半冷半燃少女は幼馴染   作:セロリ畑

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 引き続き感想・評価などありがとうございます。
 頂いた感想の元、オリ主こと轟凍夏のイメージをキャラメイクアプリのカスタムキャストとスマホのピクチャーアプリを使って作ってみました。
 着色が雑なのにはご了承を。
 作者的にはこんな子です。

・バストアップ

【挿絵表示】


・全身

【挿絵表示】



 出久視点でオリ主が語るオリジン前編。


12/5:バストアップを少し修正したものに変更しました。


5:轟凍夏:オリジン①

「今日のヒーロー基礎学だが……俺とオールマイト、そしてもう一人の三人体制で見る事になった」

 

 マスコミ侵入から数日後の午後の授業。

 レスキュー、人命救助訓練を行うとの事だけど、始まりの相澤先生の宣言に違和感を感じる。

 見る事に「なった」というのは、本来の予定が変わったという意味なのかな。

 出久も引っ掛かったのか、少し首を傾げている。

 大変そうやらヒーローの本分やら騒ぐクラスを一睨みした先生は、バスで移動する事とコスチュームの着用は自由な旨を伝えると、準備開始の宣言をしてさっさと出ていってしまう。

 

 何はともあれ、救助訓練は私や出久にとって最高のヒーローになるために一番必要なものだ。

 意気込みを入れて、頑張ろう。

 

 

 てきぱきと着替えて、訓練場に向かうバスの乗り場へと向かう。

 途中で出久と合流して、どんな授業かを予想しながら歩く。

 バスの前に着くと、飯田が笛を吹きながら指示を出していた。

 

「バスの席順でスムーズにいくよう、番号順に二列で並ぼう!」

「飯田くんフルスロットル……!」

「笛、持ってたの?」

「ああ! こんな事もあろうかとな!」

 

 凄く張り切ってるらしい。

 けれど、バスに乗るとすぐその指示は無意味になっていた。

 

「こういうタイプだった! くそう!!」

「イミなかったなー」

 

 市バスなどの両サイドに席があるタイプのバスに、飯田はから回ったと落ち込んでいた。

 

 出久の右隣の席に座った私は、ゆらゆらと揺れるバスの感覚にぼんやりと意識を泳がせている。

 端的に言って、眠くなってきた。

 昔から乗り物に乗って座っていると眠くなるので、いつも道中は寝て、到着したら出久や姉さんに起こしてもらっていたっけ。

 

「凍夏ちゃん、着いたら起こすから寝てても良いよ?」

 

 そんな私の様子に気づいた出久が、柔らかい笑みでそう述べる。

 それなら、お言葉に甘えて。

 隣に頭を預けて、落ち着く匂いを感じながら私は目を閉じた。

 

 

 

ー緑谷出久ー

 

 

 僕の肩に頭を預けるように倒れてきた凍夏ちゃんは、既に小さく寝息を立て始めていた。

 小さな頃から寝付きが良かったけど、そこは今も変わっていない。

 なんとなく微笑ましく思いながら軽く姿勢を正そうとして、バス内から視線を一手に引き受けている事に気がついた。

 思わず声を出しそうになったが、何とか押し留める。

 というか約1名、視線で人を殺せそうなぐらい目が血走ってる……!

 

「え、えっと、どうかした……?」

 

 どうして見られているか分からな……くもないけど、一応聞いてみる。

 皆は顔を見合わせて、多分誰が話すかをアイコンタクトしているっぽい。

 すると僕の左隣に座っている女子、蛙吹さんがこちらへと向き直りながら話し始めた。

 

「私、思った事を何でも言っちゃうの。緑谷ちゃん」

「あ、はい。なにかな蛙吹さん……」

「梅雨ちゃんと呼んで。貴方と凍夏ちゃん、とっても仲良しよね」

「う、うん」

 

 少し気恥ずかしいが、否定はしない。

 昔それをして、凍夏ちゃんがとんでもなく落ち込んだ事があるが、あれはダメだ。

 捨てられた子犬みたいな目でずっと見てきて、しばらく離れるのさえ嫌がられてしまった。

 

「幼馴染とは聞いたけれど、ここまで心を許しているのは珍しいと思うの」

「そう、かな?」

「そうなのよ。差し支えがなければ、今までどうやって接してきたのか教えてほしいわ」

「そうだよ!! どんな徳を積めばそんな美少女に甘えられる青春を送れるんだよ!! 羨ましいにも程があるわ!!!!」

 

 あす……梅雨ちゃんの問いに被せる勢いで、先程から強い視線を送っていた峰田くんが叫ぶ。

 というか血涙流してない!? どんだけなのさ!

