カードファイト!!ヴァンガードG 孤独の先の、愛の物語   作:リー・D

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前の話の続きです。


もう1つの始まり

ピンポーン

夜の東海林家にドアのベルが鳴り響く。

 

カズマ母「はーい。あら、カズミくん。こんばんは」

 

カズミ「こんばんは。東海林さん。カズマを連れて来たのですが、少々困ったことになってしまっているんです。部屋に上がらせるの手伝ってもらえませんか?」

 

カズマの母親はその言葉に首をかしげながら、カズミと共に下に止めてある車に向かった。

中には息子であるカズマが1人の女の子を抱きしめて寝てしまった光景が見えた。

これには母親である彼女も困ってしまう。

 

カズマ母「えーっと。これはいったい?」

 

クミ「あっ/// こ、こんばんは。私、東海林君のクラスメイトの岡崎クミと言います。あ、あの/// 東海林君をお家まで連れて行くの、手伝ってください」

 

涙目になりながら必死に訴えるクミを見て、カズマの母は少しだけ笑いながらカズミと協力してカズマとクミを家の中に連れて行き、ベッドに寝かせた。

クミも一緒に。

 

カズミ「すまない、岡崎さん。僕も一刻も早くカズマを君から引き剥がしたいのだけど、何故か全く離れなくてね。申し訳ないけど、このまましばらくカズマと一緒のベッドで過ごしてくれないか。責任は必ず取らせるから」

 

クミ「うう/// こ、これも試練と言うやつなのですかなぁ。心頭滅却すればみたいな。で、でも恥ずかしい///」

 

カズマ「Zzzz」

 

寝ているカズマに抱きしめられているクミに謝った後、カズミはカズマの母と今回のカズマの一件の顛末を話した。

 

カズミ「と、言う事でカズマはあんな状態になってしまいました。申し訳ありません。俺の管理ミスです」

 

カズマ母「仕方が無いわよ。カズマがお酒に弱いなんて私も知らなかったわ。あまり気負わないで。それよりも、カズマが抱きついてたあの娘。もしかして、カズマの好きな子?」

 

カズマの母は謝るカズミを咎めず、落ち着くよう言ったが、同時にクミのことが気になり、問いただした。

 

カズミ「彼女はカズマのクラスメイトで、チームメイトの新導クロノ君やその彼女、安城トコハさんのお友達。俺が知っているのはそのぐらいです」

 

カズマ母「あらあら。それは残念ね。本人に直接聞きに行こうかしら。カズマの様子も確認しなくちゃいけないし」

 

クミ「だ、大丈夫です」

 

カズミ「おや。脱出できたのかい。良かった」

 

脱出にかなりの体力を使ったのか、髪も服も乱れているが、クミの登場にホッとするカズミとカズマ母は彼女をテーブルに招いた。

 

カズマ母「ごめんなさいね。家の息子が迷惑をかけちゃって。あ、飲み物はミルクで良かったかしら」

 

クミ「はい。いただきます。……ふう。美味しいです」

 

カズマ母「お口に合って良かったわ。それにしても知らなかったわ。あなたみたいな可愛いお友達がカズマにいたなんて」

 

クミ「いえ、私は東海林君のクラスメイトでしかなくて、どちらかと言うとクロノ君経緯の知り合いと言える仲でしかありません。ただ、最近東海林君、私に優しくしてくれることが多くなったなと思うぐらいです」

 

その言葉を聞いたカズマの母は嬉しそうに笑った。

クミは笑った理由が分からずに混乱してしまう。

 

カズマ母「ごめんなさい。笑ったのはカズマのことよ。あの子が分かりやすいのは知ってたけど、ここまでとわね。うふふ」

 

クミ「え? どう言うことですか?」

 

カズマ母「あら分からない? 言っちゃって良いのか分からないけど、カズマに責任取らせるためにも、言っちゃいましょう」

 

カズミ「言うんですね」

 

カズマの母の天然が入った言葉に呆れながら、弟カズマの天然なところが自分だけで無く、母親に似たところでもあったことにカズミは気づいた。

 

カズミ(実は、父上も天然だったりしないよな)

 

カズマ母「カズマはね。クミちゃん、あなたのことが好きなのよ」

 

クミ「…………え? えっ!?///」

 

カズマの母から放たれた言葉にクミは思わず頬を赤めてしまう。

そんな様子を見て、カズマの母とカズミは笑ってしまう。

 

