青ざめた血の水平線に   作:[この名前は既に使用されています]

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Prologue.02

「叢雲、なにか作戦はあるっぽい?」

 

 

「特にないわよ、好きに暴れて好きに沈めなさい」

 

 

「やったぁ!! よりどりみどりっぽい!!!」

 

 

「腕が鳴りますねっ」

 

 

「はっ、俺に勝負を挑む馬鹿は何奴だぁ?」

 

 

叢雲たちの艦隊は、ろくな陣形すら組んでいない。それどころかまともに航行速度すら合わせておらず、皆思い思いの――最高速度で突き進んでいる。

 

艦隊運動においてはベストな航行速度と言うものが存在している。そしてそれは通常の場合、決して自身が出せる最高速度などと言うものではない。

 

いくら艦の名を有しているとはいえ、艦娘と呼ばれる存在は列記とした生物だ。常時最高速度で駆け続ければ当然疲弊する。

 

何より、最高速度と言うものは人によって――そして、艦によって違う。当然足並みを合わせなければ隊列も陣形も組めたものではないし、連携も援護も何も有ったものでない。

 

実際、叢雲たち四人もお世辞にも隊列が組めているとは言い難い。これでは作戦があるもなにも、まともな作戦を組むことすら出来ないだろう。

 

各艦が、好きなように、思うままに、戦いに臨んでいる。

 

 

――最初に、敵陣に飛び込んでいくのは夕立だった。

 

瑞鶴の艦載機が天龍たちの護衛のため引いた今、敵艦隊の主砲は新たに現れた敵――すなわち、叢雲たち四人へと向けられている。

 

雨あられの如く降り注ぐ砲弾を、まるで被弾など恐れないかのような速さで駆け抜け、一瞬で近接戦闘の距離へと潜り込む四人。海原を蹴る圧力によって水飛沫が激しく跳ねる。

 

その先頭を駆ける夕立の手には、艦娘の兵装としては酷く似つかわしくない、余りにも野蛮な武器――巨大な『手斧』が握られていた。

 

海上を駆けてきた勢いそのまま、夕立は重巡リ級へと飛びかかると、その手斧を無造作に振り下ろす。重巡リ級の腕部装甲と、手斧の暗く分厚い刃が激しく衝突し――そして、重巡リ級の装甲が、砕けた。

 

 

「――さぁ、素敵なパーティしましょ?」

 

 

装甲が砕けたリ級は、とっさに距離を取ろうと後ずさる。夕立はそのリ級の腕を左手で掴み、強引に引き寄せた挙げ句、その胴へと手斧を叩き込んだ。

 

鈍い音がして腹部の装甲が破砕される。重巡リ級の口から、嗚咽のような、空気が漏れる音がした。

 

そして夕立の腰部に取り付けられた艤装――そのアームから伸びた、二本の12.7cm連装砲B型が、装甲の無い重巡リ級の腹部へと立て続けに連射される。

 

ゼロ距離で放たれた砲は、いくら駆逐艦のそれと言えど、重巡リ級に致命的なダメージを与えるのに十分なものであった。ましてや、その腹部にはダメージを軽減するために必要な装甲が無いのだから。

 

 

「ちょろいっぽい」

 

 

そして止めとばかりに、夕立は重巡リ級を蹴り飛ばす。その刹那、夕立の構える手斧から〝がしゃりッ〟と奇怪な金属音が響いた。

 

瞬間、手斧はおおよそ少女の体躯に似つかわしくない『長柄の大斧』へと変化しており――遠心力によって振り回されたその斧の先端が、重巡リ級の身体を捉える。

 

無骨な刃が重巡リ級の胴を引き裂く――筋繊維が強引に千切られ、圧壊。自身を保つための外側を失ったリ級の臓器を派手に撒き散らす。

 

しかしそれで終わりではない。夕立の振るう斧は、一度の回転で止まらず、更に一周して、もう一度振るわれる。

 

勢いを殺さぬまま。更に踏み込み、深々と。圧倒的な暴力を以て、一度目の衝撃でズタズタとなった重巡リ級の胴体を捉える。

 