 

「う、うーん……そう言われても、凍夏ちゃんと初めて会った時からこんな感じだから、これといった特別なものはないんじゃないかな……?」

「そうなの?」

「うん、五歳ぐらいの時かな。公園で泣いてた凍夏ちゃんを慰めたらなつかれて、そのまま今日に至ると言いますか……」

「えー優しい! 緑谷ちっちゃい頃から紳士じゃん!」

「し、紳士って……」

 

 向かい側にいた芦戸さんが興奮気味に話に入ってくる。

 紳士とか、そういうのでは無いんじゃないかな。

 泣いてる人がいたら、きっと誰でもそうするよ。

 

「そんぐらいで美少女幼馴染が出来るならオイラだってやってるわ!! 他にも何かあんだろ!! 吐けェ!!!!」

「こええよ峰田。必死すぎだろ」

 

 峰田くんの叫びに、ツッコミを入れた切島くんだけでなくクラスの大半が引いている。

 戦闘訓練の辺りで気づいていたが、彼はそういうキャラなんだろう。

 しかし何かあったと言われても……これは話して良いのか。

 

「うぅん……」

「無理に話さなくて良いのよ、緑谷ちゃん」

「いや、その、凍夏ちゃんの事もあるし、勝手に話して良いものかと……」

「良いよ」

「あ、良いの……って、えっ!?」

 

 いつの間にか起きていた凍夏ちゃんが、僕の顔を覗き込むように見上げている。

 

「あら、起きてたの凍夏ちゃん」

「うん。まだうとうとしてただけ」

「寝ないの? 珍しいね」

「ちょっと煩かった」

「峰田のせいじゃん」

 

 ああ、あの二回の叫びは確かにちょっと煩かった。

 流石に悪いと思ったのか峰田くんは少し体を縮める、が。

 

「それはごめん……って緑谷ァ!! テメー轟っぱい押し付けられてんじゃねえか畜生が!!!!!! 許っ羨!!!!!!」

 

 慟哭と共にそんな事を言われて、再びクラスの注目を浴びる。

 起きた凍夏ちゃんに流れるように腕を組まれ、抱きつかれている現状を言っているのだろう。

 峰田くんの他、上鳴くんや瀬呂くんにも羨ましそうな視線を向けられている。

 いや、確かに柔らかい感触には滅茶苦茶ドキドキするし、視線を下げれば服から覗く肌色の山が見えそうだけど。

 それ以上に、この子のマイペースさに翻弄されてる事を知ってほしい。

 仮に今、彼女に進言したとして。

 

「凍夏ちゃん、離れてくれたりは……」

「…………」

 

((((捨てられた子犬みたいになってる!))))

 

 皆の心の声が聞こえる。

 今の凍夏ちゃんのしょんぼり具合に罪悪感を抱かないのは、よっぽどの少数意見だろう。

 

「……しなくていいよ。うん」

「んっ」

 

((((諦めた! そりゃ勝てないな!))))

 

 多くの同情の視線を集めた僕は、遠い目で呟く。

 

「……もう、慣れたよ……」

 

 

 更に同情の視線が強まったのは、気のせいじゃなかった。

 

 

 

 

「そ、それで緑谷! 凍夏とどんな幼少期を送ってきたの?」

 

 何とも言えない空気に、本題へと軌道修正をはかる芦戸さん。

 僕が口を開こうとして、その前に凍夏ちゃんが何気なく告げた一言。

 

 

「うちの父親に、一緒に拷問されてた」

 

 

 あんまりな言い方に、バスの中の空気が死んだ。

 

 いや、お父さん嫌いの凍夏ちゃんならそういう事するとは思ってたけども!