クミ「しょ、東海林君が/// わ、私のこと/// す、好き!?///」

 

カズマ母「うふふ。気がつかなかった?」

 

クミ「た、確かに東海林君、私がクロノ君に振られたときに慰めてくれたけど。あ、あれって、そ、そういうことだったんですか?///」

 

もはや頬だけで無く、顔全体が真っ赤に染まったクミが、かつて優しくして貰った時の理由に気づく。

 

カズミ「ああ、あの時か。そう言えば、クミちゃん、カズマの胸で泣いていたね。カズマは遅くてもその前には君のことが好きになっていたんだね」

 

カズマ母「そうね。あの子も不器用だから、こっぱずかしくて、自分から伝える勇気が無かったのね。言っちゃった私を言うのもなんだけど」

 

ほのぼのとした雰囲気で家族からカズマの気持ちを伝えられて、クミは耳どころか、体全体が熱くなってしまい、恥ずかしくて顔を隠してしまう。

そんな様子すらカズミ達は嬉しくて、つい笑ってしまう。

そんな時、カズミは時計の時間に気がついた。

 

カズミ「さて、クミちゃん。もう遅いから送っていくよ。今日は本当に迷惑をかけてしまったね。改めて謝らせてくれ。でも、同時に感謝もしているんだ。ありがとう。君みたいなとても元気な娘がいてくれたから、カズマも元気なのかもしれないね」

 

クミ「い、いえ。そんなことないですよ。東海林君の力になったのは、クロノ君やタイヨウ君ですし」

 

カズマ母「そんなことあるある。最近カズマが優しそうな顔になることが多くなったけど、きっとあなたのことを考えてそうなったのよ。次にカズマに聞いてみて。なんだったらそのままカズマの彼女になってくれても良いのよ」

 

カズミ「はっはっは。それは良いですね」

 

カズマ母「クミちゃん、是非また来てね。今度はカズマと2人で」

 

クミ「う、うう///」

 

またしてもクミは赤くなってしまい、カズミの運転する車で家に帰った後でも、それは変わらなかった。

カズミにお礼を言ってから家に入ったクミは、簡単にシャワーを浴びてから、ベッドに飛び込んだ。

 

クミ「ううう/// まだ顔が熱いよ。これも全部東海林君のせいですな。で、でも、暖かかったな///」

 

猫「にゃ~?」

 

カズマの温もりを思い出し、クミの頬は赤くなりながらも緩んで笑ってしまう。

そんな様子を岡崎家の猫は不思議そうに見ていた。

 

 

そして、翌日。

カズマはカードキャピタルでバイトをしていた。

 

クロノ「カズマ、今日は何か嬉しそうだな。良いことでもあったか?」

 

カズマ「いや、何も無かったはずだ。ただ、なんか分かんねえが、朝から気分が良いんだよなぁ。お袋もなんかニヤニヤしてたし、昨日なんか有ったのか?」

 

クロノ「俺らが帰ってからか? もうすぐシオンたち来るし、聞いてみたらどうだ?」

 

カズマ「そうだな。お、来たみたいだな。いらっしゃいませ」

 

そう言って2人で店の入り口を見てみると、そこには鬼丸カズミが来ていた。

 

カズマ「……何で兄さんが来るんだよ。仕事は如何した?」

 

カズミ「今日は少しだけ報告に来てね。すぐに戻るから安心しなよ、カズマ」

 

はあ、とクロノもカズマも反応に困ってしまう。

 

トコハ「あ、 鬼丸さん、いらっしゃいませ。今日は如何したんですか? それにクロノも東海林君もどうしたの?」

 

困っていると、掃除を終えたトコハがカズミに気づいて挨拶に来た。

 

カズミ「やあ、安城さん。折角だから、君も聞いてくれ。実はね、伊吹本部長が先ほどドラエン支部で、2日酔いで倒れているのが見つかったんだ」

 

クロノ「えっ?」

 

カズミ「それだけじゃない。他にも櫂トシキ、三和タイシや葛木カムイと、綺場シオン君を始めとした数名も同じ状態で発見された。メンバーを聞くと、どうも俺がカズマと岡崎さんを家に送った後に残った面々らしいね」

 

トコハ「ええっ!?」

 

