特等席で見るFGO   作:霧野ミコト

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第十九話 決着!!ぐだぐだ包囲網

風景が変わる。

 

先ほどまでの海辺ではなく荒涼とした剣の突き立った荒地。

 

中空には歯車が浮き、空は赤く染まっている。

 

これがエミヤの固有結界――『無限の剣製(アンリミテッド・ブレイドワークス)

 

これで条件は揃った。

 

イリヤとの魔力パスが届かなくなったが、それと同時にカルデアとのリンクも切れた。

 

これで見られる心配も無い。

 

俺は、先ほどと同じく武器とグレイプニルを射出すると、そのままエミヤに向けて走り出す。

 

しかし、先ほどと違ってグレイプニルはあっさり回避され、射出された武器も固有結界内にある剣で破壊される。

 

ワンランク落ちる贋作とは言っても宝具のレプリカだ、神秘の欠片も無いただ魔力が込められた程度の武器では話にならないのは当然だろう。

 

それでも距離を詰めるためだけの時間稼ぎにはなる。

 

「しっ!」

 

袈裟切り一撃を放つ。

 

生前、齧った程度の一撃だが魔力強化による一撃でもある、ただの人間相手なら殺傷能力は十分にある。

 

「さて、君の望みどおりにしたんだが、どうするつもりかね?」

 

とはいえ、ただの人間どころではないサーヴァント相手に通じるものではない。

 

あっさりと受け止められるどころか、砕かれてしまった。

 

「戦闘中に事細かに語るヤツがいるかよ!」

 

再度剣を呼び出すと同じように切りかかる。

 

「無駄な事を」

 

「俺にとっては無駄ではないんでね!」

 

振り下ろした剣は再び砕けるが、もう一度呼び出し振るう。

 

そして、砕ける。

 

それでも俺はやめない。

 

砕けるたびに呼び出しては、エミヤに剣を振るう。

 

「ふむ、少し痛い目を見ないと分からないか」

 

10本目の剣が砕かれたところで、エミヤの反撃が来る。

 

全力ではないため見えるが、見えるだけで回避や捌くこともできない一撃。

 

まあ、今出している剣程度では、捌こうとしてもあっさり砕かれるわけだが。

 

狙われたのは左腕。

 

命を狙ったわけではない攻撃だが、それでも戦力を確実に削る一撃。

 

「ふむ、防御実験は大丈夫そうだな」

 

だが、俺の腕は落ちなかった。

 

痛みも何も感じない。

 

大量(・・)展開したグレイプニルでエミヤをけん制しつつ、後退する。

 

「貴方の目でも見抜けないのなら、隠蔽も十分か」

 

「随分と硬いな。落とせると思ったのだがね」

 

「俺程度の近接技量で近づくんだ、相応の準備はしないとね」

 

死ぬのは構わないが、痛いのはご遠慮願いたい。

 

今すぐにでも死ねるなら死にたいが、こっちにだって死に方ぐらい選びたい。

 

二度も激痛と共に死ぬのは御免だ。

 

「ならばこれならどうかね?」

 

固有結界上にある剣が荒野から引き抜かれるとこちらへと向かってくる。

 

先ほど同様武器を呼び出して迎撃するが当然こちらの武器はあっさりと砕けたので、グレイプニルで絡め取る。

 

干将(かんしょう)莫耶(ばくや)であれば無傷で受け止められるが、それ以外のものとなると全てが防ぎきれる確証は無い。

 

もしあの中にAランク以上のものがあれば、確実に無傷ではない。

 

『――――I am the bone of my sword.(我が骨子は捻れ狂う)

 

それこそ弾幕の中で打たれるであろうこれなんかは確実に俺の防御を抜いてくるだろう。

 

『―――偽・螺旋剣(カラド・ボルグ)

 

だから俺はそっと手をかざして盾を呼び出す。

 

自身の知る中で自分が扱える最高の盾――アイアスの盾を。

 

「ぐっ」

 

さすがは贋作とはいえアルスター伝説の名剣。

 

その威力は十分すぎるほどのもので、衝撃も凄まじい。

 

「はっ!」

 

だが、それだけだ。

 

そのまま防ぎきると投擲された螺旋剣はからんと落ちる。

 

「ふむ、わざわざ盾を出して防ぐ辺り、その防具も万能というわけではないと言うことのようだな」

 

