半冷半燃少女は幼馴染   作:セロリ畑

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 感想・評価、誤字報告ありがとうございます。
 漢字とか接続語は自分の推敲だと気づきにくいので助かります。

 体育祭前に二話程閑話。
 というか本編の話の続きです。



10:お見舞いに行った臨時休校日。

 USJ襲撃の次の日、雄英高校は臨時休校となる。

 当たり前と言えば当たり前の事態なんだけど、私は暇をもて余していた。

 昨日の今日でも私は普段通りのコンディションで、家にいても一人で勉強か訓練をするぐらいしかなくて。

 

 それなら折角だし、お見舞いついでに緑谷家に遊びに行こうと思い立った。

 出久に無料通話アプリでメッセージを入れてから、返信を待たずにお出かけ用の服に着替えて家を出る。

 

 服については詳しくないので、いつも冬美姉さんに選んで買ってもらったものを着ている。

 個性で体温調節が出来るから、年中好きな服が着られるのは羨ましい、なんて言われた事もあったっけ。

 言われてみれば今日の服装も、肩が出ているオフショルダーな白い服に青のショートパンツだから、普通なら少し寒いのか。

 

 それはさておき。

 

 同じ静岡県内に住んでいるとはいえ、少し距離がある幼馴染の家へ電車に揺られながら向かっていると、途中で出久から返信が来ているのに気がついた。

 来るのは勿論構わないのだが、どうやら容態を心配した麗日と飯田も来るとの事で、申し訳無いがお茶菓子などを買ってきてほしいとの事。

 引子さんが心配して家で大人しくしてるように言われたらしく、自分ではいけないようだ。

 

 二つ返事で快諾して、出久の家の近場にあるコンビニに寄って適当にお菓子を選んでいると、視界の端に尖った金髪が見えた。

 

「あ」

「あ?」

 

 思わずそっちを向いて声をあげると、相手の爆発頭こと爆豪もこちらに気がついて、眉間に皺を寄せた。

 手元のカゴにはハバネロのスナックとか辛いポテトチップスとか、やけに赤いパッケージとかが多い。

 

「んでテメェが此処に……デクの野郎か」

「遊びに行くの。爆豪は……買い出し?」

「見りゃ分かんだろクソが」

「確かに。カゴを持ってるの、壊滅的に似合わないけど」

「喧嘩売ってんのか半分女ァ!」

「わ、公共の場でもそんな感じなの」

「~~~~ケッ!!」

 

 額に青筋を浮かび上がらせて今にも叫びそうだったが、けれど流石に場所を弁えたのか手を出しては来なかった。

 

 肩をいからせながら会計に向かう爆豪から視線を外し、お菓子選びを再開する。

 麗日たちの好みが分からないので、勝手に好きそうなのを決めてレジに持っていく。

 

 買い物を終えて外に出ると、何故か爆豪が私を待つように立っていた。

 この男、人を待つとか出来るんだ。

 

「私に用事?」

「昨日の続き」

「昨日?」

 

 色々あったから、何を指しているか分からない。

 

「バスん中で話してたやつ、続き聞かせろ」

「? また今度皆にも話すつもりだけど」

 

 そもそもこんな往来で話す事ではないし。

 というか、わざわざコイツ一人に先に話す義理もない。

 

「知るか。丸顔やら眼鏡やらもデクん家来んだろうし、少なからずその話にもなんだろが」

「……麗日と飯田の事? なんで知ってるの?」

「菓子が二人で食うには多い。そもそもデクが他人に買い出しを頼む時点で他にも誰かが見舞いかなんかに来る。そんだけで分かるわナメんな」

 

 洞察力が凄い。

 さっきのちょっとした邂逅だけで、そこまで見ているものなんだ。

 上鳴が才能マンだとか言っていたのも頷ける。

 この男ならきっと、警察とか探偵にもなれるだろう。

 あ、いや、言葉遣いで駄目かもしれない。

 

 というかその言い方って、もしかしなくても。

 

「出久の家、来る気?」

「話の流れで分かれやアホが」

 

