カードファイト!!ヴァンガードG 孤独の先の、愛の物語 作:リー・D
パーティー終了後、シンとミクル、クロノとトコハを家に帰し、予定のある者、遠くから来た者たちが帰った後、会場内の清掃が、残った者たちによって行われていた。
カムイ「それにしても、クロノの奴。まさか格闘術が使えるようになってるとはな」
タイヨウ「あれは驚きました。いったい何時覚えたんでしょうね?」
カムイとタイヨウがテーブルの上のゴミを捨てながら興奮して話をしていた。
そこに三和も加わる。
三和「あれ、伊吹の技だからな。アイツが教えたんだろうな」
その視線の先には櫂と共に床を掃除する伊吹の姿があった。
シオン「しかし、タイヨウくん。例の賭けでよく1番倍率が高いのを当てることができたね。僕なんて、大はずれで損しかしなかったよ」
サオリと共に別のテーブルを片付けたシオンがタイヨウに声をかける。
その顔はかなり悔しそうだ。
タイヨウ「さすがに日付は違いましたよ。僕はGWに告白すると思ってましたから。パリでの告白は大正解でしたけど」
シオン「そこか、君が当たったのは。そもそもクロノは鈍感だから、自分の恋心に気づいていないと思ったのが失敗だったかな」
親友の行動を読みきれなかったのが悔しかったのか、シオンは落ち込んでしまう。
タイヨウ達は苦笑してその姿を見るしかなかった。
カムイ「まっ、気にするなよ。トコハちゃんのほうから告白するって意見のほうが多かったのは事実なんだから。大はずれ仲間はいっぱいいるし、クロノの目の前のこと以外への鈍感さは有名なんだ。気にしすぎると体に毒だぞ」
シオン「そう、ですか。すみません。賭け事なんてエースを追っていた時にもやったことなかったので、楽しみだったんですよ。結果は惨敗ですけど」
三和(カジノってどちらかと言うと貴族がやるものだよな)
カムイ(まあ、日本だとどれくらいあるのか分かりませんし。シオンは中学生でしたから)
※未成年の公式の賭け事(競馬など)は法律で禁止されています。
カズマ「まったく、お坊ちゃまはこんな小さなことを何時まで引きずってんのだか。お、このコップの中身まだ残ってるじゃねえか。勿体ねえから飲むか」
カズミ「ん? まて、カズマ。中身を確認してから。 ……カズマ?」
カズマ「…………」
クミ「あれ~? 東海林くん、どうしたの?」
急に黙ったカズマを兄カズミとクミは心配して、彼の顔を覗き込む。
カズマ「ひっく」
クミ「ふにゃああああああ!!!」
カズミ「カズマああーーーーーー!!」
なんといきなりカズマがクミに抱きついたので、クミもカズミも驚いて大声を出してしまった。
この声に反応して、その場にいた全員がその姿を目撃してしまう。
タイヨウ「か、カズマさん! いったいどうしたんですか!?」
アンリ「彼、こんなキャラだった?」
伊吹「おい鬼丸。何が起きた?」
カズミ「じ、実は。カズマが今足元に落ちているコップの中身を飲んでしまって。おそらくですが、飲み残しのお酒だったのではないでしょうか」
石田「おいおい。誰だよ。酒を残したのは。まあ、確認しなかったアイツも悪いけどよ」
小茂井「しかし、たった1杯であんなにも酔ってしまうとは。彼はアルコール耐性が低かったのですね」
クミ「そ、そんな冷静な分析は、ああ、後に、して。た、助けてくださ~い!」
そんな叫びをよそにカズマはクミを完全にホールドして逃がさなかった。
良く見ると顔を胸元にこすり付けているようにも見える。
カル「……もしかして、カズマはクミさんのことが好きなのでは? だから抱きついたんですよ」
ツネト「マジか~! トコハちゃん、アムちゃんに続きクミちゃんまで彼氏ができちゃうなんて、男どもが羨ましいぜ~!」
ケイ「うん。うん」
彼女のいないトリドラが嘆き悲しむ。
クミ「えっ、私、東海林君の彼女になるって決定なのですかぁ? ひゅん! しょ、東海林君。ど、何所触ってるの!? は、恥ずかしい///」
一瞬だけいつもの口調を取り戻したクミだが、カズマの手が体中を行き来しているため触って欲しく無いところまで触れられてしまうため、より顔が赤くなってしまう。
心なしかちょっとずつクミを押し倒そうとしているように見える。
カズミ「ま、待て、カズマ。それ以上は流石に拙い」