切断された――と言うよりは、破砕された、と表現すべきであろう。僅かに残っていた暗い黒色の装甲と、悍ましくも赤い血飛沫、白い肉片と内臓を撒き散らしながら、重巡リ級の身体は上下に分割された。

 

そのまま海へと着水し、悲鳴すら無いままに沈んでいく、水面にぶち撒けられた重巡リ級の亡骸を見ながら――夕立は大斧を両手で掴み、また〝かしゃりッ〟と音を立てる。瞬間、大斧はまた手斧へと姿を変えていた。

 

……と、その夕立へと砲を向ける存在があった。もう一隻の重巡リ級である。だが、その砲弾が放たれる前――否、どころか正確に照準を合わせられる前に、鋭い銀色の刃が一閃する。

 

――砲を構えていた、重巡リ級の腕が、装甲ごと切断されていた。

 

血飛沫が飛ぶ。

 

ぼちゃり、と、重巡リ級の腕が海面に落ちる前に、二撃目の刃がリ級の胸を貫く。貫いているのは、小型の刃物だ。そしてリ級が自身に何が起こっているのかを僅かに理解した瞬間――

 

――その首が跳ね飛ばされた。

 

リ級の首を跳ね飛ばしたのは、一本の刀だった。美しい銀色の刃を煌めかせ、柄の部分にはハンドガードがついている。

 

 

「――弱すぎるッ」

 

 

重巡リ級を殺しせしめたのは、重雷装巡洋艦、木曾だった。しかし、重雷装巡洋艦と言う艦種にとっての、必殺の武器足り得る『魚雷』を使った撃破ではない。

 

その両手に握られた、一対の『刀剣』による撃破だ。

 

長い、一本の刀と、短いナイフのような短刀。短刀の方にはリ級の血が塗れているが、刀の方には血の跡すら無い。血が付着するよりも早く、首を切り落としたのだ。

 

木曾は短刀を軽く振り、血を払うと、刀の柄と短刀の柄を激しくぶつからせた。〝キンッ〟と軽い音と火花が舞い、元々そうであったが如く、一対の刀が合体する。

 

長刀の柄頭に短刀の刃が付随したその異様な出で立ちの刀は、技術の無いものが無理に扱えば自身をも切り裂いてしまいそうなほどに鋭く、そして凶悪で、何より洗練された美しさを有していた。

 

 

「おい、重巡は始末し終えたぜ」

 

 

そう報告する木曾の耳に、銃声が響く。

 

銃声。

 

砲の音ではない。通常の艦娘が使用する、かつての旧海軍が採用していた兵装をリサイズした特殊な兵装、その主砲や副砲を使った際に発生する、独特なその音ではなく。

 

銃の、音。

 

周囲を見渡すと、視界の隅に軽巡ホ級と駆逐イ級を同時に相手取る、駆逐艦、綾波の姿が見えた。

 

その右手には、細身のレイピアのような物が携えられており、左手には銃身の長めな――どこか古臭ささえ思い起こさせるような、『旧式の銃』が握られている。

 

そしてその背中には二本の赤い吊り紐で肩からぶら下げられた、黒の鞘に収められた長刀が備わっている。さらに特筆すべきことに、彼女には一切の『艦娘』としての兵装――魚雷や主砲が装備されていない。

 

綾波の持つ銃は、的確に駆逐イ級の『眼』に当たる部位を撃ち抜く。

 

口径の関係上、駆逐艦の砲よりも更に威力が低いはずの銃――それも近代式ではない古式の銃を、どうして綾波は好んで使うのか。木曾はそれを知らない。

 

しかし、その戦いに一切の容赦がないことだけは知っている。

 

眼球を撃ち抜かれた駆逐イ級――後期型は、水上でのたうち回る。それはまるで陸に上げられた魚のようだ。

 

だがのたうち回りながらも、その闘志は消えていない。暴れるようにして、駆逐イ級は綾波へと飛びかかる。大きなアギトが開く。その奥には砲が今まさに火を吹かんとばかりに待ち構えていて――

