半冷半燃少女は幼馴染   作:セロリ畑

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 襲撃編のラスト。
 オリ主と出久くん周り以外は原作と同じ展開なので描写は省きます。



8:貴方を信じるUSJ襲撃の終幕。

「来た! オールマイト来た! これで勝つる!」

「うん、良かった」

 

 オールマイトが現れたのを妙な言い回しではしゃぐ葉隠に同意して、私も溜め息を吐いた。

 もう私が広場に着く頃には、全てが終わっている気がしなくもない。

 けれどNo.1ヒーローを殺せる策があると聞いた身からすれば、心配があるのも事実。

 万が一を考えるなら、私が向かう意味もある。

 

「私はこのまま広場に向かうから、葉隠は先に入口の皆と合流してて」

「えっ、オールマイトが来たんだし凍夏ちゃんも……」

「念の為、策の話もしといた方が良いと思うから。それなら私一人で十分」

「……分かった! 気を付けてね!」

「勿論」

 

 手袋のおかげでサムズアップしたと分かる葉隠にサムズアップを返し、一旦別れる。

 途中でちらほら見かけるチンピラを凍らしつつ広場へ向かえば、脳味噌剥き出しの巨漢と戦うオールマイトが見えた。

 丁度バックドロップを決めたところで、爆発するように叩きつけていた。

 

 と、その奥に怪我をしたような相澤先生を担ぐ出久と峰田、梅雨ちゃんが居るのが見えた。

 ひとまずの無事にほっとして……オールマイトの状況が変わっているのに気がつく。

 バックドロップ先の地面をワープのヴィランが覆い、オールマイトの背中側に出てきた脳味噌ヴィランが彼の脇腹を掴んでいた。

 

 ピンチじゃないのかもしれない。

 

 けど、ピンチなのかもしれない。

 

 ならヒーロー志望の私が、やる事は決まっている。

 

 

「――凍れ!」

 

 

 足を起点に氷結を繰り出して、オールマイトを避けるように脳味噌ヴィランを凍らせたと同時。

 

 

「オールマイト!!」

「浅はか……」

 

 

 出久が凄い速度で黒いもやヴィランへ迫り、それに対抗しようとしたヴィランを。

 

 

「どっけ邪魔だデク! スカしてんじゃねえぞモヤモブが!!」

 

 

 爆豪が爆破をしながら、地面に押さえ付けて。

 

 

「だあー!!」

「!」

「くっそ!! いいとこねー!」

 

 

 かわされてしまったけど、切島が手だらけヴィランを殴りに行った。

 

 皆が何か言っているし、私も出久の隣に並び立ちながら一言。

 

 

「平和の象徴は、お前たち如きにやられない」

 

「かっちゃん、凍夏ちゃん、切島くん……!」

 

 

 む、なんで爆豪を先に呼ぶの。

 出久が私よりこいつを頼りにしてるみたいで、ちょっと悔しい。

 いや、そんな事を言ってる場合じゃないか。

 

 氷結で力が緩んだらしい拘束から抜け出たオールマイトが、並んだ私たちの前に立つ。

 捕まれていた脇腹からは血が流れているけど、怪我は大きくなさそうだ。

 爆豪が黒もやを確保している以上、相手は同じ手を使えない。

 散らされる前の発言からして実体があるだろう事は私も気づいていたが、爆豪もそこを突いたらしく流石のセンスと言えば良いのか。

 

 

「出入口を押さえられた……こりゃあピンチだな……」

「ぬぅっ……」

「っと動くな!! 「怪しい動きをした」と俺が判断したらすぐ爆破する!!」

「ヒーローらしからぬ言動……」

「最初からだと思う」

「黙っとけや殺すぞクソ髪に半分女ァ!!」

 

 

 こちらの呟きに反応する爆豪は、控え目に言って凶悪な敵顔だ。

 クソ髪は多分切島で、半分女はもしかしなくても私の事か。

 友達にあだ名を付けられるのは少し夢があったけど、この爆発頭にセンスの無い名で呼ばれるのは嫌だ。

 次それで呼んだら私も爆発頭って呼んでやる。

 

 

「攻略された上に緑のモジャモジャ以外ほぼ全員無傷……喋る余裕まであるとか凄いなぁ最近の子どもは……」

 

 

 妙に大人しい手だらけヴィラン。

 もうどうしようもないピンチだというのに、この落ち着きはなんなのか。

 というか言われてみれば、出久が左腕に酷い怪我をしてる!

 個性の反動だろうそれは、かなり痛そうで。

 出久が私から隠すようにしていたのもあるけど、幼馴染の怪我に真っ先に気づけないなんて……!