ここで兄としてカズミが止めた。
カズミ「カズマ、岡崎さんを連れて行って良いから、続きは家でな」
クミ「ふえっ!?」
カズミの言葉にカズマは少しだけうなずき、クミは驚いてまた固まってしまった。
カズミ「すみません、皆さん。うちの弟がとんだ騒ぎを起こしてしまって。これからカズマの家に送っていきます」
伊吹「構わない。あのコップは俺の部下たちの責任だ。それよりも、彼女のフォローをよろしく頼む」
はい、と返事をしてカズミは抱きついたままのカズマとクミとなんとか車まで連れて帰った。
この後、カズマの酔いが醒めるまで、クミはこのままカズマの家で過ごしたという。
カムイ「しっかし。まさかカズマがあんな行動するとはな」
タイヨウ「カズマさん。女性に弱いのは知っていましたが、お酒にも弱いとは思いませんでした」
サオリ「カズミさんも驚いてましたし、家族の体質で無いのは確かでしょうね」
当の本人がいないからか、会場に残った人の何名かが先ほどの行動を思い出して、少し呆れながら笑う。
そして、片づけがほぼ終了したタイミングで。
シオン「よし。終わったね。じゃあ、そろそろお開きにしますか?」
カムイ「待てよ、シオン。折角こんなにも人が集まってるんだ。ファイトしないで帰るなんて勿体無いだろ」
タイヨウ「いや、でももう遅いですし」
三和「ご家族には俺たちから電話してやるよ」
伊吹「ふっ。どうせなら、クロノたちの幸せへの嫉妬の感情をこのファイトで洗い流そう。本部長として、今より朝まで徹夜ファイトの開催を宣言する!」
『おおっ!』
タイヨウは少しだけ戸惑ったが、もはやこの空気を止める術を持たない。
ならば、と自身も内に秘めていた感情をさらけ出すことを決めた。
シオン「クロノとトコハめっ! 僕を置いて勝手に幸せになりやがって!」
ツネト「それはシオン! お前もだ!」
カル「われらのアイドル、アムちゃんを奪って! 絶対許しません!」
ケイ「成敗する!」
トリドラ『我ら、トリニティ・ドラゴンが!』
タイヨウ「カズマさん! クミさんにあんなことして、責任取らなかったら許しませんよ!」
ヒロキ「おうおう、タイヨウ。今日はやけに感情的だな。だけど、女を泣かせるやつに正義は無い! そんなやつはこのヒロキ様が正義の1撃を与えてやるぜ!」
サオリ「ヒ、ヒロキくん。やりすぎは駄目だからね!」
石田「ちくしょー! 俺だって~、彼女欲しい!! アイチが羨ましいぜ!!」
小茂井「無駄にもてるツッパリモドキが何を言っているのです! そんな奴はこうしてやるのです!」
三和「お前ら、酒飲んでないよな。騒ぎすぎるやつらは、俺様が封印してやるぜ!」
櫂「その程度の炎で、オレの紅蓮の炎を止められると思うなよ、三和!」
伊吹「そろそろ本気で婚活するか」
カムイ「あ? 伊吹、お前今何て言った?」
伊吹「な、なんでもないぞ! それよりも葛木。お前もいい加減、大文字からのアピールに折れたらどうだ? 楽になるぞ」
カムイ「それを言うんじゃねー!」
アンリ「み、みんな落ち着いて!!」
シオンが、ツネトが、カルが、ケイがそれぞれの感情を爆発させ、心配性なタイヨウに便乗して相変わらずのノリのヒロキをサオリが止める。
石田や小茂井がそれぞれの恋愛事項で涙を流し、三和が暴走させないようにするが、櫂がさらにそれを阻止する。
伊吹とカムイは互いの恋愛事項を指摘し合って自爆している。
そんな様々な感情が飛び回るフィールドでアンリの叫びがむなしく響き渡る。
ファイトがある程度終了したところで、伊吹が単身抜けようとするのを、またしてもカムイが酒を持って阻止し、櫂を含めて全員が酔っ払ってしまってドラエン支部は地獄絵図のようになってしまった。
翌朝、たちかぜのクランリーダーは自身が見つけるまで、散らかったドラエン支部内で大勢の大人と子どもが寝ていたと語っている。
本部長伊吹コウジと友人櫂トシキ、三和タイシ、葛木カムイは安城マモルにこっぴどく叱られ、数日間酒が飲めなかったらしい。
この騒動は後に本部長暴走の夜として語られることになる。
余談だが、この話を聞いたドラエン支部長、大山リュウタロウは――
大山「僕も参加したかった」
と、つぶやいていたところが目撃されたらしい。
次はこの話の直後の話です。