変人と合コンと傷アリ、偶に人形   作:シアンコイン

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異名と森と奥の手

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――はぐれたのがスコーピオン。鉄血のグレネードと弾幕で分断されたのがM1ガーランド、と。こっちの情報と差異は無いか」

 

「はい、少数での索敵が任務でしたので」

 

早朝、自己紹介を終えた俺と戦術人形ウェルロッドMkIIは缶詰を片手に情報の交換をしていた。

黒を基調とした軍服の様な身なりの彼女、薄汚れた服に、破けたジャケット、黒い靴には飛び跳ねた泥の跡も確認できた。

 

それなりに憔悴していたようだが、持ち込んだ食料とグリフィンの名を聞いて安心したのか、グッスリと寝た為すぐに回復したらしい。

テーブルを挟んでここいらの地図をタブレットに起こし、指を差し合いながら場所と逸れた面子の話をしている。

 

「スコーピオンとは昨日の昼頃まで一緒で、ガーランドとは一昨日から……。場所は?」

 

「窓越しに見える森林、距離からして5~6Kmです。その時点で私は残弾もなく、彼女も最後のマガジンでした」

 

「歩いて一時間あるかないか……。雨が降っていたようだから足元もぬかるんでいたのなら、そうそう遠くへは行っていないか……」

 

「人形の中でも活発な娘です、それなりに距離は稼いでいるかと……。それよりもガーランドの方が私は心配です」

 

グリフィンの指揮官から手を切られた後、鉄血人形に狙われ三人で逃走を図っていたらしい。

当然の判断だが、それにしてもどうもウェルウッドの顔が晴れない、何か理由がありそうだ。

 

頼むから一般兵以外は出てくれるなよ……

 

「………彼女は何処で?」

 

「森林を超えた先の廃墟街です、偵察をしていた所この区域に居た鉄血、処刑人(エクスキューショナー)に目を着けられたので」

 

「……異名付き(ネームド)、か……」

 

遂に割に合わなくなってきた。フラグを自分で建てた結果がコレだよ。

異名付き、鉄血兵にも勿論切り裂き魔(リッパー)スズメバチ(ヴェスピド)といった名称を持ったユニットが複数存在する。

 

しかし異名付きはそれらを従えるボス的存在、それぞれに特化した能力を持ちえグリフィンの戦術人形達と戦い続けている。

当初異名付きが複数確認されたという話は無かったが、新しい情報では他の戦術人形同様、ダミーネットワークを介して動く同じ個体も確認されたらしい。

 

量産型では無い故に、一個人でもその戦力は図り切れない。

本音を言えば今すぐ逃げ帰ってクルーガーのおっさんの拳骨とぺルシカの文句を聞いていた方がマシに思える。

 

「……………」

 

「…? どうかしましたか?」

 

「いいや、何も。それじゃあ30分後には出るよ、君はどうする?」

 

「勿論私も同行します、逸れた地点は記憶しています、何より森の中は鉄血の狙撃手が潜んで居るでしょうから」

 

だが向かいで座っているウェルッドに見ればそんな気持ちも消えた、戦いの場で身なりに気を使う事など馬鹿らしく思えるが、それでも彼女の服や顔、身体の至る所に見える傷跡からそれなりの修羅場の中に居たのだと判断できる。

もう十分頑張った、ならば今度はそれに見合うだけの救済が必要だ。傷の治療、人形で言う修復と休息。あって然るべきだ、文字通り一時は捨て駒とされてしまったのだから。

 

意気込むウェルウッドにバックパックから32ACP弾を手渡し、準備に取り掛かる。

鉄血兵だけで済むか、それとも異名付きと合いまみえるか……。

 

こういう時に限って運がないんだよな、俺は……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宙を舞う指、弾丸、甲、破片諸々、スクラッチの利き腕である左拳は真正面から打ち合った一回り大きい黒い拳に粉砕される。

彼の周囲でその光景に声を上げる戦術人形達を余所に、ふと脳裏に数日前のぺルシカの声が響いた。

 

『腕なら、いくら壊しても良いから』

 

それがどんな意味か、今更に彼は理解する。

通常よりも遅く、スローに見える世界の中、相対していた鉄血人形の大きな拳がその身程の巨大な刃を構えている。

 

対戦術人形用の剣、人間の彼なら容易く切り裂かれるだろう。左手を砕かれた事で止まっていた思考がフル回転し歯を噛み締め右手のベネリを引き寄せる。

死に直面した瞬間に彼女の言葉を理解した自分自身に虫唾が走り、同時に感謝する。

 

