半冷半燃少女は幼馴染   作:セロリ畑

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 なんか書いてみました。
 基本的にオリ主一人称視点です。



入学編
1:隣がぷりぷりしてた入学初日。


 小さな女の子が泣いている。

 

 

『うぅ……ひっく……』

 

 

 左右で紅白の珍しい髪色。

 

 見覚えのあるそれで誰なのか気がついた時、これは夢なんだと意識した。

 

 

『もう、やだよぉ……』

 

 

 ひとりぼっちで蹲りながら泣く子どもは、幼かった頃の私。

 

 小さな自分には苛烈な生活で、まだまだ未熟な筈の精神をギリギリまで削りながら生きていたのをよく覚えている。

 

 そして、目の前にいるのは心が壊れる寸前に逃げ出した私だった。

 

 助けを求める事すら諦めて、独りで耐え凌ごうとしている。

 

 けれど、そんな私に駆け寄る足音が聞こえて。

 

 

『だいじょうぶ? どこかいたいの?』

 

 

 自分を心配してくれた声に、幼い私がびくりと震えながらも、顔を上げる。

 

 同い年くらいの男の子で、声と同じぐらい心配そうな表情をしていた。

 

 

 その相手をよく確認しようとした所で。

 

 視界が白く染まり、意識が遠のいていってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 小鳥のさえずりがぼんやりとした頭に響く。

 微睡みに抗うべく、重い身体を無理矢理起き上がらせる。

 思考は働かないまま部屋の時計を薄目で見れば、起きるには丁度良い時間だった。

 

 それにしても、随分と懐かしい夢を見た。

 余韻に浸りたい気持ちを抑えつつ布団からのろのろと這い出た私は、辿り着いた洗面台で顔を洗う。

 冷たい水のお陰でようやく意識がはっきりしてきたので、軽く首を回すとぱきぱきと気持ちの良い音が鳴った。

 

 顔を上げると冴えた目が、鏡に映る自分を捉える。

 肩にかかる程度の長さの髪と、母親似のはっきりとした瞳は、左右で色が違う。

 

 右は母親譲りの白髪に灰色の瞳。

 

 左は父親譲りの赤髪に明緑色の瞳。

 

 左目の周辺には幼い頃の火傷の痕が残っているけど、今はもうあまり気にならなくなった。

 火傷痕を少しだけ指でなぞり、髪の毛を軽く整えてから布団を畳みに戻る。

 手慣れた作業を速やかに終えて、今日から袖を通す制服を手に取った。

 雄英高校、国内外最高峰のヒーロー科を有する超名門校の制服。

 サイズ確認以来初めて着たブレザーに、おかしな所はなさそうだ。

 

 初日なので殆ど無い手荷物を持って、居間へと足を進める。

 近づくにつれ味噌汁らしき香りが漂ってきたので、少し早足になってしまう。

 日本家屋だからか、基本的に和食が多いので必然的に食の好みもそちら寄りとなった。

 

「………居ないな」

 

 居間に近づいても温度が変化した様子は無いので、思わず声が漏れる。

 力を誇示する為に常に髭を燃やしているあの父親は、自身が気温を上げていると気づいているのだろうか。

 まあどちらにしても、私としては避けやすいので構わないんだけれども。

 

 ……朝からあんな男の事を考えても何の利益にもならない。

 人の気配のする居間に顔を出した私は、丁度料理を運んでいた女性……冬美姉さんと目が合った。

 

「あっ、おはよー凍夏(とうか)。朝ご飯できてるよ」

「おはよ、姉さん。手伝うよ」

 

 朝からにこやかに笑う姉さんに、私こと轟凍夏(とどろきとうか)も、自然に笑顔になりながら挨拶を返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 朝食を終えた私は少しの食休みを入れてから、学校へ向かうべく家を出る。

 

「行ってらっしゃい、頑張ってね!」

「うん、頑張る。行ってきます」

 

 後から仕事に出る姉さんに見送られながら、今日から通学路となる道のりを歩いて行く。

 

 家から駅まで歩き。

 駅からは電車に揺られて目的の駅まで。

 目的の駅からはまた歩き。

 

 これを三年間繰り返すのかと思うと少し遠くて面倒ではあるけれど、きっとそのうち慣れてくるのだろう。

 

 ……明日からは、一緒に登校する相手もいる。退屈はしないから大丈夫。

 

 初日は自分の時間で行ってほしいと、慌て気味に言っていた声を思い出して笑みを浮かべながら歩いていると、入試以来となる雄英高校の門が見えてきた。

 

 特徴的な形の校舎(後でアルファベットのHを表しているのだと聞いた)に着き、案内板で自身のクラスである1-Aの教室を確認する。

 広い廊下を歩いていくと、バリアフリーなのかやけに大きい扉が並んでいるのが目に入った。

 その中に1-A表記の教室を見つけて、一旦扉の前で立ち止まる。

 一つ、深呼吸をしてからスライドドアを開けた。

 

 既に来ていた何人かのクラスメイトたちの視線がこちらを向く。

 よくも悪くも注目されるのには慣れているので、小さく笑顔を作って会釈をする。

 黒板に貼られている座席表を見れば、窓際から二番目の一番後ろが私の席らしい。

 何故か固まっているクラスメイトたちの反応に少しだけ首を傾げそうになりながらも、私は席に座った。

 

