半冷半燃少女は幼馴染   作:セロリ畑

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 あけましておめでとうございます。
 今年も宜しくお願い致します。

 体育祭編締めの一話。次の後日談で体育祭編は終わりです。


25:ぐだぐだと表彰式。

 

 

 

「それではこれより!! 表彰式に移ります!」

 

 

 ミッドナイト先生の言葉と共に、表彰台が煙幕と共に地上へと上がる。

 

 スタジアムの上空に打ち上げる花火と、観客からの大きな歓声が私たちを迎えてくれた。

 

 

 三位台には、いつもの柔らかい笑みを浮かべた出久と、いつも通りに見える顔で腕を組む常闇。

 

 二位台には、両腕をギブスで覆い三角巾で首に固定されている仏頂面の勝己。

 

 

 そして一位台には……両手に松葉杖を付いた私。

 

 

 支え無しで立つのが厳しい程度には、体力を消耗していたけれど。

 

 

 それでも、笑顔だけは絶やさないようにしていた。

 

 

 

 優勝を決めたと同時に倒れた私は、気づけばまた出張保健室の天井を見る事になった。

 ぼんやりとした意識の中、手を握られている感触に視線を横に向ければ、出久がベッドの脇に居る。

 起きた事に気づいた彼は、私に笑みを向けて頭を軽く撫でてからリカバリーガールを呼んだ。

 

 まだ頭がはっきりしない中、リカバリーガールからは無茶をし過ぎだと叱られながら診察を受けて。

 もう細かい怪我が治せないぐらいに、体力が残っていないと言われてしまった。

 実際、ベッドから起き上がるのも億劫で、出久の助けを借りてどうにか上体を起こせるレベル。

 この後の表彰式は、何かしらの支えが無ければ出られなさそうだった。

 

 逆に隣のベッドに無理矢理寝かされていた包帯グルグルの勝己はタフネスの塊だからか、両腕の治癒に全身の怪我を治しても多少フラフラする程度で済んでいたらしい。

 一体どれだけスタミナがあるのやら……とリカバリーガールは呆れていた。

 

 そこで勝己が棄権した事を思い出した私は、何故かと彼に聞いた。

 舌打ちしてそっぽを向いた勝己に代わって教えてくれた出久曰く、勝己の腕は限界ギリギリだったらしい。

 そんな素振りが一切見えなかっただけに、私の驚きも大きかった。

 全く分からなかった……と呟けば、気づかせねえようにしてたんだから当たり前だろバァカ、と嘲笑ってきたのは、ちょっとイラッとしたけれど。 

 

 

 

 なんて一幕は割愛。

 

 

 表彰台を見渡したミッドナイト先生が、間を置いてから大きく声を張り上げる。

 

 

「それではメダル授与よ!! 今年メダルを贈呈するのはもちろんこの人!!」

 

「HAーHAHAHA!!!!」

 

 

 スタジアムの上から日本人なら馴染み深い笑い声が聞こえる。

 そうか、ここ暫くで見慣れていたけど、もの凄い有名人が教師になってたんだった。

 その人、オールマイトは代名詞にもなっている台詞を叫びながら飛び降りてくる。

 

 

「私が!! メダルを持っ「我らがヒーロー、オールマイトォ!!」たァ!!!!」

 

 

 あ、台詞が被った。

 プルプル震えるオールマイトに、ミッドナイトが手を合わせて謝っている。

 事前に打ち合わせとかしてなかったんだろうか。

 まあ、ある意味オールマイトらしいかも。エンターテイメントしてる。

 

 

 気を取り直して、メダル授与が行われる。

 

 まずは、三位の出久と常闇から。

 

 

「常闇少年、おめでとう! 強いな君は!」

「もったいないお言葉」

 

 

 普段と変わらない調子の常闇。

 隣の出久はオールマイトに表彰されると聞いてから笑顔が固くなってるのに、その変わらなさは凄いと思う。

 

 

「ただ! 相性差を覆すには“個性”に頼りっきりじゃダメだ。もっと地力を鍛えれば取れる択が増すだろう」

「……御意」

 

 

 わ、御意って日常生活で使う言葉なんだ。

 オールマイトに抱きしめられる常闇を見ながら、そんな事を考えてしまった。

 

 次いで、オールマイトが出久の前に立つ。

 

 

「緑谷少年、おめでとう!! 入学時と比べても素晴らしい成長だ!!」

「あああ、ありがとうございます!!」

 

 