「正解」

 

俺の着ている鎧はモチーフはジークフリートの『悪竜の血鎧』とカルナの『黄金鎧』だ。

 

カルナの『黄金鎧』にジークフリートの『悪竜の血鎧』を付与するような形のもので、性能的にはBランク以下の攻撃は無効にし、Bランクより上の攻撃に対してはBランク分の威力をカットした上で、更に九割カットする。

 

要するに二つの鎧のいい所取りといったものだ。

 

まあ、自分でも自分が考えた最強の防具みたいな感じで、頭の悪いものだと思うが、それぐらいしないと自分の身の安全を確実に守れないし、何よりこれだけやっても完全に無傷といかないのが、サーヴァントとの戦闘だ。

 

先ほどの螺旋剣なんか防御を取らずに受けていれば、確実にダメージを受けていた。

 

「とはいえ、それでも貴方の攻撃を封殺する程度はこなせるけどね」

 

「確かに普通にやっていては、私の攻撃では通りそうも無いな。だが、防御一辺倒でいるつもりかね?」

 

「まさか」

 

再度武器を出す。

 

しかし、今度はそれまでのなまくらとは違う。

 

手に持つのは一本の太刀。

 

強い神秘を秘めた、鬼をも切り裂いた天下五剣が一つの名刀。

 

銘は童子切安綱。

 

「今までと比べて随分と質がいいな」

 

「まあ、どれもこれも粗悪品というわけでもないさ」

 

構えは取らない。

 

「それでどうするつもりだ?確かにそれは業物だ。だが、君では使いこなせまい?」

 

「ああ、確かに今の俺じゃ使いこなせない」

 

確かにどんなに優れた武器でも凡人が使えば宝の持ち腐れだ。

 

真価を発揮することは無いだろう。

 

そんなことぐらい前世で凡人だった自分は痛いほど分かっていることだ。

 

「でもね、だったら使いこなせる自分になればいいだけの話しなんだよ」

 

自分の足元から魔力が迸り、エミヤの固有結界に侵食する。

 

「出来れば俺も貴方みたいに格好いい詠唱を考えれれば良かったんだけど、そういうセンスが自分には無くてね」

 

宝具開放時の詠唱とかそういうのはやはり憧れる。

 

自分も出来ればそういうのをしてみたいのだが、どうにもそういったセンスが壊滅的なのかうまくまとめることができない。

 

まあ、そもそも詠唱する必要も無いというのもあるのだが。

 

「だから、そのまま使わせてもらうよ。『遙か遠き理想の具現(ファンタジア オブ チャイルドフッド)』」

 

これはちょっとした自分への皮肉。

 

理想とは程遠い凡人の自分が分不相応の力を手にしたことで結果として理想となったことへの悪態。

 

固有結界を侵食した魔力を通して自分の周辺から後ろの風景ががらっと変わる。

 

先ほどまで赤く染まった空は豪奢なシャンデリアが吊るされた天井で覆われ、荒野だった地面は大理石を敷き詰められた床へと変わる。

 

まあ、その床には相変わらず剣が突き刺さっているが、これはエミヤのものではなく自分のものだ。

 

「これはまたえらく華やかなものを出してきたな。これが君の固有結界か?」

 

「固有結界というか、まあそれの類似品みたいな感じだよ」

 

無限の剣製を真似てはいるが、厳密的に言えば魔術ではない以上固有結界とはいえないだろう。

 

「さて、お話はここまで。今度こそ、存分に殺しあおうか?」

 

床に突き刺さっていた剣を射出する。

 

エミヤも同じく放ち迎撃するが、今度はエミヤの贋作が砕けた。

 

当たり前だ。

 

もうここにあるのはなまくらじゃない。

 

エミヤが見せてくれたおかげで、イメージを固められた贋作の贋作だ。

 

それもただの贋作じゃない。

 

俺が俺の理想を押し付けた贋作の贋作、ランクダウンも何もしていない真作をも超えたもの。

 

「ちっ」

 

向かってくるものを干将・莫耶で弾こうとしてひびが入ったことを理解すると早々に放り捨てて、エミヤは回避に専念する。

 

既に手には新しい干将・莫耶が握られている。

 

使い慣れているからこそすぐに出せるんだろう。

 

自分もそのあたりは見習わないといけない。

 

だが、まずは勝ちきることだ。

 

