【アンコもどき小説】やる夫と叢雲とステンノは世界を渡りながら世界の危機を回避するようです   作:北部九州在住

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猫の手の確保 その5

 横須賀港に突如現れた空母だが、関係各所が大騒ぎしても米軍は『機密』の一言で沈黙を続けた。

 なお、海自側には一部始終を伝えて上が頭を抱えているのだが、

 

「自分みたいに付喪神を召喚できるなら、他国でもそれを召喚しようと考えるのは当然でしょう。

 それに相手は米海軍の少将。

 どうして自分が断れると?」

 

の一言で上は沈黙する。

 この手の接触防止は市ヶ谷側のミスであると言えば事実なので向こうもそれ以上怒れないのだ。

 一方で、さすがデグ様とばかり在日米軍司令部経由で、

 

「今回の貴国の判断による軍事技術供与に感謝します」

 

と正規ルートで謝辞を伝えて借りを明確にしたので、それ以上のツッコミもできずに無罪放免となった。

 米ミサイル流出誤射事件に次いで大きな借りをどう使うのか、この腐った政府はまだ思いついていないのが色々と救いがないのだが。

 

「しかしでかいな」

 

 艦娘なので全自動なのだが、もちろんそれをさせるつもりはデグ様にも無く、即座に人員をかき集めたあたり、さすがデグ様。

 パイロットは岩国基地から連れてきただけでなく、ベトナム戦時の空母航空団編成だった事でA-4EやA-4Cに乗りたいという現役および退役軍人が押しかけているという。

 なお、同じ理由で、

 

「『Fighting"I"』にまた乗れるなら乗せてくれ!」

 

とやってくる連中が大挙して……こいつらはベトナム戦時の連中だからみんな偉くなって断るのが苦労するなんて笑い話も。

 とにかく日本では護衛艦に乗せる人間がおらず、クローンやアンドロイドを使おうという所に追い込まれていたのにマンパワーを確保してみせるあたり世界の超大国の面目躍如というところだろうか。

 そんな米軍横須賀基地にて米兵が空母イントレピットに調査搬入の作業を叢雲とステンノを連れて眺めていると、後ろから声がかかる。

 その声の主にお呼ばれされたのが俺がここに居る理由である。

 

「これでも小さい方だ。

 今や原子力空母の時代で、そいつらは80000トンを超えるからな。

 来てもらって感謝する」

 

 ターニャ・デグレチャフ少将の後ろに控える艦娘イントレピット、その左右にはリエリ・ビショップ中佐とナオミ・エヴァンス少佐が居る。

 この四人が実質的にこの空母を動かしてゆくことになるのだろう。

 

「で、だ。

 来てもらった理由だ」

 

 リエリ・ビショップ中佐がえらく大きな軍用無線電話を俺に差し出す。

 受け取ると、テレビで聞いたことのある声が聞こえてきた。

 

「米軍の空母の所在というのは、歴代大統領が常に頭に入れておかないといけない事項の一つでね。

 同盟国の技術供与のおかげで、新しい……というには少し古いが、彼女が舞台に立てたのならばお礼の一つぐらい言わないと非礼にあたるだろう?」

 

 俺が睨みつけてもデグ様は知らん顔。

 声は穏やかに、流暢なクイーンズ・イングリッシュで返事を返す。

 

「同盟国としてできる事をしたまでです。

 大統領閣下」

 

 おそらくワシントンとのコネ作りに俺を売ったな。

 さすデグ。

 やることにそつがない。

 

「冷戦終結と湾岸戦争の後、国際秩序は我が国が守らなければならない。

 その時に頼れる同盟国が共にいると嬉しい。

 ワシントンに来た時には、ぜひホワイトハウスに来てくれ。

 歓迎しよう」

 

 当たり障りのない会話を終えて電話を返すと、デグ様がネタバラシをする。

 彼女もとてもいい笑顔だ。

 

「当たり前の事だが、この国でCIAが動いているのは知っているだろう?

