半冷半燃少女は幼馴染   作:セロリ畑

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前回のあらすじっぽいなにか

オリ主ちゃん「オールマイトはお腹が空いたら萎む。覚えた」
はらぺこおーるまいと「(過呼吸で息が出来ない程笑っている)」
左腕バキバキ出久くん「傷が悪化するから堪えて下さい!」



9:三人の秘密になった襲撃後。

 USJ内に来た敵は雄英のヒーローたちによって無力化された。

 クラスの皆も殆ど怪我が無く、無事に乗り越えられたようで、ほっとした。

 出久だけ、左腕を自損してしまったので保健室行き。

 私も出久が心配だったので、お腹が空いて萎んだオールマイトも含めて保健室へ向かい、リカバリーガールに治療される二人の横で待機していた。

 

「ふっ……いや轟少女、お腹が空いて萎んでる訳では……くく……ないんだよ」

「いつまで笑ってるんですかオールマイト……」

「この男は人と感性が違うんだよ。なんせ平和の象徴サマだからね」

「違うのです! 少しツボに入って……くふふっ……」

 

 何だか私の言動がオールマイトを笑わせているらしいけれど、よく分からない。

 出久を見ても、微妙な顔で首を振られるだけ。

 気にはなるけど、他の話に変えよう。

 そういえばさっき、変な事を言っていた。

 

「オールマイトって壺に入る趣味があるんですか?」

「ぶふぉお!!」

「わ」

 

 すごい勢いで吐血した。内臓もやられているみたい。

 あまり話しかけない方が良さそうだ。

 

「……緑谷、このお嬢ちゃんはわざとやってるのかい?」

「いえ、これが素の反応なんです……」

「そうかい……ヴィランたちを絶妙に後遺症が残らないよう凍り付けにしたって聞いたから凄い子だと思ってたけど、スイッチが入ってない時はぽやぽやしてるんだねぇ……」

 

 リカバリーガールと出久は何か小声で話しているけど、オールマイトを見てなくて大丈夫なんだろうか。

 

 そこに警察の人が入ってきて、生徒の無事や先生たちも命に別状はない事を知らせてくれる。

 警察の人は塚内さんといってオールマイトとは旧知の仲らしく、腹ペコモードにも驚いていなかった。

 私はぼーっとしてるのもあれなので、出久の横で包帯の巻かれた彼の左腕に両手を重ねて、優しく撫でていた。

 悪意に晒された影響でか人肌が恋しいので、点滴が終わったら抱きつこう。

 何やら警察の人に温かい視線を送られていた気がしたが、気のせいだろう。

 オールマイトが敵についての詳しい話をしている時、ふと奴らが気になる事を言っていたのを思い出した。

 

 

「ねえ出久。脳無って敵がオールマイトに吹き飛ばされた後、たくさん手の付いてたヴィランが言ってた事覚えてる?」

「へ? ええっと…………そうだ! オールマイト! 死柄木ってヴィランが「あいつ」って呼んでる誰かにオールマイトの弱体化を教えられたって言ってませんでしたか!?」

「……そういえばそんな事を言っていたような……?」

「オールマイト……ギリギリだったとはいえ君より遠くにいただろう彼らが聞いてるのに……」

「うぐっ……」

 

 溜め息を吐く警察の人に、オールマイトが気まずそうにする。

 そんな彼を気にせず、出久は考察を始めていた。

 

「死柄木って敵は実力はあったけど正直作戦とかを立てられる頭までは無さそうだった自分の力を過信して相手より上にいる時は余裕を見せていたけど不利になったり自分に害が生まれた時はすぐに切れていたからどちらかといえば子どもっぽさが目立つタイプ味方で重要な立ち位置の黒霧や脳無って敵にも命令して上手くいかないと仲間だろうがバラバラにするとか怒鳴っていたし世界が自分の思う通りになるって信じてるんだろうけどそんな奴が人の言う事を簡単に信じたりするか?ましてやオールマイトの弱体化なんて知っていなければ眉唾もいいところだし適当に乗せられた可能性が高いけどもし今回の襲撃を考えた奴がバックにいたとかだったらそれはつまり……」

 

「ストップ、緑谷少年ストップ。怖いから」

「考えを口に出してまとめる子なんだな」

「お嬢ちゃん、緑谷のこれはいつもの事なのかい?」

「はい。今なら何をしても大丈夫です」

「若いって良いねえ……」

 

 ブツブツを始めた出久の点滴が終わったので、リカバリーガールが処置した後に抱き着きながら答える。

 消毒液の臭いが混ざった体臭を嗅ぐと、心が落ち着く。

 髪の毛をもふもふするのは特に好きで、ささくれだった心が安らいでいく。

 願わくば、出久からも抱きしめられたら……なんて思ったりして。

 

「ほら、その辺にしときな」

 

 リカバリーガールの声に顔を上げれば、出久成分を補給しているうちに話が終わったのか、警察の人が保健室を後にしていた。

 オールマイトが何とも言えない顔で私たちを見ていたので、離れた方がよさそうだ。

 未だ思考の海に潜っている出久の頬を、軽くぱちぱちと叩く。

 

「わっ!? ……あっ、またやっちゃってた!?」

「うん。お帰り出久」

「ただいま……次からはもう少し早く止めて頂ければ嬉しいです……」

「出久成分を補給してたから」

「ああ……また好き放題されてたのか、僕」

 

「あー、そろそろいいかな少年少女」

「あっ、は、はいっ!」「はい」

 

 項垂れて落ち込んでいた出久は、オールマイトからかけられた声にガバッと起き上がる。

 そして今まで忘れてたけど、重要な話があるって事で私は呼ばれてたんだった。

 

