半冷半燃少女は幼馴染   作:セロリ畑

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 感想・評価ありがとうございます。
 前話の前書きにおまけを追加しました。カスタムキャストは楽しい。

 今年最後の投稿です。体育祭編も残す所2,3話ほど。


24:vs爆豪。遠慮なくやれる好敵手(ライバル)

ー緑谷出久ー

 

 

閃光弾(スタングレネード)!!」

 

 

 観客席に戻った時、かっちゃんが常闇くんの後ろから爆破を利用した閃光と煙幕を張っていた。

 これは、もう決着が付く所か。

 

 煙幕が晴れた時……常闇くんの嘴をかっちゃんが掴み、片手で小さな爆破を展開していて。

 

 

「…………知っていたのか……」

「騎馬戦の時だバァカ。影の反応見りゃ分かるわ……まァ、相性が悪かったな」

「そうか…………参った……」

 

「常闇くん降参! 爆豪くんの勝利!!」

『よって決勝は! 轟対爆豪に決定だあ!!!』

 

 悔しそうに項垂れる常闇くんと、大きく息を吐くかっちゃん。

 騎馬戦の時、爆破の光で黒影が怯えていたから、光に弱いのではと考えた仮説は正しかったみたいだ。

 常闇くんには、かっちゃんや凍夏ちゃん、上鳴くんとかは天敵とも言える存在なんだろう。

 どんな強力な個性にも相性差はある、と実感できる戦いだったに違いない。

 

 うぅん、この試合を全部を観れなかったのは残念だ。後でビデオとかで見返したり出来ないかな。

 

「あっ、デク君! もう大丈夫なん?」

「麗日さん。うん、平気だよ……あれ、飯田くんは?」

 

 僕に気がついた麗日さんの隣に座りながら返事を返していたら、真面目な友達の姿が無い事に気がつく。

 問いを受けた彼女は、少し表情を曇らせながらも小さな声で告げる。

 

「あの、飯田君ね……お兄さんが、敵に襲われたって連絡が来て、早退したの」

「お兄さんって……インゲニウムが!?」

「うん……深刻な顔しとったけど、大丈夫かな……」

「…………インゲニウムは強いヒーローだから、きっと無事だよ」

 

 心配そうな顔の麗日さんに、僕もありふれた言葉しか返せなかった。

 

 飯田くんにとってお兄さんは、昔からの憧れの存在。

 

 どうか、無事な姿を弟に見せて欲しい。

 

 

 ……今は体育祭に集中しないといけない。一旦、頭の隅に置いておこう。

 

 

「お、緑谷ちゃんと生きてたか!」

「お疲れ! 最後……やばかったね!」

「正直腕の一本ぐらい飛んだんじゃないかとヒヤヒヤしてたぜ……」

「無事で何よりだ」

「決勝降りたのは勿体無い気もすっけどなー」

「緑谷が納得しての事だろ」

「てか黙ってるんじゃなかったのアホ」

「そろそろ許してくれても良くね!?」

「あはは……ありがとう皆」

 

 かっちゃんたちが退場して、僕の存在に気づいたクラスの皆が口々に安堵混じりの声を掛けてくれた。

 麗日さんたちが様子を伝えてくれてはいた筈だけど、それでも心配を掛けるレベルの攻防だったんだと再認識する。

 ……いやまあ、ステージが消し飛んだらしいからね。そりゃそうか。

 

 

『さァ、いよいよラスト!! 雄英一年の頂点がここで決まる!!』

 

 

 と、もう決勝戦が始まるのか。

 試合間隔が短い気もするけど、気のせいかな。

 

 ……もしかして、僕と凍夏ちゃんが派手に壊したせいであんまり時間の余裕が無いとか?

 うん、どうしよう。その可能性が高そうだ。

 いやまあ、かっちゃん的には身体が温まっている方が戦いやすいだろうし、問題ないよね、多分。

 

 

 そんな逃避を他所に、二人がステージへと入場する。

 

 どちらも質は違えど、笑みを浮かべていて。

 

 無駄な言葉は必要ないと言わんばかりに、ただ相手を睨んでいた。

 

 

「爆豪君と凍夏ちゃん……どっちが勝つかなぁ……」

 

 

 どこかそわそわしている麗日さんが、これからの試合の行方を気にしてか不安そうに呟いている。

 個性が強力で、身体能力や戦闘センスも申し分ないものを持っていて、何より勝利に貪欲になれる、僕の幼馴染二人の試合。

 