 出久、滅茶苦茶緊張してるなあ。

 ロボットみたいにカクカクしながら、首にメダルを掛けられている。

 いつも会ってるし、さっきも言われた言葉の筈だけど、こういう場で称賛されるのはやっぱり違うんだろう。

 曲がりなりにも師匠だからか、オールマイトの声色も常闇の時より明るい気がする。

 

 

「君の場合、地力は十分に出来ている。後は個性の細かな制御の練習が必要だね」

「は、はい! 個性の訓練も、戦闘スタイルの見直しも、これからも全部頑張って……立派なヒーローになります!!」

「うむ! 期待しているぞ!!」

 

 

 ちょっと、オールマイトちょっと。

 

 明らかに常闇と態度が違う感じになってきているんだけど。

 なんで全国中継の場で、贔屓しているように見える接し方をするの。

 そこまで分かりやすい訳じゃなくても、分かる人には分かってしまうってば。

 私としては構わないと思うけど、師弟関係は隠したいんじゃなかったっけ。

 ……ついでに出久にハグするのも止めてほしい。

 出久が喜んでいるのは良いんだけど、なんだか私と抱き合った時より嬉しそうに見えてもの凄く複雑な気分だ。

 

 こほん、とわざとらしく咳払いをすれば、ようやく気づいたオールマイトが少し慌て気味に出久から離れた。

 常闇には気づかれてないっぽい。よかった。

 

 ただ――勝己が感情の読めない顔で、二人をじっと見ていたのが気になった。

 勘が良いし頭の回転も早い、これ以上何かきっかけを与えれば、バレるのも時間の問題だろう。

 ただ個人的に、彼にならば教えても良いんじゃないかとも思うけど。

 

 

 そんな勝己の前へと、オールマイトが立った。

 

 

「爆豪少年、おめでとう! 伏線回収は叶わなかったが、見事な成績だ!」

「慰めなんて要らねえよオールマイト。大見栄切って二位(した)に居んだ。この順位には、何の価値もねぇよ」

 

 

 オールマイトの称賛を淡々と否定する勝己。彼の気持ちも何となく分かる。

 勝己は他人や世間の評価など気にせず、自分の中の絶対的な基準の上を歩いているんだから。

 傲慢にも思えるそれは、彼の強さでもある。

 

 そこはオールマイトも理解しているらしく、頷きながら言葉を紡ぐ。

 

 

「うむ! 相対評価に晒され続けるこの世界で、不変の絶対評価を持ち続けられる人間はそう多くない。自分を貫く君の姿勢は、多くの人に理解されただろうさ!」

「どうでもいいからさっさとメダル寄越せや……“傷”として、忘れねえように取っとくからよ」

「HAHAHA! そうだね!」

 

 

 負けた自分を忘れないようにと、弱さや戒めの証として持っておくつもりなのか。

 どこまでも勝己らしいと小さく笑えば、首に銀メダルを掛けられている彼に横目で睨まれてしまった。

 

 

 さて、次はいよいよ私だ。

 

 目の前に立つオールマイトに、私は笑顔を向ける。

 

 

「轟少女、優勝おめでとう!! 流石、というべきかな?」

「ありがとうございます。頑張りました」

 

 

 そう告げれば大きく頷かれて、金色に光るメダルを掛けられる。

 見た目以上のずしりとした重さは、ここまで来た証だ。

 

 

「個性も地力も申し分ない。が、時折加減を忘れている事があったから気を付けるように」

「はい。これからも精進します」

 

 

 皆と同じように講評を告げながら、オールマイトは軽く抱きしめようとする。

 

 

 ――――寸前に、それは起きた。

 

 

 

 

「オールマイト貴様ァァァ!!!! 俺の娘に不埒な真似をするなァァァ!!!!」

 

「へぇっ!?」

 

 

 

 

 どこからか、不快な不快な、声がした。

 

 

 マイクも無いのに、ざわざわした会場に響き渡ったそれは、間違いなくあの男のもの。

 

 

 オールマイトが驚き、出久や勝己が噴き出して、他の生徒や観客が唖然とした。

 

 

 

 

 ………………あんの、馬鹿親父。

 

 

 

 ここで、この最後の最後で、恥を晒すか。

 

 

 

 良いだろう、それならこっちにも考えがある。

 

 

 フラフラの体に力を入れて、貰ったメダルを首から外して。

 

 

 左手に、力いっぱい握りしめて。

 

 