 

 しかし私が落ち込む間もなく、事態が動いた。

 

 

「脳無、爆発小僧をやっつけろ。出入口の奪還だ」

 

 

 脳味噌ヴィラン、脳無と呼ばれたそれが動き出したからだ。

 

 

「えっ……!?」

「身体が割れてるのに、動いてる……!?」

 

 

 氷結を気にせず、身体を崩壊させながら立ち上がったからだ。

 半身が崩れるのを気にもしないで――違う、再生している!?

 

 

「皆下がれ!! なんだ!? ショック吸収の個性じゃないのか!?」

「別にそれだけとは言ってないだろう。これは超再生だな」

「な!?」

「脳無はお前の100%にも耐えられるよう改造された、超高性能サンドバッグ人間さ」

 

 

 個性の複数持ち。

 私のような二つが一つになったものでは無く、別々に一つずつ持っているというのか。

 

 驚愕する私たちの前で、脳無はあっという間に身体を元通りにして。

 

 そして次の瞬間、爆豪が居た位置に右手を振り抜いた状態で移動していた。

 

 巻き起こる衝撃波に氷結で身体を固定させて堪えられたけど……爆豪はまさか、直撃した?

 

 あ、いや、無事だ。出久の横で尻餅をついている。

 

 

「かっちゃん!! って横!? 避けた……いや、オールマイトが!?」

「うるせえよ黙れクソが」

 

 

「ゴホッ、ゲホッ……加減を知らんのか……」

 

 

 オールマイトが飛ばされた先で血と一緒に吐き捨てた。

 私は全く見えなかったあの攻撃を、生徒を庇い尚且つガードもしていたなんて、流石としか言えない。

 

 そんな彼に対し、手だらけヴィランが両手を広げながら語り始める。

 

 

「仲間を助ける為さ、仕方ないだろ? さっきだってそこの、緑のモジャモジャ。あいつが俺に思いっきり殴りかかって来たぜ? 他が為に振るう暴力は美談になるんだ。そうだろ、ヒーロー?」

「俺はなオールマイト! 怒ってるんだ! 同じ暴力がヒーローとヴィランにカテゴライズされて善し悪しが決まる、この世の中に!!」

「何が平和の象徴!! 所詮抑圧の為の暴力装置だお前は! 暴力は暴力しか生まないのだと、お前を殺す事で世に知らしめるのさ!」

 

「滅茶苦茶だな、そういう思想犯の眼は静かに燃ゆるもの。自分が楽しみたいだけだろ嘘吐きめ」

 

「バレるの、早……」

 

 

 大層な演説の虚偽が一瞬でバレたというのに、にやつく手だらけ男に嫌悪感が増す。

 黒もやヴィランが解放されたとはいえ、まだこちらに有利がある。

 

 

「三対五ね」

「モヤの弱点はかっちゃんが暴いた!」

「とんでもねえ奴らだが、俺らでオールマイトのサポートすりゃ撃退出来る!!」

 

「ダメだ!! 逃げなさい!!」

 

 

 しかし構え直したところで、オールマイトから制止が入る。

 満身創痍ではなくとも、この人もかなりダメージを負っているように見える。

 バックドロップの時だって、私のフォローがなかったら危なかったのだと今なら分かる。

 

 だとしても、オールマイトは一人で戦うつもりなのだろう。

 

 私はこのNo.1ヒーローの()()()()()()()を前にして、少しだけムッとしながら進言する。

 

 

「私はさっきみたいにサポート出来ます。全力の氷結なら、まとめてでもいけますし」

「オールマイト、血が! それに時間だってない筈じゃ……ぁ……」

「……時間?」

 

「それはそれだ、轟少女!! ありがとな!! しかし大丈夫!! プロの本気を見ていなさい!!」

 

 

 気になる事を言う出久に視線を向けようとして、オールマイトが被せるようにお礼を言ってくる。

 

 

「脳無、黒霧、やれ。俺は子どもをあしらう……クリアして帰ろう!」

 

 

 追及する暇もなく、敵の戦闘態勢が整ったようで手だらけヴィランが詰め寄ってくる。

 やるしかない、この場の生徒全員の意志が固まった瞬間。

 

 

 オールマイトから、とんでもない圧が放たれた。

 

 

 手だらけヴィランは堪らず後退し、味方の筈の私たちも硬直してしまう。

 

 駆け出したオールマイトが、相手に向かって拳を打つ。

 脳無もそれを真っ向から受け止めるように拳を放ち、相殺される。

 そしてそのまま、真正面からの殴り合いが始まった。

 