 

 

「――甘いですね」

 

 

その喉奥に、綾波の持つレイピアが突き刺さる。砲は射出されることなく、駆逐イ級は空中で串刺しとなり止まる。

 

瞬間、綾波はレイピアを持つ腕を軽く捻った〝かしゃんっ〟と言う軽い音がして、何かが変わる。

 

それとほぼ同時に、駆逐イ級の口腔内から重い銃声が連続で響く。だん、だん、だん、だん――と、四連続で巻き起こる銃声。衝撃で空気が震え、空中で串刺しとなったイ級の身体が暴れる。綾波の腕が突っ込まれた駆逐イ級の口の端からは、硝煙が僅かに立ち上っている。

 

綾波が腕を振り回してイ級の死骸を放ると、その手に持っていたレイピアの形状が僅かに変形していた。

 

――レイピアの柄……刃の根本、とでも呼べば良いのだろうか。その位置に銃身が備え付けられている。先程の発砲音は、それが発生源だったのだろう。駆逐イ級の喉の奥で、計四発の弾丸が発射されたのだ。

 

いくら口径の小さな銃弾とはいえ、装甲の一切存在しない内部から放たれればそれは容易に致命傷となり得る。事実弾丸はイ級の身体を貫き、その生命を完全に終了させた。綾波の右腕はイ級の血で真っ赤に染まっている。

 

イ級に気を取られている間に、と言わんばかりに、軽巡ホ級が綾波に接近し、近距離からの一斉射を行おうと、その口にも似た外殻を開き、照準を定める。

 

今まさに撃たん、としたその瞬間、綾波の持つ銃が火を吹いた。連続して、右手に持つレイピアに備え付けられた銃身からも弾丸が飛び出す。だん、だん、だん、だん、と、何発も。何発も。

 

装甲の薄い部位を的確に狙って放たれた弾丸は、軽巡ホ級の身体を貫き動きを止める。撃たれた衝撃で主砲の照準が定まらない。

 

瞬間、綾波が前方へ素早く『ステップ』するかのように一気に距離を詰めた。そして両手の武器を空高く放り投げると、背中にぶら下げられた刀を一気に抜き放つ。

 

鈍い光を放つ刃は軽巡ホ級の身体を一瞬で切断する。

 

紛うことなき致命傷――血飛沫が飛び散って、綾波のセーラー服と水面を赤く染めていく。

 

一瞬のうちにホ級を斬り殺したその刀身を素早く背中の鞘に収め、綾波は空から落ちてくるレイピアと銃をキャッチする。

 

その動きは正しく神速とさえ評すことが出来るだろう。

 

 

「やーりましたー!!」

 

 

嬉しげに笑みを浮かべながら、綾波はレイピアを持った腕を振るう。瞬間、また〝かしゃんっ〟と音がして、レイピアに備わっていた銃身が隠れ、刃のリーチが伸びた。

 

戦闘開始から、およそ十数秒。あっという間に敵艦隊は壊滅状態。

 

残るは、旗艦――叢雲の前に佇む、戦艦ル級のみである。

 

 

「……やれやれね」

 

 

僚艦の様子を見ながら、叢雲はため息をついた。相変わらず、どいつもこいつも艦娘としては余りにも逸脱した戦い方をする。

 

主砲や魚雷よりも、その手に携えた得物を用いた近接戦闘を好む――そして、その得物は一癖も二癖もある異質の兵装。

 

その得物から造り出される暴力の体現は必ず凄惨を齎し、結果として彼女たちを深海棲艦の血で染め上げる。

 

艦娘としては、何処までも異質。

 

 

――まあ、それは、叢雲とて例外ではないのだが。

 

叢雲の眼前にいる戦艦ル級は、苦々しい表情を浮かべて右足を一歩引いている。

 

たかが、駆逐三隻と雷巡一隻に、僚艦が一瞬にして沈められてしまった。そのことによる恐怖と、怒り――それらが綯い交ぜになった感情。

 