 声がした方向を、しっかり見据えた。

 

 

 そして、アイツを見つけたので。

 

 

 

 

「凍夏ァ!!!! 早くそいつから離れ「恥晒しは黙ってて!!!!」ぶごぉぉ!!?」

 

 

 

 

 爆炎(青)の勢いと共に、メダルを炎上野郎の顔面にぶち込んだ。

 

 

 ん、無事に顔の中心に命中した。ナイスショット私。

 

 

 壁で頭を打って倒れてたけど、知ったことか。

 

 

 

 さ、それじゃあ静まり返った会場を元に戻さなきゃね。

 

 

 

「オールマイト、今のうちに終わらせて下さい」

「えっ!? え、エンデヴァーを!?」

「エンデヴァー? どちら様でしょうか?」

「あっ、い、いやなんでもないから! うん!!」

 

 

 

 慌てて私の意識を逸らそうとするオールマイト。

 

 

 彼がエンデヴァーを終わらせてくれるなら、それはそれで良いかもしれないけど。

 

 

 あの汚物の処理は、こっちに任せてほしい。

 

 

 

「さっきの不審者は今晩、家の庭の隅っこでパンの耳でも囓ってるでしょうし、ご心配なさらず」

「「「「止めてあげてぇ!!!!」」」」

 

 

 

 会場全体、特に大人の男性からそんな叫びが聞こえた。

 

 

 やだ。あんな男、私は知らないもん。

 

 

 

 

ー緑谷出久ー

 

 

 色々な意味で熱々なメダルの豪速球を受けて倒れたエンデヴァー……炎司さんが輸送用ロボに回収された後。

 何だか締まらない状態だったのを、オールマイトが無理矢理締め括ろうとして、更に失敗していた。

 

「そこはプルスウルトラでしょオールマイト!!」

「ああいや……疲れたろうなと思って……」

 

 いや、確かに疲れてますけど、そこはプルスウルトラですってば。

 ブーイングを受けるオールマイトに少し呆れながら……僕は一位台に居る凍夏ちゃんの様子を伺っていた。

 

 炎司さんに親馬鹿発言されてから、ずっと怖い笑みを浮かべている。

 内心は滅茶苦茶機嫌が悪いに違いない、表彰式という場だから取り繕っているだけの表情。

 つい笑ってしまったけど、今回ばかりは僕も炎司さんが悪いと思うから、あんまりフォロー出来ないか。

 それより先に、凍夏ちゃんの機嫌を直してもらわないといけないしね。

 

 雰囲気がぐだぐだのまま、皆が体育祭の解散準備を始めようと動き出した時。

 

 

 凍夏ちゃんの身体が、ぐらついた。

 

 

 気づいたと同時、僕は個性を使い一位台へと跳び乗って。

 

 

 倒れる彼女を、腕で支えるように受け止める。

 

 

「凍夏ちゃん!」

「…………あは、ありがと、出久」

 

 

 腕の中でにへらと笑う凍夏ちゃんは、力ない感じ。

 

 そうか、元々残り少なかった体力を、さっきの豪速球で使い果たしてしまっていたのか。

 

 炎司さんへの扱いの酷さは見慣れた光景過ぎて、体力がどうとか考えてなかった。

 

 彼女の状態を把握出来ていなかった事に少しの後悔を覚えつつ、彼女の額に手を当てる。

 

 ……うん、熱はなさそうだから、極限まで疲れているような状態なんだと思う。

 

 

 僕の声と、続いて松葉杖が倒れた音で、先生方や生徒の皆も凍夏ちゃんの不調に気がついた。

 

 

「轟少女!!」

「轟さん、大丈夫!?」

「はい。ちょっと、立てないだけです」

「それは大丈夫じゃないって……無理しちゃ駄目だよ」

「私は悪くないもん、アイツのせいだもん」

「…………まあ、そうだね」

 

 

 こんな状況でも調子の変わらない凍夏ちゃんに、思わず苦笑が漏れてしまう。

 僕が炎司さんのフォローをしなかったからか、少し機嫌が良くなった。

 

 ん、首に腕を回された。このまま運べって事かな。

 

 

「すみませんオールマイト、ミッドナイト。先に凍夏ちゃんを保健室に連れて行きますね」

「ああ、頼んだよ緑谷少年」

「リカバリーガールは本棟の保健室に戻ってるからそっちにね! 青臭い青春らしくて好みよ!!」

「あはは……分かりました」

 

 

 ミッドナイトの視線が強すぎて、ちょっと怖い。

 僕は笑みが引きつらないようにしつつ、先生方に断りを入れて一位台を降りようとした。

 

 

「ね、出久」

 

 

 けど、凍夏ちゃんが甘える声で話しかけて来たので少し止まる。

 

 見れば、彼女は頬を染め、目を潤ませながら僕を見つめている。

 

 

 ……何だろう、凄く大変な事が起こる予感がしてきた。

 

 

 それなりに注目されてる今……というか、観客の人たちも何事かと僕らを見てる!?

