Hollowslayer:ルカティエル(Darksouls2クロス短編) 作:wind
原作:ゴブリンスレイヤー
タグ:R-15 残酷な描写 クロスオーバー 怪文書 ミラのルカティエル 絶焚マン ゴブリンスレイヤー ダークソウル2 DARK SOULS 亡者スレイヤー 亡者狩り 友人の名を騙って偉業為すマン
狩人様や初代、灰の人どころかミコラーシュのゴブスレクロスSSまであるのに、絶焚マンがいないじゃないか!
ならばハーメルンで語るしかあるまい…。
ミラのルカティエルの伝説を…!
くも老師、お許し下さい。
吹き抜けた風の生臭さが、己の命運を物語っているように思えた。
武闘家の少女は痛みと恐怖の中、仲間に言う。
「はやく、にげて。」
武闘家はそのまま洞窟の岩壁に叩きつけられ、血反吐を吐いて地面に転がった。
一瞬だった。
三匹。
たった三匹のゴブリンを倒し、そして返り討ちにされ。
武闘家は今殺されようとしている。
四人の一党。
簡単なはずの依頼。
ゴブリン退治なんて、すぐに終わるさと笑っていたのに。
背後からの不意打ちで、まず女魔術師が刺された。
そしてその援護に、少年剣士が飛び出した。
少年剣士は勇ましくゴブリンを突き、斬り、そして反撃を受け袋叩きにされて死んだ。
憎からず思っていた少年剣士の、あまりにも無残な死に様。
そして今、自分も同じように無残に死んでいこうとしている。
仲間が逃げる時間すら、ろくに稼げもせずに。
本当に一瞬だった。
足を掴まれ、ただ力任せに岩壁に叩きつけられた。
何の技術もない、ただただ粗雑な力任せ。
父から教わった武術をほとんど活かすことも出来ず、武闘家はゴブリンに叩きのめされた。
血反吐を吐いて地面に転がった武闘家の視界の隅。
暗闇の中、傷ついた仲間と共に逃げていく女神官の姿が見える。
女神官たちのためにも時間を稼がなくては。
武闘家はそう思い、立ち上がろうと力を込めるが、既に足は拉げその機能を失っている。
そこに残りのゴブリンが群がるように飛び掛かった。
どうにかゴブリンを打ち払おうと試みるが、足が拉げ胸骨が折れている状態で武術の技が振るえるはずもない。
まず腕を折られ、足を入念に砕かれ。
引き倒され、殴られ、蹴られ、道着をはぎ取られ、そして嗤われながら辱しめられそうになったとき。
少女が絶望し、すべてを諦めたとき。
がしゃり、と鎧の音がした。
「貴公、手こずっているようだな。」
最初、少女は幻聴だと思った。
しかし左目が潰れ半分になった視界に光を感じ、違和感を覚える。
少年剣士が死に、その松明が消えてからこの洞窟は暗闇だったはずなのだから。
気付けば、ゴブリンどもも少女ではなく、背後を注視している。
そこには、松明を手に持つ全身鎧の騎士が居た。
鎧は一目で分かるほど上等なもので、まるで騎士団の正装かのような流麗さだった。
見事な白銀の毛皮が肩を覆っているのが特徴で、首や肘などの関節部には鮮やかな水色の布。
しかし奇妙なことに、頭には兜ではなく、恐らくは儀礼用の飾り帽子と翁の仮面を身に着けている。
こんな辺境には似つかわしくない、完全武装の鎧騎士。
だが窮地に現れた援軍を目にしても、少女の絶望が晴れることはない。
騎士の手に握られているのは、――――大剣。
それも人の背丈ほどもある、巨大なものだった。
洞窟の中で振るうには、あまりに長大。
目の前で無残に死んだ、少年剣士の最期がフラッシュバックする。
「逃げ…て…。」
「ふむ。見る限り、貴公は常人だ。このままでは死ぬことになるが、良いのかね?」
「それでも…貴方まで死ぬよりは…マシ、でしょ?」
ゴブリンどもはエサが増えたと喜び、耳障りな叫び声を挙げる。
だがそんな中でも騎士の声は不思議と良く通り、騎士もまた武闘家の声に応えた。
そして…騎士は、あろうことか笑い出した。
「フフッ。
ああ、すまない。人に命の心配をされるなど、久しく無かったものでね。
貴公は… 実に、奇特な奴だな。」
騎士は、まるで何の危機感も覚えていないかのようだった。
目の前に騒ぎ立て、自身を取り囲むゴブリンどもがいるにも関わらず、呑気に笑っているのだ。
武闘家は、騎士のゴブリンを侮るような姿に少し前の自分たち一党の姿を重ねる。
あの騎士はきっと私よりも強いのだろう。ゴブリンなぞ歯牙にもかけないに違いない。
もしかすると、私たち一党全てを合わせたより強いのかもしれない。
騎士は一振りでゴブリンなど三匹はまとめて倒すだろう――――そして次の瞬間、倍の数のゴブリンに襲われるだろう。
ここには私を嬲るために集まった、大勢のゴブリンがいる。
そして騎士は既に囲まれている。
重い大剣を持ち、重い全身鎧に身を包む騎士が、この状況で何が出来る?
