半冷半燃少女は幼馴染   作:セロリ畑

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 感想ありがとうございます。例の人の人気にオリ主ちゃんもにっこり(ただし黒い笑み)

 早めに閑話を。三人称視点。
 タイトル通り、というより出久たち三人への評価的なもののまとめ。


13.5:障害物競走:飯田・八百万の思い。

 轟凍夏、緑谷出久、爆豪勝己の三人がスタートダッシュを決めてトップに躍り出ているのを、他の生徒たちは走りながらもしっかり見ていた。

 

「ってぇー!! 凍った!!」

「動けん……!! てか寒みー!!」

 

 氷を生き物のようにうねらせて進む凍夏の余波に巻き込まれてしまったものもそれなりにいて、全体的にゲートを抜けるまでに多少なりとも時間を使ってしまう。

 そんな中、巻き込まれる予測をしていたA組の面々や、他クラスの一部の精鋭は一足先に駆けていく。

 

「最初からフルスロットルかよ!!」

「やはりあの三人は判断力がズバ抜けているな……!」

「速度が落ちませんわね……っと!」

 

 トップを追いかける第二集団の先頭が、第一関門のロボ・インフェルノにたどり着いた。

 しかし、ただでさえ密集して通り抜けるのが困難だというのに、凍夏の氷や出久と勝己が破壊したロボの部品で間が埋まっていて、上手く通り道が確保できない。

 

「おっと、悪いけど俺は先に行くぜ!」

「成る程、便乗させてもらうぞ。黒影!」

「アイヨ!」

 

「皆さん! 一旦協力して道を開きましょう!」

「ああ、分かった!」

 

 しかし上を行ける者は上へ、一人での攻略が難しいと判断した者は一時的に協力して活路を開く。

 その動きが早い者は、やはりA組が多い。

 

 だが決して晴れた表情はしておらず、必死だったり真剣な表情で前に進んでいる。

 

 1-A全員の意識は、遥か先を行く三人に向けられていた。

 

 

 緑谷出久。

 柔らかい表情は少し頼りなくも見えるが、実戦となるとしっかりしている緑髪の男子。

 

 爆豪勝己。

 柄が悪く粗暴な態度だが、戦闘の才能は間違いなくクラスでトップの金髪頭の爆発系男子。

 

 轟凍夏、感情の起伏は小さめで儚げな印象とは裏腹に、氷と炎で相手を圧倒する紅白髪の美少女。

 

 

 誰も声に出してはいないが、クラスの総意としてこの三人は今の自分たちより何段階も上にいると思わせるものを持っている。

 

 

 

 始めに出久。

 自他共に認める地味な見た目とは真逆の派手な増強系の個性持ち。

 最近まで個性の制御が出来ていなかったが、USJ襲撃事件で感覚を掴んだようで、既に肉体を壊さずに使うコントロールを身に付けている。

 その事実が発覚した体育祭前の救助訓練では、ヴィラン役に扮したオールマイトを極僅かな時間だが押し留める程の制御域に達していた。

 

 そして特筆すべきは、個性以外の評価だ。

 まだ凍夏に爆豪、麗日と飯田しか知らない事実ではあるが、出久はこの春まで無個性として過ごしている。

 個性が無いハンデを補う為に、彼は今まで多くのものを積み上げてきた。

 エンデヴァー指導の元での肉体強化は勿論、組み手などで戦闘の駆け引きを学び、自分に最も合った戦闘スタイルを習得したり。

 様々な個性についての勉強を行い、考察によってその都度自分の動き方をどうするか考えたり。

 出久の頭には膨大な量の個性や戦闘に対する知識があり、かつ彼はそれを活かす事が出来るようひたすらに努力を怠らなかった。

 

 他の二人と違い、飛び抜けた才能はない。

 けれど、貪欲に努力をし続ける力だけは誰にも負けない部分だ。

 努力を意味するヒーロー名を持つエンデヴァーをして、努力の天才とまで言わしめた。

 それが彼、緑谷出久という男だった。

 