 理不尽にも程がある。

 なんで私の憩いの場所に、時限爆弾を連れていくような真似をしなければならないのか。

 

 ……けど、多分断っても無理矢理来るつもりだろう。

 

 さっきから表情は動いても、目が真剣なままだから。

 

 

 仕方ない、か。

 

 

「……暴れたら凍らすから」

「やってみろや殺すぞ!! そもそも暴れるかよ死ねカス!!」

「流れるような罵倒はどこから来るの」

「ウッッッゼ!! つか俺の前を歩くんじゃねえ!!」

「……みみっちい爆発頭」

「聞こえてんぞクソがァ!!!!」

 

 

 流れで一緒に……というか道中を共にする事になったけど、既に若干後悔。

 

 早く出久に会いたいと心から思う。

 

 

 

 

 そんなこんなで出久宅。

 

 

「かっ、かかかかかかっちゃんが来たーー!!!???」

「うるせえ黙れクソデク!! 口に辛味噌煎餅突っ込まれてぇのか!!」

「お見舞いまで持ってきてくれたー!!!???」

「うるせえっつってんだろうがクソナード!!!!」

 

 爆豪の訪問に妙なテンションの出久が叫び、それに爆豪が叫び返す。

 この二人なんだかんだで仲がいいんじゃないだろうか。

 後、出久は私を放置しないでほしい。とても悲しい。

 

「…………お邪魔します」

「あっ、ご、ごめん凍夏ちゃん! 無視した訳じゃなくて驚いてただけだから、落ち込まないで! 後買い出ししてくれてありがとう!」

「……うん。褒めて」

「犬かテメェは!! つかデクも撫でてんなよ飼い主かクソボケ!!」

「ご、ごめんつい……」

「躾られてんのはテメェの方じゃねえか!!!!」

「あながち否定できないっ……!」

 

 出久が撫でてくれてたのに爆豪のせいで邪魔をされる。

 恨めしい視線を送れば、鼻で笑われた。

 コイツ、絶対今度の訓練で凍らせてやる。

 

 と、折角出久の家にいるのだから爆豪の事なんて気にしても仕方ない。

 お菓子を渡して出久の部屋に行くと、いつものようにオールマイトのグッズが出迎えてくれた。

 いつも此処に来るとなんだかわくわくしてしまうのは、テーマパークとかに行く時の感覚だろうか。

 後から入ってきた爆豪も、嫌そうな顔はしているがよく見れば少しだけ目が輝いている。

 

「マジでナード部屋じゃねえか……あ゛!? コイツは昔この俺がわざわざ送った懸賞で外したやつ……!!」

「楽しんでるね」

「誰が楽しむか目ェ腐っとんのか紅白女ァ!!」

 

 紅白女って、髪の色で言ってるんだろうけど、ネーミングが単純すぎるのでは。

 いや、半分女も紅白女もそんなに好きな呼ばれ方ではないんだけれど。

 もしかして、名前を覚えていないとか?

 

「轟凍夏だよ」

「あぁ? ……名前ぐらい知っとるわ馬鹿にしてんのか!!?」

「人の名前は、ちゃんと呼ぶものだと思うけど」

「テメェはうちのババアか!!!!」

 

 自分の親をババア呼ばわりとは、口の悪さここに極まれり。

 爆豪の両親も似たようなものなのか、というか両親の顔が思い付かない。

 でも、間違いなく苦労してるんだろう。

 

「意外と仲良いね二人とも……」

 

 飲み物と皿に広げたお菓子を持ってきた出久が、そんな事を言いながら部屋に戻ってきた。

 待ってほしい、流石にそれは聞き逃せない。

 

「「誰がこんなやつと仲良くなんて(するか!!!)! ……被せないでよ(てんじゃねえ!!!)!」」

 

 否定の言葉が最初から最後まで思いっきりハモってしまった。

 睨み合う私たちに出久が肩を震わせている。

 その反応はとても不本意。笑わないでほしい。

 

「何笑っとんだクソデクが!!!!」

「ごっごめん。何にせよ来てくれてありがとう」

 