もはや、逃げることも出来まい。
「そうだ。貴公、名はなんと言う?
私はな…。」
「GYAAAAA!」
呑気に話を続けようとした騎士に、ゴブリンが襲い掛かる。
ゴブリンの声が恐怖を呼び、喉が引きつり悲鳴が出る。
数瞬後に訪れるであろう、騎士の無残な死を思い描き、少女は目に涙を浮かべ。
そして、滲む視界に不思議な物を見た。
騎士が手に持つ松明と大剣が、空気に溶けるように消え。
そればかりか、鎧までも消失し。
代わりにその両手に現れたのは――――
そして少女は、絶望が砕け散るのを目にした。
恐るべき速さの踏み込み。
騎士は踊るように両手の棍棒を振るい、ゴブリンが風船のように弾け飛ぶ。
少年剣士を殺したゴブリンが、騎士の棍棒に殴られて死んだ。
少女の腕を叩き折ったゴブリンが、棍棒で吹き飛ばされ岩壁で弾けた。
少女を辱しめようとしたゴブリンが、挽きつぶされるように殺された。
そして目の前の、少女の足を握りつぶした大柄なゴブリンも騎士によって叩き潰され。
その血霞を浴びた少女は、気を失った。
恐怖ではなく、安堵のために。
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銀級冒険者、ゴブリンスレイヤーはその奇妙な痕跡を見て、最大限の警戒態勢を取った。
新人一党の一員だという女神官を見つけ、そこから少し進んだ地点。
女武闘家が一人残ったというその場所は、血の海だった。
そこかしこに肉片が散らばっている。
ゴブリンスレイヤーはその散らばり方に違和感を感じ、警戒する。
「この…道着は…。」
「仲間のか。」
震えた声で、女神官が言う。
その声を聞いたのか、洞窟の先で松明が灯る。
火に浮かび上がったその人影は、あからさまに怪しかった。
半裸。
申し訳程度に、股間には布が張り付いている。
頭には、典礼用の飾り帽子と翁の仮面。
右手には松明。
もう一方には、肩に担ぐように、女性の姿。
「何者だ。」
ゴブリンスレイヤーの誰何の声に、その人物は反応した。
その風体に似合わぬほど優雅な「一礼」。そして名乗り。
「こんにちは、ミラのルカティエルです…。」
小鬼殺しと亡者狩り、二人の「なんかへんなの」の出会いはこうして、薄暗い洞窟の中でなされたのであった。
続かない!
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◆ハンドアウト一覧◆
ミラのルカティエル
◆ダークソウル2のNPC、大剣使い
◆帽子と翁仮面を被る、女性
◆主人公と仲良くなり、共に戦ってくれる
◆しかし亡者化が進行、記憶を失っていく
◆主人公に装備を託し、友に自身の名の記憶を願い、消息を絶つ
亡者狩り
◆ダークソウル3の時代に語り継がれる伝説の人物
◆大剣を振るい亡者を狩り続けたという仮面の騎士
◆またその仮面は亡者化した友の逸話と共に、ルカティエルのマスクと呼ばれている
絶望を焚べる者、或いは「絶焚べマン」
◆ダークソウル2主人公の通称
◆無限のソウルを持つ巨人王の下で鍛錬を重ねた、究極の戦士
◆ダークソウル3の時代のそこかしこに名前を残している
◆おそらく亡者狩りその人。ファーナムの鎧姿でその伝説を遺している
◆火継ぎを行った場合足跡を遺す時間がないことから、恐らく3世界線では火を継いでいない
某所での「ミラのルカティエル」
◆ダークソウル3の「亡者狩りの大剣」「ルカティエルのマスク」のテキストから
火を継がなかった後、諸国漫遊亡者狩りツアーに旅立ち、友の逸話を全国に広めた変な人
というキャラ付けをなされた、ダークソウル2主人公。
◆決め台詞は「ミラのルカティエルです…。」
◆偉業をなして友の名を言っとけば、手っ取り早く友の名を遺せるから是非もないよね
◆詳しくは「ミラのルカティエル、怪文書」とかでググろう!
本作の「ミラのルカティエル」
◆アン・ディールとの闘いの後、二人で諸国漫遊亡者狩りツアーに旅立ち、四方世界に迷い込んだ
◆異世界でも友の名を遺そうとする人
◆
◆仕方ないので辺境を散歩中、なんかへんなのと女神官に遭遇
◆女神官から神の寵愛の気配を感じ取り、イベント目当てでしばらく同行することとなる
◆そこには武闘家の少女の姿もあったとかなかったとか
そりゃ(筋力99で殴れば)そう(ゴブリンは爆発四散)なるよ
武闘家ちゃんは女神をモシャって助かりました
続きは誰か書いて