第一話 転生したくないとごねた結果
「知ってはいたが、なんという地獄絵図かね、ここは」
目の前に広がる光景はまさにその通りだった。
あたり一面は瓦礫の山で、あちこちで炎が上がっている。
この光景を目の当たりにして地獄といわずになんと言うのだろうか。
今時分が立っている場所は特異点F、冬木市。
「とりあえず、自身の状態を確認しておくか。『こい』」
唱えたのは決して特別な言葉でなければ、呪文ですらないただの言葉。
しかし、意思を持ったその言葉の後に、自分の手にはしっかりと西洋風の剣が握られていた。
「そらよっと!」
そして、おもむろに手に持った剣を振るう。
ただの素振り、ではなく自身の力の確認だ。
振るわれた剣からは光り輝くエネルギーの塊のようなものが飛んで行き、燃え盛るビルに触れると綺麗に切り裂いた。
「こっちの方は使えるのな。ならこっちは」
自身の目に意識を傾ける。
すると先ほどまで問題なく普通に見えていたはずの目には、線や点が見えるようになる。
そして、すぐ傍にあった瓦礫の塊の点をそっと軽く小突く。
「うん、問題なく使えるな」
瓦礫の塊はあっさりと砕け散った。
力を込めて破砕したわけではない。
その瓦礫の塊の急所を突いただけだ。
「これなら自衛はきっちりと出来る。なら、後は主人公君にお任せするかね」
遠くから誰かが戦っているのであろう戦闘音が聞こえてくる。
これから彼は、自身が生き残るために世界を救う。
ただの一般人がその身の丈に合わない偉業を成し遂げる。
「せっかくだから最前列でその姿を見せてもらうかね」
出した剣を消すとその戦闘音のする方向へと向かう。
ただ、焼け落ちた瓦礫に埋まる道は歩きづらく、まっすぐ進もうとしてもなかなかうまくはいかない。
乗り越えられるものは乗り越え、無理そうなものは脇を抜けていく。
「それにしてもついてないな」
瓦礫の山から飛び降りたところで思わず愚痴が出る。
まさか、こんなところに転生させられるとは思わなかった。
やっと死ねたと思ったところにこれだ。
自分が出会った二人の神様とやらのせいでこの始末だ。
一人は自分の道楽のためにここへと転生させた。
最初はセールスマンのごとく下手に出てきていたが、俺がせっかく死ねたんだから蘇りたくないといい続けていたら、本性を現した。
転生した先でどういう無茶苦茶なことをするのかを見て楽しむつもりだったらしいが、こちらとしてはいい迷惑だ。
結局、言い合いになったせいで平和もクソもない『FGO』の世界なんかに飛ばされることになってしまった。
『死にたいならもう一度地獄のような世界に行けば死ねるからちょうどいいだろう』との事だが、痛い思いをまたするのはごめんだ。
交通事故に巻き込まれた結果での死亡だったが、その時は非常に痛かったの覚えている。
もう二度とあんな痛い思いをするのはごめんだというぐらい痛かった。
これで、死ねると思うから我慢できただけで、そうじゃないならとてもじゃないけど我慢できるようなものじゃない。
とはいえ、決められてしまってはこちらではどうしようもない。
そう思って諦めていたところで出てきたのがもう一人の神様という奴。
どうやら、そのもう一人は転生させようとしている奴を怪しんでいたみたいで見張っていたみたいなのだが、止めることが間に合わなかったとのこと。
思わず『無能』と言い掛けたが、飲み込んだのは我ながらファインプレーだと思う。
ただ、『なかったことにしてくれ』と言ったら『もう輪廻の輪に再び入ったから無理だ。殺すしかなくなる』といわれた時は『使えねぇ』と思わず言ってしまった。
でも、事実だと思う。
結局、阿鼻叫喚の地獄でも生き残れるような力をくれた。
それがこちらに来ると同時に確認した能力。
もらったものは一つだけで、『世界の真理』。
これを発動している間は自分は頭の悪い表現だが最強にして最高の存在となる。
まあ、これが発動されていなければただの人間である。
「戦闘音がかなり近づいてきたな」
気配も感じる辺りすぐ傍だろう。
それにしても、この話の主人公はただの一般人だ。
レイシフト適性100%で、単独でレイシフトできてしまうから、ビースト候補なんていわれたりもするが、まともに魔術も使えないというか魔術に関して才能の全くない人間だ。
唯一すごいといえるのはコミュニケーション能力ぐらいだろう。
まあ、その辺りも人理の危機のため、サーヴァントも一歩引いてくれている部分もあるだろうが、それでも一癖も二癖あるような輩とうまく付き合えるんだから大したものだと思う。
自分もサーヴァントじゃないが、前世で妖しを使役していたから、それの舵取りの大変さは良く分かる。
ホント、我侭でこっちの言うことをなかなか言うこと聞いてくれないんだよね。
「よし発見。ただ邪魔になったらいけないから隠れて見るだけにしておくかね」
所長であるオルガマリーと最後のマスターである藤丸立香、可愛い後輩マシュ・キリエライト、そして頼れる兄貴分キャスタークーフーリンが黒い騎士王と戦闘している。
いきなり出て行って流れ弾が当たるのも困るから終わるまで待っておこう。
自分の運の悪さは重々承知している。
いろいろ考えた結果書きたくなったので書いてみました。
長々と書くことはないと思いますので短いお付き合いになるかと思いますがよろしくお願いします。