逃げるべきか、仇を討つべきか。

 

ル級の内面は、おおよそそんなところだろうか。だが、きっと、今なおル級は、自身が負けると思っていない。たかが駆逐艦と雷巡――魚雷にさえ注意していれば、ル級の装甲が貫かれるとは思っていない。

 

しかし、それは大きな間違いだ。確かに、通常の小口径主砲であっても、互いの練度に大きな差があれば、あるいは運が悪ければ――装甲が破砕されることはあり得る。だが、それとは別の理由で――ル級は、この時、逃げるべきだった。

 

例え逃げ切れないにしても。

 

逃げるべきだったのだろう。

 

 

「なんだ叢雲、お前まだ仕留めてなかったのか? 俺が手伝ってやってもいいんだぜ」

 

 

「夕立も遊びたりないっぽいー」

 

 

「綾波もお手伝いしますよっ」

 

 

「うるさいわね、手ぇ出したらあんたらも一緒に海の藻屑にするわよ」

 

 

「はっ、怖い怖い。じゃあちゃっちゃと片付けろよ。死なねぇようにな」

 

 

「私が負けるなんて本気で思っているわけ?」

 

 

「さてな、どうだか」

 

 

「あんたね……」

 

 

「提督さんも、慢心しちゃ駄目って言っていたっぽい」

 

 

「これが慢心? 笑えるわね、こういうのは余裕って言うのよ――っと」

 

 

瞬間、ル級の主砲が叢雲を向いた。この距離で主砲を使って狙ってくるとは、よほど旋回性能に自信があるのか――と考えた叢雲だったが、その主砲のエイミングが余りにも遅いのを見て、単にここまでの『超至近距離』での戦闘に慣れていないのだと判断する。

 

駆逐や軽巡ならまだしも、相手は戦艦だ。戦艦の強みは強力かつ長射程の主砲と、頑強な装甲。至近距離での戦闘に陥ることがそもそも少ない。

 

叢雲は姿勢を低くして、狙いを撹乱するかのようにジグザグに動き、一気に距離を詰める。敵戦艦の主砲が一斉射される。直撃すればただでは済まないだろうが、そのどれもが叢雲に掠ることすらない。

 

距離を取ることすら叶わず、その身に――叢雲のその右手に握られた得物――『奇怪なノコギリ刃』が。

 

迫る。

 

 

「ふっ」

 

 

ル級の懐に潜り込んだ叢雲は、右手に携えたノコギリ刃を振り抜く。ぎゃりぎゃりぎゃり、と、ル級の装甲とノコギリ刃が擦れる。

 

戦艦の装甲は、硬い。艦娘用に調整された近接兵装であっても、並大抵の攻撃は通らない。

 

しかし、叢雲の振るうノコギリの刃はその装甲を〝ぞりぞり〟と耳障りな音を立てながら削る。

 

砕くのでも斬るのでも貫くのでもなく、

 

強引に、削る。

 

 

「分厚い、わね」

 

 

つぶやいた瞬間、叢雲は自身の左上に影を感じ、とっさに後方へとバックステップをした。直後、先程まで叢雲の頭部があった場所を、ル級の装甲で固められた腕が振り抜かれる。

 

そのままであったら強力な打撃を頭部に受けていただろう。戦艦の艤装出力を考えれば、殴られただけでもただでは済まない。

 

攻撃を躱したと理解した瞬間、叢雲は右斜め前へとステップを挟む。そしてその勢いそのままに、ノコギリ刃を振るう。がりがり、と、装甲が削れる。何度も振るう。削れる。

 

そのノコギリ刃は、叢雲の小さな身にはそぐわない大きさを持っているが、しかし彼女はそれをいとも容易く振るって見せる。並大抵ではない速度と力で。尋常な艦娘の膂力ではない。そしてその力で振るわれるノコギリ刃は、戦艦の強固な装甲であろうと容易に削り得るのだ。

 