 この国で進みつつある陰謀について、ホワイトハウスとペンタゴンは重大な懸念を持っている。

 で、この間のミサイル流出誤射事件だ。

 私の仕事は、その経路の解明と再発防止にあった。

 だが、しゃれにならんぞ。これは」

 

 突き出された英語のレポートには『トップ・シークレット』の赤判子がでかでかと押されている。

 機密流出にならんのかと思ったが、デグ様が笑う。

 

「安心しろ。

 まだ提出していないものだ。

 判子はお前に見せつけるために私が押したが、ペンタゴンでも押されるのは間違いないだろうよ」

 

 同じ転生者のよしみというより、使えるなら大事にコキ使おうという意図も入っているのだろうな。

 その結果、こちらも大統領とのコネなんてものができて、さすデグとなるから彼女はいつもの泥沼に落ちてゆくのだが、言わぬが花だろう。

 そんなレポートを読み進めると、俺の顔も真顔になる。

 

「これは本当か?」

「嘘だったら良かったんだがな」

 

 それは湾岸戦争後の闇の暴露に近かった。

 戦争そのものは米軍をはじめとした多国籍軍の勝利に終わったが、兵士達にはそんなことはどうでもよくPTSDによる薬物依存や生活崩壊でホームレスに落ちている実態が浮かび上がる。

 そして、そんな彼らを救済し生活再建をしていたのがメシア教だった。

 ミサイル流出事件はそんなメシア教徒が引き起こした事が書かれていた。

 ルーラーの天草四郎、歪んでいるかもしれないが間違いなく聖人で救世主だろうからなぁ。

 そして、この事件で彼らの存在が明るみに出た事実に俺は頭を抱えたくなる。

 

「内部調査だと、現在ホームレスになった退役軍人は50万は居ると言われている。

 かれらの救済を一手に引き受けている事で、軍内部に急速に支持者が増えている。

 そんな奴らの聖女がこいつだ」

 

 デグ様は数日前のワシントン・ポストを差し出す。

 その一面に『ソマリアの聖女』というタイトルで紙面を飾ったのは、国連のソマリア支援活動で米軍のプロパガンダとして華々しく活躍する一人のヘリパイロットの姿だった。

 

「メアリー・スー少佐。

 多分、こいつがメシアの聖女の一人だ」

 

 なるほどな。

 彼女を知っていたからこそ、デグ様はなりふり構わず手駒を集めにきた訳だ。

 存在Xの力で俺たちが向こうについたら洒落にならんだろうからな。

 

「一週間後、こいつの試験航海をするにあたって、臨時編成の任務群を作ることになる。

 もちろん、こちらでもエスコートはつけるが、その時に貴官の船である『叢雲』と『浜風』、それと『みらい』にも来てもらいたい。

 ちゃんと正規ルートで要請するので外交上の問題は無いぞ」

 

「多分中にスパイが居ますよ」

 

 どう考えても『監獄戦艦』コースだろうとやんわりと指摘したら、デグ様は獰猛な笑みを見せてあっさりと言い放った。

 

「知っているよ。

 この航海はそいつらを狩り出す為だからな」

 

 デグ様は顔芸芸人ではあるけど、戦場を渡り歩いた化物の一面もある。

 そんな彼女の狩りの顔を見て、俺は言葉を出せず目の前のイントレピットを見てごまかすことにした。




米軍横須賀基地
 この時期配備されている空母はインディペンデンス。
 92年イラク飛行禁止空域監視任務とソマリア支援活動で横須賀を離れている設定。
 なお、ソマリアの支援活動に留まっているのは、メアリー・スーの聖女運命力のおかげ。


スカイママに乗っていた飛行機達
感想より転載

VA-106(A-4E)16機、VA-66(A-4C)16機、VA-36(A-4C)16機、VF-111 DET.11(F-8C)6機、VFP-63 DET.11(RF-8G)4機、VAQ-33 DET.11(EA-1F)3機、VAW-11 DET.11(E-1B)4機、HC-2 DET.11(UH-2B)3機、COD(C-1A)1機
これを妖精さんで動かせるスカイママ。
つよい。


大統領
 現実ならクリントン大統領なのだが、『Twelve Y. O.』あたりのネタをいれるかなと思っているのであえて名前は出さない方向に。


ソマリア
 なろうの小説でも出したけど、ここは湾岸戦争に並ぶターニング・ポイントのような気がする。
 こうやってネタにすると美味しすぎるのだから。


メアリー・スー
 デグ様ライバル兼メシアの聖女。
 もちろん聖女なのでとある世界でも超有効なチートキャラ。
 元ネタが元ネタだし……


任務群
 米海軍で空母を動かす際の編成形態。
 多分、第5艦隊が前倒しで編成されるから、デグ様の部隊は第50任務部隊になるのかなぁ?
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