 これフォローするの僕なんだからね!? 分かってる!? 我関せずだった相澤先生まで振り向いて凄い顔してるよ!?

 

「凍夏ちゃん……省略した所をちゃんと入れて」

「?」

「と・う・か・ちゃん?」

「…………拷問ぐらいきつく、虐められてた」

「訓練で、ね?」

「……うん」

 

 凍夏ちゃんはむくれながら、僕の首元に顔を埋める。

 仮にもNo.2ヒーローなのに、ここまで軽蔑されるとはあの人も気の毒な。

 まあ自業自得と言えばそうだし、父親としてはダメダメでポンコツなのかもしれないけど。

 それよりバスの空気を放置したまま、臭いを嗅ぐのは止めてほしい。温度差が酷すぎて板挟みな僕にはキツすぎる。

 

「え、えっ、と、冗談だったんだよ、な?」

 

 凄く恐る恐る尋ねて来た切島くん。

 大丈夫だから。悪意しかない表現だったけど大丈夫だから。

 とはいえ……

 

「過剰な表現過ぎる……って訳でもないけどね。凍夏ちゃんのお父さんの事は知ってる?」

「は、はい。ヒーロービルボードチャートNo.2、フレイムヒーロー「エンデヴァー」ですわよね?」

 

 凍夏ちゃんの態度からいくらか事情を察したのか、多少深刻さが抜けた表情の八百万さんが答える。

 知らなかったクラスメイトも多いようで、目を見開いたり驚きの声を上げている人もいた。

 

「そう。メディアとかでも見ると思うけど、昔から上昇志向が高い人でね……自分の子どもの凍夏ちゃんにもそれを求めてたんだ」

「私だけ。兄さんや姉さんは失敗作扱い」

 

 ちょっ、それ話すの!?

 そこからなら深刻度が激増ししちゃうんだけど!!

 

「凍夏ちゃんどこまで暴露するつもり!?」

「全部。この際だしエンデヴァーは皆から嫌われればいい」

「えぇ……」

 

 珍しく悪い顔をしている凍夏ちゃん。

 言ったら絶対落ち込むから言わないけど、その顔お父さんにそっくりだからね。

 

 で、更に凍りついた空気を溶かさなきゃいけないんだけど、また凍夏ちゃんが自ら口を開いた。

 うん、けどこれ溶かすどころか永久凍土と化すつもりだ。

 

 

 

「個性婚って知ってる?」

 

 

 

 そして彼女は語る。自らのオリジンとも言える幼少期を。

 

 

 

 

「……第二、第三世代で問題視された、強い個性を子に継がせる為の政略結婚、という風に学んだが」

 

 少し間が空いた後、勤勉な飯田くんが重苦しい口調で答えると、凍夏ちゃんは頷きながら言葉を続ける。

 

「あの男は倫理観の欠落した時代錯誤なそれをした。氷結系の個性を持ってた母の家を言いくるめての結婚。母は私を含めて四人の子どもを産まされたの」

「……何故、そこまでして?」

 

「オールマイトを越える、ただその為だけに」

 

 

 凍夏ちゃんの声色が、どんどんとキツいものになっている。

 昔の、追い詰められていた時の気持ちを思い出しているんだろう。

 心配になって手を握れば微笑みが帰ってきたから、大丈夫だとは思うけど。

 

 

「エンデヴァーは二十歳にはNo.2に登り詰めた。けどその時に気づいたのが、No.1との間にある越えられない壁」

「オールマイトを越える事が目標から執着になって、自身に不可能ならより優秀な仔に野望を果たさせる……そういう風にねじ曲がった」

「だからあいつは家族を省みず、ただ母に自分の上位互換になる仔を産ませようとした」

 

 

「それが私、轟凍夏」

 

 

 ふぅ、と一息吐く凍夏ちゃん。

 皆は固い表情で、何も話せないまま。

 自分とは別世界の重すぎる話に、何を言えば良いのかも分からないんだろう。

 

 ……これ、訓練場に着くまでに良い感じに締めないと空気が凍ったままの救助訓練になっちゃうよね……?

