だいぶお待たせしました。
クリスマスイベの後年末の忙しさダウンし、年末年始はゆっくりと休みを頂きました。
おかげで充電は十分出来ました。
おまけに正月早々に配信された新規イベントはきのこ。
内容については細かく触れませんが、さすがはきのこ。
きのこのストーリーが読みたくてやってるんだよなと再確認しました。
ガチャについては、まあ来るには来てくれましたが悲惨なことになりました。
さて、前置きはこれぐらいにして今回のお話は別視点のお話です。
これで第一章は終わりです。
「とりあえず、お疲れ様だね、ロマン」
「うん?ああ、レオナルドか」
疲れきって少しだけ自室の椅子で転寝をしていたロマニ・アーキマンはレオナルド・ダ・ヴィンチの声に目を覚ました。
「というか、人の部屋に勝手に入ってこないで欲しいんだけど」
そういった彼は机の上に乱雑に置かれていた書類を片付ける。
今回の第二特異点修復に関する資料だ。
「別に私と君の仲だ。気にする必要もないだろう?」
「親しき仲にも礼儀ありって言うじゃないか?そもそも僕は部屋に鍵をしていたはずなんだけど」
「これしきのセキュリティなら私にかかれば些細なことだよ」
「ああ、やっぱり。勘弁してよ」
あらかた片付け終わった机に突っ伏す。
「それより、彼の資料をまとめてみたんだが、見るかい?」
「彼、というとジョージ・マッケンジー君のことかい?」
「ああ。まあ、正しくはジョージ・マッケンジー君と彼の中にいるもう一人の存在のことだがね」
そういって彼女は彼の机の上に紙の束を置く。
「一応極秘書類だ。知っているのは私と君だけにしておきたい」
「他のクルーから疑問の声が上がっているんだけど」
「そこは知らぬ存ぜぬで通すしかないだろう。実際、私達は彼のことをほとんど分かっていない。この資料だって、状況から憶測した推論でしかないわけだからね」
パラパラとダ・ヴィンチが作成した資料を流し見る。
最初に書いてあるのは、ロマニとしても既に知っているジョージ・マッケンジーの経歴とステータス。
ステータスについてはグランドオーダー開始前に取ったものと第二特異点で取ったものとの対比がなされている。
「第二特異点で彼が使っていた魔術はおそらく投影魔術だ」
「うん、僕もそう思うよ。ただ、投影魔術自体は珍しいものじゃないんだけど、ちょっとあれはね」
「ああ、あそこまで長持ちするものを見たのは私も初めてだよ」
投影魔術自体は目を見張るような大した魔術ではない。
失われたオリジナルの鏡像を魔力で物質化して代用するためだけの魔術である。
それによって生み出されたものは劣化が激しく、イメージに破綻が起きれば霧散し、時間が経てば世界の修正により魔力に戻ってしまう。
そのため、実際に投影したものをレプリカとして代用するならば、材料を用意してレプリカを作る方が非常に効率的なため、有用性もさほどない。
「ジョージ・マッケンジー君は投影魔術は使えないはずだ。おそらくあれは彼の中の存在由来のものだろう」
「本人はカルデアで一旗あげるつもりだったからね。元々使えるはずなら隠したりすることもないしね」
「まあ、言っちゃ悪いが、彼は元々ただの初代魔術師だ。魔術回路や魔力だって少ない。あれだけの大立ち周りが出来るような魔術師ではない」
魔術師としての格は魔術回路によって決まるといっても過言ではない。
そして、その魔術回路はよほどの才能がない限りは魔術師の家としての歴史に依る。
長い歴史の研鑽と一つでも多くの魔術回路を持つ跡継ぎを作り出した結果である。
「まあ、そもそもA班の魔術師ならまだしも、そこらの魔術師がサーヴァントのように戦えるわけもないけどね」
「なら、彼の中にいるのはサーヴァントと言う事かな?」
「結論を急ぐのは良くないぜ?」
「でも、あれだけ戦えるのは中の存在由来なのだろう?」