 同じクラスの筈の彼は、まだ来ていない。

 

 話す相手も居ないし、始業の時間までどうしようか……と考えようとして、左隣から強い視線を感じた。

 何かと思い顔を向ければ、いかにも優等生といった風な女子が、私に熱い視線を送っている。

 いや、どこかで見たような気も。

 彼女は私が見ている事に気づくと、はっとした後に申し訳なさそうな顔で頭を下げた。

 

「す、すみません。じろじろと不躾な視線を向けてしまいましたわ……」

「それは良いけど……私、何かした?」

「いいえ! ただ、推薦入試の時に貴方の印象がよく残っていましたので、やはり合格されていたのだと納得しておりました」

 

 そう言われて、この少女への既視感の理由が分かった。

 ただ、あの日は諸事情で周りを見る余裕がなかったのではっきりとは思い出せない。

 

「ごめん。私はなんとなく居たような、ぐらいにしか覚えてないかな」

「そう、ですか……いえ、実技の会場は別でしたもの。仕方ありませんわ。ええ、これから覚えて頂けば良いのです!」

「わ」

 

 少し落ち込んだようだった少女が急に元気になったのに驚く。

 ぷりぷりしてる、とでも表現出来そうな様子の彼女は、改めて私に向き直った。

 

「なので自己紹介を。八百万百と申します」

「うん、私は轟凍夏。これからよろしく」

「はい! お互いにヒーローを目指し奮励努力致しましょう!」

 

 握手の為に出した手を両手でしっかり握られて、ぶんぶんと振られてなすがままにされる。

 

 そのままにしばらく好きにさせていると、正気に戻った八百万から平身低頭に謝罪の嵐を受けた。

 ちなみに、一連の流れを他のクラスメイトたちが優しい目で見守っていたと、後に交流を深めた女子たちに聞く事になる。

 

 

 

 

 八百万と推薦入試の試験内容の話をしているうちにクラスメイトが続々と登校してくる。

 それぞれ近くの相手と交流深めたりしている中、二人の生徒の言い争いが目立ち始めている。

 

「机に足をかけるな! 雄英の先輩方や机の製作者方に申し訳ないと思わないか!?」

「思う訳ねぇだろうが! どこ中だこの端役が!!」

 

 真面目そうな眼鏡の男子と不良にしか見えない爆発頭の男子。

 論点はおかしくとも、まだ言い分は眼鏡男子の方にありそうだが、どちらも煩いので周りは顔を顰めている。

 八百万も言わずもがな、特に爆発頭に対し「品のない方……」と呟いているのが聞こえた。

 かく言う私も、不愉快な気分になりつつある。

 言葉遣いが荒く煩いのもそうだが、爆発頭男子が彼がよく話していたもう一人の幼馴染なのだと気がついてしまったが故に。

 

(あれが『かっちゃん』……爆豪勝己、ね)

 

 吊り上がった目付きの凶悪な表情。

 足を机に投げ出す粗暴な振る舞い。

 人を端役呼ばわりする高圧的な態度。

 一見だけでも三重苦どころでは済まない酷さの男で、うちの父親を彷彿とさせるあれは、出来れば一生関わりたくないレベルだ。

 あいつと彼の関係を、私と同じ幼馴染なんて表現するのも嫌すぎる。

 

 けれど、あの男が彼に対して様々な意味での暴力を振るってきたと知っている身からすれば、そうも言っていられない。

 会わせてもらえなかった今までと違い、ここでなら思う存分対抗出来るのだから。

 

 と、それまで言い争いをしていた眼鏡男子が何かに気付き、入り口のドアへと向かっていく。

 

 そこには、見慣れた緑のふわふわとした髪の男子が立ち竦んでいた。

 

 眼鏡男子に話しかけられている彼は、まだこちらに気づいていない。

 けれど、そんなのは些細な事だ。

 

「と、轟さん? どうかなさいました……?」

 

 尖っていた私の雰囲気が一気に和らいだのが隣の八百万にも伝わったらしい。

 何故か顔を赤くしながら尋ねてくる彼女に、私は笑顔でなんでもないと言う。

 八百万を含め私を見ていた人たちが、更に顔を赤くして一斉に視線を背けたのも気にならない。

 

 ただ、嬉しかった。

 これから彼と同じ学校に通える。

 そう思うと、胸にぽかぽかしたものが沸き上がってきた。

 

 

「お友達ごっこがしたいなら他所へいけ」

 

 

 小汚い不審な人物が視界の隅に現れたけれど、私の意識には入らない。

 

 追い立てられるように教室に入ってきた彼が、私に気づいてくれたから。

 可愛らしい顔立ちの彼が、小さく笑みを浮かべ軽く手を振ってくれたから。

 彼が、私を見てくれたから。

 

 だから私は、彼こと幼馴染の緑谷出久に満面の笑みを返した。

 

 

 

 

 ……上機嫌な私は多くのクラスメイトたちが顔を赤くして、小汚い男が不可思議な顔で睨んでいた事を知らない。

 

 

 

 

 




クラスのみんな((((笑った顔が滅茶苦茶綺麗で可愛い!!))))
小汚い男と言われる教師(何であいつはこの空気であんなに笑顔なんだ)
出久くん(凍夏ちゃん、機嫌良さそうだなぁ)

 出久とオリ主は幼馴染ですが、オリ主と爆豪は幼馴染ではありません。
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