高一なら三年後、高二なら二年後、高三なら一年後の未来の話だぜ?
途中で考え方も変わるだろうし、そんな早くに決めても意味はないと思うけどね。それに、もし夢が叶わなかったらそれまでの努力は全て無駄になってしまう。
結局のところ、自分がどんなことができるのかを知っておかないといい職業は見つからないと思うんだよ。
この小説は、自分の生まれ持っての癖を受け入れて日常生活を送る男子高校生のお話です。
将来の夢。
それは学生のうちに絶対に決めなければならないもの。
しかし、大人たちは知らないんだ。一年後や二年後の未来を想像するのがどんなに難しいかを。
まるで公式のわからない数学の問題と向き合っている気分だ。
……結局、将来に就く仕事とは関係なしに自分の興味や趣味と関連した職業を書くことでその場を収めようとする。
しかし、そんなその場しのぎの職業になんの意味があるのか。
本当にやりたい職業を選ぶとしたら、自分自身に染み付いた癖や性を理解することが必要だ。
ともあれ、自分のことを客観視できて第三者目線で生活したりできるのはごくごく一部の人間だけだろう。
だから僕は、自分自身の癖……悪癖を充分理解した上でなりたい職業を書かず、白紙のまま担任の先生に職業希望調査の紙を提出したのだ。
そして、案の定先生に放課後に呼び出しをくらってしまった。
なんてことはない。これも折り込み済みだ。
僕は先生からの熱い誘いを受けて職員室へと足を運んだ。
教師という職業はブラックだという話はよく聞くけれど。しかし、それがわかってきたのはつい最近のことだ。
よくよく考えてみればそのブラックさは分かるのだが、給料の面を見るとわからなくなってしまう。
残業手当が他より高いんじゃないか。とか、部活の顧問はもっと貰っているんじゃないか。とか。
実際のところは分からないが、授業が終わったというのに忙しそうにパソコンと向き合っている姿を見ると、とてもじゃないがしたくない仕事だと思った。
そもそも僕は子供が嫌いなんだ。何かを考えているようで何にも考えていない子供が大嫌いだ。
ついつい殺したくなってしまう。
そんなことはさておき、パソコンと向き合っているのはうちの担任も例外ではないようで、言われた通りに職員室に来た僕を歓迎してはくれなかった。
僕は先生を呼んで僕が来たということを認知させる。
それに気がついて先生は自分の机に僕を呼んだ。
まあ、話す内容なんて分かりきっているので話半分で聞いていると、何か趣味みたいなのはないの。と、聞いてきた。
あいにくと人には言えないような恥ずかしい趣味しかないので、ないですね。と、答えておいた。
しかし、ああでも、今日は木曜日か。
他の先生が帰った後でならやりたい職業、いや、僕がやらなくちゃいけない職業を先生にだけ教えてあげます。と、言った。
少し面倒くさそうな顔をした後に、先生は了承してくれた。
結局先生とまた会ったのは夜がふけてからだった。
やっぱり教師の仕事はブラックだ。
ごめん、遅くなって。と、先生は言った。
大丈夫ですよ。と言っておく。
最終下校時刻はとっくに過ぎているので、近くの公園で待っていたのだが、夜の10時くらいまでまたされた。大丈夫なわけがないだろう。
でもこんなに遅い時間に外に出歩いてて大丈夫なの。と聞いてきた。
だから、こんなに遅くなったのはお前の方だろう。
ブラックな職場に就いていると思考回路もおかしくなってしまうのか?
それとも、単に相手のことを考えられなくなってしまうのか。
それはさておき、僕は先生に話さなくてはならない。
先生は言ってましたよね。何か趣味みたいなのはないのかって。
実は、本当はあったんですよ。趣味。
僕の趣味。それは、人殺しです。
と。
案の定、先生はポカンと口を開けている。
まあ、わかってもらう必要もないのだけれど、しかし、これから死ぬ運命にある先生の最後に、生徒にわけもわからず殺されるよりかはマシだろう。
僕は生物の命を奪うことに快感を覚えてしまったのだ。
いや、知っていた。の方が正しいかもしれない。
なぜなら、親からの虐待とか、同級生からの心無いいじめを受けているとかでは全くなく、生まれた時から殺すのが癖になっていたからだ。
まだ何を言っているのかがわからない、といった表情をしていたので、僕はコートの内側から愛用のナイフを取り出す。
小学五年生の時だったか、お小遣いが減るのが嫌で自分でナイフの手入れをするようになったのは。
これには先生の顔も恐怖に馴染んできた。
しかし、僕はもっと恐怖した顔が見たかったので、両足を切って動けなくした。
足を奪えばどんな生物も動けない。
ただ後ずさるだけになる。
そうして、動けなくなった先生を縄で縛って拘束し、懐いてきた野良猫を目の前に持ってきた。
先生、これ猫です。と、言って、僕は猫をもう一つ用意しておいたナイフの方で刺した。
肉を裂く感覚がナイフを通じて感じられるこの感覚。
常人には理解できないであろうそれを、僕は感じていた。
何回か刺した後に、僕は猫の口を開けて舌を切った。
そうして、切った舌を袋に入れた。
なぜか昔から舌を回収したくなるのだ。
それは相手が人であっても。
先生。これが僕の趣味なんですよ。誰にも言えない秘密の趣味。
当然わかって貰おうとも思っていない。
先生にこのことを話しているのも僕の趣味だからだ。
人は自分が理解できないものほど恐怖を抱く。
まるで数学のグラフのように恐怖は比例していく。
さて、先生。そろそろお別れです。と、言って、僕はナイフを構える。
ギャーギャーわめいてうるさかったので、僕は喉元を掻っ切って口を塞いだ。
動脈とかは切っていないけれど、首は頭と身体を繋ぐ部分だ。
先生の体温がなくなる前に早く舌を回収しよう。
先生の目が大きく見開かれたいて、声のない悲鳴を上げている。
いいね。そういう表情は大好きだよ。
そして、何回も先生を刺しているうちに、僕は自分の趣味を満喫していた。
将来の夢。
それは学生のうちに絶対に決めなければならないもの。
しかし、大人たちは知らないんだ。一年後や二年後の未来を想像するのがどんなに難しいかを。
僕に将来があるのかどうか、わからないけれど、しかし、もしあるのならば、自分の生まれ持っての悪癖を満たすために殺し屋にでもなってみようかな……?