半冷半燃少女は幼馴染   作:セロリ畑

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 三日後と言いましたが書けたので投稿。
 体育祭編の始まり……の始まりです。
 焦凍くん不在の中で魅せる技量が問われる所……(震え声)

 今後は2、3日に一話の投稿になりそうです。毎日投稿は私には辛すぎました。



体育祭編
12:にこにこと体育祭に向けて。


 爆豪たちに出久の武勇伝を聞かせて、私が出久に慰めてもらった日の翌日。

 

「皆ー!! 朝のHRが始まる!! 席につけー!!」

「ついてるよ。ついてねーのおめーだけだ」

 

 出久の話を聞いて一層はりきっている飯田が教壇で指示を出しているが、微妙にから回っていて瀬呂から冷静に突っ込みを受けている。

 ショックを受けた飯田が落ち込みつつもそそくさと席に着いたが、私は彼のああいうところは好ましいと思う。

 

 チャイムと同時に扉が開き、両腕と頭に包帯をぐるぐる巻きにしたミイラ……相澤先生が入ってくる。

 

「おはよう」

「「「「相澤先生復帰はええ!!!!」」」」

「先生! ご無事だったのですね!!」

「無事言うんかなぁアレ……」

 

 お茶子の呟きは最もだ。

 ちょっとフラフラしているし、まだ要安静なのを無理してるっぽい。

 

「俺の安否はどうでも良い。何よりまだ戦いは終わってねぇ」

 

 ミイラ先生の言葉に皆がざわめき出す。

 

「戦い?」

「まさか……」

「まだ敵がー!!?」

 

「雄英体育祭が迫ってる!」

「「「「クソ学校っぽいの来たあああ!!!!」」」」

 

 ホッとしながら騒ぎ出すという、器用なクラスメイトたちの叫びが教室に響いた。

 毎度思うけど、私が知らないところで打ち合わせでもしてるんだろうか。

 だとしたら、仲間外れは悲しい。

 

「待って待って! 敵に侵入されたばっかなのに大丈夫なんですか!?」

 

 誰かの言葉にそういえばと皆が相澤先生を見る。

 

「逆に開催する事で雄英の危機管理体制が磐石だと示す……って考えらしい。警備は例年の五倍に強化するそうだ」

 

 げっ……と、思わず漏れてしまいそうな声を呑み込み、両手で口を押さえる。

 こういう時、もしかしなくても駆り出されそうな雄英OBの暑苦しい父親に心当たりがあったから。

 

「何より雄英の体育祭は……最大のチャンス。敵如きで中止していい催しじゃねえ」

「いや、そこは中止しよう?」

「峰田くん……まさか雄英体育祭見た事ないの!?」

 

 峰田の弱気な意見に少し賛同しそうになったが、出久が信じられないといった顔で振り向いたのでその考えは消えた。

 ただ、視界に入った私の表情で考えは読まれたらしく、呆れた顔を向けられたけれど。

 

 そこからは相澤先生の長い語りだったのでぼーっと聞いていた。

 かつてのオリンピックに代わる日本のビッグイベントの一つとか熱弁していたが、正直それほど興味はなかった。

 基本的に人を助けるヒーローを目指している私にとって、他者と優劣を争う行事はあまり積極的になる理由はない。

 いくら全国のトップヒーローたちがスカウト目的で見るにせよ、私にはNo.2の父がいるのだし。

 

 ……ここだけの話、親としてではなく、ヒーローとしてのエンデヴァーには一目置いている。

 あの男の立ち位置が伊達や酔狂で居られる場所でないのは、言われるまでもなく理解しているから。

 言葉にすれば煩いだろうから、直接言った事は一度もないけれど。

 

 それは置いといても、現在進行形で私を育てるのに熱心な父親が居るのに、という気持ちは少なからずある。

 自分の立場に甘えていると言われれば否定できないけど、この環境以上というのは難しいのではないだろうか。

 

 皆が順調に盛り上がる中、私は一人そんな事を考えていた。

 

 

 

 

 時間は飛んで昼休み。

 

「出久、ご飯行こ」

「うん。凍夏ちゃんはそんなにテンション上がってないね」

「まあね。出久もでしょ?」

「あはは……こういうのは、ちょっとね」

「君たちは普段通りだな」

 