「さて、ようやく本題だね。まずは轟少女、さっきは改めて助かったよ。緑谷少年と二人で時間を稼いでくれていなければ、私は間違いなくやられていた」

「どういたしまして?」

「ああ。それでこの身体なんだけど、お腹が空いてこうなってる訳じゃないんだ」

 

 そう言いながらオールマイトは、シャツをめくってお腹を出す。

 

 そこには大きな古傷があり、あまりの痛々しさに息を呑む。

 

 

「五年前、敵の襲撃で負ったものだ。呼吸器官半壊、胃袋全摘。度重なる手術と後遺症で痩せこけてしまってね……これが今の私の本当の姿さ」

 

 

 並べられた内容はとんでもなく、私は言葉を失う。

 

 お腹に穴でも開けられたんじゃないかと思うぐらいの……いや、実際に開けられたレベルの重傷だ。

 

 オールマイトの弱体化は、本当だったのか。

 

 

「分かってくれているとは思うが、オフレコで頼むよ。雄英教師陣や政府などは知っているが、基本的に私の弱体化は世間には伏せてもらっているんだ」

「勿論、です……出久はこれを知ってたから、貴方を助けに行ったんですね」

「ああ。そしてもう一つ……これはもっと知る者が限られている」

 

 

 オールマイトの眼力が、私の目を射抜く。

 直感的に反らしてはいけないと思い、こちらも見つめ返す。

 

 

「緑谷少年が誰よりも信頼する君にならば……話しても構わないだろう」

 

 

 

 

「私の個性の話だ」

 

 

 

 

 そこで語られた話は、私も自分に無関係ではないもので。

 

 オールマイトの個性『ワン・フォー・オール』。

 聖火のように引き継がれて来た、他者に譲渡出来る個性。

 

 人に渡せる個性があるなんて……と驚愕するけど、同時に納得も出来た。

 出久の個性は両親どちらとも違っていて、家系にも増強系は居なかったのにと疑問に思った事があったのだ。

 恐らくは突然変異ではないかと医者は言っていたらしいし、私もそんな事もあるのかと思っていたが、そうではなかった。

 

 出久を見れば嘘を吐いてごめんとアイコンタクトされたので、気にしていないと首を振って示す。

 

 

 そんな私たちを見てオールマイトは少しだけ笑みを浮かべ、すぐに真面目な表情に戻して話を続ける。

 

 

 代々受け継がれてきた力である事。

 

 平和の象徴となる為、その力を譲り受けた事。

 

 傷を負い限界を迎えていたので、ワン・フォー・オールの後継者を探していた事。

 

 

 そして、後継者として選んだのが、出久である事。

 

 出久に、次代の平和の象徴になってもらいたい事。

 

 

「ヘドロ事件の時だ。無個性でも諦めず自らを鍛え上げ、笑顔で人を助けに行く姿に感銘を受けた。あの時の彼は誰よりもヒーローだった……この子しか居ないと思ったんだ」

「そうですか……出久はオールマイトに認めて貰ったんだね」

「うん……期待に応えられるよう、頑張るよ」

 

 ぐっと右手で拳を作る出久。

 憧れの人に見初められた彼は、今まで以上の努力をしていくのだろう。

 私も、置いていかれないように頑張らないと。

 

 けど、その前に一つ言っておかないといけない事がある。

 

「オールマイト、これだけは言わせてください」

 

「……何かな、轟少女」

 

 

 真剣な顔の私に、オールマイトが少し構えている。

 そんな彼の前で、私は出久に抱きつきながら宣言する。

 

「ちょ、凍夏ちゃ……」

 

 

「出久が誰よりもヒーローなのを知ったのは、私が一番最初ですから」

 

 

 例え貴方が相手でも、それだけは譲れない。

 出久の優しさも、出久の強さも、私が世界で初めて触れたんだから。

 

 私の言葉に、オールマイトはきょとんとして。

 

「…………そうだね、違いないよ」

 

 降参だと言いながら、優しい笑みを浮かべていた。

 腕の中の出久は、溜め息を吐いていたけれど。

 

「凍夏ちゃんってば……どこにムキになってるのさ」

「私の方が、出久の事好きだもん」

「そんなのでオールマイトと張り合わなくても……むぐっ!?」

 

 呆れた風な出久にむっとして、彼の顔を私の胸に埋めるように抱きしめ直す。

 戦闘服のままなので、出久の鼻の辺りが直接胸に触れていて少しこそばゆい。

 

「そんなのじゃないもん。出久は私がどれだけ出久を好きなのか分かってないもん」

「んむむーっ!?」

「……もう、怪我してるんだから大人しくしよ?」

 

 耳の先まで赤くしながら暴れる出久の動きを止めながら、反応に満足した私は小さく微笑んだ。

 

 

 敵の襲撃から始まり、幼馴染と平和の象徴の秘密を知った今日一日。

 

 クラスメイトたちと共に殺意を向けられる恐怖を知った最悪な日でもあり。

 

 私と出久の距離が、色々な意味で近くなれた最高の日でもあった。

 

 

 

 

「轟少女、私たちが居るの忘れてないかな……」

「若い子の青春を見守ってやるのは大人の務めだよ。結婚どころか恋愛もしてないあんたに言っても分からんだろうけどね」

「……耳に痛い話です…………」

 

 




 
 前書きとか後書きで遊ぶのが楽しい事に気づいてしまった9話の終わり。
 とにかくタイミングがあれば二人をイチャイチャさせたい。

 ……サブタイトルで三人の秘密とか言いながらリカバリーガールが居るって?
 彼女は見守ってる人なので、はい。
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