「まさか、我が負けるとは……」
ぐだぐだ組が無事にギルガメッシュ相手に押し切ったようだ。
「露と堕ち露と消えにし我が身かな。ウルクのことも夢のまた夢、ウルク民募集……中」
最後にそう言い切ると消えていった。
ウルク民募集といっても、その御眼鏡にかなうような人間は中々いないんじゃないだろうか。
あの地獄のような状況でもたくましく生きるような人たちだ、惰弱となった今世の人間では耐え切れないだろう。
「竹中アンデルセンという響きが面白かったので協力してやったが、阿呆の馬鹿笑い声にはうんざりだ」
そして、うちも無事に倒しきった。
「だいたいニホンと言う設定が良くない。何かの間違いで頭のゆだった尼に出会わないとも限らん。お前達も適度なところで切り上げろよ?この手のマラソンは程ほどにするのが吉だぞ?」
「いやあ、残念無念、それにしても童話作家殿は存外お優しいですなぁ!さて、我ながらどっちが喋ってるのかさっぱりでしたがせっかくなので私からもこの茶釜をプレゼンです」
メフィストフェレスから茶釜を受け取る。
「いやあ、極東の詫び寂び文化は実に興味深い!爆発する茶釜とは実にエキセントリックですなあ!それではご一緒にカウントダウン!スリー・ツー・ワン!」
そして、メフィストフェレスは消えていった。
「ま、マスターさん?!」
「大丈夫、爆発なんてしやしないよ」
それに、これが一応の目的物だ。
これでやっと終わる。
「ふう」
軽く息を吐く。
本来の自分とエミヤ戦で引き上げた認識と感覚のずれはやはり出来ていた。
無意識のうちにエミヤ戦のように身体を動かそうとしてしまい、それが出来ずに動きがぎこちなくなってしまっていた。
まあ、その辺りは実際に身体を動かして慣らしていくしかないだろう。
「さてと、どうするかね?」
メフィストフェレスがくれた茶釜をくるくると回す。
アンデルセンが言っていた尼のことだ。
人理を守りきった後に起こることだ。
まあ、起こった後に、無かったことになるわけだが、これはその際どうでもいい。
自分にとってはかなり思い入れのあるイベントだったし、とても大事なイベントだ。
「うむ、この茶釜が変質した聖杯の核のようじゃな」
そんな考え事をしているとひょいと取られてしまう。
「これでわしの力も戻るし一件落着じゃ」
「え?アーチャーさん?」
「アーチャー、まさか!!」
イリヤの困惑したような声を出す中、彼女が何をしようとしているの察したのか沖田の表情が変わる。
「そう、すべて我の思うがままよ」
戦場で考え事をするとはなんとも情けない。
これは完全に自分の落ち度だ。
どういう結末になるかまでは覚えていなかったが、こういうことになりうることは想像できたはずだ。
「ふはははははははははは!今までご苦労だったなお前達!すべてわしの思惑通りにことが運んだわ!此度の騒動は全てわしの計画!聖杯に12体のサーヴァントの生贄、そして力を取り戻したわし!聖杯の力を使いこの空間を我が物とし、貴様らの世界へ乗り込んでくれるわ!」
「魔人アーチャーさん、どうして?!」
「そうそう、我が名は第六天魔王、織田ノブーー」
「あ、それ知ってるんで」
「え、なんでバレとるのじゃ?!」
「さっきお昼ご飯のときに聞いてもいないのに自分から自己紹介してたじゃないですか」
沖田の言う通りだし、そもそも隠す気のない態度だったし、モロバレだ。
「えっ?!なにしてんのわし」
「ふっ!馬脚を現したな!」
「え?この声って」
声がした先をイリヤが振り返る。
自分は声が聞こえたあたりで、なんとなく分かったからわざわざ見ない。
見たら、頭が更に痛くなりそうだし。
「そう、わしじゃ!」
「の、信長さんが2人?!」
まあ、目の前に出てきたらそれも無意味なんだけれども。
頭が更に痛くなってきた。
というか、帰りたい。
「じつはお昼ごはんの後にトイレに行ったのじゃがそのとき後ろから何者かに襲われたのじゃ。気が付いたらトイレの裏で縛られておってな、いましがた何とか脱出してきたのじゃ。つまりお昼休み以降、お前達と一緒にいたのは真っ赤な偽者というわけなのじゃ!」
「おのれ!我の半身とはいえしぶとい奴め。本物のわしに代わって、わしが本物になるはずが」
