悪辣な転生者に裁きを 作:フライング・招き猫
百春と箒を装甲の一部に掴まらせてセシリアとティナは福音を目指して進んでいた。
そんな中、百春と箒は
(やっとだ、やっと見せ場がきた!3度目の正直!これで更識の鼻をあかして、ヒロイン達の心を鷲掴みにしてやる)
(今こそ百春と共に活躍して、他の奴等を見返してやる。)
それぞれ邪な事を考える二人にセシリア達が声をかける。
「織斑さん、まもなく福音との合流地点に到達します。準備をお願いします。」
「わかった!」
「篠ノ之さんは、織斑君の後ろについて近づいてね。」
「言われんでもわかってる!!」
4人の視界に福音の姿が飛び込んできたのだ。
「「織斑君(さん)、篠ノ之さん!」」
「行くぞ箒!」
「あぁ百春!」
二人はセシリアとティナから離れて瞬間加速を使い福音に迫る。
「うおぉぉぉぉぉぉーーーー!!!」
百春は気合いの雄叫びと共に零落白夜を発動させた雪片参式白蓮で斬りかかる。だが、ここで百春は大きなミスを犯すのだった。雄叫びを上げた事で福音に存在を気づかせたのだ。
「「織斑君(さん)、何故声を?!」」
セシリアとティナからしたら信じられない事だった。不意討ちをしなければならないのに声を上げて自分の存在を知らせるという愚行。そしてそのつけは百春自身が払う事になった。
百春の斬撃は福音に当たる事は無かった。直前で福音が気づき加速して回避したのだ。 そして回避した福音の真下には、百春の影に隠れていた箒の姿があるのだった。 福音に無防備な姿を晒す箒、そんな箒に福音は
「テキタイセンリョクカクニン。コレヨリジドウゲキゲキモードニハイル。」
と発音してエネルギー弾を放った。放たれたエネルギー弾が箒を襲う。箒は咄嗟に雪片参式赤蘭の零落白夜の斬撃を放つのだった。
斬撃はエネルギー弾を次々と打ち消していくが、福音に届く事なく消える。逆に消し損ねたエネルギー弾が箒を襲うのだった。
「きゃぁぁぁぁぁーーーー!!」
エネルギー弾が命中して落下していく箒。ティナが先回りして箒を受け止める。
セシリアがレーザーライフルを射って牽制する。
「織斑さん、直ぐに体勢を立て直して!」
「篠ノ之さん!確りして。」
セシリアとティナが二人に指示をとばす。
「わかってる!今度こそ!!」
再び零落白夜を発動させ瞬間加速で福音に迫る、しかし百春目掛けてエネルギー弾が放たれる。百春は雪片参式白蓮でエネルギー弾を防いでいく。
「それなら私が!」
箒が零落白夜の斬撃を放つ、しかしこれも先程と同じくエネルギー弾で相殺される。
「篠ノ之さん!正面からでなく背後に回ったりして攻撃して!」
「うるさい!私に指示するな!!」
ティナの指示を無視して正面から攻撃を続ける箒。
「織斑さん、一旦距離を取ってください!私の射線を塞いでます。」
「わかってる!クソッ!!」
百春は牽制でスプリットミサイルを撃ちながら距離をとり、もう1度瞬間加速で斬りかかろうとした時だった、視界の端に船を捉えたのだ。
「えっ?! オルコット、船だ!船がいる!」
「そんな!海上封鎖海上されているはずなのに!私が避難誘導します。何とか福音を引き離してください。」
「わかったわオルコットさん!」
ティナは直ぐに返事をしてミサイルを射って船の反対側に追いやる。 しかし、箒がその方向から攻撃を仕掛けてきた。
「落ちろぉぉぉぉーーー!」
「そんな!!篠ノ之さん、逆方向から攻撃しないと!船の方に福音が向かってしまいます。」
「うるさい!そんなの関係無い!あいつを落とせば済むだけだ!! 行くぞ百春!」
ティナの言葉を無視して突撃する箒。 箒の無茶苦茶な攻撃にティナもさることながら百春も攻撃するタイミングを失うのだった。 二人の攻撃しようとする進路を箒が尽く塞ぐのだ。
「箒!一旦離れろ、俺が攻撃出来ない!」
「何を言う!私の攻撃に会わせて攻撃すればいいだろう。」
「篠ノ之さんも織斑君も、こんな場所で揉めないで!」
3人の不協和音は大きな隙を産む。その隙に福音が放ったエネルギー弾が全員を襲う。
ティナはバリスティックシールドで、百春と箒は零落白夜を利用して防ぐ。しかし、ただ一人防ぐ事の出来ない人物がいた。セシリアである。防御出来ない以上は
回避するしか無いのだが、不幸にもエネルギー弾の射線上には船があったのだ。 セシリアは船を守る為にエネルギー弾を避けずに自分自身を盾にした。