カズミ「そして、その全員が現在各人の実家で謹慎中だ。さらに言えば、大人組は全員安城マモルさんに説教を受けて、それ相応の罰を与えるそうだ」

 

カズマ「えええっ!?」

 

カズミ「それと、シオン君は御両親からこっぴどく叱られたらしくてね、しばらくの間は、学校以外は綺場の仕事に集中して、ヴァンガードは、1週間は禁止されるそうだ。だからその間はこの店には来れないと岩倉さんから連絡があったから、承知してくれ」

 

クロノ「ま、マジかよ」

 

衝撃の事実にクロノだけで無く、カズマもトコハも言葉を無くしてしまう。

傍らで聞いていたシンは――

 

シン(カムイ君、三和君。ミサキからの説教と給料抜き確定ですね)

 

と、これから起こるであろうことを想像していた。

 

トコハ「あれ? さっき鬼丸さんがクミちゃんと東海林君を連れて帰ったって言ったけど、なんで2人は一緒に帰ることになったんですか?」

 

ここでトコハがカズミの発言の中身に気づき、疑問をぶつける。

その発言にクロノも同意し、カズミでは無く、カズマに聞くことにした。

 

クロノ「カズマ。どうしてだ?」

 

カズマ「いや、俺は知らねえよ。俺、昨日は片付けの途中で寝ちまったからな」

 

トコハ「そうなの? じゃあ、鬼丸さん」

 

カズミ「あー、そうだね。実は、カズマが寝ちゃったのは、飲み残しのお酒を飲んじゃったからなんだ」

 

クロトコ「「えっー!?」」

 

カズミの発言にクロノとトコハが大きく驚くなかで、カズマは目を丸くして絶句した。

 

クロノ「カズマ! お前大丈夫なのかよ!」

 

カズマ「えっ? だって、特に頭痛とかもしないし、そもそも機能の記憶が曖昧なんだが……何かあったのか?」

 

カズミ「カズマはコップに残った少ないお酒で酔って寝てしまったからね。単純に2日酔いになるほど飲んだ訳ではないのが、元気な理由だろう。ただ、酔って何も無かったと言えば嘘になるかな」

 

クロトコ・カズマ『えっ!?』

 

カズミの意味深な言葉に3人は再び絶句してしまう。

その意味を問う前に客人が来た。

 

クミ「お邪魔しますぞ~。あっ/// と、トコハちゃん、おはよう」

 

トコハ「あ、クミちゃん。おはよう。あれ? 顔赤いよ。風邪でも引いた?」

 

クミ「えっ/// な、なんでm「なんでも無くない」えー!?」

 

クロノ「トコハ、お前なんで岡崎の言葉を先読みできたんだ?」

 

トコハ「私が何年クミちゃんの親友やってると思ってんのよ。こう言う時は強引にでも聞き出すのが1番よ! さあ、クミちゃん。何を悩んでるの!?」

 

トコハはドヤ顔で胸を張りながら、クロノの疑問を答え、クミに迫る。

迫真の笑顔にクミは困ってしまい、何も答えられない。

そんなクミをフォローする者が横やりを入れてきた。

 

カズミ「安城さん。落ち着いて。昨晩の一件を彼女に説明させるのは酷だ。俺が代わりに説明しよう。実はね」

 

カズミがそう言って、一呼吸おいてから説明を始めようとしたところで、突然、それぞれの携帯が鳴り響いた。

 

クロノ「な、なんだ!?」

 

トコハ「これ、タイヨウ君からのLINEメッセージ?」

 

カズマ「なんか写真が送信されましたって出てるな」

 

クミ「いったいなんの写真がって――//// ふ、ふええええ///」

 

その写真を見た瞬間、クミは顔を真っ赤に染めて周りへの迷惑など考えられずに叫んでしまった。

 

トコハ「く、クミちゃん! 落ち着いて!」

 

トコハは写真を見る前に親友を落ち着けようとするが、クロノとカズマはそのまま写真を見てしまった。

 

カズマ「」

 

クロノ「ああー。なるほどな。これは恥ずかしい///」

 

カズマは写真を見たまま固まってしまい、クロノは少しだけ頬を染めて2人に同情した。

トコハもクミを落ち着けようとする中で写真を見る。

そして――

 

トコハ「はわわ/// し、東海林君にクミちゃんが抱きつかれてる!!」

 