 

 ちょっ、カメラがこっちを撮り始めたから、スクリーンに僕たちが映ってるし!

 

 これ、一挙一動を全てを見られているんじゃないかな。凄く冷や汗が出てきたんだけど。

 

 それらを一切気にしない凍夏ちゃんが、首を傾げて僕を見上げる。

 

 

「出久?」

「あ、えっと……何かな……?」

 

 

 震えそうだった声を、根性でどうにか普段通りに取り繕った。

 

 返事が返ってきて安心したらしい凍夏ちゃんは、緩んだ顔で口を開いた。

 

 

「私、優勝したよ」

「う、うん」

「約束、守れたよね」

「そう、だね」

 

 

 

「ごほうび、ちょーだい?」

 

「――――」

 

 

 

 

 待って。

 

 

 

 凍夏ちゃん、ちょっと待って。

 

 

 

 

 内容は百歩譲って良い。ここで言ったのは全く良くないけど、まだ良い。

 

 

 

 優勝した凍夏ちゃんをお祝いするのも、何かしらのご褒美をあげるのも構わない。

 

 

 元よりするつもりだった事。何の問題もない。

 

 

 だけど、その後の動きは勘弁してほしい。

 

 

 

 顔を僕の方に向けて、目を閉じて、口を近づけてくる、とても分かりやすいある行為の仕種。

 

 

 

 つまりこれは、不特定多数が、僕らを見ている前で。

 

 

 

 

 ――――キスして、って事だよね!?

 

 

 

 

 色々待ってほしい僕と君が恋人になった事はまだリカバリーガールしか知らないんだそれをクラスの皆はおろか他の一年生や先生に観客の人たち果ては全国のお茶の間の皆様の前でキスなんてしたら一気に判明してしまうんだよいや正直ここまでの僕と凍夏ちゃんのやり取りで友達以上の関係なのは既に全国に知られているとは思うけど付き合ってるとか決定的な事はしてないんだもしここでキスしてしまったら今後の活動にも影響が出かねないし僕は兎も角凍夏ちゃんがヒーローの勉強より恋人にうつつを抜かしているとか嫌な噂でも立てられるのは嫌だし相手がこんな地味な奴で男の趣味が悪いとか言われるのも凍夏ちゃんが耐えられないんじゃないかって思ったりするんだけどああいやこれすら僕の傲慢なのかもしれない…………

 

 

 

 ……なんて、一瞬の間に思考を回していたけれど。

 

 

 

 

 ふと、断った場合の凍夏ちゃんのとても悲しそうな顔が、頭をよぎった。

 

 

 

 

 …………全く、覚悟を決めたんじゃないのか、この木偶(デク)め。

 

 

 凍夏ちゃんと一緒に歩んでいくつもりなら、僕たちの関係なんて遅かれ早かれ分かる事じゃないか。

 

 

 

 ああ、情けない。

 

 

 

 我ながらなんて臆病なんだ。

 

 

 

 目の前の大好きな女の子を、また泣かせるつもりか。

 

 

 

 もう、木偶の坊のデクじゃないんだ。

 

 

 

 今の緑谷出久(ぼく)の、デクっていうあだ名は――

 

 

 

 

「凍夏ちゃん――――」

 

 

 

 

 ――頑張れ! って感じなんだから!

 

 

 

 

 彼女の名前を呼んだ僕は、腕に抱いている恋人の唇へ。

 

 

 

 

 

 自分の唇を、優しく重ね合わせた。

 

 

 

 

 

 瞬間、会場から今日一番の黄色い声が沸き上がった。

 

 

 

 あ、やばい。やっぱりこれ、恥ずかしいどころじゃないや。

 

 

 

 顔の温度がどんどん上がってる。やばい。

 

 

 

 熱さが伝わる前に口を離せば、凍夏ちゃんがトロンとした目で柔らかい笑みを向けてくれた。

 

 

「でっ、デク君と凍夏ちゃんがーー!!!!」

「緑谷よくやったよーー!!!!」

「今年一番のキュンキュン貰ったーー!!!!」

「ととととっ、轟さんと緑谷さんが、せせせせ、せっ、接吻を……!!!!」

「おおおお落ち着きなよヤオモモモモモモ」

「そう言う耳郎ちゃんも落ち着いて」

 

 

 クラスの女子たちのテンションが半端ない。

 

 っていうか恥ずかしさで何故か聴覚が敏感になってる! 聞き分けられるの辛すぎる!!

