半冷半燃少女は幼馴染   作:セロリ畑

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 感想・評価などありがとうございます。
 各話のサブタイトルは話を書き終わった後のインスピレーションなので、あまりお気になさらず。



4:涙目(目薬)からの委員長決め。

 戦闘訓練の翌日の朝。

 オールマイトが雄英高校の教師になった影響で校門の前にマスメディアのカメラやマイクが山のように集まっていた。

 気づかれずに通り抜けるのは無理そうだったので、ふと思い付いた提案を出久に話す。

 もの凄く渋っている出久に時間がないと急かせば、どうにか了承をもらえた。

 

 そんな訳で、片耳ずつイヤホンをして音楽を聞きながら手を繋いで向かう。

 私たちに気づいたマスコミは一瞬驚いてから、こちらへと群がってきた。

 

「すみません、オールマイトの授業について聞きたいんですが!」

「仲良さげだけどカップルかな!? 教師としてのオールマイトはどんな感じ!?」

「少しで良いんで話を!!」

 

 さて、良い感じに集まってきたので演技をしなければ。

 

「出久、怖い……」

 

 涙目(目薬)を作って、出久の腕に抱きつく。

 それを見て少し狼狽えたマスコミに、出久は笑ってない目(実際は死んだ目)で言葉を発する。

 

「……すみませんけど彼女が怖がってるので、失礼します」

 

 流石にこの光景で引き留めようとする人はいなかった。

 途中ですれ違った相澤先生に、死んだ目の出久が気の毒に見られてたのは、多分気のせい。

 ……それにしても、ちょっと反応が酷いような。

 

「……そんなに嫌だった?」

「そうじゃないんだけど……仮にテレビに映っちゃったのをお母さんとかに見られたら……って思うとね……」

「? 問題あるの?」

「あるんだよ……! 勘違いを正すのも労力がいるし……!」

 

 がくりと肩を落とす出久に、私は首を傾げるしかない。

 別に見られても、恋人になってたのをなんで言わなかったのか、ぐらいしか言われないと思うけれど。

 

 そんなやり取りをしながらのせいでイヤホンシェアと手を繋いだままで教室に入ってしまい、皆がアルカイックスマイルになっていたのは余談。

 

 

 

 

「昨日の戦闘訓練、お疲れ。Vと成績見させてもらった」

 

 朝のHRの時間、門でマスコミの対処をしていた筈の相澤先生は遅れずに来た。

 

「爆豪、お前もうガキみてえな真似するな。焦ってるのかは知らんが能力あるんだから」

「……分かってる」

 

 昨日の暴挙の話を爆豪は静かに聞いていた。

 出久曰く、もう大丈夫だから心配の必要はないとの事。

 別に心配なんて全くしていなかったけれど、何だかんだで爆豪を気にしている出久にそうは言えなかった。

 

「で、緑谷。個性が使えないなりに地力や技術を鍛えて補っていた事は評価するが……個性の制御、いつまでも「出来ないから仕方ない」じゃ通させねえぞ」

「っ」

 

 相澤先生に睨まれて俯く出久。

 言っている事は正論なので、何とも言えない。

 

「俺は同じ事を二度言うのが嫌いだ。それをクリアすればやれる選択肢が一気に増える。焦れよ緑谷」

「っはい!」

 

 先生も先生で出久には期待してくれているらしい。

 これは彼なりの激励だと気づいた出久が、力一杯返事をした。

 

「さてHRの本題だ……急で悪いが今日は君らに……」

 

 不穏な言い方にざわめくクラス。

 そのフレーズは確か、昔出久と遊んだゲームの中だと殺し合いをさせられるのではなかったか、なんて事を思い出していたら。

 

「学級委員を決めてもらう」

「「「「学校っぽいの来たーー!!!」」」」

「わ」

 

 全然違ったし、いきなりクラス中が叫んで驚いた。

 続いて皆が皆、やりたいと主張を始めている。

 出久も控えめに手を挙げていた。可愛い。

 私はこういうのには向いていないと思うから立候補はしない。

 しかし、どうやって決めるつもりなんだろう。

 

「静粛にしたまえ!!」

 