 私と同じく普段と変わらない出久と話していると、飯田が独特なポーズで会話に入ってくる。

 謎ポーズ、そろそろ突っ込んだ方が良いのだろうか。

 

「僕たちはほら、元々あの人に鍛えられてるっていうのもあるから」

「ああ……成る程。確かに俺も兄がいるから分からなくはない……が、ヒーローになる為に在籍しているのだから、こういったチャンスは燃えてこないか!?」

「飯田ちゃん独特な燃え方ね、変」

 

 あ、梅雨ちゃんに先に言われてしまった。

 けど飯田は気にしてないみたいだ。

 

 それより、飯田には兄がいるというのがどう関係してくるのか。

 お茶子を含んだ四人で食堂に向かう途中で聞いてみると、なんと飯田の兄はヒーローをやっているとか。

 インゲニウムという名前で、私も知っている有名なヒーローだ。

 

 そんな兄のような立派なヒーローを目指しているという飯田が、なんだかとても嬉しそうに見える。

 

 

「飯田、そんな笑い方するんだね」

「あ、凍夏ちゃんもそう思った? 私とデク君も前にそれ言ったんだよ!」

「うん。お兄さんの話をしてる飯田くん、凄く生き生きとした笑顔だよね」

「そ、そう言われるとむず痒いものがあるな……」

 

 

 珍しく照れた様子の飯田に笑みが浮かぶ。

 真面目な友達の、こういう一面が見れたのはなんだか嬉しい。

 

 ほわほわした空気のまま、話の流れがお茶子のヒーロー志望の動機へと移る。

 なんでも家族が建設会社をやっているそうで、あまり儲かっていないらしい。

 だから個性使用の許可をとって会社を手伝うと言ったのだが、彼女の父はお茶子に夢を叶えてほしいと背を押してくれたそうだ。

 

 そんな優しい両親を楽にさせてあげたいと、ヒーローを目指しているお茶子。

 

 本人は私や出久、飯田のように立派な動機で無いと恥ずかしそうにしていたが、全くそんな事はない。

 

 

「凄く立派だよ。ね、出久、飯田」

「うん! 麗日さんらしい優しい目標だなって思うよ!」

「その通りだ! 親孝行の為に、というのはとても立派な事だぞ!」

「そ、そうかな……えへへ、ありがとー」

 

 

「おお!! 緑谷少年がいた!!」

「わ」

 

 照れるお茶子に皆が和んでいると、曲がり角から突如オールマイトが現れる。

 びっくりした。エンターテイメントするのは良いけどいきなりは止めてほしい。

 

「ごはん……一緒に食べよ?」

「乙女や!!!」

 

 小さな包みを片手に出久を誘う姿に、お茶子が吹き出している。

 というかあれ、もしかしてオールマイトの手作りなんだろうか。

 

「是非……三人ともごめん、また後でね」

「あ、うん」

 

 そしてそのまま連れられていく出久。一緒にご飯食べたかった。

 

 今度、私もお弁当を作ってこよう。

 

 その日は出久を除いた三人でお昼を食べる事になったが、お茶子たちにオールマイトの呼び出しはなんだったのか疑問に思われていたので、個性が似てるし気に入られてるんじゃないかとかそれらしい事を言って濁しておいた。

 

 というかあれでは個性はともかく、師弟関係を隠しているようには見えないのだけれど、オールマイトはその辺をどう考えているのだろうか。

 

 ……案外、何も考えていない気がする。

 

 それが一番しっくりくるNo.1ヒーローというのも、よく考えたら凄いと変な方向に感心してしまった。

 

 

 

 

 その日の放課後の事。

 妙に教室の前が騒がしくなっており、何事かと思えば多くの他クラスの生徒が集まっていた。

 

「出れねーじゃん! 何しに来たんだよ!」

「敵情視察だろ、ザコ」

 

 喚く峰田を爆豪が一蹴する。シンプルな悪口だ。

 震える峰田を出久が慰める中、そのまま入口に進んでいく爆豪が、軽く見回しながら口を開く。

 

「敵の襲撃を耐え抜いた連中だからな、体育祭前に観ときてえんだろ」

 

 成る程。そういう集まりなのか。

 相変わらず頭の回転が早いと言えばいいのか、口の悪さを直せば普通に優等生だと思うのだけど。

 