やはり周りを気にせず思ったことを叫んでしまう。

これにはシンも青い顔をして注意するほどである。

しかし、そんなシンの注意を無視して話は進む。

 

トコハ「ど、どう言うことなんですか! 鬼丸さん!」

 

トコハは先ほどよりも勢いよくカズミに迫って理由を問う。

 

カズミ「お、落ち着くんだ安城さん。詳しく説明するから。ね?」

 

クロノ「トコハ。気持ちは分かるが落ち着けって」

 

なんとかトコハを落ち着けて、カズミは今度こそ説明する。

 

カズミ「写真のおかげである程度は察していると思うけど。まあ、簡単に言うと、カズマが酔っ払って岡崎さんに抱きついてしまったから、俺が2人を連れて帰ったんだよ。そのままカズマは寝てしまってね。だから、昨日ことは何も覚えていないんだ」

 

クロトコ・カズマ『な、なるほどぉ』

 

クミ「ううう///」

 

クロノ「カズマが岡崎を離したのは車の中ってことですか?」

 

カズミ「いや、全然離さなくてね。仕方が無いから、カズマの家の中までご同行願ったんだよ」

 

トコハ「えっ? じゃあクミちゃんは、東海林君の家の中でもしばらくの間抱きつかれたままだったんですか?」

 

クミ「う、うん。脱出するまで、ベッドの上で抱きつかれたり、体中を撫で回されたりしたの///」

 

カズマ「」

 

クロノ「おーい、カズマ~。生きてるか~?」

 

あまりの衝撃の事実にカズマは再び固まってしまい、クロノが肩を叩いても反応しなくなってしまった。

そんな様子にトコハは――とても良い笑顔になった。

 

トコハ「しょ・う・じ・くん♪ ちょっとお話があるの♪ だ・か・ら、起きなさい」

 

最初は軽い口調だったが、だんだんとトーンが下がり、最後は強かに命令口調で話しかけた。

これにはカズマも「はい!」と、返事をして起き上がるしかなかった。

 

トコハ「さて、東海林カズマ君。言いたい事や聞きたいことはいいっーぱいありますが、まずはクミちゃんに言うことがあるのではないでしょうか?」

 

カズマ「はい。お、岡崎。その、き、昨日はすまなかったな。迷惑かけちまって」

 

大きく頭を下げてカズマは謝る。

 

カズミ「俺からも、もう1度言わせてくれ。岡崎さん、うちのカズマが大変なことをしてしまったね。本当にすみません」

 

一緒になってカズミも謝る。

 

クミ「えっ!? あ、その、東海林君。謝罪は昨日お母様からも貰ったから良いんだけど、それよりも聞かせて。どうして、ここ最近私に優しくしてくれるの?」

 

改めた謝罪に少しだけ戸惑ったものの、クミは冷静にずっと聞きたかったことを聞いた。

この質問に対してカズマは少しだけ言葉に詰まった後、頬を赤く染めながら言葉を紡いだ。

 

カズマ「そ、その/// お、お前はさ。クラスでも、ファイト中でも、いつも笑ってるだろ。それが、クロノや安城のことで曇るのは見たく、なかったんだ。お、俺は///! お、お前の笑ってる顔/// す、好き、なんだよ///」

 

その言葉にクミは耳まで真っ赤に染まった。

 

カズマ「だ、だからさ/// 昨日の責任ってわけじゃねえけど、さ/// お、お前の笑顔、も、もっと見せてくれ。お、俺のすぐ傍で///!」

 

クミ「そ、それって/// わ、私に告白、してる///?」

 

カズマ「つ/// あ、ああ///! そうだ! お、岡崎クミ。お、俺と付き合ってくれ///!」

 

互いに顔どころか周りの空気まで赤く染め上げてカズマはクミに告白する。

 

クミ「そ、そう、なんだ///」

 

クミは少し顔を伏せてしまう。

 

クミ「あ、あのね、東海林君。わ、私ね。クロノ君に告白するよう言ってくれた時や、振られた直後に駆けつけてくれたこと、凄く嬉しかった。で、でもまだ。東海林君が私のこと好きだってことは、わ、分からなかった。だから、い、今も混乱してるの」

 

クミの言葉をカズマは無言でうなずいて彼女の言葉を聞いていた。

 

クミ「だからね。すぐに答えを出して、東海林君の告白に応えることはできない。待っていて欲しいとしか言えないのは、ごめんなさい」

 

