【アンコもどき小説】やる夫と叢雲とステンノは世界を渡りながら世界の危機を回避するようです 作:北部九州在住
会議はまだまだ踊っている。
さっきの勝者が今の敗者になるのがこの円卓会議。
次の議題では、新たな敗者が集中砲火を浴びていた。
「テロでごまかしたが、我が国は本当のテロ組織と戦っている事を忘れてもらっては困る。
水面下で進んでいた和平の流れが壊されて血を流すのは君たちなのだぞ」
フランシス・アーカート第一大蔵卿の淡々とした皮肉に何も言い返せない軍関係者の面々。
古代遺跡の発掘に纏わる実験で基地一つとSASの人員に多大な被害を出したばかりでなく、テロ組織の犯行で片付けた為に本物のテロ組織であるIRAが態度を硬化させていたのである。
時計塔補佐のバルトメロイ・ローレライが嘲笑を浮かべるが、口に出すことなくこの話の本題を聞くことにした。
「で、だ。
我々を助けたアーカム財閥についてだが、彼らをどうするべきか考えなければならない」
フランシス・アーカート第一大蔵卿は皆に問う。
アーカム財閥は超古代文明からのメッセージに従い、超古代文明の遺産を封印しあらゆる権力から守護することを目的としている。
問題は、超古代文明だからこの魔法や魔導世界では超一級の神秘であり、冷戦終結に伴う新たな世界秩序構築が進んでいる現在、各国は科学の進歩と同時に古代科学の復興を裏で進めていた。
その最たるものが日本にある学園都市だろう。
オブザーバーで呼ばれたメガロメセンブリア元老院議員であるジャン=リュック・リカード主席外交官がここで始めて口を開いた。
「我々は、アーカムのこの動きについて懸念を表明します」
『ネギま』魔法世界からすればある意味当然で、超古代文明の塊みたいな世界で星すら別れて生活しているのだ。
何よりもこの魔法世界は10年前に『大分裂戦争』という大戦を経験しており、その復興にはこちらの世界の支援は必要だった。
その彼らが出せる切り札を、アーカムの主張に従えば持ち出すことができなくなる可能性が高い。
また、アーカムが米国に本拠を置く財閥であるという所にも、リカード主席外交官は懸念を持っていた。
国家対国家ならば、まだ条約なりで落とし所が探れる。
だが、アーカムの主張は米国の利益となりかねず、それはこの裏の世界すら米国が牛耳るという可能性を否定できなかったのである。
「かといって、かの財閥と事を構えるのは我が国としてもきつい。
そこで、こんな提案が来ている」
ファッジ魔法大臣が用意した書類を皆に見せる。
アーカムと敵対する巨大軍産複合体である『トライデント』の欧州企業であるキャンベルカンパニーからの提案である。
具体的な内容は、『急増する魔法絡みのトラブルに対しての自社実行部隊の提供』。
事実、『ハリポタ』世界では、ヴォルデモート卿の復活騒ぎが起こっており、闇の魔法使い達がざわついていた時期だった。
闇鍋世界の結果、急増するトラブルの処理に魔法省単体では追いつかなくなっており、かといって騎士団や時計塔やヘルシング機関ですらも駒が足りない。
「つまり、彼らにとっては新型兵器の実戦テストの場所が欲しい訳だ」
意図に気づいたアイランズ卿が吐き捨てるが、フランシス・アーカート第一大蔵卿は淡々と事実を告げる。
それに返事ができないことを見越した上で。
「そのとおり。
だが、彼らはその利益を得るために、こちらの治安維持活動を格安で請け負ってくれるそうだ。
先程のオールドレディの傭兵もこれにすれば王室財産の倹約になるがいかがかな?」
「悪くない提案だし。
とはいえ、全てを委ねるには不安だし」
キャリーサ王女が懸念を表明する。
つまるところ格安の傭兵な訳だ。
傭兵は金が払われている限りは裏切らない。
ただし、格安の傭兵はその時点で寝返りのリスクが発生するのも事実だ。
「ですから、意図的に分けたではありませんか。
かのオールドレディは王室直轄に。
ヘルシング機関には騎士団を始めとした人員の補充が決定したばかり。
それでも現状の治安維持が追いつかないからこそ、この提案がここで討議される事になったのです」
フランシス・アーカート第一大蔵卿はにべもない。
これについては米国のアンブレラ社の生物兵器でもいいし、日本のドロイドなども候補に上がっていた。
それでもトライデントを選んだのは欧州企業であると同時に、多くの議員の懐に色々な心付けがなされていた事に触れる人間はこの場には居ない。
「この治安維持機関は魔法警察及び闇払い局の下部に起き、魔法世界の広範囲の治安維持活動に従事させたいと考えている。
また、複数の治安維持機関の上位機関として円卓会議を指定し、相互の連携を強化したい」
ファッジ魔法大臣の言葉に、フランシス・アーカート第一大蔵卿が続く。
こういう時に政治家は強い。
「こちらも軍だけでなく治安機関及び情報機関等の上位機関として円卓を指定したい。
つまり、名実ともにこの場の席がこの大英帝国の意思となる事を諸君は肝に銘じて欲しい」
それでもこの円卓会議を最高意思決定会議に指定するあたり、大英帝国は必死にこの世界を生き延びるために意思の統一を図ろうとしていた。
それが野心のためか、責任逃れのためか、はたまた何か別の意思があるのかもしれないが、政治家が政治家たる理由でその意思統一に成功した事は、大英帝国にとって良いことなのだろう。
代償もあったが。
「入即出海将補相当官が警告してくれたナチス残党については?」
会議も終わりと皆が立ち上がろうとする中、発言権があるペンウッド卿が確認するが、フランシス・アーカート第一大蔵卿はにべもない。
「南米は米国の裏庭だ。
ネオナチはイスラエルのモサドが執念深く追いかけている。
彼らの報告を待ってからでも遅くはないだろう?
ペンウッド卿。
いくら火事と叫んでも、水が無ければ火は消せないのだよ」
つまり、彼らにとってそれはその程度の事でしかなかった。
英国基地壊滅
ここで出たマリア・クレメンティは辞表を提出するが、機密を知りすぎた彼女が辞めれる訳もなくペンウッド卿の所に参謀として島流しに。