 にっこりと笑う出久に、爆豪は舌打ちしながらその場にどかりと座った。

 

 私は……出久のベッドに座ろう。

 他の二人が来たら座布団やらの場所が足りなくなるからの判断で、決して出久の枕に顔を埋めたい訳じゃない。

 出久がじっと見てきているけど、別にやましい事はない。

 目を反らしたのは、そういうあれじゃなくて。

 

 まだ何もしてないのに、視線が痛い気がする。

 

 少ししてから小さな溜め息とともに、視線が外れた。

 

 

「……そういえばかっちゃん、この前言ってた僕の分析ノートさ、今見る?」

「あぁ? …………俺ん所があるやつ、寄越せや」

「うん。えっと、これね。他のナンバリングは僕が興味を持って調べた順番で、ヒーローの考察とか書いてあるから」

「……あー」

 

 

 ……滞りなく会話する二人を見ていると、いじめいじめられな関係だったとは思えない。

 きっと、この状態はこの前の戦闘訓練の後から。

 

 二人は保健室で一体何を話したのか。

 

 多分だけど、これは聞いても答えてくれない気がする。

 私と出久の間に他に入れない幼馴染関係があるように、爆豪と出久の間にも他が入る余地の無い関係があるんだろう。

 今まで拗れていたそれが多少なりともましになったなら、それは間違いなく良い事だ。

 

 

「で、凍夏ちゃんはどうする? お見舞いついでに勉強道具とか持ってきてるみたいだけど」

「んー……麗日たちはいつ来るの?」

「お昼は食べてから来るって言ってたから、早かったら一時過ぎぐらいかな?」

「そっか。なら、お昼まで勉強しよう」

「分かった。あ、お母さんが昨日のカレー残してくれてるけど、お昼はそれでいい? かっちゃんも」

「うん」

「おー」

「そういえば、引子さんはどうしたの?」

「パート。また何か欲しいものがあるからって」

 

「おいデク、あの小汚ねえ担任のはどれだ」

「イレイザーヘッド? ノートNo.10の18pだよ」

「ページ数まで覚えとんのかよキメェ」

「爆豪、今のは罵倒じゃなくてお礼を言う所」

「キメェもんはキメェんだよ」

「あはは……」

 

 

 苦笑いする出久と、眉間に皺を寄せながらもノートを捲る爆豪。

 

 そんな二人を眺めながら、私は勉強道具を持って出久の隣へ席を移す。

 

 時折爆豪に口を挟まれながらの出久との勉強は、一人でやるよりもとても捗った。

 

 

 

 

 

 

 お昼ご飯を食べて、お腹がこなれた頃合い。

 麗日と飯田が同じタイミングで訪ねてきた。

 そして案の定、爆豪の存在に驚かれる。

 

「ばっ、ばば爆豪君もおるん!!?? まさかとは思うけどお見舞いに!!??」

「クソデクと似たような反応してんじゃねえぞ丸顔!!」

「まるがお!?」

「失礼だぞ爆豪君! 女性に対しての物言いではない!」

「黙れやクソ眼鏡が!! 眼鏡割られて只のクソになりてえか!!」

「最早俺の要素はどこへ行った!?」

「語彙力が凄い」

「昔からこんなんだよ、かっちゃんは」

 

 そこからしばらく爆豪と飯田の不毛な言い争いが続く。

 無駄に長かったので、途中経過は省略させてもらう。

 やっぱりこの二人、致命的に馬が合わないらしい。

 

 

「はい、二人とも飲み物」

「はぁ……はぁ……ちっ……」

「はぁ……はぁ……す、済まない……」

 

 論争、というか殆ど罵りとずれた正論の殴り合いが落ち着いた後。

 息を切らす爆豪と飯田に出久がジュースのおかわりを注いでから、横に避難していた私とお茶子(名前で呼んでほしいと言われた)の所に戻ってきた。

 

「な、なんかごめんね麗日さん。折角お見舞いに来てくれたのに……」

「いやいや、デク君の謝る事じゃないってば」

「出久は悪くない。あっちの二人が悪い。特に爆豪」

「口開く度に喧嘩売ってんじゃねえぞ半分女ァ……!!」

 