 

 

「やっぱアイツら付き合ってたんじゃねーか!!」

「うん、まあ、正直そこに関しては驚かないよね」

「ダイタン☆」

「緑谷……お前は男だ……男だ緑谷……!! 思わず涙が出てきたぜ……!!」

「何でお前が泣いてんだよ」

「泣くだろこんなん!!」

「ミドリヤ、コロス、リア充、バクハツ」

「峰田が壊れた!?」

 

 

 男子の皆は意外にも一部だけが妬みで他は祝福モードっぽい。

 けど一人、峰田くんからどす黒いオーラを感じる。

 視界に入れてないのに、ただただ怖い。

 

 

『ヒューッ!! これでコイツらは全国公認カップルだな!!』

『…………これで何かあっても自己責任だからなお前ら……』

「青春……これぞ春の嵐……っ!!」

「ちょっ、ミッドナイト!?」

 

 

 先生方ごめんなさい。特に相澤先生。

 

 反省文でも何でも書きますので、今は見逃して下さい。

 

 

 

 はあ、予想通り大変な事になってしまった。

 

 

 観客の人たちも大いに盛り上がってるみたいだし、これからを考えると大分胃が痛んでくる。

 

 心無いメディアにあることないこと書かれるかもしれない。

 

 全国の真面目に見ていた人から、クレームが入るかもしれない。

 

 

 

 けど、後悔は全くしていなかった。

 

 

 これで改めて僕の覚悟は固まったし、今後凍夏ちゃんに惚れたから告白しよう、なんて人が現れる可能性も低くなった筈。

 

 

 

 そしてなにより――

 

 

 

 

「えへへー……出久ー……」

 

 

 

 

 ――腕の中のお姫様が、こんなに嬉しそうにしているんだから。

 

 

 一緒に、最高のヒーローへの道を歩いてくれる心強い幼馴染で、僕の恋人。

 

 

 そんな彼女が喜んでくれるなら、多少の恥ずかしさなんてへっちゃらだった。

 

 

 …………流石に見栄を張りました。毎回こんな事になるのは勘弁して下さい。

 

 

 

 

 僕は羞恥に染まった顔のまま、多くの視線やクラスメイトの追及から逃れるべく。

 

 

 凍夏ちゃんを抱いたまま、足早にスタジアムを立ち去るのだった。

 

 

 どうせ教室には戻らないといけないから、問題の先延ばしでしかないんだけどね!

 

 

 

 

 

 

「敵前逃亡……」

「クソが……やるなら最後まで堂々としてろってんだ色デク」

「色デク?」

「色ボケデクの略だわ分かれや」

「…………哀れ緑谷」

 

 

 去り際にかっちゃんと常闇くんのこんな会話が聞こえた。

 

 止めてかっちゃん! 不名誉なあだ名過ぎる!

 

 

 




 大体予想されてた表彰式のやらかし。ただしエンデヴァーも含む。
 全国公認カップルになってもそんなに変わらないのがこの二人です。

 何とか体育祭を終わらせられた感。くぅ疲。
 職場体験からはのんびり投稿になりますが、よければお付き合い下さい。
























「緑谷出久……彼がオールマイトの後継者か」



「まさかオールマイトともあろう男がNo.2の愛弟子を掠め取るなんてね。ははっ、これは面白い」



「そして……そのNo.2の娘、轟凍夏」



「次代の平和の象徴に寄り添うお姫様……いや、戦姫(いくさひめ)と言った方が正しいかな」



「これは……ふむ、弔では少しばかり荷が重いか……」



「……爆豪勝己を利用した後、流れを変更する必要がありそうだ……」



「ふふふ……なら、幾つか性能の高い脳無を作らないとね」



「さあ、九代目ワン・フォー・オールの継承者、緑谷出久」



「その彼と並び立つ戦姫、轟凍夏」



「君たちは、魔王のシナリオに抗えるかな?」


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