ツラツラと小出しにするよりかはと思っての一気出し。
テンポが悪いが、これで過去の話で隠されてるものはなし。
誰かがストーリーで触れない限りもう出てこないかな。
三人だけの秘密の話し合いは結果として俺の意見が尊重される形で終わった。
基本的に人理の修復について俺はノータッチということになった。
他の職員に対しては二人から上手に言い含めてくれることとなった。
ただし、彼らは確認しなかったから言わなかったが、手伝いはしないがレイシフトもしないとは言わなかった。
自分の身体の状態をチェックしたいから第一特異点であるオルレアンはパスするつもりであるが、それ以降はついていくつもりだ。
未来を変えるつもりがない以上、彼らに失敗されても困る。
こと細かく内容は覚えていないが、ざっくりとしたことぐらいは覚えているので、おかしな方向に行きそうになった場合は軌道修正が必要となるため、近くにいる必要がある。
もちろんオルレアンでおかしな方向に行く可能性があるため、よほどのことが起これば介入するつもりではある。
出来ればこんな考えは、杞憂であればいい。
一本道を進んでくれると非常に助かる。
そうだったら何も考える必要はない。
ただ、ジャガースタンプというものがある。
タイガースタンプとは別物だと、ネタだと笑い飛ばせれるのならいいのだが、そうやって見過ごした結果取り返しのつかない事態になる可能性だってある。
ゲームの中の話なら取り返しがつくが、実際は現実である以上やり直しは聞かない。
個人的には正直人理なんてどうなったところでも知ったことじゃない。
だが、彼らが救わなければ自分が救い、背負わなければならなくなる。
それだけはごめんだ。
俺は自分の命しかもう背負いたくない。
だからと言ってこの世界ともども死ぬのも嫌だ。
結果として死ぬのならまだしも自殺するつもりなんて毛頭ない。
それだと必死に生きてきた過去が全て無駄になってしまう。
「『こい』」
そういって呼び出したのは小さな小刀。
名のある業物でもなく、本当にただの小刀。
そして、それはかつて自分が死ぬ前に戦っていた頃の得物のレプリカ。
生まれは小さな妖術師の家の長男坊だった。
父親は小学生の時に妖術師の仕事の途中で仲間をかばって殉死。
ただ、かばった仲間がクソ野郎で礼を言うどころか助け方が悪かったとかなんとか文句を言われた。
まあ、結局そいつもしばらくしたら仕事で殉職してたけど。
その後、長男坊だからといって10歳で父親の後を継いで妖術師になった。
幸いそこそこの妖しと契約できたので、大家のところのお坊ちゃんやお嬢様だったり、天才妖術師のような目覚しい活躍はすることはなかったが、そこそこ活躍は出来ていた。
和服を上手に着こなす美女で自分にとっての最高のパートナーだった。
仲間だって出来た。
いや、仲間だと思っていた奴らも出来たというのが正しい。
一人は近所に住んでいた女の子。
結婚の約束をするぐらいの付き合いをしていた幼馴染というような間柄ではなかったが、仲は良かった。
もう一人は自分と同じく小さい妖術師の家の女の子。
よく二人で小さい家でもやれるって言うところを見せようと話していたものだ。
そして、最後は、自分とは違ってそこそこ大きな妖術師の家の跡取り息子。
才能はそこそこだが、思い切りのいい主人公属性のような奴だった。
高校生に上がる頃によく組んで仕事をしていたので、自分は仲間だと思っていた。
しかし、それは嘘だった。
主人公属性の跡取り息子は俺が使役していた妖しの相棒を狙って近づいていただけ。
自分の好みにドストライクだったらしい。
俺の目を盗んで相棒と二人きりになったところを無理矢理事に及ぼうとしたのだ。
なんとか相棒はそれを撃退したが、今度は保身のために相棒が自分を誘惑したと、いや俺が彼を陥れるために誘惑するようにさせたのだと言い出したのだ。