 つい口が滑った。

 

「まあ爆豪君と飯田君は合わないよね。不良と眼鏡だし!」

「だあああれが不良だ丸顔ォ!!」

「眼鏡は関係なくないか!?」

「まあまあまあまあ!!」

 

 お茶子は結構ざっくりしているタイプらしい、分からなくもないけど。

 また荒れそうになったが、そろそろ出久が仲裁のし過ぎで項垂れそうなのを皆が察し、騒ぎは収まった。

 

「はぁ……緑谷君のお見舞いに来た筈が疲れさせてしまっているとは……」

「あー……ごめんねデク君」

「あはは、大丈夫だよ。改めて来てくれてありがとう」

「良いってば! もう私たち友達だろっ!」

「その通りだ。大した事なさそうで良かったよ」

「っ……うん、そうだね!」

 

 うららかとしたお茶子と少し頬を緩めた飯田に、出久も涙ぐみそうになりながらも笑顔を返している。

 初めての友達から、友達と言ってもらえて嬉しかったのだ。

 私も自分の事のように嬉しくて、にこにこしていた。

 

 

「それにしても昨日は大変な目にあったよねー……」

「ああ、まさかヒーロー科の最高峰たる雄英高校に敵が攻め込んで来るとは……」

「飯田くんが校舎まで走ってくれたんだよね。流石委員長」

「ありがとう。しかし緑谷君の指示も的確だったぞ」

 

 出久たち三人が中心で昨日の話をし始める中、時折爆豪からの視線を感じ始める。

 恐らく誘導しろや的なあれなんだろうけど、何故私に振るのか。

 自分でやってとジト目を返せば、舌打ちが返ってくる始末。

 この爆発男、まさか私に話さない選択肢があるのを忘れているんじゃないか。

 

「敵襲撃といいバスの……い、いや、とにかく凄まじく濃い経験をした一日だったな」

「バス? 何かあった……あ……」

 

 

 ……飯田とお茶子め、このタイミングで思い出すの。

 

 そして一気に重くなってしまった空気に、出久がフォローを入れるのは言わずもがな。

 

「あれかー……いや、全部事実ではあるんだけどね。それから炎司さん……エンデヴァーの態度も少しずつ改善されていったって話を加えてほしかったな。あれじゃ一方的な悪役だし……」

「……そう、なのかい?」

 

 飯田とお茶子の視線がこちらを向く。

 知らない振りをしようとして……爆豪との約束的なものを精算するのには良いタイミングだと考え直した。

 

「まあ、その辺はまたその内ね」

「む、そうか……ならば今は聞く訳には――」

 

「今話せ、轟」

 

 

 うん、こう言えばそう来ると思った。

 爆豪の言葉を、突然の事だと思っている筈の飯田とお茶子は驚いている。

 けれど出久は私とのやり取りで爆豪が家に来た理由まで察したのか、合点がいったと言わんばかりに頷いていた。

 

 ついでに私は、爆豪から名前で呼ばれて驚いている。

 

 

「爆豪君!? 今度話してくれると言っているのに何を!?」

「……いや、良いよ飯田。爆豪はそれを聞く為に此処に居るの」

「なっ……轟君!?」

「そ、そうだったんだ……」

 

 

 今度は私に驚く顔をする二人。

 振り回して申し訳無いと思うけど、聞いてほしいと思う。

 

 少なからず、彼の背中に何かを感じたこの二人にこそ。

 

 

「だから、二人にも先に話すね。私のヒーローの……出久の話を」

 

 

 二人の友達はとっても凄い人だって、知っていてほしい。

 

 私を助けてくれた、最高のヒーローだって。

 

 

 

 

 ちなみに今更ながら続きが自分の話になると気がついて、この場から逃げようとした出久は、爆豪によって取り押さえられた。

 

 

 




 オリジン話を早めに終わらせて遠慮なくいちゃいちゃさせたい人です。
 シリアスは甘々イチャイチャのスパイス。
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