「意味ねェからどけ、モブ共」

 

 ……口の悪さ、直らなさそう。

 

「知らない人の事とりあえずモブって言うのやめなよ!!」

 

 飯田の最もな言い分にクラスの皆が真顔で頷いている。

 と、思ったら出久だけは何故か苦笑いだ。

 その反応の意味を問う前に、観衆の一人が前に出てきた。

 

「どんなもんかと見に来たが、随分偉そうだなぁ。ヒーロー科に在籍する奴は皆こんななのかい? こういうの見ちゃうとちょっと幻滅するなぁ」

「ああ!?」

 

 その人物の言葉にクラスの全員が真顔で首を横に振る。今度は出久も含めて。

 もし爆豪みたいなのばっかりがヒーロー科なら、そのヒーロー科は多分世紀末か何かだろう。

 

「普通科とか他の科ってヒーロー科落ちたから入ったって奴、結構居るんだ、知ってた? 体育祭のリザルトによっちゃ、ヒーロー科編入も検討してくれるんだって。その逆もまた然りらしいよ……」

 

 目に隈のある男子が首を押さえながらそんな事を言う。

 

「敵情視察? 少なくとも俺は、調子のってっと足元ゴッソリ掬っちゃうぞっつー、宣戦布告しに来たつもり」

 

 大胆不敵にもそう言い切った男子生徒。

 本気なのは、目を見れば分かる。

 

 そんな彼の言葉に続くように、集まりの後ろからもう一人声を上げる人がいる。

 

「隣のB組のモンだけどよぅ!! 敵と戦ったっつうから話聞こうと思ってたんだがよぅ!! エラく調子づいちゃってんなオイ!!! 本番で恥ずかしい事んなっぞ!!」

 

 他クラスの同じヒーロー科の男子にもそう言われてしまった。

 爆豪のせいでA組全体にヘイト値が溜まってるんだけど、この爆発頭はどうしてくれるのか。

 

 A組の皆と観衆全てが爆豪に注目する。

 ……何も言わない。

 こいつ、火に油を注ぐだけ注いで放置する気だ。

 

 そんな爆豪を見かねてか、出久が溜め息を吐いて奴へと近寄っていく。

 わざわざ火中の栗を拾いに行くなんて、優しさが過ぎる。

 

「かっちゃん、言葉が足りなさすぎて僕らにまで飛び火してるんだけど」

「知るか、そもそも此処にいる時点でクソなモブ共があれで分からんなら本気でカス以下だわ」

「君って奴は……ごめんね、彼はその、こういう人だから」

「どういう意味だテメェクソデク!!」

「ちょっ!? フォローに入ろうとしてるのに掴みかかろうとしないでよ!!」

「頼んどらんわ死ねボケカス!!」

 

 出久、そいつに優しさは要らないと思う。

 

 観衆が戸惑い始めているが、多分爆豪の言葉遣いが素でこれなのに気がついたからだろう。

 どう足掻いてもヒーローの口調には聞こえないから、気持ちはよく分かる。

 

 そして爆豪は後で氷結する。絶対に。

 

「…………そいつが色んな意味であれなのは分かったよ。さっきの、ヒーロー科って一括りにしたのは悪かった」

「……うん、何かごめんね」

 

 大胆不敵系宣戦布告男子に気の毒そうに謝られて、出久もいたたまれなさそうだ。

 それはそれとして、出久は咳払いを一つした後、爆豪のフォローに入った。

 

「えっと、かっちゃん……彼が言った意味を簡単に言えば、「敵情視察に見に来たんだったら、僕たちの情報は見た目ぐらいしか分からないから来る意味がない、そんな暇があるぐらいなら体育祭まで鍛えとけ」って事。ね?」

 

「……ちっ、あれでそれ以外の意味に取る方が訳分からんだろアホが」

「「「「いや分かる訳ないだろ!!?」」」」

 

 クラスの皆と廊下に居た人たちの声がハモった。

 けど、これに関しては私も同感だ。

 何をどう聞いたらそういう意味で捉えられるのか、さっぱり分からない。

 逆に分かった出久が凄い。爆豪言語の理解が深すぎる。

 