 どちらが勝つか、いつもの僕なら場合によると答えて考察をしていたと思う。

 

 だけど、今の僕から言えるのは一言だけ。

 

 

「凍夏ちゃんが勝つよ」

 

 

 今までとは関係が変わった、幼馴染へのエール。

 

 

「い、言い切るんだデク君」

「まあ、ね」

 

 

 それには、保健室で託した思いもあるけれど。

 

 

『決勝戦、轟凍夏 対 爆豪勝己!!!』

 

 

 例え相手がかっちゃんだとしても、今の凍夏ちゃんが本調子じゃなかったとしても。

 

 

『今!! スタート!!!!』

 

 

 彼女が負ける未来が、全く思い浮かばなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「プロミネンスバーン!!」

 

 

 試合開始の合図と同時、私は爆豪へ父親譲りの必殺技を撃ち放った。

 左半身に灼熱を溜め込み、一気に解放する攻撃。

 体温調節が可能な私にとっては、初手で放っても問題の無い高火力技だ。

 流石に最大火力ではないし、直撃しても大火傷程度で済むように調節した。

 

 今まで氷の技をたくさん見せていたから、右の力では爆豪に攻略される可能性が高い。

 

 だから不意打ちにもなると思い、炎の大技で決めに行く――

 

 

 

二重(ダブル)榴弾砲(ハウザー)!!!!」

 

 

 

 ――つもりだったけど、やっぱり爆豪は甘くなかった。

 

 プロミネンスバーンに合わせて、両手を前に突き出しながらの大爆破を放ってきた。

 

 ぶつかった二つの技は、爆発を起こしてフィールドを煙に包んだ。

 

 

『開始早々炎と爆破のぶつかり合い!! そんでまたしてもステージがぶっ壊れたァ!!!』

『まぁ、もう決勝だしな……』

『この後は知ったこっちゃねえってか!! 轟はさっきのも合わせて今年度のデストロイヤー・オブ・ザ・イヤーに決定だぜェ!!!』

『否定はせんが、止めてやれ』

 

 

 解説に付けられた不名誉な称号を聞き流しながら、私は砂塵や爆煙で悪くなった視界を注視する。

 

 威力的には私が上だったが、爆豪の狙いは煙で姿を隠す事だったか。

 

 姿の見えないアイツ程、怖いものもそうはいない。

 

 とは言え、私には問題ない。

 

 

「後ろっ!!」

「っ……クソが!!」

 

 

 ()()()()()()()()()に振り向きながら氷結を放てば、こちらに手を伸ばしていた爆豪が即座に爆破で方向転換する。

 

 流石、見てから反応できるコイツなら今のタイミングじゃ当たらないか。

 

 炎で牽制しながら氷で後ろに下がって距離を取った頃には、砂煙も大分晴れてきた。

 

 

「テメェ、個性で温度感知してんな」

 

 

 むぅ、今の攻防で確信されてしまった。

 

 私の個性、半冷半燃は氷と炎を扱えるもの。

 その副産物とも言える効果で、ある程度の温度感知も出来る。

 より正しく言うなら、温度差のある空間の変化が分かる、だろうか。

 さっきの戦闘で例えれば、私の展開していた炎の範囲に人の温度……つまり爆豪の体温が現れたので場所が分かった、という訳だ。

 

 ちなみに私がこの使い方に気がついたのは、常に燃えている父親を感知する精度が異様に高かったのに出久が疑問を持ったから。

 彼に指摘されなければ、今も知らないままだったに違いない。

 

 それを今までの試合やさっきの僅かなやり取りだけで理解した爆豪は、やっぱりとんでもない男だ。

 

 けど、素直に認めるのも悔しいので。

 

 

「出来ないなんて、一言も言ってないけど」

「上等だ温度計女ァ!!」

 

 

 挑発を加えて返してやれば、凶悪な顔を更に歪ませて爆破で飛びながら向かってきた。 

 ついでのように新しい変なあだ名を付けられたけど、いい加減にしてほしい。

 

 

「轟凍夏だって言ってるでしょ!!」

「知っとるっつっとんだろが!!」

 

 

 左手の指先から細い炎を放つ技、赫灼熱拳・ヘルスパイダーで迎え撃つ。

 ヘルスパイダーは炎の技の中でも、かなり使い勝手が良い。

 あまり言いたくないけど、流石はNo.2の父が生み出しただけの事はある。

 爆豪も器用に爆破を使いながらアクロバットに避けているが、流石に近づけていない。

 

