【アンコもどき小説】やる夫と叢雲とステンノは世界を渡りながら世界の危機を回避するようです   作:北部九州在住

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みらいからの使者 その3

 何事もなく俺たちは『みらい』を連れて横須賀基地に帰港する。

 それはドレイク船長との別れを意味していた。

 

「楽しかったねー。

 今度はこの船を使って派手な戦をしたいもんさね」

 

「その時は呼ぶよ。

 どうせその時はすぐにやってくるのだから」

 

「楽しみにしているよ。

 マスター。いや、司令官」

 

 そう言って笑ってドレイク船長は座に帰っていった。

 戦闘に出ることは殆ど無かったけど、海自の将兵の心をがっちりと掴んだ稀代の船乗りはその短い時を全力で走ったに違いない。

 その証拠に、叢雲に乗った士官や乗員から、

 

「ドレイク船長が来たら是非自分を呼んでください!」

 

という声を次々と受けたのだから。

 この叢雲の乗員も元々借り物なだけに、彼らの多くは元の船に帰る事になる。

 錨をおろしてもやいを護岸と繋いだら、航海は終わり一応の所属である横須賀地方隊に報告に行く。

 叢雲の隣には、検疫検査も終わった『みらい』から一人患者が運ばれていた。

 草加拓海少佐。

 大日本帝国海軍のエリート様である。

 そんな彼を横目に制服姿の叢雲とステンノとマシュを連れて横須賀地方総監部の建物に入ると、つつつと寄って来る巫女姿のアマテラス様。

 おそらく皇北都のチョイスだろう。

 コスプレ臭が強くエロい。

 

「もぉ、おそいです」

「そう言わないでください。

 色々あったのです」

 

 この傍若無人な天津神様の行方を遮れる自衛隊員は居ない。

 なお、結構待っていたらしく、周囲の草がえらく萌えていたのは見ないことにする。

 

「よく戻ってくれた。

 入即出海将補相当官。

 冬木市での報告は受けている」

 

 警備隊司令の咲川海将補は何かを我慢しているような声でそう告げる。

 幕僚の美野原一佐は明らかに笑いを噛み殺しているが見ないであげよう。

 俺の後ろできょとんとしているアマテラス様は気づいていないし。

 

「今回の災害に対して、政府は参加部隊と隊員に以下の表彰が行われる予定です」

 

 少し長くなるので抜粋する。

 舞鶴地方総監に第1級賞詞。

 各級指揮官に第2級賞詞。

 その他の派遣隊員総員に第3級から第5級までの賞詞。

 派遣部隊隊員総員に大規模災害派遣の防衛記念章授与。

 ……等々。

 政府は腐っているが、腐っているからこそ、この手の実利に繋がらないものは遠慮なくばら撒いていた。

 政府にばら撒かれた数千億円もの金はどこに行くのやら……

 話がそれた。

 

「それで、私は未だこの横須賀地方隊のままなのでしょうか?」

 

「追って市ヶ谷より指示が出ることになっています。

 最初からここに居なかったという事すらありえるから困る所です」

 

 咲川司令は俺から視線を逸らす。

 その上でため息とともにそれを吐き出した。

 

「永田町の方では、冷戦終結に伴う新たな危機に対処するという事で、防衛庁の省昇格の動きがあるそうです。

 君はその流れの大きな駒になっているみたいですね」

 

 湾岸戦争で中東に自衛隊を直接派遣できなかった日本はその後『金だけしか出さなかった』と国際社会からの非難を浴びて、ペルシャ湾への掃海艇派遣に繋がってゆく。

 現在の自衛隊のクーデターの動きはこれとも絡んで、軍隊ではない自衛隊をきちんとした軍にすることで、自主防衛・対米追随外交の脱却を目指すというのが表向きの話。

 実際は、省昇格に伴う大規模人事異動でクーデター派を飛ばす為なのだろう。

 クーデターに参加する連中を減らすために、彼らの大義名分を受け入れた上で、過激派をこれを機会に排除するなんて力業を誰が考えたのやら。

 

「光栄と言うべきなのでしょうな」

 

「そう言ってくれると助かる。

 こちらは、君たちの他にもあの『みらい』の相手をしないといけないのだからね」

 

 俺の叢雲は完全な異物なのでまだ対処ができたのだろうが、叢雲の隣に停泊した『みらい』はなまじ護衛艦であり、自衛官が操作している事もあって俺の時以上に壮絶に揉めていた。

 何しろ10年先の兵器という事もあって、米軍も注目しているに違いない。

 

「『みらい』についてはどうなるのでしょうな?」

 

「過去に戻った事を説明し、その上で帰属してもらわないといけない。

 彼らがここを過去の故郷と認識してくれると良いのだが」

 

 そうならないだろうな。

 大体事情を知っている俺はその言葉を言わずに愛想笑いを浮かべるに留めた。

 なお、この超常現象の説明をするのが俺なのはすでに決まっていた。

 

 

 

「護衛艦『叢雲』艦長兼護国機関ヤタガラスの入即出やる夫海将補相当官と申します」

「『みらい』艦長。

 梅津三郎一佐です。

 色々とお聞きしたい事があるのですが、まずは負傷者の受け入れに感謝を」

 

 叢雲とステンノとマシュを連れての『みらい』訪問。

 この時点で、『こいつら自衛官じゃない』とわかる形での訪問である。

 さっきもらった徽章を皆制服につけての訪問なので、案内する隊員は口には出さなかったが。

 アマテラス様?

 さすがに置いてきた。

 

「まずは貴艦のおかれている状況について説明します」

 

 『みらい』食堂で多くの幹部を前に説明をする。

 さすがに自分たちの知っている日本ではない事に落胆をする顔が多く見られたが、1942年の大日本帝国よりましだという空気は俺にも感じられた。

 

「それで、自分たちは元の時代に帰れるのでしょうか?」

 

 『みらい』副長角松二佐が俺に質問をする。

 それに俺は帰る手段を探す努力をすると続けた後で、その問題点を告げる。

 

「問題は、帰れるとしても帰れるのは人のみで、船を送るというのは不可能に近いという事です。

 もちろん『みらい』がタイムトラベルをしたケースを当てにするというのもありますが、あれだとどの時代に飛ぶか分かりません。

 帰還手段が見つかったとしても、この『みらい』を置いてゆく可能性が高いことを覚悟しておいてください」

 

 黙り込む一同に俺は、メッセンジャーとして最後の言葉を告げる。

 後は彼らの選択に任せる事にしよう。

 

「このまま残る場合、階級及び役職をそのまま追認するという言質を頂いております。

 また、その決断までの補給および休養ですが、できる限りの配慮をするという事です。

 まずはこの地にてゆっくりと休養してください」




永田町
 政界。国会議事堂、首相官邸、衆議院議長・参議院議長公邸などがある。

表彰の参考
 自衛隊ペルシャ湾派遣より。

災害派遣の防衛記念章
 制定されたのは2011年。
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