 

 方向違いの心配をする僕はさておき、凍夏ちゃんは続きを話す。

 

 

「私が産まれて個性が発現した時、あの男は喜んだ」

「炎だけじゃ身体に熱が籠って倒れてしまう。氷だけじゃ体温が低くなって動けなくなってしまう。半冷半燃なら、凍らせて燃やす個性なら、お互いのデメリットを打ち消せた」

「個性を発現させた日から、私にとっての地獄が始まった」

「エリート教育という体で他の兄姉からの隔離。吐いても立たせる拷問のような鍛練。止めようとした母を突き飛ばして、あいつは私を鍛え続けた」

「泣けば鍛練がキツくなるから泣けない私と、どんどんやつれていく母は、きっと端からは見れたものじゃなかったと思う」

 

「そんなっ……そんなのって……!」

「んなのっ、ヒーローのやる事じゃねえ……!」

 

「ヒーローとしての技量と、親である技量は別だから」

 

 

 目に涙を潤ませる八百万さんと激しい怒りに震える切島くんに、淡々と告げる凍夏ちゃん。

 他の女子も涙ぐんだりしていて、男子に至ってはかっちゃんさえも顔を歪ませていた。

 ああ、これはもうA組の皆からのエンデヴァーへのヘイト値は取り消せないな。

 

 

「そして私が五歳の時、悲劇が起きた」

「精神的にギリギリだった母が、台所で実家に電話をしていた」

「私の左側が、日に日にエンデヴァーに似てきて、醜くおもえてしまうと、心の底に沈めていた感情を吐き出して精神を保っていた」

「たまたまそこに、私が通りかかってしまって、声をかけてしまった」

「母は憎しみに染まった目で、沸かしていた熱湯を……私の左側へと浴びせた」

「色々な痛みに泣く私と、錯乱した母。たまたま家にいた父は母を取り押さえて、病院の精神科に放り込んだ」

「元凶のあいつは、その時なんて言ったと思う?」

 

「『全く、この大事な時期に……』って、恨めしそうに吐き捨てたの」

 

 

 ブチッ、という音が複数聞こえた。

 何人かがキレたらしい。僕に分かるのは切島くんだけだけど。

 けどこれで、山場は越えた筈。

 

 

「心の支えを無くして、絶望に圧し潰された私は、火傷が治ると同時に家を飛び出した」

「当てもなくずっとずっと走って、もう歩くのも無理なぐらい走り続けて、たまたま休む為に立ち寄った公園で」

 

「私は、出久に出会ったんだ」

 

 

 凍夏ちゃんの心の底から嬉しそうな声で、皆の視線がまた僕に向く。

 

 その絶妙なタイミングで訓練場に着いたらしく、バスが止まった。

 

 

「……えー、じゃあ、着いたから降りろ」

「「「「タイミングが悪すぎる!!!!」」」」

 

 

 クラスが一丸となった叫びに、今回ばかりは相澤先生も目を逸らした。

 

 それよりも凍夏ちゃんが、やけにニコニコしてるけど、これはまさか……。

 

「時間計って話してたね?」

「…………ううん」

 

 嘘が下手な反応をありがとう。その才能はプレゼンとかで使うと良いよ。

 最初からエンデヴァーにヘイトを集めるだけ集めさせる目的だったんだと、僕は頭を抱えた。

 これ、後で今は大分マシになったのを話しても、効果がなさそうな感じだよなあ……。

 

 

 ちなみに、話の続きはまた後日やるつもりとは凍夏ちゃんの弁。まじでか凍夏ちゃん。

 

 ……よく考えなくともそれが僕の話になると気づいて更に頭を抱えたのは、後の事。

 

 

 

 




 オリ主に無いもの
①自分の過去を話す事への躊躇
②エンデヴァーへの遠慮
 ……②は焦凍くんにも無かったですね!うん!

 エンデヴァー好きです。
 ストイック過ぎてあれだったけど、よく見たら焦凍くんめっちゃ好きだなこいつ!って感じあるの良いと思います。

 それはそれとしてここのオリ主はエンデヴァー嫌いです。
 どちらかと言えば反抗期的な側面が強いんですけどね。
 後編も近いうちに。
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