ル級は叢雲と距離を取ろうと、その手足を以て近接攻撃を仕掛ける。砲身の備わった巨大な盾のような艤装を振り回し、叢雲の身体を叩き潰そうと試みる。が、その攻撃は全て叢雲の軽やかなステップによって躱されてしまう。

 

通常の海上戦闘ではまずあり得ない、高速の近接戦闘。

 

ル級は叢雲へと、一撃も、攻撃を与えられていない。対してル級の装甲はあっという間に削られていく。

 

 

「――仕上げね」

 

 

装甲が削れ、もはや生身が露出し切っている戦艦ル級の胴体。

 

叢雲は一際強く力を溜めると、その手に持ったノコギリ刃を一気に振り抜く。

 

瞬間、〝がじゃッ〟と金属が擦れ合う音が鳴り響き、ノコギリ刃が――伸びた。

 

遠心力を伴ったその一撃は戦艦ル級の胴体を削ぎ、深々と刃を埋没させる。ル級の腹の肉が鋸刃によって強引に引き千切られ、尋常成らざる痛みと共に、その裂傷から血が吹き出す。伸びたノコギリ刃は戦艦ル級の内臓器官すらも粗方引き裂き、致命的なダメージを負わせる。

 

だが終わらない。

 

叢雲は更に腕を捻り、ノコギリ刃を押し込むように得物を振るう。またもや〝がじゃッ〟と鈍い音がして、伸びていたノコギリ刃が折り畳まれる。刃は戦艦ル級の胴を三分の二以上切断し――

 

――そして、最後に叢雲が更に腕を振るうことによって、不快な金属音と共に再度伸びたノコギリ刃が、戦艦ル級の胴を――断ち切った。

 

三度の変形。

 

ル級の切り落とされた上半身が、腰から上を滑り落ちて、海へと沈んでいく。切断面から大量の血が溢れ出す。周辺の水面――そして、叢雲の身体や衣服、腕、顔、銀色に輝いていた髪――その手に持つ、まるで大型の『槍』のように伸びたノコギリ刃らが、深海棲艦の血で赤く、赤く染まっている。

 

その様子はまるで――

 

 

「お疲れさん」

 

 

と、木曾が、髪を掻き上げる叢雲の肩をぽんっ、と叩いた。

 

 

「別に疲れてないわよ、この程度のことで」

 

 

「そうかそうか、流石初期艦様は言うことが違うってか? まあ、なんだ。労いくらい素直に受け取っておけよ」

 

 

ぽんぽん、と叢雲の肩をもう二度叩いて、木曾は帰投準備に入る。

 

 

「うー、夕立も戦艦とやりたかったっぽい!!」

 

 

「綾波も、ちょっと不完全燃焼です」

 

 

「綾波は二隻も狩ったっぽい。それで十分じゃなあい?」

 

 

「二隻と言っても軽巡と駆逐ですし……」

 

 

「じゃあ帰ったら演習するっぽい!! 手加減しないっぽいよー!!」

 

 

「望むところです!!」

 

 

そんな会話をする夕立と綾波へと、叢雲が声をかける。

 

 

「あんたたち、つらつら喋ってないでそろそろ行くわよ。帰投前に天龍隊を第六支部に送ってこないといけないんだから。あっちで瑞鶴が待ちくたびれているわ」

 

 

「はーい」

 

 

「了解しましたー」

 

 

見れば叢雲と木曾はとっくに準備を整えている。夕立と綾波もそれに続き、今度は隊列を組んでゆっくりと進みだした。

 

 

 

×      ×

 

 

 

――異質の兵装を操り、艦としての戦い方を捨て、ただ敵の血を浴びることに歓びを覚える、悍ましくも美しき艦娘たち。

 

特殊な『仕掛け武器』を用い、並外れた膂力と天性の勘、靭やかで素早い身のこなしを身に着け――余りにも凄惨に、残虐に、深海棲艦を虐殺する、海上の『狩人』。

 

 

第四横須賀鎮守府支部・第一艦隊に身を置く彼女たちは、その戦い様から――『血に酔った艦娘』と呼ばれていた。

 

 

 




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