「なるほど、解説ありがとうございます」
まあ、これでことの経緯が良く分かった。
分かったけど、頭が痛いのには変わりないが。
「流れは大体分かりましたけど、どっちが喋ってるか全然分かりませんね」
「なら、とりあえず、悪いノッブと良いノッブと仮の名称で区別しておくかね」
これがゲームならスキップしたくてうずうずしてるだろうな。
一応、初見時はちゃんと読む派だから見てるけど、記憶が曖昧な辺りほとんど流し読みみたいな感じだっただろうとは思う。
まあ、これを目にすればその当時の自分の気持ちが分かる。
うん、早く開放されたい。
「うわっ?!なんか悪いって言われるとちょっと心外なのじゃ、元は同じだというに」
「勝った!わしが良いノッブ!天下布武、完!もはや勝敗は決したようなものじゃ、降参するが良いぞ、悪いノッブ」
「いい子ぶるではないわ!元は貴様なんじゃから貴様も悪いノッブじゃろうが!」
「馬鹿を言うな、悪いノッブの貴様が離れたんじゃからわしは良いノッブ100%じゃろ!」
ぎゃーぎゃーと言い合いを始めた。
双子が喧嘩しているだけだと思い込もうとするが、どうにも無理そうだ。
「こうなったら、悪いノッブの凄いところを思い知らせてくれるわ!」
どうやら自分が悪いノッブだということは認めたらしい。
「いざ、三界神仏灰燼と帰せ!我が名は第六天魔法波旬、織田信長なり!」
その言葉と共に周りの風景ががらっと変わる。
「ふはははははははは!神をも殺す我が力の前にひれ伏すが良いわ!」
織田信長の力のほとんどと聖杯は彼女が持っている。
「おのれ悪いノッブめ!皆のもの、わしの悪いところを倒すために力を合わせるのじゃ!」
「やった、これで最後の戦いだ!」
イリヤの嬉しそうな声が上がるが、自分もその意見には賛成だ。
やっと終わる。
「実は私もそろそろ魔力が切れかけてて今にも身体が消滅しそうなところだったので助かります」
「身体弱すぎじゃろ?!」
まあ、このあたりは病弱関係なく、魔力の残量的に仕方ないだろう。
俺と契約してるわけでもない以上、与えることも出来ないし。
「と、とにかくさっさと終わらせましょう!」
ぐだぐだ言っても仕方ない。
さっさと終わらせよう。
「沖田さん、接近して撃破狙い!イリヤと良いノッブそれのフォロー!」
4対1というかなり卑怯な数の暴力のように見えるが、もってるものが悪い過ぎる。
サーヴァント12基分、しかも弱体化したとは言ってもギルガメッシュも入っている。
そんな相手に卑怯もクソもない。
悪いノッブが沖田を近づけさせまいとするが、その尽くをイリヤと良いノッブがフォローを入れる。
「一歩音超え……二歩無間……三歩絶刀!『
そこを自身の必殺の一撃で決めに行く。
何の神秘も持たない一撃。
故に神秘殺しとも言える彼女とは相性がいい。
「くっ?!」
「ふははははははは!この程度なんともないわ!」
しかし、聖杯ブーストを受けている彼女にはそれだけでは届かなかった。
もちろん、俺だってそれぐらいは理解しているし、この瞬間を待っていたというのもある。
今、この瞬間だけは彼女の足は確実に止まっている。
「捕獲完了」
要するにグレイプニルで捕獲が容易になると言うことだ。
「ぬっ、小癪な真似を!しかし、このような縄なんぞ!……あれ?」
「いくら聖杯を使ってもそれから逃れるのは簡単じゃないさ。というわけで、皆、後はよろしく」
グレイプニルは神秘を纏っているが、だからと言ってあっさりと砕けるものじゃない。
あくまでも神秘殺しといっても相性がいいというだけであり、それにより全てがダメになるというわけでもない。
だから、こういうことが出来るわけだ。
それにしても、ようやく終わった。
ここまで来れば、ひっくり返されることもないだろう。
目の前にいる悪いノッブは、聖杯によってブーストがかかっているため多少体力が多く防御が硬いが、身動きがまともに出来ないただの的に過ぎない。
結果なんて分かりきっている。
三人がかりでボコボコにされた悪いノッブの出来上がりだった。
異動前になんとか更新。
とりあえず、大筋は終了ですが、この後ちょこっと蛇足が入ります。
次の更新は未定です。
なんとか早めに出来るように頑張ります。