 相手はショック吸収の個性を持っているのに、オールマイトは何故この選択をしたのだろう。

 

 殴り合いの風圧で、黒もやも近づけていないとはいえ……いや、これは。

 

 

「ショック吸収! "無効"でなく"吸収"ならば!! 限度があるんじゃないか!?」

 

 

 僅かに、しかし確実に脳無が押され始めていた。

 

 

「私対策!? 私の100%を耐えるなら!! 更に上からねじふせよう!!」

 

 

 どんどん、どんどんと脳無が後退している。

 

 やたらめったらのパンチではない、全部に全力以上の力を乗せている。

 

 

「ヒーローとは常にピンチをぶち壊していくもの! 敵よ、こんな言葉を知っているか!?」

 

 

 遂にはオールマイトの力が、個性を上回った。

 

 

 これが、No.1。

 

 

 最強のヒーローの力……!

 

 

 

Plus Ultra(更に向こうへ)!!!!」

 

 

 

 雄英高校の校訓である言葉と同時。

 

 脳無がUSJの天井を突き抜けて、遥か彼方へと飛ばされていった。

 

 

「……漫画かよ。ショック吸収を無い事にしちまった……究極の脳筋だぜ」

「再生も間に合わないラッシュ、って事ね……」

 

 

 身も蓋もない言い方の切島に、私も同意するように言葉を繋げる。

 

 プロの世界を目の前で見せられ、皆が呆然する中、土煙の中から顔を出したオールマイトが呟く。

 

 

「やはり衰えた。全盛期なら五発も撃てば充分だっただろうに……300発以上も撃ってしまった」

 

 

 ……もう、何も言えない。

 

 一体全盛期とは、どんなものだったのか。

 

 少なくとも、私の理解の範疇外なのは間違いない。

 

 

「さてと敵。お互い早めに決着つけたいね」

「衰えた? 嘘だろ……完全に気圧されたよ。よくも俺の脳無を……チートがぁ……! 全っ然弱ってないじゃないか!! あいつ……俺に嘘教えたのか!?」

 

 

 ガリガリと首を掻く手だらけ男が、何やら重大な情報を喋っている。

 あいつ、と呼ばれる存在に、オールマイトが弱体化したと言われていたらしい。

 

 それがちょっと唆された程度の相手なら良いのだが……

 

 

「どうした? 来ないのかな!? クリアとかなんとか言ってたが……出来るものならしてみろよ!!」

「うぅうおおぉおおぉおおぉお……!!」

 

 

 再び圧をかけるオールマイトに、気圧されている敵連合。

 

 ……妙だ。相手を捕らえれば良いのに、どうしてオールマイトはそうしないのだろう。

 切島はもう自分たちの出る幕は無いと言っているが、本当にそうなのか?

 

 そういえば、出久が時間がないと言っていたような。

 

 

 例えば、彼の個性には時間制限があるとか?

 

 

 たどり着いた仮定に思わず出久を見れば、一人だけ深刻そうな顔でオールマイトを見つめている。

 

 どうやら、私の妄想ではなさそうだ。

 

 

「……出久、オールマイトには時間がないのね?」

「っ……………………うん」

 

 

 囁くように問いかければ、少しの葛藤の後、肯定を返される。

 

 何故そんな事を知っているのか、今は聞かない。

 

 

「私は何をすればいい?」

 

「……何も、聞かないの?」

 

 

 揺れる瞳でこちらを見る幼馴染に、笑顔で返答する。

 

 

 

「出久を信じてるから」

 

 

 

 貴方が言うなら、それを信じる。

 

 少なくともそれぐらいの信頼も信用も、私たちの間にはとっくにあると思っていたんだけれど。

 

 そう言えば彼は一瞬泣き笑いのような顔になりながら、それを飲み込んで私を含めたプランを話す。

 

「……敵がオールマイトを攻撃しそうなら、僕が気を引き付ける。凍夏ちゃんは隙を見て氷結で拘束してくれるかな」

「分かった」

 

「緑谷、轟。何話してるんだ? ここは早めに退いた方が……」

 

 

 切島が私たちの内緒話に気づき、声をかけてきたタイミングで。

 

 

「脳無の敵だ」

 

 

 黒もやが広がり、オールマイトの前へと現れる。

 そして、出久も緑の雷光を纏い、飛び出した。

 

 

「オールマイトから、離れろ!!」

「二度目はありませんよ!!」

 

 

 敵の意識がそちらへ向いた。

 ここで、私の出番。

 最高速で、正確に!