 

 次に爆豪。

 言動や立ち振舞いの悪さはA組の中どころか、下手をすれば全国のヒーロー科の中で最も酷い可能性すらある男。

 入学直後の戦闘訓練以降、とある理由より多少はマシにはなったが、それでもまだヒーローと呼ぶには程遠い輩といえる。

 そんな態度とは裏腹に、成績面で言えば常にトップクラスの実力を持っているのが爆豪なのだ。

 入学首席の座を取った事からも分かるが、非常に優秀な頭脳に身体能力、そして個性を持っている。

 

 個性「爆破」

 変異した掌の汗腺からニトロのような汗を出し、自在に爆発する力。

 一見で強力なのが分かるそれを、爆豪は圧倒的なセンスを持って使いこなしている。

 何でもないように爆破の勢いで飛行したり、大きな爆発を起こしたりしているが、どちらも体重や身体の向き、タイミングなどの調整がとても難しいものだ。

 見てから動ける反射神経も合わさり、相手の動きに即座に対応して判断出来る力がある。

 

 彼に対して才能マンという言葉を上鳴が使っているが、その表現はまさしく正しい。

 爆豪の才能はそれこそ戦闘面にのみならず、あらゆる分野で飛び抜けている。

 中でも戦闘においては一層際立っており、戦う度にどんどんと洗練されていた。

 そんな彼の凄さが言動で台無しになっているのは、本人が直す気もなさそうな以上どうしようもない。

 

 

 最後に、凍夏。

 普段はほわほわとしていて、街中を歩けば100人の通行人が男女問わず全員一度は振り向いてしまう程の儚げな美少女。

 左目周辺に大きな火傷の痕があるが、端麗な顔とのアンバランスさがむしろ調和を生み出している、とは八百万の弁だ。

 四枠しかない雄英高校推薦入学者の一枠を掴みとる程の優秀さでありながら、それを一切鼻に掛けていない。

 父親がNo.2ヒーローである為に家も裕福で、一般的にはお嬢様と呼ばれる部類に入る。

 

 そして個性の「半冷半燃」

 身体の右側で氷結を、左側で炎熱を操る。

 幼い頃から左右どちらも鍛えてきたそれは、個性把握テストで見せた精密な動作も、初の戦闘訓練で見せた広範囲に及ぶ高火力も兼ね備えている。

 派手さも強さも右に並ぶ者は居ないのではないか、とまで思わせる強個性。

 これはひとえに個性婚によるものではあるが、本人は既に自分の力だとしっかり認識しているので問題ない。

 

 更に、鍛えられているのは個性面だけではない。

 個性を十全に扱う為に肉体も鍛えており、見た目の柔らかそうな肉付きからは考えられない程、身体が引き締まっている。

 出久にも言える事だが、無駄のない筋肉の付け方は彼女の父親の指導の上手さによるものだ。

 まあエンデヴァーに良い印象を持っていない凍夏は、それを口に出して認めはしないだろうが。

 

 個性も家柄も才能も、全てを持って生まれてきた女の子、轟凍夏。

 その彼女が努力を怠らずに来た今、正面からまともに戦えそうなのは、現状のA組では出久と爆豪だけだった。

 

 

 

 三人を見据えるA組の心情は、穏やかなものではなかった。

 同じ歳で、同じ高校で、ここまでの実力がある彼女たちに敬意を示すと共に、差が大き過ぎる事にそれ以上の悔しさを感じている。

 

 それが最も顕著なのは、八百万と飯田だった。

 

 先に、八百万から。

 

 凍夏と同じ推薦入学者で、個性把握テストでは彼女たちの上に行ったものの、今の自分が三人より優れているなどとは毛ほども思っていなかった。

 個性柄、知識だけは誰にも負けない自信がある。

 それでも実戦に活かしきれているかと問われれば、即座に首を横に振るだろう。

 戦闘訓練から始まりUSJ襲撃事件まで、出久や凍夏は冷静に判断をしてワープ後も敵を無力化したり、爆豪も咄嗟に動いて敵の起点を抑えていたと聞いていた。

 八百万も動けば同じように出来る力はあっただろう。

 

