ビリビリ少女の冒険記   作:とある海賊の超電磁砲

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24話 VS CP9 ③

 電撃が氷を砕き、雹霧を熱し飛ばす。

お互いロビンを殺すつもりがない、だからこそ全力でやり合えるわけだが…。

ミサカの周囲に展開した電撃の防御膜を貫く威力を青雉が用意すれば、雷速で破壊は可能。

だがその『用意』が邪魔をして、青雉に届く攻撃に至らない。

 

「………キリがない」

「コレならどうだ?」

「!」

 

 氷の刃を出現させた青雉が、ミサカへ突っ込む。

雷撃を放つが、見聞色に合わせ持ち前の実力で雷撃を凌いで見せた。

青雉の氷は、ミサカが放出する雷撃の熱と威力で壊され、溶ける。

 だが無力ではない。盾にも鉾にもなる、そして電磁のバリアは武装色を纏えば軽減できる。

氷を掴むのではなく、二の腕から刃を生成すれば筋力低下により取りこぼすこともない。

 氷の二刀を、ミサカは電磁操作で集めた伸縮自在の砂鉄の剣で対処する。

本来なら砂鉄の高速振動と熱によって氷は斬れて溶けるはずだが、覇気によって互角に撃ち合うという非現実的な状況を生み出してしまう。

 だが、数度打ち合った後にスルリと砂鉄の網を抜けてほぼゼロ距離へと接近を許してしまう。

場数と経験の差以上に、自然系(ロギア)の特性が厄介なのだ。完全な霧状になってしまえば一気に焼き尽くすのに、一部を氷霧にするというやり方ですり抜けてしまう。

 

「あららぁ、やるねぇ」

「近接戦闘も、ちゃんと習ったから」

 

 だが、その距離でもミサカは焦らない。

砂鉄の剣を抜けられた瞬間、両腕に纏わせ大きな黒いカギ爪を作って防いでみせた。

 

(磁力すら操る緻密な電撃と覇気のコントロール、そして戦闘の心得……こんな小さな子に、誰が教えたんだか)

 

 戦えば戦う程に、少女の影に師匠と思われる存在が浮き彫りになっていく。

これだけの実力を付けながらも慢心する様子がない、その事実は師匠とそれだけの差があるという裏付けにもなる。

イメージは天秤だ。この少女を片側として、彼女の師匠の強さがもう片方の秤に置かれていく。

 

 だが、両者の秤が重くなっていくばかりで――その『誰か』の実力の高さが計り知れない。

 

幼く無垢な少女に知識を与え、自分で考える知恵をつけさせ、そして自分の身を護れるようあらゆることを教えた誰か。

 それらを吸収してしまう、ミサカの学習能力と潜在能力の高さも勿論素晴らしいが……。

 

「ん?」

「スゥ、ハァー……」

 

 氷刀と鉄爪がぶつかり合う中、目の前の少女の集中力が上がっていく。

研ぎ澄まされたことにより武装色も高まったが、それ以上に青雉の脳裏に浮かんだ少女の次の動きが、ブレていく(・・・・・)

 

「――チッ」

 

 こう言った時の嫌な予感には素直に従うに限る。

青雉は氷の刃を大量に生成し――直後その全てを雷に砕かれた。

事前に現れることを察知しないとできない芸当だ。

 

「おいおい、マジか嬢ちゃん?」

「…………………」

 

 歳不相応の覇気の練度の高さに、青雉は驚愕を隠せなかった。

見聞色は極めると未来が視える。勿論青雉はその力を持った実力者との戦闘を経験したことがある。

ミサカも同じように未来を視ている――はずだが、青雉は違和感を覚えた。

 

(なん、だ……?)

 

 見つめているだけの青雉の脳裏に浮かぶミサカの姿が、ぶれて、増え(・・)分からなくなっていく(・・・・・・・・・・)

青雉が察するよりも早く察知し、それを察知したことを察せられる。

ミサカの頭から紫電がパリッと漏れ出ているのを見て、青雉はミサカの無茶(・・)を理解した。

ビリビリの実は発電し、それを操る力。こんな運用(・・)はきっと常用外なはず。

だが、少女は現実に行っている。見聞色の覇気と組み合わせた、特異な能力の行使……それは――。

 

「なるほど――思考を、加速してるのか」

「………」

 

 無意識で察知する見聞色の覇気に、『思考』は本来余分だ。

未来を視れるのは数秒先が限界で、一々あれこれ考えていたら出遅れてしまう。

だが、ミサカは脳の処理速度を上げることで『予知』と『行動』の間に『思考』を挟むことに成功している。

 過去と現在の青雉を参考にして、未来視で垣間見た青雉の動きを『演算』することで未来視の『その先』を想像しているのだ。

そして、そのミサカの視ている光景に、青雉では物理的かつ能力的に追いつけない。

 

(こうなると、俺の見聞色はほぼ無意味になるわけか)

 

 青雉の見聞色が捉えた動きよりもずっと速い速度でミサカの攻撃が通る。

ただ速いだけじゃない、青雉が防ごうと、攻撃しようとした直前の無防備(・・・・・・)を面白い程に突いてくる。

 