「確かにそうだが、君がチェックしたバイタルに変調はなかったのだろう?マシュのようにデミ・サーヴァント化した様子も無ければ、擬似サーヴァント化している様子もなかったのだろう?」
「ああ、そういえばそうだったね」
擬似サーヴァント化したというのなら分かり易い。
後は、特徴を調べてしまえばおのずとそれらしい人物に思い当たるのだが、それは出来そうになかった。
「ただ、気になる点はもう一つある」
「気になる点?」
「ワイバーンを投影した武器で撃退していただろう?」
「ああ、確かにしていたね」
「投影された武器は多少の魔力反応はあったが、大したものじゃなかった。それこそ、本来ならワイバーンの鱗を切り裂けるほどのものではね」
あの時のワイバーンを切り裂いた攻撃はただ武器を勢い良く射出しただけのものだ。
技術による攻撃でもなければ、宝具となるような武器でもなかった。
「分析してみたんだが、結局何故あの程度の攻撃でワイバーンの鱗を貫けたのかは分からなかった」
「確かにあれぐらいでどうにか出来るようなら誰も苦労はしないね」
何の神秘も無ければ技もないものでどうにか出来るほど幻想種はたやすいものではない。
「ただ、そんなことが出来る能力は限られているのは限られているけどね」
「あたりは付いているのかい?」
「ああ。おそらくは『魔眼』だろう」
「『魔眼』か・・・」
「それもとびきりの『虹』級だろう。おそらく、停止の最上級、『死の概念』を形として捉えて干渉する魔眼。『直死の魔眼』とでも言うべきだろうかね」
神秘を視る目の事を魔眼と呼ぶ。
それは魔術式や詠唱を用いるまでも無く、ただ『視る』だけで神秘を映し出す。
『虹』は魔眼としてのランクであり、そのランクは最上級である。
下から『黄金』級、『宝石』級、『虹』級となる。
「でも、あの時バイタルを取っていたが、何かが変わったようには感じられなかったんだけど」
「感じられなくて当たり前さ。私たちが取っているバイタルはあくまでもジョージ・マッケンジー君のものだ。その中にいる存在のものじゃない。どれだけ調べても出てくるわけがないさ。そして、恐らくだが私たちにはその存在のデータを抽出することは出来ないだろう」
「そんなに難しいのかい?」
「彼と彼のサーヴァントがワイバーンと戦闘していたときなんだがね。本来大した魔力を持たないはずの彼はほとんどカルデアからのバックアップを受けずに自身の魔力だけで対応していたのは君も知っているだろう?」
「ああ、確かにその通りだ。しかし、バイタル上は変動は全くしていなかった不思議に思っていたんだけど」
「恐らくは使っていたのは自身の魔力は魔力でもジョージ・マッケンジー君の魔力ではない。中の存在の魔力を使っていたんだろうと私は思っている」
「なんだか頭が痛くなってきたぞ」
「ああ、私もそこまで思い当たったところで嫌になってきたよ。あちらはこちらの手札を全部分かっているのに、こちらは手札どころか切られた札も全部解析できないような状態だ。特異点を修正しながら片手間でどうにか出来る問題じゃない。正直なところ、目下は情報が集まるまで様子を見ているのが上策だろう」
「確かにどうにも出来ないのはわかるけど、大丈夫かな?」
「今回のレイシフトで見た感じでは、カルデアの邪魔をするつもりは今のところはないみたいだから大丈夫だろう」
「なら、とりあえずは様子見するしかないか」
ロマニは、がっくりと肩を落とし、疲れ果てたように息を吐く。
「まあ、そういうことだね。それじゃあ、私はこれで失礼するよ。また目新しい情報が入ったら教えてあげよう。一応、その渡した情報も時間があるときに見ておいてくれよ」
「出来れば安心できるものでお願い。これ以上心労がかかりそうなものは勘弁して欲しい」
「なら、一つだけ心労が軽くなることを教えてあげよう」
扉の前まで行ったところで振り返る。
「彼は次の第三特異点は行かないと言ったんだが、なんでだと思う?」
「・・・面倒だから?」
