視点は赤芽視点です。
後、今回の話は神霊廟要素が無いのであしからず。
赤芽side
「ふんふんふ~ん、ふふふんふ~ん♪」
人里に向かう道を上機嫌に鼻歌を歌いながら跳びはねる赤芽、上機嫌な理由は只単に自分が作った道具が沢山売れたからだ。普通は依頼を受け頼まれた品を作り其れを依頼人に売るのだが、何かしらの事でストレスが溜まるとその発散に包丁や斧、鉈に鎌等の道具を沢山作る。その発散に作られた道具等は基本的には人里で渡り売りして減らしているのだが、大抵は売れ残りがありその場合は持ち帰り近くにある蔵(刃の手造り)に仕舞っておりその殆どが後に鍛冶をするとき鉄が足りなくなったときの補充として鉄屑に変わるのだ。
「いやー今日は珍しく全部売れたな、此は色々と珍しすぎて何かの前触れかな?。」
1人夢心地になりながら自宅であり仕事場に帰っていると。
「ふんふんふ~ん、ふんふんふ~「ちょっと良いかい?」うん?」
木陰から姿を見せたのは、不審者にしか見えない人物だった。編み笠を被りぼろぼろの黒い着物を着てぼさぼさなざんばら髪をした青年、その目を細めて赤芽を見る。
「やあ、初めまして、俺の名は花緑、君を腕の良い鍛治氏と見込んで頼みがある。」
「?へぇ、妖怪から依頼なんて珍しい。」
「!!、ほぉ、俺が人間じゃないと見抜いたか、やはり君にならこの刀を預けられるな」
差し出したのは黒い鞘に入ったままの刀、其れを受け取った赤芽はその場で刀を抜く。
「!此は、一旦研ぐにしても時間が掛かる代物ですよ。」
その刀の刃はとてもボロボロであり至る所錆び付いている、刀としては使えない代物である。
「ああ、確かに本来なら別の刀を探せば良いんだろうが、生憎と俺はその刀じゃないと使い勝手が悪いのでね。出来るかい?。」
その口調は赤芽を試すような口調である。その言い方は赤芽の鍛治氏としての心に火を付けるのには十分だった。
「へーえ、言いますね、良いですよ。僕の鍛治氏としての腕に賭けてこの刀を元通りにしてみせますよ。」
その言葉を聞いて嬉しそうに微笑む花緑。
「ああ、それなら良かった。ならば刀が直ったらこの場所に来てくれ俺はこの辺りにいるから、それじゃ。」
赤芽に背を向け森の中に去って行く花緑その姿が見えなくなると。
「ふぅ、さて帰ったらこの刀を研ごうかな。久し振りの大仕事だぞ、頑張ろ。」
刀を持ち家に帰る赤芽を森の中から花緑が見つめていた事は彼しか知らない。
花緑side
「あれが紅蓮鬼の弟子か、」
森の中から赤芽を見ていた花緑は迷うこと無く森の奥に進んで行く。まるで道が分かるかのように。ある程度進んでいくと彼の鼻に濃厚な血の匂いが漂ってきた。
「はぁ、彼奴はまたか、」
呆れたように呟く彼の視線の先には血塗れの大型妖怪の上に立つ柘榴の姿が。
「?お、お帰り花緑、それでお目当ての奴には会えたのか?。」
「ああ、逢えたさ、ちょいとばかし唾を付けといたけどな。」
「えー!ずりいぞ花緑!あれは俺の獲物なのに、」
「はは、辞めておけ。生半可な奴が近づけばあの子を護ってる鬼神に気付かれる。まだその時ではない。」
花緑の説得に応じたのかしぶしぶ詰まらなそうな顔をする柘榴、その後2人は森の奥に消えてった。
はい、どうもよく間を開けて投稿してる苦労バランです。此にて東方神霊廟編は終わります。そして謎の男の名前も出ました。ではまた次回ものんびりお待ち下さい。