 が、このままヘルスパイダーで追い続けていれば、炎の熱で爆豪が汗をかき、相手の能力を上げてしまう。

 かといって氷を使おうにも、この距離からでは爆豪の反応速度なら逃げ切れる。

 

 なので目指すは、炎を使った()()()

 

 その為にはまず、素早い爆豪を逃げにくくするフィールドの作成が必要だ。

 

 一旦ヘルスパイダーを解除して、左腕全体に炎を纏ってから。

 

 急に止められた攻撃に、眉をひそめている爆豪へ声をかけた。

 

 

「ねえ、知ってる?」

「ああ? 何がだよクソ」

 

「炎って、()()()()()()()()()()()

「っ……テメッ!!?」

 

 

 言葉と同時、左から出していた炎を青く変化させて。

 

 

 

蒼灼熱砲(そうしゃくねっぽう)・アズールフレア!!」

 

 

 

 そのまま腕を大きく振るって、私と爆豪を囲むように炎上しているフィールドを形成した。

 

 爆豪は咄嗟に範囲外に離れようとしたが、間に合わさせない。

 

 父の赫灼熱拳を元にした青い炎を操る技、蒼灼熱砲(そうしゃくねっぽう)

 

 炎の温度が上がると同時に、速度や規模も跳ね上げている。

 

 私は氷を好んで使うけれど……()()()()()()()()()()()()()()()()だ。

 

 二度と誰かに必要以上の怪我をさせないように、頑張って鍛えてきたのだから。

 

 

『灼熱地獄!! 轟、青い炎でステージを囲った!!』

『轟は消耗戦を選んだか。あの状況なら汗をかくほど動きが良くなる爆豪でも、流石にキツいだろうな』

『燃え上がるフィールド! 燃え上がる闘志!! 果たしてどちらが最後まで燃え尽きずにいられるのか!!?』

 

 

 実況が煩いけど、兎も角これで爆豪の行動範囲をかなり狭められた。

 

 業火に灼かれる程の熱さが、汗をかくどころか身体からどんどん水分を奪っていく。

 

 氷で体温調節出来る私はまだしも、爆豪には辛い空間の完成だ。

 

 業火のフィールドで、爆豪は忌々しげにこちらを睨んでいる。

 

 

「っクソが……デクん時はまだ全力じゃなかったっつー訳か!」

「違うよ。青い炎は、本来試合に使える威力じゃないから」

「はっ! 結局は舐めプじゃねえか!!」

 

 私の言葉に、爆豪は鼻を鳴らしてから再びこちらへ突撃してくる。

 

 青い炎は温度が高い分、かなり加減が難しい。

 使うにしても、炎耐性がある相手でなければ、後遺症が残るレベルの怪我を負わせてしまうだろう。

 例え出久への虐めで恨み辛みのある爆豪相手だとしても、容易に使う訳にはいかない。

 

 なので舐めプと言われようと、私は身体に纏う炎を橙色に戻す。

 ヘルスパイダーで爆豪を狙いながら、移動は最小限の氷結で行う。

 この業火フィールドでは、動き回るだけでもかなりの体力を使うから。

 

 私の発生させた氷もすぐさま蒸発して、蒸気となり視界を悪くする。

 

 後は爆豪の隙を作るように……っと!

 

 

「甘ぇぞ轟ぃ!!」

 

 

 炎の間を抜けて来た爆豪が、高威力爆破で一気に距離を詰めてきた。

 

 なんて奴、まさかこの短い間にヘルスパイダーを見切るなんて……!

 

 来る、右の大振り!

 

 

「死ねぇぇぇ!!!!」

「っはああっ!!」

 

 

 瞬間的に氷結を繰り出して相殺したが、その衝撃でフィールドの炎がかき消えてしまった。

 

 私もかなり飛ばされるが、氷を重ねて勢いを殺して止まる。

 

 爆豪を見れば、あいつも衝撃で飛ばされたのを爆破で体勢を整えていた。

 

 しかし……消耗戦をしようとしたこちらの目論見が、こうも容易く破られるとは。

 

 

『なんつー力業!! 消耗戦を狙った轟に対し、爆豪は正面からの攻撃で突破したぜ!!!』

『相手のペースにさせないように動いた結果だ。戦う度にセンスが光っていくな、アイツは』

 

 

 本当に、相澤先生の言う通りだ。

 