 この声は飯田。騒ぐ皆が静かになる。

 

「"多"を牽引する責任重大な仕事だぞ……「やりたい者」がやれるモノではないだろう!!」

 

 確かにそうだ。飯田の言い分も一理ある。

 ある、んだけど。

 

「周囲からの信頼あってこそ務まる聖務……! 民主主義に則り真のリーダーを皆で決めるというのなら……これは投票で決めるべき議案!!」

「そびえ立ってんじゃねーか!! 何故発案した!!」

 

 自身が手を挙げていては、説得力があまりないと思う。

 まあでも実際、短時間で決めるなら投票も良い手段だ。

 私のようにやるつもりが無い人はいなくても、他に薦めたい相手がいる人はいない事はないだろうから。

 

 そして飯田が相澤先生からも了承を得た為、投票に決まった。

 さて、私は誰にしようかな。

 

 

 投票が終わり、結果発表。

 

「僕四票!?」

 

 出久が四票を獲得し、委員長に当選した。

 

「……ちっ」

 

 妙に大人しい爆豪が忌々しい……いや、苦々しい表情で舌打ちしている。

 けれどこれは昨日の戦闘訓練の影響だろうから、ある意味当然の結果。

 雄英に入ってから出久が次々と認められている現状に、頬が緩んでしまうのも当然の現象だった。

 八百万も二票と複数獲得しているので、これで委員長と副委員長が決まった。

 端で0票で落ち込んでいる飯田が何をしたかったのかと言われていた。真面目な彼らしい。

 

 そんなこんなで昼休み。

 今日は出久たちとではなく、八百万と一緒にご飯を食べる事にした。

 ランチラッシュの食堂で頼んだ蕎麦を啜りつつ、朝のHRの話をする。

 

「副委員長おめでとう、八百万」

「ありがとうございます。緑谷さんに負けて少し悔しい気持ちはありますが、精一杯務めさせて頂きますわ」

 

 ぐっと胸の前で手を握り締めている八百万を見ていると、何だか微笑ましい気持ちになる。

 

「ふふ、八百万に投票して良かった」

「えっ!?」

 

 だから、言うつもりのなかった言葉を漏らしてしまった。

 驚いた顔の八百万に、この際だからと理由も伝える。

 

「戦闘訓練の講評とか、戦闘時の創意工夫とか、きっと考えて人を引っ張るポジションに向いてると思ったから」

「轟さん……!」

 

 感極まった様子の八百万が、私の手を握ろうとした。

 

 

 その瞬間、食堂に警報が鳴り響いた。

 

 

『セキュリティ3が突破されました。生徒の皆さんは速やかに屋外に避難してください』

 

 

 悲鳴が上がる学食。我先にと避難する生徒たちで瞬く間に出入口が混雑する。

 私たちはといえば、出遅れた事もあってその場から動いていない。

 

 少し唖然としていた八百万は、すぐに冷静さを取り戻して私へと情報をくれた。

 

「セキュリティ3、校内に何者かが侵入した際に発動されるものですわ」

「成る程、これからどうする?」

「この大人数です。下手に動いても避難は出来ませんし、身動きが取れなくなって逆に危険でしょう」

「そうね……」

 

 現段階で危険度は分からない。

 どんな相手が校内に侵入してきたのか。

 侵入者は今どこにいるのか。

 情報が不足している今、私たちに出来る事があるのか。

 

「皆さん、大丈ー夫!!」

 

 難しい顔の八百万と共に考えていると、最近聞き慣れてきた声が辺りに響いた。

 声の方向を見れば、出口の上に飯田が非常口のようなポーズで張り付いていた。

 

「只のマスコミです! 何もパニックになることはありません!! 大丈夫! ここは雄英! 最高峰の人間にふさわしい行動をとりましょう!!」

 

 叫びながら簡潔に状況を説明する飯田の声で、慌てていた生徒たちも落ち着いていく。

 騒動を制圧する彼は、その場で誰よりもヒーローらしかった。 

 

 

「凍夏ちゃん、八百万さんも」

「二人ともさっきのに巻き込まれてなかったんやね。流石!」

「緑谷さんに麗日さん。ご無事でしたか」

 