「――死ねるかァッ!!」

 

声を荒げ、笑みを浮かべる鉄血人形、処刑人(エクスキューショナー)に吐き捨てる。片手での無謀極まりない射撃、当たるか当たらないかの二つに一つ。

振り下ろされるよりも早く引き金は引かれ、炸裂音が森に響き渡った。

 

ウェルウッドとの簡単な情報交換から既に4時間余りが経過していた。

当初の目的通り、森へとを足を進めた2人はスナイパーの目を盗み、時にはウェルウッドによる不意打ちで戦闘不能にして進んでいた。

 

逸れた地点に到達、スコーピオンが進んだとされる道筋を見つけ足音を追い運よく彼女を発見する。

泥に汚れた顔と警戒心から来る鋭い視線にスクラッチは手負いの猫を連想するも、隣に居たウェルウッドのお蔭で問題なく合流が出来た。

 

予測通り弾を撃ち尽くしていた彼女に弾丸を渡し、次の目標であるガーランドの捜索に移った。

しかし廃墟街での捜索中、斥候と呼ばれるドローン型の小型機械に発見される事態に陥り、姿を暗ますも処刑人に発見され来た道を引き帰す事となっていた。

 

「クソがッ」

 

舌打ち交じりに吐き捨てられた言葉と共に怯んだ処刑人は数歩下がり、その手は止まる。その期を逃さず飛び退いたスクラッチは使い物にならない左手を一瞥し左隣で弾幕を張る戦術人形ウェルウッド、処刑人に出会う前に見つける事が出来たスコーピオンに声を掛ける。

 

「ウェルウッド、スコーピオンと先に拠点へ帰還しろ!!」

 

「無茶な、一人で引き付けるつもりですか!?」

 

「俺より君たち戦術人形の方が足が速い、拠点に戻ってヘリを呼んでくれ」

 

「ですが「行こう、ウェルウッド」スコーピオン!?」

 

「おじさん、助けてくれてありがとね。じゃあヘリを呼んでくるから帰って来てよ?」

 

「――――お土産持って帰る、楽しみにしててくれ」

 

足早に走り去る音を背中にスクラッチは右手にベネリ、左腕にシールドを展開すると面白そうに笑みを浮かべる処刑人を見据えた。

勝利に確信している瞳、負けるはずがないと思考し、理解している表情。

 

対してスクラッチは先ほどまで浮かべていた笑みを消し、真剣な表情へと切り替える。

その目に宿るのは死を覚悟した兵士の意思ではなく、打倒する為、勝ちへと向かう意志。負けないという心の表れだった。

 

待ち受ける様に棒立ちになる処刑人、スクラッチはその状況にも動かず、ただ時間が流れた。

 

「時間稼ぎか、人間」

 

「どうだろうね、アンタの出方を待ってるだけかもしれないぜ?」

 

「フン、お土産とか言っていたが、まさか俺の首を獲るつもりか?」

 

「もしかしたら森の中に咲くお花かもな」

 

「ククッ…――――舐めてんのか?

 

処刑人の言葉を皮切りに衝突する両者、金属と金属がぶつかり合う甲高い音が鳴り、炸裂音が響く。

ハンドガンから飛び出す弾丸をシールドで受け止め、懐に入り込み片腕だけのベネリが火を噴く、しかし相手は戦術人形、人間ならざる速さで後退し散弾が貫くのはその黒い長髪だけ。

 

狙いが定まらないのなら当たる距離へと入り込む、荒削りな判断だが援護も無く、最早片腕が機能しない彼にとってソレが最良と言える。

それでも尚、余裕の表情を止めない処刑人は剣でスクラッチに斬りかかり、一撃を躱し返す刃をシールドで受け流す。

 

「チィ…!!」

 

「ハハッ、さっきまでの余裕はどうした?」

 

息を吐く間も無く振るわれる斬撃を避けてはいなし、掻い潜る。

一瞬の隙をついての反撃であっても容易く躱され、無尽蔵に近い戦術人形の稼働力、有限な人間の体力の差が見え始める。

 

次第に追い詰められ呼吸が荒くなるスクラッチ、ぬかるんだ土に足を持っていかれ、処刑人の連撃により体力の殆どを消耗させられた。

歯を食い縛り胸を大きく揺らす彼はもう一度ベネリを掴み直し、左腕を一瞥して傷だらけのシールドに見切りをつけた。

 

「ッ」

 