 強力かつ繊細な個性、それを支える屈強な肉体、その全てを使いこなす突出した戦闘センス。

 

 これが、爆豪勝己という男。

 

 こうして相対すると、その凄まじさがよく分かる。

 

 

「どこまでも舐めやがって……!! チマチマ削って勝とうなんざ、俺との決勝でやってんじゃねえぞ半分女ァ!!!」

「舐めてるつもりはないんだけど……そうだね」

 

 

 両手に爆破を起こしながら叫ぶ爆豪に、少しだけ反省する。

 

 出久に優勝してくると約束したのに、ここに来て消極的な攻めをしてしまった。

 

 いや、逆に約束を重く考えすぎていたのかな。

 

 ちらりと、クラスメイトの座る客席へと視線を向ける。

 

 私たちの勝負を見守る皆の中に、出久も居て。

 

 目が合うと、笑顔でグッと拳を突き出された。

 

 

 ……うん、そうだ。

 

 難しく考えすぎなくていい。

 

 出久の時と、やる事は変わらない。

 

 全力で、勝ちを掴み取れば良い。

 

 

 燃えろ、凍夏(わたし)

 

 

 決意を、想いを、力に変えろ。

 

 

 

「なら、爆豪」

「んだこらクソが!!」

「殴り合おう」

「…………は?」

 

 

 

 一瞬呆けた爆豪の前で、私は左右に炎と氷を纏う。

 氷炎舞闘。触れた相手を右で凍らせ、左で燃やす近接技。

 

 出久の時と同じようで……少し、違うパターンで攻めよう。

 

 両手を、それぞれ炎と氷を大きな爪状の装甲にして、殴り・切り裂くスタイル。

 

 

「氷炎舞闘・炎爪氷牙(えんそうひょうが)!!」

「っ、次から次に新しい技出しやがる……!」

 

 

 技名を叫びながら、爆豪に向かって突撃する。

 奴もすぐさま構え直して、真っ直ぐ突っ込む私に爆破を放ちながら宙へ飛ぶ。

 炎で爆破を受け流しながら温度感知で爆豪を探し、氷結で宙へと追いかける。

 

 右手の氷結の爪で裂きに行けば、右手の爆破で。

 左手の炎熱の牙で殴りに行けば、左手の爆破で相殺される。

 

 攻めと攻めがぶつかり合うの近接戦の攻防は、どんどん激しさを増していく。

 

 氷と炎が爆破され、その逆もまたしかりで。

 

 お互いの動きを読んで、見切って、避けていく。

 

 

「おらあああああ!!!!」

「やああああああ!!!!」

 

 

 叫ぶ爆豪に同調するように、私も声を上げていく。

 

 相殺で起きる衝撃も気にせず、ただただ乱打しているだけにも見える戦い。

 

 

 何故だろう――凄く、気分が高揚している。

 

 身体は疲労で重くて、個性を使う集中力の維持も辛くなってきたのに。

 

 こんな気分は、今まで経験が無い。

 

 出久に告白したり、キスした時とはまた違う感じ。

 

 私の中に、強く燃え盛る何かがあるみたいに。

 

 

 

 ……そういえば、本当の意味で真正面から戦える相手は、爆豪が初めてだ。

 

 勿論出久にも加減なんてしてないけど、心の底から遠慮せずに戦う、なんて事はなかったから。

 

 

 あ、そうか。

 

 

 同じレベルの実力を持つ相手と、思いっきり戦えて。

 

 

 

 私、嬉しいんだ。

 

 

 

 自分にこんな一面があるなんて、十五歳にして初めて知った。

 

 

 それは決して、嫌なものではなくて。

 

 

 自分を高めるのには、必要な感情に違いない。

 

 

 爆炎や蒸気の合間に見える爆豪は、凶悪に笑っている。

 

 

 きっと私も、似たような顔をして笑っているんだろう。

 

 

 

『ラッシュラッシュラァーッシュ!!! 決勝まで来てこの二人、容赦の無い殴り合い!!! 炎と爆破の熱さだけじゃねえ!! 自らを燃やす魂のシャウト!!! そこに氷を添える事でチャンポンしてるぜ!!!!』

『お前テンションのままに適当な事言ってんだろ』

 

 

 

 ああ、実況や観客の歓声が遠くに聞こえる。

 

 

 極限まで高められた集中力が、不必要な情報をシャットアウトしてくれているのか。

 

 

 正直、どれぐらい殴り合っているのかも覚えていない。

 

 

