第七話 ローマの街中にて
華の帝政、永遠の都ローマ。
当時世界の中心にして、世界そのものであり、世界に君臨する最大の帝国の都。
目の前に広がる町並みは、その名に恥じぬ活気に不思議と心が躍る。
レイシフトするとすぐに俺たちはネロ・グラディウスと出会った。
しかも好都合なことに襲撃中の彼女達を助けるという形での出会い。
大した交渉などすることなく、鍵を握るである彼女と合流することが出来た。
「あの、マスターさん。私たちは本当にいかなくても良かったのかな?」
「ああ。彼らがいない間に攻められたりしたら大変だしね」
ただ今主人公たちはターミナルポイントを設置するために霊脈が存在するエトナに向かっているのだが、俺とイリヤはお留守番だ。
レイシフトしたのは昨日。
ネロを救助した後、ここ、ローマに戻った。
その後、連合ローマ帝国の襲撃に合い、それを撃退。
ゆっくりと休んだところで、今現在ということだ。
ここに残っているのは、名目上は今言ったように、出かけている間に襲撃があったらいけないから。
実際は、自分がついて行く必要がないから、である。
この特異点では軍同士の戦闘が基本だったはずであり、それ以外の場面では多少の戦闘はあっても、サーヴァント等との危険性の高い戦闘はなかったはずである。
「まあ、何かあったらドクターから連絡があるはずだから、その時に飛んでいけばいいよ」
それこそ文字通り飛んで行こうと思えば飛んで行ける。
「それにしても、昨日の戦闘で思ったけど強いね。戦闘経験は割とあるのかな?」
「えっと、それなりには」
話題転換にと思ったが、ちょっと言葉を濁された。
ちょっと言い方が悪かったかな。
「小さいのにそれだけ戦えるのは凄いと思うよ。うん、頼りにしてる」
単純に褒めたかっただけなのだが、どうにも言い方をうまく選べない。
こういう時に、コミュニケーションをまともに取ってこなかったことがあだと出てる。
「あ。はい、任せてくださいね!」
「うん、任せるよ。ただ、基本的に戦闘は藤丸君たち任せでね。俺たちは飛び掛かった火の粉を払う程度でいいから」
あくまでもメインは彼らであり、こちらはおまけ。
彼らの活躍どころを奪うわけにはいかない。
「あまり離れられると今度はこっちが危ないからさ」
『確かにマスターさんから離れすぎてしまうと守れませんからねー』
「そうそう。俺は弱いからね。守ってもらわなくちゃね」
「でも、昨日は普通に戦えてたよね」
「そりゃ多少はね。でも、そこまで強くはないよ」
昨日の戦闘には一応参加だけはした。
形としてはあくまでも藤丸とマシュのフォロー程度。
魔術は使えないので魔術礼装で疑似的に使用して、彼らが戦い易いようにサポートしていただけだ。
「だから、俺たちはあくまでも彼らのフォロー役ってこと」
素直に言えば一人でこの特異点ぐらいなら修復は出来る。
神祖ロムルスや魔神柱、アルテラと真正面から正々堂々とぶつかり合いをするとなると旗色は悪いが場を整えてやれば負けることはない。
それだけの力はある自負はあるし、そうじゃなければドクターやダヴィンチに対してあれだけ強気に出たりはしない。
「ただ、いつまでもそういうわけにはいかないだろうから。少しずつレベルアップしていけるよう頑張るよ」
とはいえ、それではどうやら彼女は納得いかないみたいだ。
もちろん、元々の彼女の性格もあるのかもしれないが、サーヴァントとして呼ばれた以上はやれるだけのことはやりたいのかもしれない。
もし仮にそうであるならば、これからは少しずつ戦闘も増やしていかないといけなくなるだろう。
「はい。私もしっかりとお手伝いしますね!」
「うん、大船に乗ったつもりでいるよ」
自分のことを話しておくのは今のところあの二人だけだ。
彼女に話すつもりはない。
反英霊であったり、英霊であってもある程度話の分かるものなら、こちらの気持ちに対して割り切ってくれるだろうが、小学五年生の彼女には難しいと思う。
下手に話して関係がギクシャクしてしまう可能性がある。
サーヴァントがいないとレイシフトが出来ない以上、彼女との関係がこじれてレイシフトが出来なくなるのだけは避けたい。
「お、時間的にはそろそろ二人が帰ってくる頃合だね」
「あ、なら入り口まで迎えに行きませんか?」
「そうだね。道中がどうだったのかも聞きたいところだしね」
大したことはなかったはずだが、何も無かったはずでもないはずだ。
いろいろ聞けることは聞いておいて、今の二人の能力を把握しておいた方がいいかもしれない。
となると、ここでのんびりしてたのは悪手だったかもしれない。
一緒について回ると戦闘の可能性が出てくるから避けただが、ついて行った方が良かったのかもしれないな。
まあ、そのあたりはこの後の進軍の時にでも確認できるから大丈夫だとは思うが。
「マスターさん」
「うん?」
「私、マスターさんが安心して動けるように頑張るね!」
そういった彼女はにこやかだが、決意に満ちた表情だった。
小学五年生に守られるいい年した大人。
構図としてはひどいとしか言いようがない。
むしろ逆だろ、と言いたい。
大人である俺が子供である彼女を守ってやらなくちゃいけない。
「なら、俺も君が安心した戦えるように頑張るよ」
一応、これでも多少なりともプライドはある。
小学五年生の女の子に守られっぱなしというのは癪だ。
予定とは違うが、あくまでも火の粉を振り払うためという前提ではあるが、多少は力を振るおう。
ただ、召喚システムにも困ったものだ。
こうもピンポイントで俺が戦わざるを得ないサーヴァントを選んでくれたものだ。