「いいや、不正解だ。どうやら彼は藤丸君とマシュを気に入ったらしい。第二特異点でただの荷物もちのはずがあそこまで戦ったのも二人の事を気に入ったかららしい」
「気に入ったというのなら、普通は次も一緒に行きたいと思ったりするものじゃないのかな?」
「まあ、普通に考えればそうなんだけど、彼の場合はそうはいかない。気に入ったからと言って一緒について回れば、助けたくなるものが人情だろう?」
「ちょっと待って。それじゃ、もしかして二人を助けたくないから一緒にいかないってことかい?!」
「落ち着け、ロマニ。そこまでは言ってない。未来を変質させる恐れがあるからいかないってことさ」
「だけど、助けることが未来の変質になるということなら、助けないといけないようなことがあるってことじゃないか」
「確かにその可能性はあるが、大事なのはそこじゃない。彼の性質だ」
「彼の性質?人間嫌いで人理なんて滅んでしまえばいいと思う人でなしじゃないか」
「それ、本人がいる前で言うなよ。相当傷つくと思うぞ」
「でも、本人が言ってたことじゃないか」
「あれは人に言われたくないことを先に言って言われないようにするための自己防衛手段のようなものだ。ここまでの彼との会話やレイシフト先の行動を見ている限り性質は歪んだところはあれども一般人、いや一般人と比べても精神的に打たれ弱い人間といっても差し支えないだろう」
「・・・それで?それがいったいなんの関係があるんだい?」
ロマニの中にある彼の人物像は先ほど言ったものと変わらない。
思い返してみても、ダ・ヴィンチが言うような人物像と合致しない。
「彼が一般人としての性質を持っているとするのならば、もし二人に何かあるのを知っていたとすれば、わざわざ交友を持つとは思えなくてね。もし、二人に致命的な何かあるのであれば、わが身恋しさに近づきもしないはずさ。だが、彼はそれをしなかった。ということは二人には心配することはあれど、仲良くなってしまった事を後悔しなければならないほどの致命的なことは起きないだろうと認識しているとね」
「そんなことを気にするような性格の人間かな?」
人理など知ったこっちゃないと切り捨てたあの時の様子が頭に浮かんできたロマニにはどうしてもそれが信用出来ない。
「サーヴァントと契約するのを嫌がったのが何よりもの証拠だ。彼はどうやら別れという物を極端に嫌っているみたいだ。あの時言った言葉を思い出してみるといいよ。最初に、前提条件として出した時に彼の言った言葉を」
「たしか、『終わったら別れないといけないようなのはいらない』だっけ?」
「ああ、だいたいそんな感じで断っていた。別れありきの出会いはいらない、とね。ほら、さっきと同じだろう?最初から別れありきなら、彼はそもそも二人に近寄ったりはしないさ」
「・・・まあ、もしそれが本当なら確かにそうかもしれない」
「だからと言って、全てがうまくいったのかどうかまでは分からないが、それでも二人は多少の危険はあってもとりあえずは大丈夫だということが分かるわけだ。少しは気が楽になっただろう?」
「・・・そうだね。うん、確かにもし未来の二人が無事だというのなら確かにそれは嬉しいことだ」
「ただ、それがどういう形で終わるものか分からない以上、油断は出来ないけどね」
二人が無事だということと無事に全てが終わったこととは決して等式にはならない。
安穏とできることではない。
「二人の未来がいいものであるように頑張らないとな。というわけで、私は先に戻っているよ」
「なら、僕も一緒に行くよ」
「いや、今すぐには来なくても構わない。その目の下の隈が少しでもマシになってからでいいさ」
「そ、そんなにひどいかい?」
「ああ、真っ黒だ。だから、休んでから来るといい。君が休んでいる間のことはこちらでやっておこう」
「すまない、レオナルド」
「いいってことさ。それじゃあ、また後で」
そう言ってダ・ヴィンチはロマニの部屋を後にした。