 

 

「出久から離れて!!」

「っ脳無を捕らえた氷結女か……!!」

「SMASH!!」

「ぐぅっ……!!」

 

 

 私の氷結は手だらけヴィランの足を繋ぎ止め、黒もやには避けられたが動きに遅れを生じさせた。

 

 出久の右のストレートが、それを見逃さずにヒットする。

 実体部分を殴られた黒もやは大きく後退して、オールマイトから引き離す事に成功した。

 

 

「な、緑谷、轟!?」

 

 

 切島の驚く声が聞こえたが、反応する余裕はない。

 

 手だらけヴィランが氷結した場所に手を触れれば、そこから氷が崩れていくのが見えていたから。

 黒もやも飛ばされながら後ろにワープゲートを作り、勢いのまますぐに戻ってきた。

 

 完全に氷結から逃れられる前に、もう一度個性を発動しようとして。

 

 銃声とともに敵に弾丸が撃ち込まれるのを確認した。

 

 

「来たか!」

 

 

「――ごめんよ、遅くなったね。すぐ動けるものをかき集めて来た」

 

 

 オールマイトの安心した声に、USJの入口へと視線を向ける。

 そこには息を切らした飯田と、その横にずらりと並ぶ大勢の大人。

 

 

「1-Aクラス委員長、飯田天哉!! ただいま戻りました!!!」

 

 

 彼らは雄英の教師、つまりプロヒーロー。

 

 待ちに待った救援が、ようやく来た。

 

 

「あーあ、来ちゃったな……ゲームオーバーだ。帰って出直すか、黒霧……」

 

 

 奴らは今度こそ、本当に逃げる気だ。

 

 逃がすまいと銃を持ったヒーローが手だらけヴィランの両腕両足を撃ち抜き、瀕死の13号先生がどうにか個性で黒もやヴィランを吸い込もうとする。

 

 けれど距離が足りないようで、ギリギリで黒もやが展開しきっている。

 

 

「今回は失敗だったけど……今度は殺すぞ。平和の象徴、オールマイト」

 

 

 手のひらヴィランは呪うような声で最後にそう告げ、転移でどこかへと消えていった。

 

 私はようやく緊張を解いて、深く息を吐く。

 

 初めて向けられた悪意に晒され続けた心は、思っていた以上に精神を削っていたらしい。

 

 けれど、ひとまず脅威は退いた。

 

 

 そこで私は出久が左腕に大怪我を負っている事を思い出して、飛び出した後にへたり込んだままの彼へと駆け寄っていく。

 

 

「出久! 大丈夫!?」

 

 

 砂煙が上がっていてよく見えないが、オールマイトもそこにいる筈。

 

 そう思いながら近づいていくと、出久が笑いながら無事な右手を振っていた。

 

 彼の下にたどり着き、改めてボロボロの左腕を見る。

 

 個性の反動とはいえ、傷ついている出久を見るのはとても悲しい。

 

 私は左腕に負担をかけないように、出久に抱きつきながら言った。

 

 

「あんまり、無理しちゃ駄目だよ」

「うん……ごめんね」

 

 

 ぽんぽんと、出久の右手が私の頭を優しく撫でてくれる。

 

 このまましばらくこうしていたいけれど、そうも言っていられない。

 早く出久をリカバリーガールのところに連れていかないと。

 

 

 名残惜しく思いながら彼から離れて、ふと視界の端に見慣れない人物が居るのに気がついた。

 

 痩せこけた骸骨みたいな見た目で、やけにボロボロで血を吐いている。

 

 というか、そこはオールマイトが居た筈の場所だったような。

 

 どういう事かと出久を見れば、真剣な顔で、けれどどこか困ったように口を開いた。

 

 

 

「凍夏ちゃん、落ち着いて聞いて。その人ね…………オールマイトなんだ」

 

 

「えっ」

 

 

 出久の言葉に、ダラダラと汗を流しているガリガリの人を凝視する。

 

 見た目、共通点は……髪色や髪型が同じ。

 

 服装、さっきまでのオールマイトと一緒。

 

 目の感じ、オールマイトっぽい。

 

 

 それからたっぷり五秒程黙った私が、彼をオールマイトと認めて発した一言に。

 

 

「オールマイト、そんなにお腹空いてたんですか?」

 

「「んんんんんっっ!!!!」」

 

 

 出久とオールマイト(空腹)が、盛大にむせていた。

 

 

 




 萎んでるオールマイトを見てオリ主がどう思うか小一時間考えた結果のオチです。
 天然半分混乱半分みたいな感じの反応。
 
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