 もうしばらくこうやって、本気の戦いをしていたいけど。

 

 

 

 それでも、疲労やダメージが限界に近いから。

 

 

 そろそろ、決着を付けないと。

 

 

 

 爆豪勝己。中学まで出久を虐めていたり、暴言や変なあだ名を付ける所は気に食わないままの奴だけど。

 

 

 今日から貴方は、私の好敵手(ライバル)だ。

 

 

 

 だからこれは――私なりの礼儀。

 

 

 

 ほんの一瞬の隙を見つけて氷で飛び下がり、炎を青色に変えてから、左腕に溜めるように構える。

 

 

 

 

「行くよ――――勝己!!」

 

 

 

 

 名前で呼ばれた爆豪……勝己は少し怪訝な顔をしたが、私の意図を読み取ったのか、距離を取りながら楽しそうな笑みに変えて叫び返してくる。

 

 

 

 

「良いぜ――――来いや凍夏あああ!!!!」

 

 

 

 

 距離を開けた勝己は空中に浮かび上がり、全身で渦を作るように両手で爆破を続ける。

 

 

 お茶子の時の最大火力に、回転を加えて撃つつもりだ。

 

 

 

 それに答えるのは、青い炎での高火力技。

 

 

 父お得意の、シンプルながら使いやすい技を改良したもの。

 

 

 集中して、青い炎をコントロールをしながら溜めた左腕を解放する。

 

 

 

蒼灼熱砲(そうしゃくねっぽう)――――ジェットバーンインパクト!!!!」

 

 

榴弾砲(ハウザー)(ツイン)着弾(インパクト)ォォォ!!!!」

 

 

 

 あ、インパクトが被った。

 

 

 技が交差する一瞬に、そんな事を思ったけど。

 

 

 身体は反射的に、次いで来た大爆風から身を守るように氷壁を展開していた。

 

 

 硬い氷壁を何層も重ね、破られると同時に作り上げる。

 

 

 数回、数十回と繰り返し繰り返し作り上げる。

 

 

 そして、体感で何分も経ったように思えてきた頃。

 

 

 ようやく……衝撃は収まった。

 

 

 恐らく、出久戦の時より強い衝撃だったけど。

 

 

 今度は身体も、意識も無事に乗り切った。

 

 

『……なあイレイザー、これ止めなくて良かったん?』

『……アイツらに言っても聞かねえし、聞こえてねえよ。ったく……』

 

 

 あっ、相澤先生に呆れられている。

 

 何度も同じような事をして申し訳なく思うけど、体育祭だから見逃してほしい。

 

 爆炎による煙とステージの残骸による土煙が薄れてくれば、跡形もないフィールドが現れる。

 

 

 勝己は……居た。

 

 ステージの端で、うつ伏せに倒れている。

 

 腕に大きく火傷が出来ているけど、それ以外に目立った外傷は見当たらない。

 

 わたしと違ってガード出来ないだろうし、直撃を受けてしまったと思うが、身体の前側は大丈夫だろうか。

 

 

「勝己、大じょ……う、ぶ…………っ?」

 

 

 近づこうと一歩を踏み出そうとして――がくりと膝を突く。

 

 

 ヤバい、身体が限界を迎えそうだ。

 

 

 けど、まだ、倒れる訳にはいかない……!

 

 

「…………クソが……んな状態で、俺を心配してんじゃねえ……」

「あ…………生きてた」

「殺すなボケ。あれぐらいで死ぬかよ……」

 

 

 唸るような声と共に、仰向けに転がる勝己。

 

 身体の前面も、腕以外は重傷とまではいかない程度の怪我だ。

 

 よかった……とは言えないけど、青い炎の攻撃でも思ったよりは少ないダメージで済んでいる。

 

 まあ、勝己の運動神経や防御スキルあっての結果ではあるんだけれど。

 

 

「テメェといい、デクといい…………マジで訳が分からん」

「訳が分からん、って……心配した事?」

「はっ……それ以外何があんだよ」

 

 

 鼻を鳴らす勝己に、重たい身体でどうにか立ち上がった私は、小さく首を傾げてから言葉を紡ぐ。

 

 

 

「ヒーローが、誰かを心配するのに……理由が要るの?」

 

 

 

 私と出久にとっては、例え相手が誰だろうと、それは心配をしない理由にはならない。

 

 

 私の言葉に、勝己は大きく息を吐いて。

 

 

 

「………………やっぱ理解出来ねえよ、クソ」

 