「ぐっぉお!?」

 

 武装色による直前の防御は間に合わない、常時全身を覇気で覆い、防ぎ続けることでようやくミサカが何をしたのかを目視できる。

その状態で攻撃を繰り出そうとして、その全てを事前に潰される。

 演算はその先だけではない、現在(いま)の青雉の動きも当たり前に含まれている。

仮に未来が視えたとしても、それを含めて先を行かれてはどうしようもない。

 

「まったくっ想像を超えていくなぁ、お前さんはっ」

「――」

 

 膨大な演算による未来のその先を掴み取る、未来を確定させる(・・・・・)力。

だがそれは覇気の消耗だけではなく、体力や気力の消費も激しい。

今のミサカには青雉の言葉に何かを返すことどころか、喋るという動作すら遅く、思いつく返答があまりに多い。

そもそも敵同士。故に、無言で見つめることで意思をぶつけるのみ。

 

「はぁ、我慢は苦手なんだが……仕方ねぇなぁ」

 

 海軍大将になる前に防戦一方を経験したことはある青雉でも、冷や汗を流してしまう。

少しでも油断すれば一撃で潰してくる怪物少女を相手に、気を緩めない我慢比べが始まった。

 

 

 司法の塔、中階。

 

「ギャハハハ!!もう終わりか小狸ぃ!?」

「お、おれは、…トナカイ、だっ!」

 

 ゾロの戦いを邪魔させないため、ジャブラに追いかけられていたチョッパー。

だが実力差があまりに開きすぎている。こうやってウロチョロできたのは完全にジャブラがチョッパーで遊んでいるからだ。

 

(や、ヤバイ……)

 

 チョッパーは動物系、ヒトヒトの実を食べた動物人間。

動物系は身体能力を直接引き上げてくれるものだが、彼が得たのは力ではなく知恵。

その知恵で医者になった彼の戦闘力は、お世辞にも高いとは言えない。

 そんなチョッパーが作り上げた、自分の身体を戦闘用に作り替える薬丸、ランブルボールの効果は3分。

その3分の時間も過ぎてしまった。脚力強化(ウォークポイント)しても『剃』の速度に追いつけず、毛皮強化(ガードポイント)は普通に防御をぶち抜いてくる。

腕力強化(アームポイント)はまるで当たらず、飛力強化(ジャンピングポイント)は『月歩』と『剃』の合わせ技、『剃刀(カミソリ)』で追い越しついでに攻撃される始末。

 

(ど、どうしよう……)

 

 自由に変身できる数少ない状態、重量強化(ヘビーポイント)となってゴリラのような姿になったが、その体格とは裏腹に思考は詰んでいる状況に絶望してしまう。

 もう一度ランブルボールを使っても、思った変身にならずランダムになる。

こんな強敵相手にそんな阿保なことしてたら、それこそ殺されるだろう。

 

「どうやらほんとに終わりらしいなぁ」

「うっ、ぐぁ!?は、はな゛ぜェ…!」

 

 『剃』で近づかれ、太くなった首を掴まれる。

狼の爪がゆっくり首に刺さっていき、窒息と失血で意識と一緒に生命も絶たれそうになる。

 

(うぁ……ドクト、リーヌ…)

 

 人は命の危機に陥ると、走馬燈を見る。

身体が痛くて、苦しくて、力が抜けていく。こんな風になったことが、過去一度あった。

それは、ランブルボールの3個目(・・・)を食べた時のこと。

 

 チョッパーは自分も知らない形態に変化し、暴れ回ったという。

 

 誰にも止められない狂獣は、そのまま精根尽きるまで暴れ続けた。

目が醒めた時、自分で傷付けた身体の痛みで目を覚まし、力がまるで入らずベッドに横たわったままになっていた。

 

(このまま、殺される、くらいならっ)

 

 一瞬で小型に戻ることで、拘束を抜ける。

ジャブラなら落下した瞬間に止めを刺せるはずだと、小型になる前に取り出した丸薬を二つ、直ぐに口に放り込んだ。

 

(だれも、この階に来ないでくれよっ)

 

 ガリッと丸薬を嚙み砕く感触を最後に、チョッパーの意識は途絶えた。

そして――。

 

「ヴォ゛ォ゛ォ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛!!!!!!」

 

 誰にも止められない怪物の鳴き声が、司法の塔に響き渡った。




オリジナル技
 ・未来視のその先
見聞色による未来視に加え、ミサカの演算能力を悪魔の実の力で高めることで、本来の未来視よりも先の未来を予測している。
出来るだけ消耗を避けるため、予測可能範囲はミサカが発している電磁波圏内に絞っている。
 事前に情報が揃っており、対象人数が少ない程その予測は確定へと近づく。

 発電操作能力であるビリビリの実を用いた非常識な使い方であり、何より14歳というまだまだ幼いミサカには負担が大きい。
だが情報と条件がそろえば、相手に何もさせずに一方的に蹂躙することが可能となる。
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