干将・莫耶を壊されながらも回避しているエミヤに向かう。

 

エミヤと同速(・・)の身のこなしで。

 

はっとしたような表情をエミヤが浮かべるがそれでも受け止められる。

 

「ふん!」

 

それを無理矢理力任せに降りぬいて叩き折るとそのまま返す刀で左から切り上げる。

 

「ちっ、浅いか」

 

だが、浅い。

 

咄嗟の反応で退かれたせいで軽くかすった程度だ。

 

それでも、エミヤの速さと身のこなしは覚えた。

 

そのまま床を蹴ると間合いを詰める。

 

エミヤは二刀流でこちらは一刀流。

 

そのまま真似ることは出来ないが、それでも噛み砕いて理解することは出来る。

 

自分の血肉へと変わっていく。

 

切り落とし、振り抜き、薙ぎ払う。

 

その度に、エミヤの剣は折れ、新しいものと変わる。

 

眼は使っていない。

 

そんな勿体無いことは出来ない。

 

使えば確実に殺してしまうのだ、そんなことするわけにはいかない。

 

せっかくエミヤの技術を吸収できるのだ、簡単に倒してしまうなんて勿体無さ過ぎる。

 

自分の理想を更なる高みに到達させるためには、一分、一秒でも長く刀をつき合わせたい。

 

動くたびに自分でも良く分かる。

 

少しずつ動きが洗練されていく。

 

身のこなしが、力強さが、思考速度が、少しずつだが確実に上がっていく。

 

自分の理想が上書きされていく。

 

次第に動きもこちらが上回り始める。

 

優位が優勢に変わり、もはや勝勢になっている。

 

「くっ」

 

エミヤの腕が飛ぶ。

 

そこで一旦距離を取る。

 

もはや勝負あった。

 

「なんともひどい冗談だ」

 

エミヤが忌々しげにつぶやく。

 

まあ、自分もされたらそう思うだろう。

 

「それが君の固有結界の能力か?」

 

「その通り。この中にいる限り、俺は自分の理想通りの自分でいられる」

 

俺が貰ったたった一つの能力、『世界の真理』。

 

そこから零れ落ちたものの一つがこれだ。

 

『直死の魔眼』もこれと同じく零れ落ちたもの。

 

「そのために私に固有結界を使わせたのか」

 

「ああ。それに、これは貴方の固有結界を参考に作られたものだ。本物を直接見て微調整する必要もあったしね」

 

俺が呼び出している武器はここに保管されているものだ。

 

要するにエミヤと同じことをしている。

 

だから、より良いものを呼び寄せようと思うなら、エミヤに見せてもらう必要がある。

 

もちろん、かなりのものと言われる技量を吸収するためでもあるが。

 

自分の理想を具現化してくれるが、それがぼんやりとしてたものだと力は発揮しない。

 

グレイプニルが劣悪品だったりしたのもそのせいだ。

 

きっちりと認識して作ったものじゃないので、完璧な形で具現化せず、出来上がったものも粗悪な模造品だったのだ。

 

だから、自分の理想をよりはっきり認識するためにエミヤと打ち合ったのだ。

 

「エミヤには悪い事をしたと思っている。でも、俺としても手段を選んでいられないんでね」

 

少しでも強くなろうと安全でいたいと思うのなら、四の五の言っていられない。

 

自分が出来る範囲で足掻く必要がある。

 

「やれやれ、恨み言の一つぐらい言ってやりたいところだが、言ったところで聞きもしなさそうだな」

 

「恨み言を吐かれた事なんて何でもあるからね、一々聞いてあげるほどの優しさなんてないさ」

 

家を捨てた時にどれほど言われたことか。

 

「さて、いつまでもここにいるわけにもいかないし、終わらせようか」

 

「これでは道化だな」

 

「ははは、それ以上の道化がここにいるから気にしないほうがいいよ」

 

うだうだとすることしか出来ない道化がね。

 

「それではありがとう、エミヤ」

 

童子切安綱がエミヤを貫いた。

 

 

 

 

 

 




とりあえずエミヤ戦終了です。
エミヤは好きなサーヴァントだけに心苦しかったですが、主人公の成長のためにはどうしても必要でしたので、こういう形に。
今度出てくるときはがっつりと活躍して貰いたいと思っています。
あと、主人公の能力等々は少しずつ明かしていく予定です。
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