「うん……まあ、つまり。だから宣戦布告に来た君以外、かっちゃんにとっては時間を無駄にしてるようにしか見えなかったんだよ」

「…………通訳が必要な時点でヒーロー科としてどうかとは思うけど、意味は分かったよ。とりあえず俺はそれだけ」

「あ、待って!」

 

 踵を返そうとする宣戦布告男子を、出久が呼び止める。

 視線を向けられた出久は、珍しく好戦的な笑顔を作ってから口を開く。

 

「僕たちも負けない。ヒーロー科に居る皆も、本気でヒーローを目指して此処にいるんだから」

「…………ふっ、そうかい。まあ楽しみにしてなよ」

 

 出久の返答に不敵な笑みを返した彼は、そのまま教室から離れていく。

 集まっていた他の人たちも徐々に散らばって行き、A組の教室前には殆ど人が居なくなっていた。

 

「ケッ、余計な事しやがって」

 

 クラスの皆がホッと一息吐く中、爆豪はそう吐き捨てて教室を後にする。

 出久は苦笑いしているが、本当にあのボンバーヘアーは。

 

「緑谷のお陰で助かったってのに、なんだよあいつ」

「まあまあ……僕が勝手にやった事だから」

「どんだけ人が良いんだよ緑谷……」

「けどデク君かっこよかったよ!」

「確かに! 俺も一層気持ちが引き締まったよ」

「そ、そう? 何か勝手にクラスの総意みたいに言っちゃったし……」

「勝手なんて事ないって! ねっ、皆!」

 

 お茶子の言葉にクラスメイト全員が頷いたりして賛同の意を示した。

 かくいう私もそうだから、にっこりと笑顔を向けている。

 

「なら、良かったかな。っと、B組の人にフォロー入れてなかった! 行ってこないと」

「む、ならば俺も付き合おう! 委員長の拳藤君とは面識もあるからな!」

「あ、ありがとう飯田くん」

 

 言うや否や足早に教室を出る二人に、誰も声をかける間もなく見送った。

 残された皆は少しぽかんとした後、感心したように話し出した。

 

「緑谷、見た目によらず頼りになるよなー」

「爆豪のフォローとか、俺出来る気しねぇもん……」

「それより見た目によらずは余計だろう」

「USJの時もだけど、しっかりしてるよね!」

「なんて言うか、行動がカッコいいよね。ウチも見習わなきゃって思うよ」

「ここぞって時に男らしいよな!」

「こと委員長は飯田さんに譲られましたが、多を牽引する能力は緑谷さんもかなりのものだと思いますわ」

「さっきの宣戦布告の返しも良かったし、体育祭のやる気が俄然沸いてきたよー!」

「静かに熱く燃ゆる闘志の獣、緑谷の内にも存在していたか」

「何言ってるかよく分かんねーけど、改めて体育祭頑張ろうって事だな!」

「左様」

 

「んふふー。ねっ、凍夏ちゃん。デク君が褒められてるとなんか自分の事みたいに嬉しいね!」

「うん。皆が出久を認めてくれて、凄く嬉しい」

 

 麗らかな空気を醸し出すお茶子に同意しながら、私も頬が緩んでいくのが抑えられなくなってきた。

 多分今、鏡をみたらとてもにこにこしている自分と対面できると思う。

 今なら嫌いな父とでも、笑顔で会話が弾むかもしれない。

 いや、流石にそれはないか。

 

 何にせよ、現状で出久がクラスで高評価で、本人が知らないうちに皆を良い方向に引っ張っている感じ。

 幼馴染として鼻が高いけれど、私も負けていられない。

 

 体育祭へのモチベーションはそこまで高くなかったけれど、先程の宣戦布告を聞いたのも合わせて、そうも言っていられなくなった。

 

 目指すは表彰台、上位入賞だ。

 

 もしかしたら、出久と本気で戦わなければならない機会があるかもしれないけれど。

 

 その時は、全力でやろう。

 

 

 飯田と教室に戻ってきた出久が、皆に体育祭に向けての決意表明をされて戸惑うまで、後少し。

 

 

 




 今作においては出久くんの評価がうなぎ登りに上がっていく模様。

 相澤先生の怪我は原作よりはマシです。
 出久が割って入ったので頭を叩きつけられたのは一度。
 それでも目に後遺症は残る重症ではありますけども。
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