【アンコもどき小説】やる夫と叢雲とステンノは世界を渡りながら世界の危機を回避するようです 作:北部九州在住
ミレニアム相手に対潜水艦戦をする場合、足りないものがある。
艦船と人員だ。
メンタルモデル形式なので叢雲一人で十分ではあるのだが、ダメコンの事とミレニアムの裏切り者は自衛隊内にも居るだろうから、どうしても裏切らない人員が必要になる。
まずその当てに電話をかける事にした。
「君の専属になった覚えはないのだけどなぁ」
「上が国だから金払いは良いだろうが。
またお仕事だぞ。
今度はホムンクルスを作れる限り」
「私の作るものは手間暇かかっているのが分かってそういうのだろうな?」
軽口の応酬の後事情を説明しだすと電話向こうの蒼崎橙子は笑い出す。
「本当に救いがないな!
人間が信用できないから、人形を用意するなんて本末転倒じゃないか!!」
「まったくだ。
だが、吸血鬼やグール相手に艦内で反乱なんて起こされたらたまらん。
この際、短命のホムンクルスでも妥協するよ」
「そうだな。
学園都市絡みでクローン技術を入手したし、洗脳装置による教育詰め込みもあるから短期間の戦力化は可能といえば可能だ」
電話口の蒼崎橙子はそこで言葉を切って確認をとる。
「率直に言って、入即出やる夫よ。
ホムンクルス兵士は必要なのか?
これは魔術の徒としての質問だ。
その船は彼女一人でコントロールできるのだろう?
そっちから考えると、これにかけるコストがバカバカしく思えてならん。
科学側から見ても怪しい所だ。
戦闘単位としてどんなに優秀でも、同じ規格品で構成されたシステムには、どこかに致命的な欠陥を持つことになる」
さすが人形師。
クローンやホムンクルスの欠陥をよく理解している。
自然と俺の顔も笑みで歪む。
「政治だよ。政治。
構造上の欠陥も政治的妥協によって許容範囲ならば許容される。
海上自衛隊はただでさえ定数割れを起こして俺の怪しい船に乗る連中すら確保がおぼつかない。
挙句の果てに、自衛隊のクーデターの動きは止まるどころか更に加速している。
裏切らない上に、最低限の戦闘力を持つ兵隊は今の海自に絶対に必要なんだ。
割に合わないのは分かっているさ」
「だったら、学園都市から買ったらどうだ?」
蒼崎橙子の切り返しに俺は即答する。
無駄に闇鍋世界になっているおかけで、そういう選択肢もある訳で。
「もちろんそのつもりだ。
お前自身が言っただろうが。
戦闘単位としてどんなに優秀でも、同じ規格品として構成されたシステムには、どこかに致命的な欠陥があるって。
そっちのホムンクルスをハイエンド、学園都市のクローンをローエンドのハイ&ローミックス。
よく戦闘機の導入なんかで使われている方法さ」
もう一つあったなと思い出して、俺はそれも口にした。
電話越しの会話で盗聴されている可能性もあるが、この際時間が足りない。
「麻帆良学園には行ったか?」
「いや。
あいにくまだだがそれがどうした?」
「あそこに始祖吸血鬼の人形師が居る。
エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル。
紹介状を書いてやるから、会いに行くと良い」
「……狙いは何だ?」
「アンドロイドさ」
これが90年後半だったら良かったのだが。
そうしたら、マルチやセリオが出てきて、遠慮なく投入できるのだが。
「何のために、貴方にこの手の話を振っていると思っている?
貴方をこの手の特異点にする為に決まっているだろうに」
「あははははは………また魅力的な誘いで断れないじゃないか!
そうだ。
お前が連れてきたアニムスフィアの娘、まだこちらに居るぞ」
あ。
すっかり忘れていた。
まだ居たのかと言おうとしたら、その理由を蒼崎橙子が先に話す。
「情報生命体である悪魔と違って、人間の魂ってのは繊細なんだよ。
先程の注文の答えにもなるが、彼女の器ができるまではこちらは注文を受け付けられん」
舌打ちをしそうになる所をぐっと堪える。
こちらが助けた命である以上、因果応報である。
「わかった。
彼女の器ができたら一度報告をくれ」
「ああ」
とりあえず学園都市からクローンを買うのは確定。
御坂美琴はできているかどうか微妙なので、確実に抑えられるところから抑えてゆくと……
「対魔忍しかないよなぁ……いやな事に」
「あら?
ついに彼女たちを抱く気になったの?」
ステンノのツッコミに俺は首を横に振る。
頭が対魔忍なだけで、彼女たちの身体能力は高いのだ。
頭が対魔忍なだけで。
大事なことだから二回繰り返して言ってみた。
「確定でクローンがあるのが多分朧とアサギと不知火と紅あたりかなぁ……待てよ?」
俺は思いついた事を確認するためにリヨアサシンのレポートを再度読み直す。
対魔忍世界の多国籍複合企業体ノマドとの繋がりを確認するためだ。
ミレニアムと協力関係にあるのはわかったが、その創始者であるエドウィン・ブラックとは敵対している事実が浮かび上がる。
これは、エドウィンが始祖吸血鬼だからで、ミレニアムにとっては格好のサンプルという訳だ。
ミレニアムはノマドと協力しながらエドウィン・ブラックの排除と捕獲を狙い、エドウィン・ブラックはミレニアムの狙いを知りながら自衛しつつ支援を受け続けた。
もちろん、これには米国本拠のアンブレラ社も絡んで素敵なことに。
「そんなクローンの研究生産施設は……ここだよなぁ……」
学園都市。
アンブレラ社。学園都市研究所。
ノマド。学園都市廃棄研究所。
バイオハザードが発生してもどうにでもなりそうなその研究所の名前を見て、俺はため息をついた。
洗脳装置
テスタメント。
学習装置はこれをベースに布束砥信の監修。
表記ゆれなのかもしれないが、両方ともテスタメントと読む。
戦闘単位としてどんなに優秀でも……
攻殻機動隊。
それでもマテバが好きな刑事はあの面子の中で人間臭くて好き。
マルチとセリオ
『To Heart』。
日本のロボット工学に多大な影響を与えたエロゲーの一つ。
あの世代の何人かはこれを作りたくて、ロボット工学に進んだそうな。