「きゃぁぁぁぁぁーーーー!!」
エネルギー弾をまともに受けて、セシリアは海に落ちていく。
「オルコットさん!」
ティナはセシリアが落ちて行くのを見て、直ぐに救助に向かう。何とか、海に落ちる前に受け止める事が出来たがセシリアは気を失っておりブルーティアーズの破損も酷かった。
ティナがセシリアを助ける為にサポートから外れた事で百春と箒は追いつめられていた。
「何をしてる!さっさとサポートしろ!」
箒の叫びに、ティナは
「何を言ってるの? オルコットさんが危なかったんだよ。助けなきゃいけないでしょ!」
「そんな犯罪者共を助ける必要等無いのに助けようとするからだ。」
箒の言葉に流石の百春も
「箒、その言い方は無いぞ!まだ犯罪者とは決まってないし、民間人を守るのは当たり前だろ!」
「百春まで、そいつの肩を持つのか!!」
箒は二人を無視して福音に向かっていく。
「待てよ箒、一人じゃ無理だ。」
箒に続く百春。 ティナはセシリアを抱えている以上はどうしようもなかった。 しかし、そこに援軍がきた。 第2陣の刀奈達である。
「ハミルトンさん!」
「生徒会長、オルコットさんが!それから、彼処に漁船が。」
「わかったわ。ハミルトンさんは、オルコットさんを連れて撤退して。シャルちゃんは海上保安庁と封鎖している教員への連絡、そして漁船に避難指示を。ラウラは私と一緒に福音を押さえるわよ。」
刀奈は直ぐに指示を出す。刀奈の中では既に作戦失敗と認識していた。
「作戦指令室、聞こえますか?此方は更識です。現場に到着しましたが、未だに福音は健在。しかも漁船が作戦海域に侵入してます。またオルコットさんが負傷、ハミルトンさんとともに撤退してもらいます。」
『こちら作戦指令室、了解。更識さん、現段階での作戦続行は?」
スコールの問いに刀奈は
「既に織斑君と篠ノ之さんの機体はエネルギーが残りわずかだと思われます。作戦続行はほぼ不可能かと。」
作戦指令室
刀奈の報告を聞いたスコールは千冬に、
「作戦は失敗よ。撤退命令を出すわ。」
「待て、まだ戦えるはずだ!更識達も到着したんだぞ、今なら数で押せるだろ!」
「何を言ってるの?もうすぐ織斑君達の機体はエネルギーが切れるわ、そうなったらお荷物になるのよ。下手すれば機体が解除されて海に投げ出されるわ。そうなったら二人を保護して戦わないといけなくなる。戦況を悪化させるだけよ。それとも貴女は生徒を殺したいの?」
スコールにそこまで言われると千冬も何も言えなかった。
「兎も角、撤退命令を出すわ。」
「・・・・・・・わかった。」
千冬は仕方ないという感じで納得する。
作戦海域
『現段階を以て作戦失敗と判断します。総員撤退してください。撤退指揮は更識さんに一任します。』
「わかりました。全員撤退するわよ!」
「何を言ってる、まだ戦えるぞ!」
「そうだ、今倒さないと!」
箒と百春が刀奈に文句を言うが、刀奈は
「これは織斑先生も承認した作戦指令部からの命令よ!」
千冬の名前が出て、流石に二人とも文句が言えない。
「織斑君と篠ノ之さんは先頭になって撤退を。シャルちゃんは漁船の護衛を。私とラウラちゃんが殿をつとめるわ。」
刀奈の指示に渋々といった感じで動く二人。その動作は緩慢だった。 しかし、それが不味かった。二人は未だに福音の側で戦っているのに気を抜いてしまった。
そんな二人を福音のエネルギー弾が襲った。
「「うわぁぁぁぁーーー!!」」
まともにエネルギー弾を受けた二人。二人共、ISが解除されて落下していく。
「クソッ、戦場で気を緩めるなど!」
ラウラがAICを利用して二人が海に落ちるのを間一髪で救う。 そのまま二人を抱えたラウラ、二人とも怪我をして気を失っていた。
「ラウラちゃんは二人を抱えて先に行って!私が足止めするわ。」
「わかった!」
ラウラは二人を抱えて撤退していく。福音がそれを追おうとするが。その前に刀奈が立ち塞がる。
「悪いけど、ここで暫く大人しくしててね。」
刀奈はラウラ達が離れたのを確認すると、
「いい具合に濡れているわね。これなら!」
福音から放たれるエネルギー弾を軽やかに避けながら刀奈はトライデントを構える。ガッデスを中心に蒼い霧が立ち込め始める。
「絶対零度、ケルヴィンブリザァァァァドォ!」
福音にまとわりついた蒼い霧が一気に凍りつき、福音は氷の中に閉じ込められた。氷に閉ざされた福音は海に落下して、一瞬沈んで再び海上に顔を出す。