息を整え、一気に加速、向かい立つ処刑人へと我武者羅に前進し一か八かの勝負を仕掛ける。

しかし処刑人の表情は崩れない、むしろ笑みを深め顔面に突きつけられたベネリを蹴り飛ばした。

 

「!?」

 

宙を舞うベネリを余所に処刑人の右腕はスクラッチの左腕を掴み上げる、常軌を逸した力で片腕だけで持ち上げられた彼は目を見開き処刑人を睨みつける。

 

「捕まえたぞ、人間。虚仮にしてくれた礼だ、まずはこの左腕から切り刻んでやる」

 

逆手に持たれていた剣を持ち直し大きく振りかぶられる。黒い刀身が木漏れ日により淡く輝き不気味さを際立たせる。

常人ならば泣きわめきそうな場面で彼は表情を崩さずにまだ睨みつける。

 

「いい度胸だ、くらえ」

 

「―――お前がな」

 

処刑人が左手に力を込めた瞬間、一転、スクラッチの顔が笑みに変る。

『これ』を知っているのは本人と、製作者のぺルシカリアだけであり、最後の手段。

 

―――ガシャッ

 

笑みと同時に処刑人の右腕にかかっていたスクラッチの全体重が消え、その手には灰色の前腕から肩までがぶら下がり。

本体であるスクラッチは処刑人の足元で笑みを浮かべていた。彼の左腕は本人の意思で切り離せる。

 

唖然とする相手を余所に彼は脇目も振らずに駆け出し、処刑人の握る腕が処刑人を巻き込んで爆発を起こした。

爆炎と衝撃、飛び散る泥に吹き飛ばされ回転しながらも立ち上がり駆ける。

 

『映画の中だけだと思っていたら大間違いよ』

 

左腕を着けられた際に言われたそんな言葉が彼の脳裏で再生される。片腕に爆弾を背負うなど出来るかと最初は反論した彼も今となっては彼女に感謝するしかなかった。

 

 

 

 

 

 

「―――――――クソガアアアアアアアアアアアアア!!」

 

 

 

 

 

 

底冷えするような雄叫び、破損したのかより機械らしい重低音が木霊してスクラッチの耳に届く。

思わず苦笑いを零した彼が走りながら振り返り、見つけるのは顔半分の人工皮膚が剥がれ落ち、赤く光る眼球、吹き飛ばされ内部の機関が露出している処刑人だった。

 

「何これホラー!?」

 

大ぶりの剣を振り回しながら我武者羅に前進してくる相手に、真面目だった彼は顔を隠しふざけた言葉が飛び出しす。

しかし足は止めない、時間稼ぎはまぁまぁ出来た。後は逃げ切ってヘリが来ることを願うしかないと思っていた矢先のことだった。

 

「―――屈んで!!」

 

「ッ」

 

前方から聞こえた言葉に、経験からか即座に反応した彼は滑り込んだ大樹の陰で潜んでいた金髪の女性を見つける

まもなく女性が構えていたライフル銃が発砲され、悲鳴が木霊した。

 

「急ぎましょう!!」

 

「…あぁ!!」

 

ライフルを担いだ女性、M1ガーランドに促され二人は無事にその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――帰還ヘリの中での一時

 

 

「あぁ……疲れた」

 

「お疲れ様です、スクラッチさん」

 

「おじさん大活躍だったね、腕取れちゃったけど」

 

「三人を見つけられたから別にいいさ、あとまだおじさんじゃない」

 

「私、まさか腕が爆発するとは思わなくって驚きました」

 

「君たちもよーく知ってるぺルシカのお蔭だよ」

 

「え、まさか改造されたの」

 

「ありえそうですね……」

 

「あぁ、だから処刑人とあそこまで…」

 

「されてないされてない、てかガーランドは偶然あの場に?」

 

「処刑人が騒ぎ出したのが聞こえまして、後を追っていたら偶然。間に合って良かったです」

 

「本当に助かったよ、ありがとう。因みに何処を狙ったの?」

 

「目です」

 

「……すげぇ」

 

「流石ガーランドですね」

 

「痛いんだよね……目…」

 

「うふふ」

 

 

 

 




シリアスぶちこんでおいてさっさと終わらせるスタイル。
戦闘描写得意じゃないんで許してクレメンス……。

所々作者が自分で勝手に補間した部分があったりします。
その辺も許してクレメンス…。

ぺルシカとの絡みは次回っす、少々お待ちを……。

そして評価ありがとうございます(土下座)
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