半冷半燃少女は幼馴染   作:セロリ畑

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 毎度ながら感想・評価ありがとうございます。
 おかげさまで累計100,000UAを越えたそうです。
 体育祭以降はのんびりペースになる予定ですが、これからも良ければよろしくお願いします。

 二回戦、というか本番までの巻きの一話。

 ついでにどうでもいい話を一つ。
 視点がオリ主じゃない時の法則。
・オリ主の精神状態が大分揺れてる時。
・↑の派生系。オリ主が寝てたり、甘えるのに忙しい時。
・その場面にオリ主が居ない時。
 大体このパターンです。


19:一気に二回戦。

―第三者視点―

 

 

「まだ始まっとらん? 見ねば」

「うら……目を潰されたのか!!! 早くリカバリーガールの元へ!!」

「行ったよ。コレはアレ、違う。飯田君こそ、そろそろ控え室行かんでええの?」

「これが終わったら急いで行くさ」

 

 観客席に戻った麗日は、泣き腫らした目を見て勘違いした飯田に言い訳しながら、彼と常闇の間の席に着いた。

 

 凍夏はそのまま控え室に居るので、ここには戻ってこない。

 胸を借りた事を少し恥ずかしく思うが、泣いてすっきり出来た事に麗日は感謝していた。

 

「今は悔恨より、この戦いを己の糧とすべきだ」

「うん、相手は普通科の心操君だよね」

「うむ。彼の個性は強力だが、緑谷君なら問題なく攻略出来るだろう」

 

 飯田の言葉に、麗日だけでなく周りのクラスメイトたちも頷いた。

 

 心操の個性は確かに強い。しかし、詳細が判明すれば分かりやすい欠点もある。

 彼の言葉に反応するのがトリガーならば、反応しなければいい。

 ヒーローの常ではあるが、個性の種が割れると辛いのは誰も同じ訳だ。

 

 それ故、出久が欠点に気づいていない訳がないと、この場の誰もが思っていた。

 

 

『さァ! いよいよ二回戦の始まりだ!!』

 

 

 実況の言葉からすぐ、ステージ上に出久と心操が現れ、両者が向かい合う。

 

 決意に満ちた表情で、しかし笑みを浮かべる出久と、対照的に眉間に皺を寄せた心操。

 

 

『今回の体育祭トップ成績の一人! 緑谷!!』

『対! 普通科からのダークホース! 心操!!』

 

 

『START!!!!』

 

 

 開始の合図と共に、出久が個性を纏い駆け出す。

 

 一瞬で距離を詰めた彼は、心操に言葉を話させる間もなく身体にタックルをして、勢いのままに場外へと押し出した。

 

「心操くん場外! 緑谷くん、三回戦進出!」

 

『早業!! ヒーロー科緑谷、心操の個性を嫌って速攻で片を付けたァ!!』

『個性が分かっていれば、こうなるのは見えていたな』

 

 一瞬で終わった試合だったが、観客の反応は悪くない。

 出久の判断への称賛も勿論だが、ここまで来た心操を讃える声も多い。

 

 本人たちはというと、場外に腹を押さえながら転んでいる心操に出久が手を差し伸べている所だった。

 

「大丈夫? 立てる?」

「…………くそっ、やっぱこうなるか」

 

 心操はその手を取らず、自力で立ち上がってゲートへと向かう。

 背を向けられた出久は、少しだけ考えてから言葉を紡ぐ。

 

「もっとさ、身体を鍛えたら良いと思うよ」

「…………何だい、宣戦布告した癖に瞬殺された無様な敗者に、勝者の余裕でアドバイスか?」

 

 足を止めた心操は、振り向きもせずに吐き捨てた。

 

「まさか。ただのおせっかい」

「…………は?」

 

 しかし、続く出久の言葉に思わず振り返ってしまう。

 

「対人に強い個性……例えば僕たちの担任のイレイザーヘッドもそうだけど、自分の個性だけじゃどうにもならない敵っていうのは必ず居る」

「そういう時の為に、身体能力を鍛えたり特定の武器を使う練習をしたり、視野を広げるべきなんだ」

「心操くんの個性はそのままで十分強力だから、個性に頼らない部分を伸ばせば、きっと選択肢を増やす結果になるよ」

「その手始めに、身体を鍛えるのは悪くないかなって」

 

 つらつらと並べられた出久の言葉に、聞き終えた心操は不可解だと言わんばかりに眉を潜めている。

 

「…………なんで、わざわざ敵に塩を送るような事を」

「なんでって……ヒーローを目指してるから。余計なお節介だとしても、助けになるのは当然だよ」

 

 例え相手がライバルでもね、と笑顔で言う出久。

 ライバルと言われた心操は目を見開いて、それから軽く息を吐きながら肩を落とした。

 

「俺の個性、ヴィラン向きってよく言われるんだけど」

「そうなの? 殴る蹴るしか出来ない僕からすれば、敵も味方も無傷で済ませられる凄くヒーロー向きな個性だと思うよ」

「…………全く、発想も度量もとんでもない奴」

「え、えっと、ありがとう?」

「……ま、今日もやれるだけはやったんだ……ヒーローになる為に、俺のやる事は変わらないよ」

 