しかし、そんなことをさせた事実は無く、むしろ彼が無理矢理襲い掛かってきた事実しかなく、そんな言い訳が通ることは無かったのだが、それを信じたのが二人の少女だった。
彼女らが俺に近づいてきた目的は一つ、彼に近づくため。
俺の妖しのために近づいてきた彼に近づくために近づいてきただけのこと。
そして、自分の好きな男が無様な言い訳をしているなんて考えたくなかった彼女らは彼の言葉を信じることにした。
でも、仲間だと思っていた人間からの手酷い裏切り、だけどそれだけならよかった。
彼女達と距離を置けば済む話。
男女の付き合いの部分もあるし、多少なりとも恋愛感情もあったにはあったが、それもしこりが多少残ってもいつかは消え失せるものだ。
しかし、それだけでは終わらなかった。
相棒は襲われたせいで妖しとして戦うための人間にとっての魂とも言える心核をやられた。
彼は抵抗されないように戦えないようにと心核を封じようとした。
結果、それを無理矢理解いたせいで心核に損傷を負い、二度と戦えなくなってしまった。
俺が使役していたのは相棒一人であり、仕事を続けるのであれば別の妖しを呼ばないといけないが、自分の能力では一人が限界。
だから相棒との契約を破棄して、新しい妖しと契約を結びなおさないといけない。
しかし、俺にはそれが出来なかった。
小さい家ながらも子供の身で当代として振舞っていた。
父を失って傷心状態の母親と状況を掴めていない弟達の姿を見て、しっかりしなくてはと虚勢を張り続けながらも歩んでいた。
相棒に支えながら歩んでいたのだ。
相棒が居たから歩んでいけたのだ。
だから、相棒のいない世界では歩んでいけるわけがなかった。
相棒は自分を切り捨ててくれと言った。
家族は相棒を切り捨てろと言った。
だが、俺にはそんな選択肢は無かった。
母が、弟達がそういった時点で選択肢はなくなったのだ。
10歳の頃から背負い続け、相棒以外に弱音を吐くこともできずに歩み続けていた自分を労わってくれる事はなかった。
俺は妖術師をやめ、相棒を連れて一般人として生きることにした。
家族からは詰られたがどうでも良かった。
そんなに家が大事なら自分達でどうにかして欲しかった。
もうこれ以上は耐えられないと思った。
もうこれ以上何かを背負うのは耐え切れないと思った。
そうこれ以上何かが起きれば耐えられないと思ったのだ。
「俺はいつになったら解放されるのかな?」
虚空に無常に響く声。
それはもういなくなった相棒への問いかけ。
結局、相棒は心核の損傷がひどいせいで善悪関係なしに力を取り入れてしまうようになってしまい、闇に引きずり込まれそうになっていた。
妖しのエネルギーの源は魔素。
そして、悪性に落ちないために善悪の取捨選択が必要なのだが、彼女はそれが出来なくなっていた。
二人で出て行ってからわずか三年後の出来事だった。
そうなってしまってはどうすることも出来ない。
俺は相棒の願うまま、この手で殺したのだ。
完全に堕ちてしまう前に、相棒が相棒のままで終われるように、この手で殺したのだ。
それから先の出来事はあまり記憶に残っていない。
早く開放されたいがために死を望みながら、自殺だけはしないでくれと言った相棒のために、一般人として生きていた。
他人に興味のなくなった俺は、深く考えることをしなかった。
だから、騙され、利用され、裏切られ続けた。
そして、その度に人への関心が薄まり、もはや相棒が認めてくれた自分ではなくすっかり朽ち果ててしまった自分自身のことも嫌いになっていた。
人への関心が無くなった結果、逃げ込むように趣味へと没頭した。
人と関わりたくないがために、趣味に没頭した。
そのうちの一つがFGOだった。
対人戦もなく人と絡むこともなく目の前のことに集中すればいい。
だから時間つぶしにはちょうど良かった。
しかし因果なものだ。
時間つぶしにやってたもののところに、こうして来てしまうとは。