づいた時にはもう遅かった。

 

 

1月24日 エストシラント

 

宮殿の全壊から早2日、皇帝ルディアスら皇族らに死者はなし。政府高官も一人を除いて、全員救助された。

その一人とは第三外務局局長カイオスである。少なくとも救助記録には載っていない。

同時に元インペリアル・ガード数十名なども見つかっていない。

問題はそれだけでない。謎の山火事で一等臣民100名余りが死亡している。工業地帯でも謎の火災が発生しており経済的損失は計り知れない。

海軍本部は火炎弾を受け、外征したばかりのシウスらは別として本部内にいたものの半数が死んだ。

昨日は9隻程度の船から艦砲射撃をされたらしい。そのせいで沿岸部でも数億パソ以上の損失を出している。

政府高官らは疲れを癒す暇もなく頭を抱えていた。

 

 

1月26日 デュロ

 

カイオスは宮殿倒壊の際の混乱に乗じてこのデュロの地に逃れていた。屈強な元インペリアル・ガードたちが近くにいてくれたからである。なぜ元なのかというと、数々の敗北や一部知識層からの反発を恐れた政府高官らの進言によってインペリアル・ガードなど皇帝及び政府高官の身辺が変えられたのである。

特に皇帝の周囲には長い間使えており、皇国を盲信しているような輩ばかり登用されたので、カイオスのクーデター計画が壊れてしまった。

しかも宮殿内の人員を変えた後に、軍内でも大規模異動が行われ、同士が散り散りになってしまった。

どうも神聖ミリシアル帝国の優秀な諜報員がクーデターの臭いを嗅ぎつけたそうだ。全く余計なことをしてくれる。今まではとことん見下して相手にすらしなかったのに機械文明派という大勢力が出来ると旧知の友人かのように接してくる。半分バレたのもそのせいだ。

そのため、カイオスは計画を変えた。反乱を起こす。というものである。本来なら成功なぞしない。

だが、彼には大きな味方があった。それはロシア帝国とデュロの労働者である。

なぜかは知らないが最近のデュロでは労働組合が出来たり皇国に刃向かうものが増えているという。そして彼らは皇帝をも憎んでいる。流石に国家は憎んでいないようだが。

王位や皇位につかずに反乱をすれば、それと労働者階級に甘い言葉を投げかければついてくるだろう。

また、同士たちも(いくらか死んだものの)ほぼ全員いる。

ロシア帝国からはどうも万夫不当の荒武者が送られてくるらしい。

だが、それがいつ来るかはわからない。とりあえず今は姿を変えてここに潜伏するしかない。カイオスは服を汚してスラムへ向かった。ここならば潜伏できるだろう。すると、汚い服を着た50代ぐらいの男がいきなりカイオスの服を鷲掴みにして端の方へと連れ去った。

 

「何をする! 放せ!」

 

カイオスは必死に抵抗する。しかし、長らく宮殿勤務だったせいか、全く歯が立たない。

 

「ここならいいだろう……本題だが、君はもしかしてカイオスか?」

 

声を潜めて男は言う。確かにその通りだが、こんな所にこのカイオスの顔を知っているものがいるとは思えない。

 

「そうだが、なぜ知っている!?」

 

「ならば良かった。本部勤務だったから、会うことも多かっただろう? 君は私の顔を忘れてしまったか……」

 

声が穏やかになる。どこかで聞いた声だ。カイオスは顔を上げる。相手はそこそこ背が高い。中肉中背の自分でも目線が結構違う。170センチはあるだろう。相手の顔をしっかりと見つめる。どこかで見た覚えがある。

まさか、彼ではと思う人物が脳裏に浮かぶがとてもここにはいないだろうとも思う。だが、聞いて悪いことはないだろう。

 

「もしかして……そういう君はバルス提督か!?」

 

目の前の男はウンと頷いた。いとも簡単に強力な見方が手に入ってしまった。こういうところにも来てみるものだ。カイオスは満足げにバルスを同士に迎え入れるべく説き始めた。彼は一応地元の老人から、

 

「君は縦横家になれる! ワシが保証する!」

 

と言われた程度には口が立つ方だ。

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