 心操はそれだけ言うと再び背を向けて、片手を上げてヒラヒラさせながら退場していく。

 彼の様子に何かを感じた出久も、嬉しそうな顔をしてから反対側のゲートへそそくさと消えていった。

 

 ちなみにここまでのやり取りを聞いていたミッドナイトが青臭い……! とプルプル震えていたのは余談だ。

 

 

 

 

 短時間決着による観客の沸きも収まった頃合いに、試合は進む。

 

 フィールドには、真剣な表情の凍夏と飯田。

 

 

『第二試合! お互いヒーロー家出身のエリート対決だ!!』

 

『フレイムヒーロー「エンデヴァー」の愛娘! 轟凍夏!!』

「先生、愛娘とか気持ち悪いので止めて下さい」

『えっ、ごめん……対! ターボヒーロー「インゲニウム」の賢弟! 飯田天哉!!』

「失礼します! 今の俺に賢弟など、身に余る評価ではないかと!!」

『こっちも!? ごめんって!!』

 

 

 しかし、端から聞けば問題無さそうな紹介に、両者から苦情が来る。

 流石にマイクも狼狽えながらも、素直に謝罪を入れた。

 

『俺、そんなに変な事言ったかなぁ……?』

『お前は昔から余計な事しか言わんだろ』

『オーノー! イレイザーまで!?』

『いいからはよ進めろ山田』

『本名ヤメテ!! START!!!!』

 

 

 締まらないスタートに、けれど二人は確実に反応した。

 凍夏が飯田に向かって氷結を繰り出して、飯田はスピードを駆使して横に避ける。

 氷結を防ぐ術を持っていない彼にとって、フィールドが氷で形成されてしまえば相手に有利になってしまう。

 

 飯田にとって、理想の形は短期決戦。

 そして彼には、ここまで使っていない一つの技があった。

 

 再び自身へ向かってくる氷結を、走り幅跳びの要領で飛び越えて。

 凍夏の上に来た時、飯田はそれを解禁した。

 

 無理やりトルク数を上昇させ、速度を急激にあげる裏技。

 

 麗日風に言うなら、超必。

 

 

「レシプロ……バースト!!」

「っ、くっ……!!」

 

 

 急激に上がった速度と共に繰り出された蹴りを、凍夏はギリギリの所で氷結を纏った右腕を割り込ませてガードした。

 

 しかし勢いまでは抑えきれず、そのまま蹴り飛ばされてしまう。

 背後に薄い氷の壁を重ねる事で勢いを殺して場外は防いだが、かなりのダメージが入ったように見えた。

 

『なーー!? 何が起きた!!? 速っ速ーー!! 飯田そんな超加速があるなら予選で見せろよ!!!』

『轟もギリギリ反応したな。直撃は避けてる……いや、これは』

 

 マイクが驚きのシャウトをする中、相澤は何かに気づいて飯田を見る。

 

 

「危な、かった」

「な……!?」

 

 

 そして飯田は、凍夏を蹴った左脚が凍りついている事に気がついた。

 彼女はと言えば、氷の装甲を溶かした腕をぷらぷらさせて立ち上がっている。

 少し痛そうにしてはいるが、特に問題なさそうな様子だ。

 

 

『あれェ!? いつの間にか飯田の脚が凍らされてるぜ!!?』

『今の蹴りの時だ。蹴られた瞬間にやったらしい。あの超加速を読んでいたみたいだな』

 

「あの触れた一瞬で……!?」

「レシプロバースト。インゲニウムの技で有名だし、飯田にもそういうのがあるんじゃないかと警戒してたから」

「くっ、見破られていたのか……!」

 

 

「出久には及ばないけど……私、結構ヒーローオタクだよ」

 

 

 そう言いながら凍夏から繰り出された氷結を、片脚が使えない飯田は避けきれず。

 騎馬戦の時のように首の下まで凍らされて、行動不能となった。

 

『飯田くん行動不能! 轟さんの勝ち!!』

 

 先程と同じく短期決戦ではあったが、見ごたえのあった勝負に会場の大いに湧いている。

 飯田の速度と蹴りの威力には勿論、それに対応しきった凍夏には感嘆や畏怖すら抱いた者が多い。

 

 性別差による力不足など無いかのような立ち回り。

 爆豪にも匹敵する反応速度。

 瞬間的な個性の緻密な制御など、改めて他の一年よりも抜きん出ていると認識させられたのだ。

 

 流石はNo.2の血筋。

 

 等と、飯田の氷を溶かす彼女本人に知られれば、一気に不機嫌になるような事を多くのヒーローたちは思っていた。

 

 

 そして、この時点で準決勝第一試合の組み合わせが決まる。

 

 ここまで圧倒的な快進撃を続けてきた三人のうちの二人による、一対一の勝負。

 

 

 緑谷出久vs轟凍夏

 

 

 二回戦第三試合が始まるまで、観客たちは二人の勝利予想などをして盛り上がっているのだった。

 

 

 