「暫くはそこで大人しくしててね♥」
本来なら、全てを凍らせる事も可能だったがパイロットがいる可能性が未だにあるので、氷に閉じ込めるだけに留めた。 おそらく1時間位で解放されるだろう。
そのまま刀奈は撤退していくのであった。
刀奈が海岸に到着すると、既にセシリア・百春・箒の3人はタンカで運ばれていた。今回の臨海合宿には、万が一の事態に備えて学園に常駐している二人の医師の一人、テュッティが同行していた。
既に旅館の一室に医務室が儲けられてテュッティが治療に当たっていた。 幸いにも3人とも軽傷という事で全員が安堵したが、未だに意識は失ったままで千冬が側についていた。
漁船の方も、海上保安庁に引き渡しが終わっていた。此方は違法操業をしていた訳でなく、漁から港に戻る途中だったとの事。海上封鎖の連絡は無線の不具合が起きてまともに聞き取れなかったそうだ。
ただ、緊急事態という事は何となく感じたので、漁を途中で切り上げて帰港している最中に不幸にも戦闘空域に入り込んでしまったという訳だ。
漁船の乗組員の方もセシリアが庇った事で誰一人怪我することはなかったようだ。
今は海上保安庁で事情聴取と少しばかりのお説教を貰っている。
作戦指令室は重い空気に包まれていた。特に千冬は自分がごり押しで決めた作戦が失敗した事で何らかの処罰が下される可能性がある。
そして今、国際IS委員会とIS学園との話し合いが行われており、その話し合いの結果を待ってる状態であった。
その一方、夏輝達はISの補給と整備を行っていた。
そこに美兎からの連絡が入る。
美兎をはじめとした合宿に来ている技術者達は、それぞれ旅館内の別々の部屋に外部との連絡を制限され待機させられている。
もっとも美兎には全く問題なく、監視カメラや盗聴器を誤魔化して夏輝達に連絡してきたのである。
『・・・・という訳で、福音の暴走を利用したみたい。それから、福音はやっぱり無人機じゃなくてパイロットが乗っているよ。おそらくパイロットの命と引き換えに学園に色々と求めるんじゃないかな? 渡されたデータには記載されていなかった、と言っても記載漏れとか、改竄されていた、とか言って誤魔化すんじゃないかな。』
夏輝達は作業を続けながら、美兎からの秘匿通信を受けていた。
「それじゃあ、パイロットの件は匿名で学園と国際IS委員会、それに日本政府にも?」
『うん、もう知らせてあるから。今頃アメリカ政府は大慌てしているんじゃないかな。それから、福音の実験をしていた空母の乗務員達が、福音のパイロットが見殺しにされると知って助ける為に動いているみたい。』
「凄いね、処罰を恐れずに動くなんて。」
『美兎さんも見直したよ。この連中が処罰を受けないように色々と下準備しておくよ。』
「あんまりやり過ぎないでね美兎姉さん。」
そこにスコールが現れた。
「全員、作戦指令室に集まってちょうだい。」
美兎との通信を終えて作戦指令室に向かう夏輝達。
「作戦続行が決定されました。」
スコールが部屋に集まった全員に告げる。
「ミューゼル先生、それはどういった理由からでしょうか?」
刀奈が全員を代表してスコールに疑問をぶつける。
「最初の作戦は、戦力的な問題ではなく作戦の問題による失敗と判断されたようです。また、自衛隊の第2世代機では福音への対応が難しいと判断されました。 」
「でも、自衛隊にはガーリオンを優先して納入しましたよね? それに今の自衛隊の主力は打鉄じゃなくアルブレードに移行してますよね、あれならそれなりに戦えるはずじゃ?」
「・・・・・残念だけどアルブレードに関しても第2世代機という事で対応不可と判断されたの。そして肝心のガーリオンなんだけど現在、全てのガーリオンが宮崎県の航空自衛隊基地に訓練で出向いていて、此方に直ぐに来ることが出来ないそうよ。」
スコールの言葉に誰も何も言えなくなる。余りにもタイミングが良すぎる事に。刀奈が全員を代表して
「わかりました。それではここにいる専用機持ちで対応に当たります。」
「それでは、改めて作戦立案にかかるわね。」
「考えられる方法としては、長距離からの狙撃。その後は接敵してからの波状攻撃が打倒だと考えるが?」
ラウラの作戦に夏輝が答える。
「無難な作戦だな。戦力的にも問題はないと思うしな。」
「それでは、10分後に再出撃!」
その場にいる全員にスコールが命じるのだった。