 けれど、彼女は動けなかった。

 黒霧に飛ばされた先で絶縁シートを作る発想こそ出来たが、目に見える範囲の敵を倒した後に油断して上鳴を人質に取られるという愚行を犯してしまった。

 スナイプが間に合わなければ、きっと八百万は心に傷を残す程の酷い目に遭っていたに違いない。

 自身の不甲斐なさを嘆く八百万に、入学直後の自信は全く残っていなかった。

 

 実際の所、出久や凍夏はNo.2ヒーローの教えあっての動きで、爆豪に至ってはセンスよりも性格によるものなので、この差は仕方のないものではある。

 しかし、それを飲み込める程八百万は成熟していなかった。

 

 

 そしてそれは、飯田も同じ。

 

 入試の時から出久の行動に目を向けていた彼は、友として尊敬すると同時にライバル視していた。

 救助ポイントの仕組みに気づいてお茶子を救ったのだと考えていたが、初日に教室で聞けばそんな事は無く、ただ考えるより先に身体が動いていたと言う。

 試験という場なのにも関わらず迷いなく人を助けに行く出久に感銘を受け、こういった友と学べる雄英に来られた事を感謝した。

 

 しかしそれからと言えば。

 戦闘訓練では爆豪の暴挙があったとはいえ、エンジンの個性故に核を持って時間までは逃げきれるかと思っていた。

 けれど出久と彼の指示下に付いたお茶子の二人に、閉所での動きを完璧に読まれて捕獲されてしまう。

 後に聞けば直線的で分かりやすかったと言われ、精進が必要だと感じた。

 委員長決めでもやりたい自分を抑えて出久へ投票したが、昼休みのマスコミ侵入沙汰の行動を理由に委員長職を譲ってもらったというのに。

 USJ襲撃ではいち早く対応した出久と凍夏の指示に従うのみで、自分は先生や皆に促されるまで自発的な行動が出来ない始末。

 とどめに凍夏と出久の過去話を聞いて、友人たちが自分の何歩も先を進んでいるのだと、自覚せずにはいられなかった。

 

 八百万は凍夏に。飯田は出久に。

 友人がどんどん成長する中で、二人は己が不甲斐なさに下を向きそうになっていた。

 

 

 そんな彼女たちの目を覚まさせたのが、爆豪の存在だ。

 

 戦闘訓練で醜態を晒して以来、言動は変わらずともあらゆる姿勢が良い意味で前に進む方向へ変化した風に見えた。

 USJでの先制攻撃といい、普通科からの宣戦布告に対する態度といい、向上心の塊とも言える一面がどんどんと表に出ている。

 事実、今も凍夏と出久に並び立って1位を争っているのは彼だけ。

 選手宣誓もそうだ。下を向きかけていた自分たちを強制的に前に向かせるだけの勢いと圧力があった。

 

 爆豪にそんなつもりはなかったかもしれない。

 けれど結果として、八百万も飯田も早く友人の背中を追いかけて、追い付こうと強く思えるようになったのだ。

 

 ヒーローになる為に、こんなところで躓いてはいられない。

 

 

(今は、今はまだ轟さんの後ろに居るとしても!)

(俺は、僕は緑谷君に置いていかれる訳にはいかない!)

 

((最高の友人で、最高のライバルであると胸を張るためにも!!))

 

 

 まだ見えぬ背中に追い付く為にも。

 

 まずはこの関門を乗り越えていこうと、改めて気合を入れたのだった。

 

 

 途中で気合が空回ったせいで、八百万は峰田に引っ付かれたり飯田は地雷原で手こずったりしたが、そこはご愛嬌である。

 

 

 




 今作ではオリ主、出久、爆豪がA組のスリートップの立ち位置です。
 彼らの背を見て置いていかれまいと努力するクラスメイトたち。
 飯田や八百万は特に優秀なので、その想いが強いのです。
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