 

「飯田、大丈夫? まだ寒い?」

「いや、問題ない。気遣いありがとう……」

 

 試合が終わった私は、万が一にも時々焦げ臭い親っぽい物体に遭遇しないように、来た時とは反対側……飯田と一緒の通路から観客席に上がる。

 影を背負う彼と並びながら、無事に会わずに観客席へ戻れた私はクラスの皆に迎えられる。

 

「お、エリートのお二人さんが戻ってきたぜ!」

「む」

 

 上鳴は何気ない表現で言ったのかもしれないけど、その呼ばれ方は嫌。

 嫌悪感までは無いけど、血筋についてあれこれ言われるのは好きじゃない。

 落ち込んでいる飯田も、首を降りながら否定する。

 

「初見の技を破られた俺がエリートなどと……過分も過ぎる評価だ」

「私も、なるべく止めてほしいかな」

「上鳴アンタもう喋らない方がいいよ。ホントに今日醜態しか晒してないから」

「うぇい……本日はもう言葉を話さないので許して下さい……」

「そこまでしなくとも良いぞ!?」

 

 がっくり落ち込む上鳴に飯田が突っ込む。

 私は別に本人が喋らないというならそれを尊重するけど、上鳴の事だしすぐに忘れそうだとも思った。

 

 二人の茶番劇を横目に、既に定位置と認識されて出久の隣に空けられた席に座り、彼の肩に頭を預ける。

 

「お疲れ様。蹴られた所は大丈夫?」

「平気。ちゃんと受け流した」

「そっか。流石凍夏ちゃん」

「もっと褒めて」

「はいはい、凄い凄い」

「んっ」

 

 苦笑気味の出久に猫可愛がりの如く甘やかされる。

 体育祭中は触れ合いが減って寂しいから、タイミングを逃さずに接していたい。

 

「二人とも、次お互いと戦うとは思えんぐらいリラックスしとるね……」

「どちらかと言えば、凍夏ちゃんがいつも通りだからそれに緑谷ちゃんが合わせている感じかしら」

「あはは……よく見てるねあす、梅雨ちゃん」

「凍夏ちゃんは分かりやすいもの」

「確かに。デク君の前だと特にね!」

 

 お茶子と梅雨ちゃんが私の様子を見て、色々言っている。

 大体あってるけど、そんなに私は分かりやすいだろうか。

 

 ん、この頭を撫でる感触はお茶子の手か。

 

「おぉー、髪さらっさらや……」

「そう?」

「そうー。トリートメントとかどんなん使ってるの?」

「よく知らない。姉さんが選んで置いてるの使ってる」

 

 女の子は髪の毛のケアはちゃんとしなきゃ! と、冬美姉さんが熱弁していたからそれに従っている。

 特に、出久に撫でられるなら手触りが良いに越した事はないと言われたのが大きい。

 

「そっかー……そういえば凍夏ちゃん家ってお金持ちやったっけ」

「そうなの?」

「え、そうじゃないの?」

「一般的にはそうだと思うよ。それと凍夏ちゃん、そろそろ次の試合が始まるだろうから離れようね」

「んー……うん」

 

 出久に促されて、彼の肩から起き上がる。

 

 名残惜しいけど、流石に試合は真面目に見ないといけない。

 

 

 そして、次に出久と触れ合えるのは――

 

 

「……ん、どうかした?」

「……ううん、何でもない」

 

 

 ――彼との、試合が終わった後だ。

 

 

 

 

 その後、芦戸対常闇と切島対爆豪の白熱した試合が行われる。

 

 けれど、私の意識はずっと隣の幼馴染へと向けられており、観戦に集中していなくて。

 

 どんどんと近づいてくる運命の時へと、強い思いを寄せていた。

 

 

 

 

 いよいよ、私と出久の試合が始まる。

 

 

 

 




 THE・描写される事無く終わる二試合。

 原作で常闇くんがどう芦戸さんを倒したのか気になるけど多分ヤオモモと一緒で早業な感じだと想像。
 切島対爆豪は大体原作通り。強いて言えば爆豪のクレバー度が増してるぐらい。

 以下ダイジェスト的な何か。

・芦戸対常闇。

「投げ飛ばせ、黒影!」
「アイヨ!」
「わわっー!? さ、酸で空中方向転換とか……ムリーー!!」

「芦戸さん場外! 常闇くんの勝ち!!」

「強すぎだよー! 何も出来ずに終わるの悔しい!!」
「芦戸の酸は強力故、早業が良かれと考えた」

・切島対爆豪

「効かねーっての! 爆発さん太郎があ!!」
「クソ髪が……流石に固ぇだけじゃねえ。が――」
「ぐっ、爆撃連打……!?」
「――テメェの硬化は全身ガチガチに気張り続けてんだろ! なら絶え間ねぇ攻撃ならその内どっか綻ぶわ!!」
「まじ、かよ……!?」
「死ねえ!!!!」

「切島くん行動不能! 爆豪くんの勝ち!!」

「ぐ……正面、突破かよ…………」
「甘ぇよ。だが根性は認めてやる、切島」

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