カズマ「いや、俺も突然すぎた。ホント、悪かったな」

 

カズマは照れくさそうに頬をかきながら、答えた。

しかし、そんな彼に「でもね」とクミが続ける。

 

クミ「あんなに強く抱きしめられちゃったら、もうこれまでの関係としても居られないと思うの。だ、だから。今度から名前で……カズマ君って呼んでも良いですか///?」

 

何度目か分からないが、クミは頬を赤く染めて、カズマに聞いた。

 

カズマ「えっ、あ、そうやって呼ばれるのは2度目だな///」

 

名前で呼ばれることは、前回の空港でもあったことだが、あの時はクミも必死だったため意識していなかった。

改めて言われるとお互いに照れくさくなってしまう。

そんな空気に耐えかねて。

 

カズマ「分かったよ/// じゃあ俺もお前のこと、名前で呼ぶからな、クミ///」

 

カズマも彼女のことを名前で呼んだ。

 

クミ「はい/// これからよろしくね、カズマ君///」

 

クミは、今日1番の笑顔で返したのだった。

 

 

直後、大きな拍手が店中に響いたので、カズマとクミは驚いてそちらに顔を向けてしまった。

 

トコハ「クミちゃん。東海林君。おめでとう」

 

その中で、最も大きく拍手をしていたトコハが祝福の言葉と同時にクミに抱きついた。

 

クミ「と、トコハちゃん。私たち、まだ付き合ってるわけじゃないよ~///」

 

トコハ「いやいや、もう確定でしょ。このまま正式にお付き合いしちゃいなさい。トコハさんが許す! そう言う訳で、東海林君、クミちゃんをよろしくね。簡単に泣かせたら怒るから」

 

カズマ「は、はい!」

 

クロノ「……こういうところを見るとトコハとマモルさんが兄妹なんだなと実感するな」

 

クロノは祝福しながらも強かな目でカズマを脅すトコハに、以前自分がマモルに同じような目で言われたことを思い出して、少しだけ遠い目をむけてしまった。

そんなクロノをカズミは渇いた笑みで見ることしかできなかった。

 

カズミ「カズマ、よかったな。さて、折角だから俺もこれからは岡崎さんのことをクミちゃんと呼ばせてもらおうかな。改めて、クミちゃん。こんな弟だけど、これからもよろしく頼むよ。正式に付き合うことになったらカズマのお母さんに報告してあげて欲しい。絶対に喜んでくれるからね」

 

カズマ「ちょ、兄さん何言ってんだよ!」

 

カズミ「さぁ~て、俺はドラエン支部に戻らなくちゃな~。仕事溜まってるだろし、今日はマモルさんが本部に向かってるだろうから数日は忙しくなりそうだ。それじゃあ、俺はここで失礼させてもらうよ」

 

カズマの言葉を華麗にスルーして、カズミは手を振りながら去って行った。

残されたカズマはこぶしを握りながら兄への憤りを溜めることしかできず、クミは顔を真っ赤に染めて手で覆い隠すことしかできなかった。

 

カズマ「くそっ、あの天然兄さんめ! って、クロノ! その携帯はなんだ!?」

 

クロノ「ん? 今更気がついたのか? 今し方拡散が終わったところだぞ」

 

カズクミ「「!?」」

 

クロノの爆発発言によってカズマもクミも現実に引き戻される。

 

カズマ「か、拡散だと!?」

 

クロノ「ああ」

 

つまり、カズマがクミに告白したことが仲間達全員に伝わったことになる。

携帯電話を取り上げられている可能性がある1部の謹慎組は分からないが、返却と共に見るのでどのみち知ることになるのは確定だ。

 

クミ「えっ? い、いつから?」

 

トコハ「最初から♪」

 

カズマ「待て! まさかクロノお前、俺が安城に説教されているところから撮ってたか?」

 

クロノが携帯で写真を撮るのなら、そこ以降しかない。

しかし、現実は非常である。

 

クロノ「俺が撮ってたのは、写真じゃなくて動画だぞ」

 

カズクミ「「」」

 

クロノが動画を撮っていたとは思って無く、再び2人は絶句した。

 

トコハ「いいじゃない。どうせタイヨウ君が写真を拡散されてるんだから、このまま放置してたら誤解されちゃうよ。クロノが動画撮ってたから、一定の決着が着いたって報告を兼ねて動画拡散させたのよ」