 胸を撫で下ろしていた私たちの所へ、出久と麗日がやってきた。

 出久の衣服が少し乱れているが、あちらも無事らしい。

 

「出久、大丈夫?」

「いやぁ、人波に流されかけて……こんな所で背が低いのがマイナスに働くなんてね……」

「出久ぐらいの身長、可愛いと思うけど」

「まさかの追い討ち……!」

 

 フォローしたつもりが、何故か出久が胸を押さえながら更に項垂れた。

 麗日と八百万に同情の視線を向けられている辺り、私が間違えたらしい。

 人を慰めるのは難しいと、改めて実感した。

 

「そ、そんなのは今どうでも良くて……八百万さん、ちょっといいかな」

「? はい、何でしょうか」

 

 少しだけ落ち込んでいると、出久が八百万に提案を持ちかけていた。

 その内容は出久らしく、それでいて筋も通っている話。

 麗日も頷いていたし、私も出久が良いなら構わないと思う。

 少し複雑な顔をしていた八百万も最終的には納得出来たようで、首を縦に振った。

 

 

 

 

 その後、午後のHRにて残りの委員決めの時間での事。

 

「やっぱり委員長は飯田くんが適任だと思います」

 

 出久は昼食時の出来事を理由に、飯田へと委員長を譲る旨を話す。

 副委員長の八百万も同意済みであり、他の皆も概ね同意の意見が出て、すんなりと飯田が委員長になるのかと思われた、のに。

 

「テメェクソデク!! この俺がわざわざ自分曲げて票入れてやったってんのに、それを蹴るたぁ良い度胸じゃねェか、ア゛ァ゛!?」

 

 夢ではないかと、思わず自分の頬をつねってしまうぐらいびっくりした。

 信じ難い事に、出久の四票のうちの一票は爆豪が入れていたらしい。

 本人もそれは知らなかったようで、目が飛び出る程驚いていた。

 

「かかかか、かっちゃんが入れてくれたのあれ!!??」

「文句あんのかゴラァ!!」

「文句はないけど!! かっちゃん熱とか無い!? もしくは頭打ったとか!!」

「んだコラどういう意味だクソナード!!!!」

「わーっ!? 授業中だから爆破はダメだって!!」

「使わねえよクソが死ね!!!!」

 

 いきなり乱闘が始まりそうな空気に、唖然としていたクラスメイトたちが慌て出す前に。

 

「昨日の今日で随分と楽しそうだなお前ら……元気があって大変宜しい……!」

「ぐえっ!?」

「んぐっ……んだこの布かてぇ……!」

 

 寝袋に入っていた相澤先生が首元の布で二人を捕縛し、そのまま席へ強制的に叩き戻した。

 いや、これって出久はとばっちりなのでは。

 

「炭素繊維に特殊合金の鋼線を編み込んだ『捕縛武器』だからな……そのままで頭冷やしてろ」

「「っ……」」

「返事!」

「はっ、はい!!」「っす……」

「じゃあ飯田、委員長として八百万と一緒に進めていけ」

「りょ、了承しました!」

 

 ギロリと睨むだけでクラスを静まらせる様子に、恐怖政治が進行しているとか考えてしまった。

 

 気を取り直して飯田により他の委員決めが進行される中、私は縛られた二人を見る。

 むすっとした爆豪と溜め息を吐いている出久。

 昨日何があったかは知らないけど、少しでも関係が改善されるのは出久にとっても良い事だ。

 まあそれはそれとして、巻き込んだ爆豪は許さない。

 

 

 余談だが、後のタイミングで相澤先生が抹消ヒーロー「イレイザーヘッド」というアングラ系ヒーローだと判明した。

 湯水の如く彼について語り始める出久に、捕縛布をきつくして制止をかけた相澤先生の心境はどんなものだったのか、私には分からない。

 

 




原作との相違点。
・出久、爆豪の仲が多少緩和。
・相澤先生のヒーロー名判明のタイミング。

 原作より早く出久と爆豪のライバル関係(?)が築かれました。
 かっちゃん語が難しいこの頃。
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