 

 

 同時に吐かれた悪態は、そういうものだと受け入れた風に聞こえた。

 

 

 その流れで痛むだろう身体を無理矢理動かして、手を使わずにゆっくりと立ち上がった勝己。

 

 さあ、試合はまだ終わっていない。

 

 どちらも動けるなら、戦わなければ。

 

 

 ……と、思ったのに。

 

 

 勝己は、私たちのやり取りを見守っていたミッドナイト先生へと視線を向けて。

 

 

 

「俺の敗けだ、審判」

「……えっ!?」

 

 

 

 淡々と、自らの敗北を告げた。

 

 

 どうして、降参なんて。

 

 

 そんな決着は、勝己が一番望んでいない筈じゃないのか。

 

 

 驚き混乱する私を他所に、ミッドナイト先生は頷きながら鞭を振るって宣言する。

 

 

 

「爆豪くん、降参! よって、轟さんの勝ち!!」

 

『――以上で全ての競技が終了!! 今年度雄英体育祭一年優勝は――――A組、轟凍夏!!!!』

 

 

 

 口を挟む間もなく、マイク先生により勝利が告げられる。

 

 一気に大歓声に包まれたスタジアムを、勝己はフラフラしながらもしっかりと歩きながら後にする。

 

 

 その背を追いかけようとして――私も、限界ギリギリだった事を忘れていた。

 

 

 意識が遠くなり、力の入らない身体ごと地面に倒れそうになる。

 

 

 けれど、私の意識が落ちる前に。

 

 

 

 

「――お疲れ様、凍夏ちゃん」

 

 

 

 

 いつも近くに居てくれた、最愛の幼馴染の声と。

 

 

 彼の力強い腕の中に、抱き留められる感触があった。

 

 

 それに安心した私は、笑顔で一言だけ告げて。

 

 

 

 

「――――ありがと、出久」

 

 

 

 

 ゆっくりと、意識を手放した。

 

 

 

 

 







 ステージを後にしていれば、後ろの歓声が妙に黄色い風に変わった。

 見なくとも理由は分かる。俺は振り返らずにさっさと歩く。


「かっちゃん」


 だってのに、声を掛けて来るお人好しな色ボケナード。

 無視してそのまま進んだってのに、気にせず隣に並びやがった。

 想像通り、腕の中にはキメェ面して寝てやがる半分女を抱いて、だ。

 ケッ……俺と違って、大した怪我もしてねえや。

 コイツが万全の状態なら、今気絶する事もなかったんだろうな、クソ。


「お疲れ様。やっぱりかっちゃんは強いね」
「煩え黙れ死ね。負けた奴に掛ける言葉じゃねえだろクソデク」
「強いよ。だって……()()()()()()()()()()()()のに、それを誰にも悟らせようとしないんだから」
「…………ちっ」


 的確にこっちの状態見抜いて来やがる。ウゼェ観察力しやがって。

 別に火傷だけならどうにでもなる。歯ァ食いしばれば動かせねえって訳じゃねえ。

 だが、掌から腕の内部に掛けての鈍く響く激痛は、精神でどうこうなるレベルはとっくに越えてる。

 轟の…………凍夏の攻撃を相殺するのに、常に全力以上の爆破を使った代償だ。

 今まで爆破を使ってきた勘だと……後一回か二回、同レベルの威力で使っていれば。


 俺は――――()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()()


 その寸前までやっても、あの炎は破れなかった。


 忌々しいが、認めざるを得ねえ。


 今の俺じゃまだ、コイツには届かねえって事を。




 だとしても、俺はここからだ。


 コイツらよりも、エンデヴァーよりも、オールマイトよりも上に行く。


 その為に、ここで終わる訳にはいかなかった。


 だから今はまだ無様晒そうが、降参なんて真似をしたんだ。


 他の奴らが俺の敗北宣言に気を取られていた中、デクだけはそれに気づいてあんな事を言いに来たんだろう。

 腹は立つが文字通り手が出せねえ以上、舌打ちだけで済ませてやった。感謝して死ね。

 それら諸々を込めた睨みを向ければ、デクの野郎はキメェ顔で笑ってやがったが。

 近い内にテメェとの決着も付けてやるから、覚悟してろ。




 その後、保健室に行ってリカバリーババアに死ぬほど叱られたのは、甘んじて受け止める。

 つーかある意味オールマイトより圧を感じたから黙らざるを得なかった。マジで何モンだあの婆さん。

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