 

言っていることは正しいのだが、2人は納得しないと言わんばかりに頭を抱える。

そんな2人に元凶のクロノとトコハは、それぞれ手を肩に置いた。

 

クロノ「まっ、クラスの連中には流してないから、そこは安心しろよ。トリドラとかいじってくるだろうが、頑張れカズマ」

 

トコハ「もう後戻りなんてできないんだから、告白頑張ってクミちゃん♪」

 

両者共に凄く良い笑顔で語りかけるのが、当人たちのプライドを傷つけた。

 

カズマ「クロノ、てめぇー!」

 

クミ「トコハちゃ~ん! 反省せいや~!」

 

カズクミ「「ファイトだ(ぞい)!!」」

 

クロトコ「「望むところ、タッグファイトで勝負!」」

 

シン「仕事……してくださいよぉ」

 

シンの声が空しく響き、カズマとクミ、クロノとトコハのタッグファイトは始まった。

しかし余りにも急なペアだったためか、相手の関係が良好過ぎたためか、カズマとクミのタッグは一方的に敗北してしまい、大いに落ち込んだ。

落ち込む2人を放置して、クロノもトコハも仕事に戻ったため、シンも安心して1日が過ごせた。

そして、夕方まで時間が過ぎた。

 

カズマ「お先に失礼します」

 

シン「お疲れ様です。そうそう、カズマ君。これを貴方に渡して欲しいと頼まれました。店を出てすぐ、1人の時に開けて欲しいと」

 

そう言ってシンは折り畳まれた紙をカズマに渡す。

受け取ったカズマは、一言だけ礼を言って去っていった。

 

クロノ「シンさん。あれ、何なんですか?」

 

シン「クロノ君。トコハちゃん。野次馬は、今は必要ありませんよ。これ以上彼に首を突っ込むのなら、ミサキに報告して給料減らしてもらいます」

 

クロトコ「「うっ」」

 

さすがに堪えたのか、クロノもトコハも素直に仕事に戻った。

シンはカズマの恋が上手くいくよう願い、空を見上げたのだった。

その頃、カズマは。

 

カズマ「この公園で良いんだよな」

 

渡された紙を開いて、そこに書かれていた場所であるキャピタルの近くの公園(トライスリーがカムイにチームワークを試された所)に来ていた。

 

クミ「あ、カズマ君。来てくれたんだね。嬉しいですな~」

 

カズマ「お前からの呼び出しは応じない訳にはいかんだろ。まさか、告白した初日に呼び出されるとは、思ってなかったけどよ」

 

クミ「うん。私も、待っててって言ったときは、この時間に呼び出すつもり、無かったから。自分でも、ちょっとビックリ。でもね。クロノ君とトコハちゃんとのタッグファイトをした時にね。私も、クロノ君とトコハちゃんみたいにお互いのことを理解して、支え合う。そんな関係にカズマ君となりたくなったの。だからね」

 

ここでクミが一呼吸置いた。

 

クミ「わ、私と。こ、恋人同士になってくだしゃい///!」

 

カズマ「」

 

クミ「……か、噛んじゃった/// うう、恥ずかしい///」

 

自分でも予想外のことだったためか、クミは顔を手で隠してしゃがみ込んでしまった。

 

カズマ「ぶっ、あははは」

 

これにはカズマも思わず笑ってしまう。

 

クミ「ちょっ、わ、笑わないでよ///!」

 

カズマ「わ、悪い、悪い。くくくっ。ホント、お前って面白いわ」

 

その後もしばらくカズマは笑い続け、クミの機嫌を損ねるのだった。

 

カズマ「あー笑った、笑った。こんなに笑ったのは何時ぶりだ? クミと一緒に居たら、こんなにも笑い合える日常が続くと思うと楽しみだな」

 

クミ「つ/// か、カズマ君ズルイ。そんなこと言われちゃうと、怒れないぞ~」

 

カズマ「だから悪かったって。それじゃ、改めて聞くぞ。岡崎クミ。俺の恋人になってくれ」

 

クミ「……はい。喜んで」

 

次の瞬間、暗い夜の公園に僅かに残る2つの影が1つになった。

この夜、また1つ、カップルが生まれたことは、夜空の星星だけが知っていた。




次で番外編はラストです。
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